~ Literacy Bar ~

ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
時事、徒然、歴史、ドラマ、アニメ、映画、小説、漫画の感想などをスナック感覚の気軽さで書き綴るブログです。
※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。


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甲斐享「痛痛痛! もうしないから! 判った判った! 本ッ当!」

杉下右京「いいえ! 君は信用できませんね! いらっしゃい! 廊下で少し頭を冷やすといいでしょう!」

甲斐享「アンタは先生かよッ!」

杉下右京「よもや、しないとは思いますが、腹だち紛れに扉を蹴飛ばすような子供じみた真似はやめて下さいね!」

甲斐享「……しませんよ、そんなこと」

杉下右京「結構」ピシャッ


えぇと、今年の三月に三代目相棒の妄想記事 で、杉下とのギスギスした師弟関係を希望していましたが、


誰が変人先生と現代っ子生徒のコンビで『熱中時代』のリメイクをやれといった。


しかし、水谷さんの先生っぷりは久々に見たが、カイトへの叱り方が板についている。流石に北野先生は伊達じゃない。


今夜から始まった『相棒11』。

初回は三代目相棒の甲斐享と杉下の邂逅が主題でした。言い換えると謎解きそのものは凡庸な出来でした。序盤でカイトが現場を目撃した段階でだいたいの事件の構図が予想できましたね。そのあとの推移もほぼ予想通り。小日向を殺害したのが根津という論拠も銃声の差異という殆どの視聴者には判別不能判のオチ。これは反則。二度の銃声に間隔があり過ぎたことのほうが状況証拠としては有力じゃないのかなぁ。本当に三井が小日向を撃ったのであれば、即座に射殺する隙と口実ができる筈ですしね。ミステリというよりもサスペンスの構成でした。『相棒』お得意の社会派視点も今回はお休み。領事館という現代の聖域を舞台にしたサスペンスという点でも古畑任三郎の『すべて閣下の仕業』に先を越されていますしね。そういえば、あの事件の被害者は神戸君だったな。

一方で杉下とカイトの出会いは面白おかしく観ることができました。今回は完全にエンタメ志向でしたね。ちょっと不思議なのはカイトと一緒にいると杉下が意外とまともな大人に見えることです。これは亀山や神戸の時にはなかった現象。能力は兎も角、人間性という点では亀山も神戸も完成されていましたが、カイトは明らかに未熟で青臭い若者ですから、相対的に杉下がまともに見えるのでしょう。決して杉下が大人になったわけではないと思います……が、冒頭で茶化したように&先述の記事で希望したように&劇中で名指しでカイトを特命係に招聘したように、今回の『相棒』は杉下がカイトに自らの思考を伝える役目を背負っているのかも知れません。まぁ、単純に一人で寂しいという可能性もありますが。


以下は気になった点を箇条書き。


甲斐享。

相棒らしからぬ未熟で青臭い若者です(陣川は人間性に欠陥があるだけです)。しかし、一昔前の刑事ドラマではよく見かけたタイプですね(仇名で呼ばれたりとかもね)。『踊る大捜査線』が創造した新しい刑事ドラマのテーゼを完成させたのが『相棒』だと思っていますが、そこに敢えてクラシカルな若手刑事をもってくる。このギャップがどう作用するのかに期待します。

尚、坊ちゃん育ちの影響か否か判りませんが絶対音感の持ち主。これは亀山の隠れた才能である絶対味覚とタメを張る設定。どちらが優れているかは一概にはいえませんが、事件捜査に関してはカイトのほうが有利かも知れない。何にせよ、捻ているようで正義感が強くて、でも、それをストレートに表に出さないという古いタイプの現代っ子ですね。


笛吹悦子。

カイトの恋人。中の人が元ヅカの女優さんで、劇中設定がキャビンアテンダントとかカイトの奴、マジでモゲロと思った。結構親密ぶりが描かれていたので、これ以降も再登場の可能性は高いですが、新聞記者~フリージャーナリストという便利キャラの奥寺美和子のように本編に絡めるのは難しいと思う。それとも今季は海外ロケが増えるのか。しかし、相棒のスタッフは本当にヅカが好きだよなぁ。


内村完爾「香港といえども公邸内は我が主権が及ぶ場所。つまり、日本ですよ。不可侵権を放棄するようなことには賛同できませんな」


刑事部長が久々に正しいことをいった。明日は桜田門に雪が降る。


三浦信輔「では、小日向詠美さん。お話を聞かせて頂けますか」

小日向詠美「宜しくてよ。でも、その前に、お電話いいかしら?」



電話の相手はカイトの親父で警察庁次長の兵ちゃん。遠回しに『アンタの息子の所為で酷い目に遭った。外務省からの圧力は覚悟しておけ』と嫌味を吐きつつ、捜一の面子に自分と警察庁トップとの関係を誇示して優位を確保する。儚げに見えて、実に強かで艶やか。賀来さんがキャスティングされた意味が判りました。今季のラストとかで再登場しないかなぁ。


大河内春樹「杉下警部自らが(甲斐享を)指名したという噂を聞きましたが、本当ですか?」

杉下右京「えぇ」

大河内春樹「そうですか。私も驚きましたが、神戸は腰を抜かしていましたよ」

杉下右京「神戸君に『お大事に』と伝えて下さい」


そりゃあ、そうやんなぁ。

神戸の奴は杉下と組まされてから一年経って、漸く『特命係へようこそ』といわれたんやしなぁ。まぁ、杉下が神戸が配属された裏の事情に勘づいていたからかも知れませんが、それにしても、杉下のほうから相棒を指名するとか……亀山が聞いたらサルウィンから帰国してきてもおかしくないな。


甲斐峯秋「今回の君の行動について批難の声があるのも事実だ……が、私は無下にスタンドプレイを排除する気はないよ」


内村完爾「甘い」


甲斐峯秋「いや、むしろ、優秀なスタンドプレイなら、ある程度必要だと思っている」


大河内春樹「甘い」


甲斐峯秋「うまく使えば硬直した組織のいい刺激になるからねぇ」


長谷川宗男「甘い」


甲斐峯秋「つまり、僕は君におおいに期待を寄せているということだよ」


小野田公顕「甘い」


明らかに杉下右京という人間を見誤っています。

杉下は警察という組織がどうなっても知ったこっちゃないんですよ。只管に真実を追求することが目途なんですよ。そんな人間を組織の活性化に使おうとか、ある程度のスタンドプレイは歓迎だとか、認識が甘いにも程がある。杉下に思い通りにスタンドプレイをさせたら警視庁は半日、警察庁は一日、日本政府は三日でスキャンダルの海に沈没すると思う。小野田がいっていたように杉下は飼い慣らせない。常に飼い殺し状態にしておいて、時々、リスクを承知で利用するしかないんです。カイトの親父、兵ちゃんがキャスティングされたわりには意外に小者かも知れません。


杉下右京「こう見えて僕は被疑者をいたぶるのが得意なんですよ」


亀山薫「知ってた」

神戸尊「知ってた」

陣川公平「知ってた」

小野田公顕「せやな」


つーか、視聴者が一番知ってた。少し考えれば誰でも判る。いちいち、ドヤ顔で宣言しなくても宜しい。


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