大山 宗哉
ものすごく堅実ですよね、実は(笑)
-大山さんは大学でもインターネットやテクノロジーを勉強していたんですか?
大学では経営やって。大学院の時に理転して。理転といっても美術とプログラムに興味があったので。その大学が、美術批評とインタラクションデザインを学べるところだったんです。
-もともとそういう分野に興味があったんですか?
18歳くらいの頃、海外へ少し行って、計画的にモラトリアムをつくったので、20歳くらいの時に、「これはっ!」とはたと目覚めました(笑)。
-院を修了したら、うっすら就職を考えますよね。
そうなんですけど、作品をつくるためにプログラムをはじめて、院時代にそれを教える非常勤を他の大学でやったりして。漠然と、IT土木しながら作家するか、院に残って博士になって大学の先生になるか......まあ、それも作家みたいな道ですけど、いろいろ考えて、(アート作品をつくり続ける道には)最終的にはビビってっていう(笑)。いまはビビってないけどね。
-それでチームラボに入社したわけですが、チームラボを知ったきっかけは何だったんですか?
リクナビです。「安牌な企業に行こう」と思って(笑)。見たらDBとか書いてあって堅そうだし、ちょっとアートとかって書いてあるしいいかなって。
-実際、安定企業だと思いますか?(笑)
安定はしていないんじゃないですかね(笑)。でも潰れない会社だとは思います。
-それはなぜ?
んー......、ものすごく堅実ですよね、実は(笑)。経営とか。
-そうですね。派手なことをやっているように見えて、内実は普通に堅実ですよね。
ほんとそう思います。
-ただ、普通なだけでは安定はしない。
見せ方も上手い会社ですよね。例えば、ソリューションとして提供しているところが最大のミソですけど、アートが呼び水として機能してるじゃないですか。特に工藤さん(工藤岳/ソーシャルブランディング・編集)が入社されてからは広報もちゃんと入って。ね。
なんていうかネ申です
-大山さんはチームラボで2年目。チームラボの面白さはどの辺で感じますか?
転職童貞なので、みんなが言うほどの面白さがまだわからなかったりします。 僕が入社した理由が、「チームラボがやっていることをまったく理解できなかった」からで。みんなが「面白い」と言っているということは、自分にはない部分で評価されるような何かがあるんだろうと、修行のつもりで入ったところもあります。 でも、働いてて面白くはあって、例えばですけど、僕はチームラボが世の中に対してある程度ブランディングされた状態で入社しているじゃないですか。だからクライアントと話していても、結構、チートみたいなところもあって(笑)。むろん期待も大きいんですけど。あとは、去年、ここにパブリックドメインとか書いたけど何も言われなかったですよ(笑)。
-こっちはお金もらっているのに(笑)。大山さんはマーケ(≒ディレクター職)ですが、猪子案件を結構やっていますよね。
はい。初めにやったのが早乙女太一さんの舞台映像で。影絵の前です。どうすればいいか全然知らないし、超大変で、結構キツかったんですけど、おりゃーって気合で乗り切ったみたいなところがあって、それで「こいつは無茶ぶりしても大丈夫だ」っていう、社内的コンセンサスが生まれて(笑)。猪子さん(猪子寿之/代表)とは、入社してから最近まで、朝方まで打ち合わせして、ブチ切れられたり、僕もブチ切れたりして、なか卵食って、帰るみたいな生活をしていました。
-いままでやってきたほかの案件は?
オニツカタイガー様のmidori、コカ・コーラ様の展示、リーボック様、欽ちゃんのテレビ番組の演出、建設中の某巨大建造物内のサイネージとか、ウェブでは、最近だと、テレビ東京様のサイトリニューアルをやらせてもらいました。
-いま現在担当している案件は?
いまは「マイナビバイト」という求人情報サイトを担当しています。僕の仕事のメインは、ディレクションもそうですが、要件を整理し、仕様に落として、くくることです。
-その並びでいうと、マイナビバイトは本当に「実直な」仕事ですね。
ですね。一瞬一瞬がとてもデリケートな感じですし、稼働中のサービスなので、規模以上に難易度を感じます。でも、運がいいなーと思っていて。大規模案件はそんな担当できないんですよ。
もうひとつ運がいいなーっていうのが、一緒にやっているエンジニアがほんとヤバイんですよね。ひさまつさん(ひさまつよしゆき/フロントエンジニア)、 川俣さん(川俣直樹/エンジニア)、稲垣さん(稲垣修/エンジニア)は、他の会社じゃ、まずいないクラスのエンジニアですよ。頭の良さっていうか、仕様ひとつ取ってみても、どんどん引くんですよね。シンプルだけど強くするっていうか。あの人たちほんとなんていうか、ネ申です(笑)。
とはいえ、実は、会社に入って一番思ったのは、規模が大きいことをやろうとすると、組織やいろいろなものが必要なんだなってことで。作業回んないし、チャンスもそうだし。だからこそ、なるべく個人の考えが表に表れるような形でチームをつくれればと思っています。そういう意味だと、いまのマーケやディレクターの仕事はわりとよくって。欽ちゃんのときは、全部で10人ちょっとのプロジェクトで、PM的な感じだったんですけど、メンバーを見て自分の関わり方を考えて、プロデューサー的に動いたりして。いろいろ実験しながらやっています。
-ディレクター向きなんですね。
向いているかはわかりませんが、2年目以降は1年目と同じことをしていては意味がない。自分がやってきたことを他の人ができるようにしないといけない。それでも、初めは不安。だから「そういうときのケツは拭きます」みたいなポジションをいかにやれるか。旗を振るのではなく、最終的に「いつの間にかゴールにいる」みたいな形にする。これって石田さん(石田武士/PM)の影響なんですけど、理想です。
論理より先に「!!!」
-チームラボでやってみたいことはなんですか?
いままで誰も気づいていない何かを自分で見つけたいです。他人でも、ソリューションを持っている人より、面白い問題意識や世界観を持ってる人の方が好きで、その問題を、どうやって解決しようとしているか、そこから広がる世界とか、根底に流れる思想に興味があります。
-なんか、ざっくり抽象的ですね(笑)。
あとは、オフィスを緑化したいです。ちゃんと育てられるかはわかんないですけど、実家にいっぱい観葉植物があったせいか、緑に囲まれて日々を過ごしたいです。つりしのぶっていう盆栽が好きなんですが、冬になると枯れちゃうんですけど、ほうっておいても翌年ちゃんとまた芽が出てくるんです。あとは、美味しい紅茶がいつでも飲めて、美味しいうどんが食べて、おはなしめいろとかみっけやれてれば文句ないです。あとは、テストケースとかあらえるようになりたい。コード書きたい。最終的にはソースコード追えるようになりたい。あとは体調維持。もう倒れたくない、親に悪い(笑)。
-なんか基本、女子っぽいね(笑)。ちなみにひとつめの話は、最終的にはソリューションになる?
最終的に具体的なサービスやソリューションに着地するのは、全然良いんですけど、論理の積み上げではない道みたいなものを、いまは探してて。
猪子さんともこの話をすっごいして、「あるあるー」って話になったんですけど、先に答えがわかるときがあって。ブレストをしていて、「これがいいと思う」と口走ったんだけど、論理的にはまだ追いついていなくて、でも絶対にそれがいいって先にわかって。「ちょ、待って、いま論理の方をこれから組み立てるから」みたいな。論理で考えるときは言語で考えるから、それによる制限を受けるじゃないですか。
だけど勘というか「!!!」というときは無意識で、そういう制限がないところだからすごい先まで進んでるんですよね。実際、電波とか啓示とかって結構科学的で、20年くらい瞑想し続けた人の脳って、その部位だけ発達して太くなるらしいんですよ。なんだよ、内臓の問題かよって(笑)。河田さん(河田将吾/チームラボオフィス)も「ある」って言っていたので、そういう経験をしている人はこの会社多いんじゃないですかね。
-そのなかで具体的な形で思い描けたものはある?
超個人的に、コミュニケーションサービスをつくりたいです。神の啓示のような、ロマンチックなやつです(笑)。わけわかんないと思いますけど、例えば、猪子さんもよく言ってるけど、非言語にすることで情報量が増えますよね。Facebookの「いいね」とか一見幸せを共有してそうで、Twitterの☆(ファボ)の、「君のすべてを肯定するよ!」っていうほうが、同じ1ビットでも手に届いた時のあたたかみがダンチですよね。個人的には「いいね」はパチモノのヒートテックと同じクラスターです。
-たしかに猪子も、制限をなくすとコミュニケーションが活発になるとはよく言ってますね。電話や手紙が発明され、距離の制限がなくなり、メールが発明され読む時間の制限が、twitter が発明され、答える必要の制限がなくなった、と。
僕は、「誰から」っていう情報も、もう無くて良いじゃんて思ってて、もう起きたことからしか、相手が知覚されないような、存在が一瞬はたと立ち現れればと。要は、運命とか、神様とか意識するときと同じ感じです。いま、ひとり暮らししてて、最近、この一ヶ月半くらい、ずーっと体調悪かったんですけど、あの寂しさについて考えていて、結局、人がいるか、いないかじゃなくて、いるって思えることが大事なんだってとこにいま行き着いてるんですよね。実は、誰かってそんな重要じゃないじゃん。欲しいのは影とか存在感じゃなかろうかと。
-結局誰もいなかったりするからね(笑)。でもそう思えるのはピースな感じがする。
いまは、そういうのの提示方法とパターンをリサーチしてて、例えばバーバルなら、メッセで、相手が記入してるのが表示されるってのも見せ方のひとつですよね。予感みたいな。未来の先取り感。くるぞくるぞ感(笑)。
「PhotoSwap」っていうiPhoneアプリは、写メを撮って送ると、わからない誰かに送られて、同じ時間くらいに撮った全然知らない誰かから、一瞬で写真が返ってくるんですけど、偶然とか、情報量の少なさで、情報量が大きくなっているサービスだと思ってて、こういうの素敵です。なんかソーシャルだと、誰かじゃなくて、誰になるから、余白があんまりなくて、なんていうかもうねって(笑)。
-情報量の少なさ......いいかも。
だから、情報量の制限と粒度によって、神の啓示っぽい感じになるサービスをやりたいです。実は、具体的な案があるんですけど、それは内緒ってことで。てへぺろ。
-じゃあ、予感だけください(笑)。
これが、こういうこと考えている時間が好きって言おうとしてる時の顔です。ウァー!!