元従軍「慰安婦」の女性たちが共同生活している韓国・広州市の「ナヌムの家」にこのほど、「売春ババア殺せ チョン切れ」などという歌詞の入った日本のロックバンドのCDが何者かから送り付けられ、現地で怒りを呼んでいる。
韓国の「聯合ニュース」などの報道によると、届いた包装物の差出人は「東京都千代田区 桜乱舞流」とあり、中に「チョン斬る!桜乱舞流」と書かれたCDと、曲の歌詞のハングル訳を記したA4判の紙一枚が入っていた。
この「桜乱舞流」と称する女性ボーカルを交えたロックバンドは実態が不明だが、演奏が公開されているインターネットの You tube で「愛国バンドです。朝鮮人を殲滅せよ!」とだけ、自己紹介されている。
流されている曲の歌詞は「竹島から出て行け」「特定アジアはいらねえ」「クソ野郎 飲み水までクソまみれ」などと、朝鮮・韓国人に対する攻撃と差別表現だらけの内容だ。曲と同時に、「日の丸」を持った若者が韓国の国旗を踏みにじったり、「朝鮮人慰安婦の大嘘 日本人の重大な人権侵害」と書かれたプラカードを掲げる動画も含まれている。
今回、「ナヌムの家」に送りつけられたCDはこれと同じ内容と見られるが、「聯合ニュース」(日本版)が三月三日に配信した記事では、「ナヌムの家」の女性たちが「幼くして連行され、苦痛を強いられた事実を全世界が知っており謝罪すべきだと言っているのに謝罪はおろか、なぜこんなことができるのか」と、「失望と怒りをあらわにし」ていると報じられている。このため「ナヌムの家」の女性八人が四日、ソウルの中央地検に名誉毀損でこのバンドを告訴した。今回の問題の背景にあるのは、「在特会」(在日特権を許さない市民の会)など日本の排外主義者グループが、各地のデモなどで「朝鮮人殺せ」といった過激なスローガンをエスカレートさせている現状だ。『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)の著者であるジャーナリストの安田浩一氏は、「『桜乱舞流』は悪質な排外主義者の流れだろう。元従軍『慰安婦』の方々にすらこういう行為をする人間が出てきたということは、排外主義の高まりを示す極めて憂慮すべき事態だ」と語っている。
(成澤宗男・編集部)