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保存構想に手詰まり感 気仙沼の打ち上げ漁船・共徳丸

共徳丸をめぐり話し合う菅原市長(中央)と柳内社長(右)

 東日本大震災の津波で打ち上げられた宮城県気仙沼市の大型漁船をめぐる問題は24日、船主が4月にも解体準備に入る意向を伝えたことで、市などが望む震災遺構としての保存への道が一段と険しくなった。市は半年の猶予期間を求めたが、船主は解体の姿勢を崩さず、貸借契約の期限が今月末までに迫る中、構想に手詰まり感が深まった。

 「賛否が分かれる重いテーマだが、震災から2年を経た。いよいよ解体に向かうべきだと思う」
 24日、市役所応接室であった会合。市内の鹿折地区に打ち上がったままになっている大型漁船「第18共徳丸」(330トン)について、船主の儀助漁業・柳内克之社長(40)=いわき市=は冒頭、菅原茂市長や地元の自治会関係者、商工業者ら12人の地元関係者を前に解体の意向を伝えた。
 理由として、(1)市民の心理的な負担が大きい(2)維持費が掛かる(3)船は20年程度しか持たず、後世に伝える意義が薄い−などを挙げ、「解体を選んだのは当社。後世から批判されても、解体撤去の責任は当社が負わねばならない」と語り、揺るがない決意を示した。
 地元側出席者は全員、保存を望んだ。気仙沼商工会議所の臼井賢志会頭は「被災地からのメッセージは今後も必要だ。共徳丸の存在感は大きく、津波を体験しない後世の人々の教訓にもなる」と強調。畠山和純県議は「原爆ドームは当初、保存反対の声が多かったが、残したことでいまは世界平和に大きく貢献している。共徳丸も保存することで災害対策に活用させてほしい」と訴えた。
 これに対し、柳内社長は「昭和初期の津波と違い、今回は映像がたくさん残っている。映像を通しても津波の教訓を伝えていくことができる」「加害者がいる原爆ドームと津波で流された共徳丸とでは次元が違う」などと反論。議論は平行線をたどった。
 菅原市長は、復興交付金を活用して震災遺構にできるかを調査するため、半年の猶予を求めたが、柳内社長は「1年以上も考えた末の結論だ。所有する自分が(交付金の)申請に同意しない以上、事業化はない。そのために半年間も延長できない」と応じなかった。


2013年03月25日月曜日


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