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福島原発事故収拾が破綻している現状に気付け

 水漏れしている木桶の目に見える穴だけふさぐ対症療法で2年を費やしてきた、福島原発事故収拾の破綻を示す警鐘が鳴らされました。海への放射能流出が続いており17兆ベクレルにも達するとの試算が出たのです。もっと根本的な問題として、政府の側に事故収拾の全体像を考える「ヘッド」が存在していません。新たに出来た原子力規制委は原発の新安全基準策定に手一杯です。第三者の警鐘が鳴っても事業者である東電にすべて任せる、東電が無視すれば警鐘の意味さえ消えてしまう現在の枠組みの異常さを、政府は自覚すべきです。

 東京新聞の《セシウム17兆ベクレル流出か 原発港湾内濃度から試算》は「汚染水の海への流出が止まったとされる2011年6月からの約1年4カ月間に、計約17兆ベクレルの放射性セシウムを含む汚染水が海に流れ込んだ恐れがあるとの試算を、東京海洋大の神田穣太教授がまとめた」と伝えました。

 原発の港から国が定めた基準値の7400倍、1キロ当たり74万ベクレルの放射性セシウムを持つ魚が採れたことを契機に盛り上がった議論です。しかし、既に昨年3月に書いた「放射能海洋流出は止まず:自分に甘い東電に任すな」で福島沖で採れる底魚アイナメのセシウム量が高止まりしている事実をグラフ化しています。流出が止まれば下がっていなければなりません。

 溶融した核燃料を冷やした汚染水が貯まっている原発建屋の地下と、地下水脈が継っている事実は東電も認めています。ところが、東電は「地下水が流入して汚染水が増えて困る」とするだけで、汚染水が地下水脈から流出する恐れを認めようとしません。新たな高汚染魚が見つかっている事実は東電の勝手な解釈を否定するものです。膨大な放射能流出継続は必ず国際的な非難を浴びることになります。海への流出を防ぐ遮水壁建設を急ぐしかありません。

 炉心溶融を起こした1〜3号機を最終的にどのように処理・処分するのかも依然として不明です。米国スリーマイル島原発事故の処理に習って溶融燃料を除去しようと考えているようですが、原子炉圧力容器内での溶融で済んだ米国と圧力容器の底が抜けた今回とは全く別物です。1〜3号機の格納容器は放射能漏出を遮断できないほど高温になったのですから、あちこちの継ぎ目に穴が開いたはずです。格納容器に水を満たして分散した溶融燃料を回収する方針そのもの見直す必要があります。汚染水が増え続けて収容タンクの増設に追われている東電に、将来を考える余裕は無いでしょう。電源盤の故障、冷却系停止の危機といい、行き当たりばったりの東電に「すべて丸投げ」の現状を変えねばなりません。

 【参照】インターネットで読み解く!「福島原発事故」関連エントリー


中国になお無償援助、国内報道しない人民日報

 もう終わっていると考えていた中国への無償援助が続いていると人民日報日本語版が伝えました。人民日報ウェブを検索すると、中国国内報道はされていません。メディアを使った詐術をいつまで続ける気でしょう。中国側でどこまで意図的に操作されているのかは知れませんが、3兆円を超える有償援助を含めた対中ODAの存在が中国国民から隠されてきたのは事実です。尖閣列島をめぐる対立が険しい中で見つけたこのケースを追ってみます。人民日報日本語版に3月15日掲載の「日本、陝西省の医療環境改善を無償援助」が問題の報道です。


 場所は西安の南300キロほどの安康市白河県、山に囲まれて袋小路になった地区にあり老朽化した茅坪中心衛生院(診療所)が援助対象です。「日本が無償で提供する11万ドル(約1058万円)の援助資金は、同衛生院の医療・技術棟建設に充てられる。完成後は、現地の医療環境が改善され、住民の医療水準が大きく向上する見込み。人民網が報じた」

 「人民網が報じた」に引っ掛かりを感じて「人民網検索ページ」に行きました。記事を見つけるのに確実な方法はピンポイントの固有名詞を使う方法です。「茅坪」を入力すると1857件がヒットしました。この中に「日本」を含む記事があるのか――43件がヒットし、無償援助プロジェクト調印の記事はありません。しかし、昨年11月に陝西省の担当者が日本大使館援助を受ける下調べに茅坪中心衛生院を訪れた記事はありました。中国国内向けに援助調印記事が存在するならば、この検索方法で発見できることを示しています。

 日本大使館援助とあるので「在中国日本国大使館」に行くと「草の根・人間の安全保障無償資金協力(概要)」がありました。2011年度分までしか実績が表示されていませんが、実は2012年度も継続中でした。外務省の対中ODA無償資金協力ページでは2009年以降は留学のための人材育成奨学計画が並んでいるだけです。外務省はどうして国内向けのページで隠しながら、こそこそ無償援助を続けるのか、疑問でなりません。

 気になって調べると、昨年3月16日付の中国網日本語版「日本、湖南省への無償援助プロジェクト調印式が挙行」もありました。しかし、これも中国国内向けは発見出来ません。たまに日本語版ニュースでだけ援助を伝えるのは日本国大使館へのサービスでしょうか?

 山奥の財政難の寒村に医療援助をするのが無駄とは言いませんが、「2011版中国の対外援助白書(全文)・付録3 中国・アフリカ協力フォーラム北京サミットで中国政府が発表した8項目の措置」などを読むともう自国のことは自分で始末しなさいと言うべきです。「アフリカのために30ヵ所の病院をつくり、3億元の無償援助を提供することで、アフリカのマラリア対策の支援に協力し、アルテミシニンの提供および 30ヵ所のマラリア対策センターの設立に用いる」

 2005年に書いた「反日デモ始末に苦渋の続きを思う」で、ある理工系知日派の対中ODAへの複雑な思いをこう伝えました。

 《1月20日付の「対中ODA議論で思うこと、『感謝』は意味あるか?」は3兆円にのぼる対中国の円借款を数年前まで知らなかったと記している。今では「北京の地下鉄に乗る時に『円借款のお陰』」とも思えるようになったが、「北京首都国際空港の玄関の前に『この空港の建設では円借款を使っていた』と書いた看板を掲げたらどういう光景になってしまうかも想像してみた。多分、この看板を見た中国人乗客は、豪華な天井から、戦争によって死んでしまった先人の悲しみ恨む目が見えてくるような感じがするかもしれない」と述べている。その上で「中国人の屈辱感」を長引かせるODAは廃止してよいと考える》

 実質的な戦後賠償として続いてきた対中ODAで、中国国民感情の融和が出来なかった以上、安易な援助継続は日本側の国民感情をさらに悪くします。中国の政治家が対中ODAに触れるケースが増えたと言われつつも、今回の人民日報のおかげで相変わらず国民一般向けには報道できない「タブー」で在り続ける実態が明らかになりました。

 【参照】インターネットで読み解く!「中国」関連エントリー


割り箸本格削減が日中の環境汚染改善を助ける

 終了した中国全人代で、中国の割り箸生産が年間800億膳にもなり自然環境への負担が大きいとの発言に注目です。中国にもともと割り箸使用はなく日本向け輸出箸の低級品が国内に流れ大量消費を招いてしまいました。日本の年間輸入221億膳の98%分を含めて、中国の森林伐採などで製造されている計算です。木を切るのは中国の勝手と割り切れない事情があります。春に中国から飛んできて悩ませられる黄砂は森林伐採で大地が裸になる結果、年々、酷くなっているからです。日中で知恵を絞って割り箸使用を本格的に削減できれば、環境汚染改善に間違いなく役立ちます。

 中国からの報道「中国で大量消費される割り箸、自然界の大きな負担に―香港紙」はこうです。《吉林森工集団(グループ)の柏広新(バイ・グアンシン)会長によれば、中国で生産される使い捨ての割り箸は年間で800億膳にものぼり、「標準的なサイズの割り箸を並べると北京市の天安門広場が360個分埋め尽くされる」とされる》《中国の国土面積に占める森林面積の割合「森林率」は20.36%で、世界139位。1人あたりの平均森林面積は0.145ヘクタールであり、世界平均の4分の1に過ぎない。柏氏は「使い捨ての割り箸による自然界への負担を解決するには1人1人が自然の浪費をやめてマイ箸を持ち歩くことと、割りばしに替わる代替製品を開発する必要がある」としている》


 「木づかい.com」のウェブ《日本の森林を育てる「国産材割り箸」》から「割り箸の輸入量・国内生産量と国内工場数の推移」グラフを引用しました。日本国内の割り箸生産は21世紀に入って縮小してしまい、中国からの輸入が大半になりました。日本国内で造る6億膳ほどは《本来は捨てられる住宅・家具等の端材(=はざい:必要な部分を切り取ったときにできる余った木片など)や間伐材を有効活用して作られるため、国産の割り箸と「森林破壊」や「はげ山」などの問題とは次元が違います》と言えます。

 ところが、中国では森林をごっそり皆伐して割り箸を造ることが多いのです。最近はロシアやモンゴルから木材を輸入するケースも増えているそうですが、そこでも違法な伐採が行われています。加えて、日本では割り箸消費が下り坂になっているのに、中国では増加の一途です。2006年は450億膳だったのに580億膳にまで消費が増えた計算です。

 「日本の割り箸使用量は、年間227億膳。莫大な数字に見えますが、年間227億膳に要する木材は、日本の年間木材利用量の0.3%にしかなりません」「年間木材利用量は、外国産材を含む木材供給量7797万立方メートル」を手がかりに中国での割り箸生産が森林伐採に占める割合を出してみます。7797万立方メートルの0.3%は23万立方メートル、800億膳分なら82万立方メートルになります。2003年の数字しか見つかりませんが、中国森林伐採量は1215万立方メートルであり、その6.7%が割り箸生産分と無視出来ない割合です。

 大気汚染・重篤スモッグの深刻化をうけて北京市が「首都青空10年行動計画」を打ち出しました。黄砂を防ぐための植林計画も含まれています。木を育てる時間の長さを思えば、木を切らない方が遥かに有効です。中国に割り箸を広めてしまった日本として、なんとか知恵を出したいものです。

 中国では森林と関係する紙資源も大きな問題です。第197回「続・失敗国家ランクと紙消費量のぴたり」で年間1人当たり紙消費量が「2008年は中国が59.1キロと、世界平均57.8キロを初めて突破した」と紹介したばかりなのに、2011年は72.4キロと経済発展で3年で22%も増やしました。人口の大きさから紙資源危機を招く恐れが強いと考えられます。


抜本策無しと露呈するばかりの中国環境汚染

 北京をはじめ中国広域でおきた大気汚染・重篤スモッグを経て日本の国会に当たる全国人民代表大会が開催されていますが、報道を見ると環境予算の12%増額が発表されただけで抜本策無しと露呈するばかりです。国民の不満が爆発するところまで経済成長の暴走列車は止められない雲行きです。《環境保護に10年で62兆円投じるも効果なし、地方政府・企業の捏造や隠蔽が元凶―中国》(Record China)と伝えられているのですから、環境予算を多少増やすことが何ほどの効果を生むか、結果は既に分かっています。市民が頼るべき環境司法がほとんど機能していない点も第346回「『がん村』放置は必然、圧殺する中国の環境司法」で紹介した通りです。

 62兆円がどのように投じられたのか不詳ですが、《企業の捏造や、一部の地方政府が国内総生産(GDP)を上げることだけに心血を注ぐ旧思考で保護主義を誘発》《多くの環境保護設備は「眠っており」、設備があっても汚水は別の管からひそかに排出したり、検査が入る時だけ設備を起動させたりするなどの裏工作もまかり通っており、検測データが本来のデータと異なってしまう》《全人代ですでに30以上の環境保護法を制定したにもかかわらず、それらが定着していない》との状況です。公徳心が国民規模で欠けていると指摘できます。

 全人代代表のひとり《「GDPと健康どっちが重要?」、このままでは数年後にガン患者が激増―中華医学会会長》(Record China)の訴えが悲痛です。「国内総生産(GDP)と健康、どちらが最も大切か。真剣にこの問題を考慮しなければならない時となっている」「以前は、環境問題はまだ先の話で、配慮を加えればそれでいいと考えられていたが、今は配慮などという悠長な問題ではなくなっている。国民の基本的な生活要素が脅かされており、環境問題は危機的な問題となっている」

 全人代と並行する全国政治協商会議でも議論は熱かったと報じられていますが、焦眉の急にあるべき北京市当局が「首都青空10年行動計画」といったのんびりした構えです。「北京五輪では何とか青空に出来た」との成功体験を会見で持ち出すのでは、記者側が怒って当然です。北京五輪期間中だけクルマの半数を使用停止にして乗り切ったのでした。あの時代に比べると自動車の保有台数は全国で倍増しています。

 経済産業研究所の《深刻化する中国における大気汚染― 露呈された「環境を犠牲にした成長戦略」の限界 ―》によると、中国政府は2006年の第6回全国環境保護会議で、経済成長一本やりを止めて環境保護重視を打ち出していたそうです。「政府のこうした強い決意にもかかわらず、環境対策は、総論賛成・各論反対という壁にぶつかり、所期の効果を上げるに至ってない」のは地方政府や企業の抵抗があるからです。「中国も、マスコミや民衆に一段と大きな自主権を与え、民間の力を環境対策にもっと生かさなければならないだろう」との主張は正当です。しかし、言論の自由を与える方が怖いと中国指導部が考えているのも間違いありません。やはり『中国は終わった』と言って、目を覚ましてあげるべきです。