広島高裁が衆院選「無効」判決 戦後初3月25日 16時17分
去年の衆議院選挙で、選挙区ごとの1票の価値に最大で2.43倍の格差があったことについて、広島高等裁判所は「国会はおととしの最高裁判決で格差を是正する義務を負ったのに、区割りなどを改正しなかった。もはや憲法上、許されない」と国会の対応を厳しく批判し、広島県の2つの選挙区の選挙を無効とする判決を言い渡しました。
国政選挙を無効とする判決が言い渡されるのは戦後初めてです。
去年12月の衆議院選挙は、選挙区ごとの1票の価値に最大で2.43倍の格差がありました。
おととし最高裁判所が「憲法違反の状態だ」と指摘した前回、4年前の選挙よりも広がりましたが、選挙は同じ区割りのまま実施されたため、弁護士などのグループが「国民の意思を反映した正当な選挙と言えない」と主張して、全国の裁判所に選挙の無効を求める訴えを起こしています。
このうち広島1区と2区を対象にした裁判の判決が、25日に広島高等裁判所で言い渡されました。
判決で、筏津順子裁判長は「おととしの最高裁判決によって、国会は格差是正を優先的に行う義務を負ったのに、政党間で意見が対立し区割りの改正などを行わなかった。こうした審議の紛糾は、三権分立を採用した憲法で想定されていない事態だ。民主的な政治の選挙としてはゆがみが重大で、最高裁判所の違憲審査権も軽視されていると言わざるをえず、もはや憲法上、許されない」と国会の対応を厳しく批判しました。
そして、去年の選挙は憲法違反だと判断したうえで、広島1区と2区の選挙を無効とすることを命じました。
国政選挙を無効とする判決が言い渡されるのは戦後初めてです。
一方、判決は、直ちに選挙を無効にすると、この選挙区の議員がいない状態で選挙制度の改正が行われるなどの弊害が出るとして、去年、国会で小選挙区を5つ減らす「0増5減」の法律が成立したことを受け、政府の審議会が区割りの改定作業を始めてから1年となる、ことし11月27日に判決の効力が生じるという条件をつけました。
広島1区と広島2区
衆議院広島1区は、広島市中心部の中区・東区・南区からなる選挙区です。
去年12月の衆議院選挙では、合わせて4人が立候補し、現在、外務大臣を務める自民党の岸田文雄氏が当選しました。
衆議院広島2区は、広島市の西区と佐伯区、廿日市市、大竹市、それに江田島市の一部からなる選挙区です。
去年12月の衆議院選挙では、合わせて4人が立候補し、自民党の平口洋氏が当選しました。
「判決を非常に高く評価」
判決のあと、原告グループの1人、金尾哲也弁護士は広島市内で記者会見を開き「選挙無効というのは日本の憲法訴訟で史上初めてで、まさに画期的な判決だ。国民の投票価値の平等を図るのは本来、国会の仕事だが、それを国会が長期間放置したことに裁判所が厳しい判断を示したもので、今回の判決は非常に高く評価したい」と述べました。
首相「適切に対処したい」
安倍総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し、「判決をよく精査し、適切に対処したい」と述べました。
また、菅官房長官は、午後の記者会見で「1票の格差を是正する『0増5減』について、一日も早く成案を得るよう努めていきたい」と述べました。
また、衆議院の定数削減を含む選挙制度の見直しについて、「今の国会で、それぞれの政党・会派の中で懸命に取り組んでいるので、一定のめどがたてばいいと思う」と述べました。
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