MSN産経ニュース トップページ(ライト版)

PC版

MSN産経west

よど号犯関与の拉致 金総書記書簡受け実行か 勢力拡大、必要性説く

2013.3.25 08:01更新

 昭和45年3月、日航機「よど号」を乗っ取り北朝鮮に渡った元共産同赤軍派メンバーや妻らによる欧州ルートの日本人拉致事件は、金正日(キムジョンイル)総書記がメンバーらに下達した書簡を受けて実行された疑いがあることが24日、関係者の証言で分かった。書簡はグループの勢力拡大の必要性を説いていたとされ、よど号犯グループはその後、海外で日本人獲得に動いていた。

 書簡は、1978(昭和53)年5月6日に示された「日本革命に関する根本問題(56書簡)」。「主体的力量の準備」や「暴力革命の準備」などと記されていたという。

 関係者によれば、よど号犯グループのリーダーだった田宮高麿最高幹部(故人)は「主体的力量の準備」について、「(日本革命のために作った)自主革命党を発展的に成長させるため、メンバーを増やさないといけない」と話し、よど号犯メンバーの妻たちに欧州での日本人獲得を指示。書簡が出た翌年の79年から、妻たちは頻繁に欧州各国に出入りし、その後、よど号犯メンバーの行動も確認されるようになった。

 そのころ欧州では、大衆を巻き込んだ反核運動が盛り上がっており、メンバーらはオーストリア・ウィーンを拠点に、思想的に賛同した日本人を北朝鮮に連れて行ったケースもあったが、田宮幹部は関係者に「政治的思想が強くない、真っ白な人間が好ましい」と話したという。

 警視庁は、80年5月にスペインに滞在していた石岡亨さん=拉致当時(22)=と、松木薫さん=同(26)=をだまして北朝鮮に連れ去ったとして、よど号犯の妻の森順子(よりこ)(59)、若林佐喜子(58)の両容疑者を、83年7月には英国に留学中だった有本恵子さん=同(23)=を拉致したとして、よど号犯の魚本(旧姓・安部)公博容疑者(65)を、いずれも結婚目的誘拐容疑で国際手配している。書簡の「暴力革命の準備」について、田宮幹部は「自衛隊員によるクーデターなどの攪乱(かくらん)工作の準備」と説明したという。

                   ◇

【用語解説】よど号乗っ取り事件

 昭和45年3月31日、共産同赤軍派のメンバー9人が羽田発福岡行き日航機「よど号」を乗っ取り、乗客・乗員129人を人質に取り、北朝鮮行きを要求。その後、韓国・金浦(キンポ)空港で乗客を解放後、北朝鮮に渡った。リーダーだった田宮高麿最高幹部ら3人が北朝鮮で死亡したとされ、2人が日本などで逮捕され、その後死亡した。現在北朝鮮に残っているのは、小西隆裕(68)、魚本(旧姓・安部)公博(65)、赤木志郎(65)、若林盛亮(66)の4容疑者と拉致事件で国際手配されているよど号犯の妻、森順子容疑者(59)と若林佐喜子容疑者(58)。

  • シェア
  • 関連ニュース