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【男子】
モスクワで時差調整をしながら早めにソチに入った高橋大輔は、体も動くようになってきた。曲をつかむのもうまく、他の選手を引き離す勢いで、彼ならではの演技はいつみても飽きない。今季SPの曲は「ロックンロールメドレー」。やっと曲想をつかんで自分のものにし、見せ場を作ってきたように思える。心配された4回転トーループは流れがあったように感じた。赤いジャケットを着ながらのジャンプは立派なものだった。92・29点という得点は彼のシーズンベストで、文句なし1位で発進した。
フリーは大輔の得意な分野の曲探しだった。序盤の4回転トーループで転倒、続く4回転トーループに3回転トーループを付けリカバーしたかに見えたが、第2ジャンプが回転不足だった。落ち着いているように見えたが…トリプルアクセルのランディングも今一つで減点。2度目のトリプルアクセルを氷上に手をつけ、最後の2つのジャンプは回転不足のように見えたが、ここはセーフ。
スピンなどは大輔らしいアレンジ。ステップはお手の物、しかし、何か盛り上がりに欠けているように感じた。もっと、観客に訴えるモノが大輔にはあると思うのだが…。フリー3位も総合1位。初めて日本男子がGPファイナルを制した。先輩選手として、一つ株を上げた形で前半の大会を閉めた。
羽生結弦のブルースは、少しずつ自分のものになってきた。しかし、今日は全ジャンプに体の傾きが見られた。何とか2つ目までのジャンプ要素はクリアしたものの、3つ目のコンビネーション(4回転ルッツ+3回転トーループ)の第2ジャンプで転倒し大きく減点。全体のプログラムは昨季とは違って洗練された感じがある。その粋な感じを存分に見せてもらいたかった今回のSPだった。3連続95点台をマークすることは出来なかった。3位ながら、上位との点差は射程距離。
フリー序盤の4回転トーループは見事だった。軸も通り回転も速かった。続く4回転サルコーは少し安定さに欠けたが、挑戦した。結果2回転となったが、若さゆえの頑張りだ。3回転フリップは普段通りの力で跳べば「e」マークが付かないはずが…ついてしまった。後は順調にスピン、ステップと要素をこなした。
スケートが、よりクリーンになったように感じるが、今一つのプログラムの強弱が必要かとも思える。これが出来た時、18歳になった羽生は、もう少し大人びた演技が出来るようになるはずだ。2位。総合2位で、2度目のGPファイナルで、初めて銀メダルを手にすることが出来た。しかも2年連続の世界王者のパトリック・チャン(カナダ)を抑えて。羽生はこれからも、もっと向上していくだろう。
パトリック・チャンのスケーティングは、やはり訓練のたまものという感があった。ジェフリー・バトルの振り付けは、若者同士がつながりを持ちながらの共同作品。2人の息が氷上に出ている演技を感じた。SP冒頭の4回転トーループの入り方も流れも良い。スケートの上手さが染み出ている。3回転ルッツ+3回転トーループは、2回転ルッツになるなど大きな減点。
しかし各要素に加点が付くようアレンジしているのはローリー・ニコルの時と一緒だ。そして、つなぎのステップでグーンとスピードを付けてくるのも、シャープで質が良いからだろう。試合を重ねる事にプログラムに緩急が付いてくる。8つの要素がそろった時、パトリックの良さが一層、伸びてくるだろう。2位でフリーを迎える。
ストーリー性があり、プッチーニの悲歌で憂いがある振り付けは、デビット・ウィルソン。こんな振り付けも、パトリックの幅広いスケートが生きてのことだろう。最初の4回転トーループで転倒。後半最初のトリプルアクセルでは両手着氷。最後のダブルアクセルをジャンプコンビネーションにするなど、なかなかスマートだと思ったが、これが4つ目のジャンプコンビネーションとなり「キックアウト」で無得点。
曲想を理解しての演技は、さすがパトリックという感じを受ける。最後のジャンプコンビネーションの無得点はあったが、定評のあるスケーティングスキルは上等だ。だが思ったようには得点が上がらず、4位と番狂わせ。あのプログラムとあのスケーティングスキルでと、首をかしげる感じだ。総合3位に終わった。
【女子】
1位発進した浅田真央のSPは確実になってきた。ジャンプのローティションが安定してきたのは、気持ちが落ち着いてきたから。実力が発揮出来るようになってきたのは、良い兆しだ。スピンも真央にとってはお手の物で、今後は今一つの工夫も必要かもしれないが、今はこれで良い。「突っ走れ真央!」。アップテンポの曲想に乗って、気持ちも沈んではいられないことを自覚してのことだろう。試合を追うごとに慣れてきて安心してみていられるし、何より楽しめていると感じた。
ジャンプコンビネーションは3回転フリップ+2回転ループだが、確実に要素をこなすことが第一だ。確かに3回転+3回転を望む声もあるが、少し時間が必要だろう。ジュニア時代の曲想を使うのも、初心に戻っての気持ちも大事にしているのも、今季成功している秘訣だ。来季の大事な五輪シーズンに向けて、陽気に、前向きに挑める土壌を今のうちに作っているような気がする。そんな、「佐藤教室」の計画が、見事に繋がっていくことが期待される。
今回の真央は冒険なしの要素で臨む。プログラムの完成度を高め、次には難易度の高い要素を入れていく計画だろう。まずは自信を取り戻せだ。スケーティングの姿勢も大方矯正され、流れが上手く出て来ている。ステップもタチアナ・タラソワ・コーチやローリー・ニコル仕込みも体の中に栄養として入っている。曲もなじみがあり、味方につける。全て五輪シーズンに向け、用意が整いつつある感じがする。後はジャンプの感じを取り戻すだけだ。
序盤の4つのジャンプは、加点されなかったが真央のリズムに乗って軽く跳んでいった。3回転サルコーが2回転になったがまずまずだ。出だしは静かな感じで白鳥を、終盤は速い曲に乗って黒鳥を氷上で踊り切った。終盤の2つのステップは、真央の体になじんでいるステップだ。素晴らしい。最後はコレオステップで良さを再現、スパイラルから得意のツイズルの連続でフィニッシュ。完全に真央は復活した。他の女子選手たちを大きく引き離し1位で、総合1位。完全優勝を果たした。
アシュリー・ワグナー(米国)はSP2位、フリー4位で総合2位。いつもの力強さや、独特の良さに欠けスポーティフルな動きが影を潜めた。彼女本来の力を発揮できずに、真央に追い付くことが出来なかった。2本そろえることが今後の課題として残った。
鈴木明子は、SPでフライング・キャメル・スピンのミスなどで、本来の元気な曲想にあった演技が出来なかったように感じた。得意なフリーに期待したがジャンプのダウンングレードや、ルッツの間違ったエッジの踏切、得意の3回転フリップの転倒と普段とは違う感じだった。「シルク・ド・ソレイユ」の鳥をイメージした曲や振り付けが生きてこなかったのは残念だった。生き生きとした様子が氷上で見せることが出来なかった。しかし、明子は頑張り屋。SP3位、フリー3位で総合3位と表彰台に乗ることが出来た。
新鋭、ロシア期待の星、エリザベータ・トゥクタミシェワはSPのミスが響いた。フリーは本来の出来だっただけに残念だった。ジュニアからシニアに上がってきた今季、壁が立ちははだかったか? 5位でファイナルを終了した。世界選手権までには、力を付けて戻ってくるだろう。まだまだ経験が必要だと感じた。
(2012年12月21日00時30分 スポーツ報知)
1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。
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