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~空色の瞳⑧~ ただ、その美しさに目を奪われた。 ふらふらと、 引寄せられて...

ysasii_ugaigusuriさん

~空色の瞳⑧~

ただ、その美しさに目を奪われた。
ふらふらと、 引寄せられていった。
輝く何かを、間近で良く覗き込む。
そして気付く、その根源たる力に。


『経験値』


「少しまずかったかな?」

初デートの終わりに、キスした時の事を、一人振り返る。
いや、実際まずいだろうな、彼女は相当困っていたのだから。
私が強引に迫った為、最後は諦めて折れてくれた感じだ。
自分自身、その強引さに驚いたぐらいだ。
上手く言えないが…とにかく嬉しかったから、では理由にならないか。

その日、待ち合わせ場所の駅前に、一時間以上早く辿り着いた私は、
彼女が来る出あろう方向に顔を向けたまま、喫煙所で煙草をふかしていた。
今日の私の出で立ちは、いつものスーツではない。
黒のライダース、ジーンズ、エンジニアブーツである。
彼女の私服を見て来て気付いたのは、活動的な服を好むというところだ。
男っぽいとも言える。だからいつでも下はジーンズ、鞄も小さめ。
今はバイクに乗っているから、特にそうなのだろう。
本当は、もっとカジュアルな格好で来ようかとも考えたが、そんな彼女に
合わせてみたつもりだ。自分で言うのもなんだが、決まっている。

そうこう考えている間に、時間が過ぎ、待ち合わせの時間になった。
遠くから駅口の様子を覗うが、人波の中に彼女の姿はない。
一抹の不安に駆られながら10分ほど待ち続けた。
階段を下りて来る一人の背の高い女性…来た、彼女が。良かった!

で…私は背を向けてしまった。
だって…それはないでしょ!思わず額を押さえてしまっていた。
黒のカーディガン?ストール?大人っぽい紫色で花柄の膝上ワンピース、
大きめのトートバッグ、可愛らしいショートブーツ…という姿だったのだ。

いや、いい!凄くいいんだ!とても女性らしく素敵じゃないか!
だだだけど、ど~すんの、俺!?ぜんっぜんっ合ってないやんけ!!
思わず着替えに帰りたくなった…が、そんな時間などあるわけない。
諦めて、振り向き、彼女のもとへとロボットのように歩き出す。
近づくにつれて、髪型が目に入った。
ストレートだったはずだが、今日はくるくるの巻き髪にしてある。
まだ、私に気が付いていないようで、きょろきょろとしていた。
その毛先を不安そうに指先でいじる姿が、妙に可愛らしかった。
後数メートルといったところで、彼女は私に気付いた。

「おはようございます」
挨拶代わりに手をあげた私に、彼女は丁寧に頭を下げる。
「お、おはよう」デートなんだけど、と考えつつ私も挨拶を返す。
「あ、あの、随分待ちませんでしたか?私、いつも支度が遅くって…」
「いや、今来たところだよ、ちょうど良かったかな?」と、嘯く。
「そうですか…良かったっ」そう言ってにっこり笑う。

可愛いなぁ。大人びて見える彼女だが、そんな表情を見ると、
やはり若い女の子なんだよなと思う。
そんな彼女が、オッサンである私とデートなのだから世の中不思議だ。
「課長…素敵ですねっ!びっくりました!てっきりスーツで来るものかと…」
「まぁ、私服はこんなものだよ」そっちの方がマシだったと思いつつ応え、
「君こそ、あまりに素敵すぎて、こちらこそ驚いたよ」とそうスマートに付け加える。
「いやいやいや、そんな事ないですっ課長の方が何倍も素敵ですっ…!」
首を振りながら恥ずかしそうに少し下を向き、そう話す彼女。
多分、気を遣って言ってくれてるんだろうな、とは思ったが悪い気はしない。
それにしてもほとんど話した事ないとはいえ、随分緊張してるよなぁ。
会社の印象とは随分違う。ま、私の役が頭にあると仕方ないか。
緊張していたのは私も同様だが、そんな彼女を見てる内にほぐれてしまった。

「ま、ここで話すのもなんだし、行こうか?」
「は、はいっ課長っ」
「あの…その課長ってのは止めてくれる?今日はプライベートなんだしね」
「は、はいっ課長っ!あ!ごめんなさい…なんと御呼びすればいいでしょう?」
ぷっとなってしまった。どこまで固いんだか。
「はは、そうだなぁ…普通に、椎名さん、でいいんじゃないかな?」
「わかりました、椎名さん」
椎名というのは私の事だが、もちろん仮名だ。
後に、彼女から椎名桔平に似てると言われた事に起因する。
あんなに渋くはないのだが。

商店街のアーケードを歩きながら、他愛も無い話をする。
休日は何をしてるとか、好きな食べ物は何かとか。
しばらく話す内、緊張が解けたようで、返事する声が元気になった。
彼女はほんの少し私の斜め後ろを歩いている。
なので時折振り返りながら、話を続けた。
笑わせようと、話の節目に冗談を交えたりもする。
後ろから、彼女の楽しそうな笑い声が聞こえる。
笑顔が見れないのがもったいないな、と感じる事が多くなった私は、
「手を繋ぎませんか?」と切り出した。
「え、あ、でも…」
「はぐれたら大変だ、それとも私のベルトを掴みますか?」
ジャケットの裾を捲り上げ、おどけるようにベルトを見せた。
少し笑いながら「…繋ぎます」と、申し訳なさそうに手を差し出す。
「ありがとう」「いえいえ」
それから手を繋いで並んで歩いた。
不思議と心が安らいでいく。
私は…見つけたのかも知れない。

⑧-2へ続きます。

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回答

(1件中1〜1件)

 

anjelica119さん

椎名さん、こんばんは。

とても素敵なデートになりそうな気配ですね~^^

彼女の姿が浮かんできます。


うらら

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