WEDGE REPORT

サイバー戦争に勝てるか 日本人ハッカー養成現場
WEDGE10月号フリー記事



WEDGE編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 この番組はサイバー戦争について取り上げたものだが、その一シーンで、中国人民解放軍情報工科大学が作成したソフトを使用して、米国の大学にサイバー攻撃を仕掛ける場面が映された。この大学の学生は中国国内で禁止されている宗教団体「法輪功」のウェブサイトをかつて運営していた。

※中国の政府系専門チャンネルのウェブサイトで番組を視聴することもできたが、すでに削除されている。問題のシーンや詳細についてはエフセキュア社のブログ(http://www.f-secure.com/weblog/archives/00002221.html)で紹介されている。

 いくら国家間でサイバー空間における攻防が繰り広げられても、攻撃を仕掛ける側、守る側、いずれも担うのは「人」である。日本でもせっかく芽が出はじめたサイバー人材の発掘と育成だが、問題はその先。つまり国内で彼らが活躍する場があるかどうかだ。今まで紹介した天才たちも、日本で必要とされていないと感じれば、やがて海外に出て行ってしまうことも考えられる。

すでに頭脳流失は始まっている

 IPAが発表した『IT人材白書2011』によると、突出したIT人材の必要性を感じると答えた企業は、まだ5割程度。必要性を感じている企業ですら、その約3割は「魅力ある職場環境の提供が困難」、「適切な処遇が困難」、「彼らをマネジメントできる人材がいない」と採用後の職場運営の難しさを嘆くばかりだ。採用される側も「大企業になるほど、1次面接で落とされる」と企業側の姿勢に不満を漏らす。

 政府も白書などでサイバー空間における脅威を指摘するだけで、具体的にサイバー人材の活用法には一切触れていない。前出の福森氏も『平成23年版防衛白書』について、「サイバー攻撃対処のため最新技術の研究に取り組むという内容の文言が記載されているが、具体的なことは何も書かれていない」と指摘する。有事に優秀な人材を確保しようと思っても、日本を守るサイバー戦士は日本国内にいないかもしれない。

 ある専門技術者は言う。

 「海外から様々なお誘いがある。来年ぐらいそろそろ外国に引っ越そうかな」

◆WEDGE2011年10月号より

 



 

 

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