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大阪市の中学校給食 利用伸び悩む

2013年3月22日

 大阪市の橋下徹市長が普及に力を入れてきた公立中学校給食の利用率が低迷している。給食か家庭弁当かを選べる選択制で昨年9月から45校で始まり、本年1月には97校に拡大したが、1月の利用率は11・2%。「おいしくない」との批判もある中、給食の意義をあらためて考える。

民間の事業者が調理し、弁当箱で各校に配送される給食

■おいしくない5割

 1月の利用率が26・9%と市平均を上回る市立昭和中(阿倍野区)では、1年生で利用率が高く、松山明校長は「小学校給食から時間がたっておらず、受け入れやすいのでは」とみる。ただ、両親が共働きという生徒(13)は「親が忙しいため利用するが、給食はおいしくない」と話す。

 大阪市教育委員会の調査では、給食の評判は芳しくない。昨年10〜11月に給食を食べ、回答した生徒では、「おいしい」10%「ふつう」41%に対し「おいしくない」49%。献立についても「良い」8%「ふつう」45%「良くない」47%だった。

 食中毒を防ぐため、おかずは低温で保存して提供する必要があるなど、改善困難な要因はあるものの、松山校長は「もう少しメニューを工夫すべき」と指摘していた。

■「食育」の観点

 市教委は、献立内容の試行錯誤を続けつつ、体格差などで変わる量については、変更可能な手法を検討中だ。

 しかし調査では、給食を食べたことのない生徒のうち、全員給食にならない限り利用しない割合は44%。その保護者も54%が同意見になるなど、利用率向上の壁は高い。

 問題は、全体の生徒が昼食を選ぶ際の基準。「野菜や肉などバランスよく入ったもの」を25%が選ぶ半面、「パンやおにぎり、ハンバーガーなどのファストフード」が最多の35%。「好きなおかずがたくさん入っている弁当」が27%だった。

 給食は、生徒に必要な栄養バランスを考えて市の栄養士が献立を作成。将来にわたって健全な食生活を実践できるようにする「食育」の観点が大きい。

■欠かせない要素

 大阪青山大健康栄養学科長の藤原政嘉教授は、学校給食で摂取できる栄養の重要性を車に例える。「肉や魚(タンパク質、カルシウム)」で「車体=骨や筋肉」をつくり、「コメ(炭水化物や脂質)」で「ガソリン=熱や力」を生み、「野菜や果物(ビタミン、ミネラル)」で「バッテリー=体の調子」を整える。「車は一つでも要素が欠けると動かないが、人間は無理をしてでも動くため体の調子を崩す」と強調。体内でためておけない栄養素は多く、3食決まった時間に食べるのが重要だという。

 利用率向上に向け▽小学校の授業で給食を選ぶ意義を教える▽献立の改善と、より食欲のわく食器の提供▽広報の改善と申し込み手続きの利便性向上−を対策に挙げる。

 9月には全128校で導入予定の給食。2013年度以降は各区長が全員給食にするかを決めていくが、その判断力が問われる。