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社説

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選挙無効判決 司法の怒り受け止めよ(3月26日)

 国政選挙を無効とする戦後初の判決だ。

 広島高裁がきのう、小選挙区の「1票の格差」が最大2・43倍となった昨年12月の衆院選を「違憲」とし、広島1、2区の選挙は無効とする判断を示した。

 投票価値の平等を求める声に応えようとしない政治の怠慢に対する司法の怒りと言っていい。国会も内閣も重く受け止めなければならない。

 最高裁が同様に無効と判断すれば、当選は取り消され、選挙やり直しが現実のものになる。そうなる前に政治が自発的に改革を実現することが不可欠だ。

 昨年の衆院選をめぐる一連の訴訟では「違憲」判決が相次いでいるが、選挙無効に踏み込んだ例はなかった。無効にすれば公共の利益を著しく害する事情があるという「事情判決の法理」を適用したものだ。

 広島高裁判決は「選挙権の制約や民主的政治過程のゆがみは重大。最高裁の違憲審査権も軽視されている」と指摘し、一歩踏み込んだ。

 2倍を超える格差を「違憲状態」とした最高裁判決の後も政治の駆け引きは続いた。格差を是正しないまま衆院選を行ったことを「憲法上許されない」と断じた。「司法を甘く見るな」という強い警告と言える。

 無効の効果は今年11月26日を経過した後に発生するとした。格差是正に向けた「0増5減」の区割り作業が始まった日から1年間の猶予を設けるものだ。政治は信頼を回復する最後のチャンスと考えるべきだ。

 選挙やり直しが確定した場合、広島の2選挙区だけをやり直せば済むのかという議論が持ち上がるだろう。それ以上に1票の格差が大きい選挙区があるからだ。

 最高裁が総選挙のやり直しを命じた場合は、首相の「解散権」の侵害になるという意見も出てこよう。そのような混乱を招いてはならない。

 衆院や安倍政権の正統性が疑われる現状を解消するためには、早期に解散・総選挙を行うのが筋だ。

 衆院議員選挙区画定審議会は28日に「0増5減」案に基づく新たな区割り案を勧告する予定だ。勧告に基づく公職選挙法改正案を早期に成立させ、解散・総選挙ができる環境を整えることが必要である。

 安倍晋三首相は自民党に公選法改正案の早期成立を指示した。だが自民党の衆院選挙制度の抜本改革案は投票価値の平等をゆがめる内容で問題がある。与野党が納得できる案のとりまとめに努力すべきだ。

 一連の訴訟に対する全国の高裁・高裁支部の判断は明日までに出そろう。最高裁も早期に判断を出す見込みだ。各党とも、改革は時間との戦いだと認識しなければならない。

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