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生への希望をIT技術に託して
3月24日 20時52分

生への希望をIT技術に託して

インターネットやメール、そして文字入力。難病やけがなどで体が不自由な人にとって、ITは自分の生活を支えるために欠かすことのできないものになっています。
24日、東京で「ITパラリンピック」という催しが開かれ、最新の福祉技術などについての紹介が行われました。

この催しは、難病の患者や重度の障害者を支援しているNPO法人「ICT救助隊」などが開いたもので、東京・千代田区の会場には、およそ250人が集まりました。
まず、国立病院機構新潟病院の中島孝副院長が、現在、臨床試験が行われているロボットスーツについて紹介しました。
このロボットスーツは、両足に装着するもので、患者が体を動かそうとするときに皮膚の表面に流れるごく弱い電気信号を検知して動作を補助します。さらに、このスーツを利用しながらリハビリを行うことによって、患者の筋力が徐々に改善することも期待されています。

ほとんど動かない右腕が意思を伝える

ほとんど動かない右腕が意思を伝える

日本ALS協会の岡部宏生副会長は、ロボットスーツの技術を応用した文字入力装置の実演を行いました。ALS=筋萎縮性側索硬化症は、徐々に全身の筋肉が動かなくなる難病です。
岡部さんの右腕はほとんど動かず、スイッチなどを押すこともできません。しかし、電気信号を検知する電極を右腕に貼り付けて、文字を1つずつ選び出す装置を使うことで、自分の意思を伝えることができるようになりました。
会場では、岡部さんが「私たちは夢の架け橋を渡り始めました。動かない右腕で操作しています。みなさん一緒に頑張りましょう!」と入力した文章がモニターに映し出され、大きな拍手が起きていました。

体が不自由でもゲームを楽しみたい

体が不自由でもゲームを楽しみたい

このあと行われたのが、ゲーム大会です。
脳性まひやけい椎損傷などで体が不自由な人たちが出場し、それぞれの障害に合わせて工夫したスイッチを使って、太鼓をたたくようにして楽しむゲームの得点を競いました。
出場者のうち、ALS患者の大神和子さんは、支援団体に支えられながら山口県下関市で1人暮らしをしています。
日頃から、同じ病気の人たちに元気になってもらいたいとブログなどを通じて情報発信している大神さん。24日は、介助の人たちと一緒に上京してリズムよくスイッチを押しました。
大神さんのスイッチは、それほど力を入れなくても押せるようになっています。
会場では、ゲームを通じた会話や笑いも生まれ、新たな情報交換の輪も広がっていました。

「自分で遺言でも書けたら最高」

「自分で遺言でも書けたら最高」

出席者の中に、日本ALS協会の前会長・橋本操さんの姿を見つけました。32歳のときに発病した橋本さんも、ことし還暦を迎えました。
全国の患者たちに生きることの大切さを訴えながら、国との交渉や組織作りを進めてきた橋本さんにとって、IT技術とはどんな意味を持つのか、改めて聞いてみました。

笑顔と共に返ってきた答えは「私たちはITに頼るしかない。自分で遺言でも書けたら最高」。

私たち一人一人も、いつ病気や事故で体が不自由になるかもしれません。そうした状況でも、ITを利用すれば「自分自身の意思」を伝えることができる。
科学技術のさらなる進歩を待ち続ける橋本さんのことばに、重みを感じました。

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