回答受付中のQ&A
~空色の瞳⑧-2~ ただ、その美しさに目を奪われた。 そしてそれは、一つの輝きで...
~空色の瞳⑧-2~
ただ、その美しさに目を奪われた。
そしてそれは、一つの輝きではなかった。
まだ食事まで時間があるので私達は、喫茶店で休憩する事にした。
実を言うと煙草を吸いたくなっただけなのだが。
適当に席を選んで座る。
彼女を奥へ促し、私は手前へ…を、やめて、
「あの、隣でもいいかな?」
「え?あ、はい、どうぞ…」
少し怪訝そうな表情で、横にずれる彼女に、
「いや、実は対面は苦手でね、この方が話しやすいから」
「え~っ!?意外っ」
「そうかな?」
「だって椎名さん、職場で朝礼とかしてるじゃないですか!?会議で部長と意見が
合わず、正面からやりあったとも聞きましたし…」
誰だ誰だ!そんな事を言ったのは。
「いや、あれは仕事だからできるんだよ。本当は恥かしがり屋なんだ」
「ふふ…良かった、私も同じです。」
そんな会話を交わしながらで二人でテーブルの奥へと座り、
ホットとハーブティを注文する。
「煙草、吸ってもいいですか?」
「どうぞどうぞ!気を遣わないでバンバン吸って下さいねっ!」
駄目だと言われる訳が無くても、聞くのが紳士だというものだ。
彼女に掛からないよう煙草に火を点け、煙を吐き出しながら、
「気を遣うと言えば…別に敬語で無くても良いんですよ」そう、切り出す。
彼女ともっと仲良くなりたいな、と考えただけなのだが
「いやいやいやいや!そんな、言えません、タメ口なんて!」
「ん、いや、タメ口と言うか、もっと気楽に喋ればいいよ。疲れない?」
「疲れません、楽しくお喋りできてます、大丈夫ですっ」
鼻息荒く否定されてしまった…
「そ、そうですか」
「あ、椎名さんこそ、敬語になってますよ♪」そう言って、いたずらっぽく笑う。
「紳士なもので、つい、癖が」つっこまれたので、ボケてみた。
「じゃあ、私は淑女ですねっ」そう返される。
「バイクを乗り回す淑女なんて聞いた事が無いぞ」言いつつ私はにやりと笑う。
「あ、女性批判!女性ライダー全員を敵に回しましたよ~!どうしますっ?」
「参った、降参だ」
「本当に?」
「ああ、本当、本当だよ、降参の印に…」
「印に…?」
「写真撮ってもいいですか?」
「ええっ!?なんでそうなるんですかっ?」
「だって可愛いから」
「そんな…」
そう言って恥かしそうに顔をうつむかせる。
今はフリーだと言っても、過去に恋愛の経験ぐらい何度かあるだろう。
だけど彼女は、まるで恋愛に慣れていない学生のような感じだった。
会社での凛としたイメージとはまるで違い、とても可愛いらしい。
まさか男とデートするの、初めてなんて事はないよな?
そんな考えを巡らしていると、
「あの、椎名さん」
「なんだい」
「椎名さんは…今まで何人の女性とお付き合いした事、あるんですか?」
「どうして?」
「だって…慣れてる、楽しいお話してくれるのも、嬉しい事言ってくれるのも」
世の男共がどうなのか知らないが、私が過去に付き合った女性は例の一人
だけである。ただ、長い事付き合っていたのだけは事実だ。
フリーになってから、付き合うまではいかずとも、色々と誘いも有るには有ったが
別にもてた訳ではない。女性に靡かない私が珍しかっただけなのだと自分では
思っている。だから、恋愛の経験は少ない方だと思う。
彼女こそ、随分もてそうなのに、長い事誰とも付き合っていないと聞いた。
その方が私からすれば不思議に思う。
ただ、この問いは私を悩ませた。恋愛経験豊富と勘違いしているという事は、
大人の男だと思ってくれてるに違いない。
今、いい雰囲気だし、年上の威厳も見せたいし、格好もつけたい。
そう考えると、正直に答えにくかった、そして止せばいいのに、
「そうだね…4、いや5人ぐらい…?」
と、変な見栄を張ってしまった。
「そうですか…ふふ、やっぱりもてるんですね、椎名さん」
そう言って笑う彼女は、どこか寂しそうだった。
「私はね、一人だけなんです…でも、6年、付き合ったんですよ」
ガーン、となった。
おいおい、それでは私とまるで同じではないか、何故詰らぬ見栄など張ったのか!
しかし今更嘘だとも言えぬまま…言葉を続ける彼女の話に耳を傾けた。
「大好きだったんだけど…自分勝手な人だったから、そのうち私、疲れちゃって…
だから、だから…スパーンッ!って思い切り叩いて振ってやりましたよ!」
そういって彼女は楽しそうに笑った。
ほっ、良かった、印象は悪くなっていないようだ。
「そうかぁ、でも、6年も付き合ったなら、別れる時、色々あるよな…長く付き合えば、
引き出しにしまった思い出が多いものだからね…大変だったでしょ?」
言ってしまって、しまった!と思った。安心した後もあって、つい、喋ってしまった。
彼女は瞳を大きく見開き、私を見詰める。
「すごいや…どうしてわかるんですか…?」
「いや、ただ、君より歳を食っているだけさ」と、すかさずフォロー。
「そうですよね…」 ハラハラ←私
「あの、椎名さん」 ドキドキ←私
「はい、なんでしょう?」思わず敬語。
「ありがとうございます」
「はい?」
「私、椎名さんといると落ち着きます」
「そ、そう、こちらこそありがとう」
「お食事、楽しみです♪」
⑧-3へ続きます
-
- 質問日時:
- 2013/3/26 21:04:32
-
- 残り時間:
- 7日間
-
- 回答数:
- 1
-
- 閲覧数:
- 18
-
- ソーシャルブックマークへ投稿:
- Yahoo!ブックマークへ投稿
- はてなブックマークへ投稿
- (ソーシャルブックマークとは)
回答
(1件中1〜1件)
★のんびりゆきましょう。
慌てなくてもだいじょうぶ。
あの娘はきっと微笑んで、うがい薬さんの独白を楽しんでいると思いますよ^^
-----------
あはは…おふたりの会話がすごく『らしい』ですね~^^
初々しくて、素敵なデートですね。
うらら
- 違反報告
- 編集日時:2013/3/26 22:38:57
- 回答日時:2013/3/26 21:17:01