学校の給食は楽しいひとときのはずだ。だが、アレルギー症状を起こす食材を間違って食べてしまう事故がなくならない。死亡事故も起きた。子どもたちの命を守るには周囲の理解と知恵が大切だ。
三十三万人。乳や卵など特定の食材へのアレルギーを抱える全国の児童・生徒数だ。文部科学省が二〇〇七年に公表した。
クラスに一人はいる率になる。子どもたちにとってもそんな友達は身近な存在だ。
昨年十二月、東京都調布市の市立小学校で、五年の女子児童が食べてはいけない粉チーズ入りのチヂミをおかわりで食べてショック症状を起こし亡くなった。
今年一月には兵庫県西宮市の小学校でも、卵のアレルギーがある児童百三十二人が卵白を使ったチーズケーキを食べ、うち十人が体調を崩した。
日本スポーツ振興センターの調査では、給食が関係するアレルギーの健康障害は〇八年度までの四年間で八百四件あった。
調布市教委の検証委員会が今月十二日、今回の事故の検証結果を公表した。
女子児童には症状を起こす食材を抜いた除去食を調理員が手渡していたが、その際、何が除去食か明確に説明しなかったようだ。それが分かっていればおかわりしなかっただろう。おかわりの際、担任は食べていいかどうかを一覧表で確認しなかった。女子児童が不調を訴えた際、ショック症状を和らげるエピペン注射をすぐにしなかったことなどを指摘した。
人はミスをする。個人だけに責任を求めても解決しない。学校は、一人がミスをしても二重三重に誤食を防ぐ仕組みを考えてほしい。文科省は参考になる取り組み例を積極的に紹介すべきだ。
誤食後の危機管理も求められる。調布市の事故ではエピペンの使用が遅れた。誤食から四十五分以内に医師の治療を始める必要があるといわれる。現場には危機意識をどう持つか点検してほしい。
実は事故の防止には、命にかかわることもある疾患への周囲の理解が重要になる。牛乳パックのストローからの飛沫(ひまつ)が皮膚に付いて発症する子もいる。給食の原料を知ることも疾患と向き合う友達の命を守ることにつながる。
給食は〇八年の学校給食法改正で、食育として教育の一環に位置付けられた。アレルギーのある児童も一緒に給食を食べるなかで子どもたちは学ぶ。大人にはその大切な時間を守る責任がある。
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