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野外博物館 その未来に思いを巡らせて
3月22日 0時51分

野外博物館 その未来に思いを巡らせて

「野外博物館」とは何か。
歴史的な建物や道具などが屋外に展示され、昔の生活や文化を実感できるような施設で、通常の博物館や美術館とは少し異なった役割がありそうです。
そのうちの1つ、東京・小金井市の「江戸東京たてもの園」が開園から20周年を迎えることになりました。
経営や安全管理、そして魅力の発信。
担当者たちは、さまざまな課題を抱えながら、園の未来に思いを巡らせています。

江戸東京たてもの園とは

江戸東京たてもの園とは

江戸東京たてもの園は、平成5年3月28日に開園しました。
広さはおよそ7ヘクタール。
開発などに伴って現地での保存が難しくなった歴史的な建物を移築し、復元・展示しています。
この中には、映画「千と千尋の神隠し」に登場する「油屋」のモデルの1つになった銭湯=「子宝湯」や、二・二六事件で命を落とした当時の大蔵大臣・高橋是清の邸宅、それにいろりを備えた江戸時代の農家などがあります。
復元された建物のちょうど30番目に当たるのが西洋式住宅の「デ・ラランデ邸」で、このほど完成して、来月から公開されることになりました。
これで、園内の建物の復元は完了。来年度以降、どのように施設を運営していくのか。
たてもの園は、いわば第2ステージを迎えることになります。

野外博物館の歴史

野外博物館の歴史

たてもの園のような野外博物館の歴史、実はスウェーデンに始まります。
最初の野外博物館は「スカンセン」で、今から120年余り前の1891年(明治24年)に開設されました。
商店や郵便局、それに銀行など160棟の歴史的な建物が30万平方キロメートルの敷地に移築されています。
その中では動物が飼われていたり、ケーブルカーが走っていたりするほか、昔ながらの製法で作られたパンなどを食べることもできます。スカンセン以降、こうした施設を造ろうという動きは日本でもありましたが、なかなか実現しませんでした。
日本最初のものは、スカンセンから65年後に造られた大阪府豊中市の日本民家集落博物館です。
ダムの開発で水没することになっていた飛騨白川の民家の保存運動が誕生のきっかけとなりました。その後、愛知県犬山市の博物館明治村、神奈川県川崎市立の日本民家園などが次々とオープンし、それぞれの特徴や歴史を生かした運営を行っています。

たてもの園の課題は

たてもの園の課題は

江戸東京たてもの園に戻りましょう。
小林克園長は、大きく分けて園には2つの役割があるといいます。1つ目は、都市化が進む東京で消滅しようとしている貴重な歴史的建造物を保存し、後世に引き継いでいくこと。
2つ目は、現代の私たちにも、幕末から昭和前期にかけての人々の生活を実感し、学べる場所にすることです。
まずは、厳しい予算の中で建物を維持し、学芸員による研究活動なども進めて、新しく正確な情報を発信していかなければなりません。また、入場者数をどのように維持していくかも大きな課題です。
「千と千尋」が公開されたころには、それまでで最高の年間30万人を記録しましたが、その後、減少し、昨年度は20万人余りになっています。
園では、およそ200人のボランティアに協力してもらって懐かしい夏祭りを再現したり、紅葉のライトアップに合わせて夜間開園し江戸時代のいろりや明治時代のランプの明かりを体験してもらったりして今年度の入場者数は持ち直していますが、催しでの安全の確保と園の魅力向上の両立を図るために、いつも頭を悩ませているといいます。

記念シンポジウム

記念シンポジウム

たてもの園では、今月28日の開園20周年を前に、23日、「これからの野外博物館」と題した記念シンポジウムを開きます。
ここには、「スカンセン」を経営する財団の最高経営者が出席して文化財の維持とマーケティングのバランスをいかに取るかなどについて講演するほか、オランダの野外博物館の館長や日本の建築史の専門家なども出席してパネルディスカッションが行われることになっています。
小林園長は、「野外博物館をどのように維持し、“生きている博物館”としての楽しさを伝えていくのか。これからのヒントを学びたい」と話しています。

たてもの園の「路地」で

たてもの園の「路地」で

取材のとき、たてもの園の中をゆっくりと歩いてみました。
あまり目立ちませんが、建物と建物の間に昔ながらの路地が再現されている場所がありました。
そこには本物の鉢植えが並んでいます。
眺めていると、一昔前のタオルを首に巻いてうちわを手にしたおじさんや、じょうろで水やりをしているおばさんの姿が浮かんでくるようです。
これらの鉢植え、夏の暑いさなかにもボランティアの人たちが世話を欠かさないといいます。
屋内に展示品を収めている博物館や美術館では体験することができない。
野外博物館には、そこに関わっている多くの人たちが作り出す不思議な魅力が潜んでいるのかもしれません。

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