特集ワイド:迷ってこその渋谷 「変わる若者の街」を歩いた 線路地中化に超高層ビル…「路地裏のパワー」どこへ

毎日新聞 2013年03月18日 東京夕刊

将来、ここから見える駅舎の姿はがらりと変わる=渋谷駅前のスクランブル交差点で、小国撮影
将来、ここから見える駅舎の姿はがらりと変わる=渋谷駅前のスクランブル交差点で、小国撮影

 日本を代表する若者文化の発信地、渋谷の街が大きく変わりつつある。昨年は複合ビル「渋谷ヒカリエ」が開業、16日には東急東横線渋谷駅が地中化され、東京メトロ副都心線に乗り入れた。2020年には超高層の駅ビルが建つ。いったいどんな街になるのか探ってみよう、と地図片手に張り切って出かけてみたのだが……。【小国綾子】

 困った。駅の反対側に行きたいのに同じ場所をぐるぐる。坂道を間違えて遠回り。路地裏はまるで迷路のようで、ビルの4階を歩いていたはずが地上1階に出たりする。

 だいたい駅からして「迷宮」だ。地上3階、地下5階の8層構造。改札や階段を一つ間違えただけで目的地に行き着けない。この駅ではいつもさまよっている気がする。

 「迷い迷って渋谷駅」という本を出版したばかりの昭和女子大環境デザイン学科准教授、田村圭介さんは「迷いやすいのは各路線のホームが並行ではなく、イレギュラーに立体交差しているため」と説明する。16年前から渋谷駅の構造や歴史を調べ、立体模型に変化を刻み続けてきた。研究の出発点は「建物構造が専門の自分にさえ全体像がわかりにくい。なぜだろう?」という素朴な疑問だった。

 田村さん直伝の渋谷駅の歩き方は「地下で迷ったらまず地上へ」「地上では高い場所から空間把握を」。地下は方向感覚が働きにくいので、案内表示を頼りに地上へ。また「アイレベル(目の高さ)での街の構造の把握が難しい」(田村さん)ため高い場所から周辺を見下ろし、方向感覚を取り戻すのが効果的なのだ。

 助言に従い東口歩道橋に上ってみた。頭上の首都高をトラックが走る。目の前を電車が、歩道橋を人が行く。真下の地上ではバスと車と人が行き交う。さらに見えない地面の下では、人と電車に加え、地下化された川も流れているはずだ。すごい多層構造。

 思えば街自体が、ハチ公広場前のスクランブル交差点みたい。地下から空まで道路や線路、水路が多層的に四方八方から交差する巨大な「立体スクランブル交差点」。それが今の渋谷だ。

 田村さんは言う。「渋谷駅が迷いやすいもう一つの理由は、利用者の増加に合わせてつぎはぎのように建て増しを繰り返してきたから。けれども、そこが面白い。人の流れを包み込むように増殖を繰り返した渋谷駅は、まるで生命体。最近『渋谷が変わる!』と騒がれていますが、渋谷駅は128年間、つまり東京駅よりも長い歴史の中でこれまでも常に変わり続けてきたんです」

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