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ペンタゴンリポート

地球の寒冷化に関するペンタゴンレポート

2004年6月に日本でも公開された「デイ・アフタートゥモロー(The Day After Tomorrow)」はカリフォルニアが竜巻に教われ、二ューヨークが大雪に見舞われる異常気象を描いて観客を驚かせた。この映画の基礎になったのが、ここでいう「ペンタゴンレポート」である。
映画「The Day After Tomorrow」より
出典 :デイ・アフター・トゥモロー [Blu-ray]

この報告書は原題を"An Abrupt Climate Change Scenario and Its Implication for United States National Security"(急激な気候変動とそれが米国国防に持つ意味)と言い、2003年の10月にピーターシュワルツとラグランドールがまとめて報告した。もともとは秘密報告であったはずなのだが、2004年2月にオブザーバー紙がその存在を公表した。ここからシナリオを書いていたのでは4ヵ月後の2004年6月に日本で公開することは難しいだろう。映画制作者はなんらかのルートで情報をその前に入手していたものと思われる。
ペンタゴン
出典

原文は下記で読める。
原文

以下にこの報告書の小見出しを書き上げてみる。これでおおよその内容が予想できるだろう。何回かに分けて、この内容を順番に紹介し、私の考えをまとめることにする。

考えられないことを想像する(序)
要約
はじめに
歴史を振り返る
8,200年前の寒冷期
ヤンガードライアス期
小氷河期
予測される気候変動
2010年までは温暖化
温暖化の結果
2010年から2020年に何が起るか
海洋熱塩循環の崩壊
南半球の場合
自然資源への影響
国防との関連
輸送力の低下
輸送力低下と戦争
気候変動による紛争の予想
本当に起るのか
歴史の繰り返しに備える
結論

要約

21世紀中に温暖化はゆっくりと進むと思われている。その変化は緩やかなので、大抵の国は対策を取ることができるだろう。しかし、最近の研究によりこの緩慢な温暖化が、突然海洋熱塩循環を遅らせることによって、世界の食糧生産国の冬の寒さを厳しくし、土壌の水分を減少させ、強風に襲われるようになる可能性があることが分かってきた。これに対
する備えが不十分だと、世界中の輸送能力が大幅に落ちるかもしれない。
海洋熱塩循環
海洋熱塩循環

この研究によれば、気温がある閾値を越えると、突然10年間に3~6℃の速度で気温が下がり始め、それが長期間続くことがあると言う。例えば、8,200年前に海洋熱塩循環が崩壊した時には寒冷な気候が約1世紀続いた。極端なのは12,700年前のヤンガードライアス期でこの時は1000年続いた。

8,200年前の気候変化
・ 毎年平均気温がアジア・北アメリカで2.8℃、北ヨーロッパで3.6℃下がった。
・ 毎年平均気温がオーストラリア、南アメリカ、南アフリカで2.2℃上がった。
・ ヨーロッパ、アメリカ東北部では旱魃が10年間続いた。
・ 冬の嵐が起った。西ヨーロッパと北太平洋では風が強く吹いた。

このように気候が突然変わると、争いが起き易く戦争になることもある。
1. 農業生産が減ることによる食糧不足。
2. 洪水と旱魃が頻発することによる上水の不足。
3. 海の凍結と嵐によるエネルギー不足。

資源のある国はその資源を守るために守りを固める。ない国は近くの仲の悪かった国の資源を強奪しようとする。宗教、イデオロギー、国の名誉よりも生存するための資源が重要になる。

米国は次のような対策を取るべきだ。
・ 天気予報の改善。
・ 突然気候が変わった時に食料、水、エネルギーにどのような影響が出るかを予測する。
・ 気候変動に最も弱い国を予想する。その国は暴力的になるかもしれない。
・ 今何をしておけば後悔しないで済むかを明らかにする(水管理など)。
・ 柔軟な対処ができるように演習する。
・ 近隣諸国との友好。
・ 気候をコントロールする方法の開発。

近年北大西洋では過去40年間に、氷河の解凍、雨量の増大、水の流出により海水の塩分が減っている。これは海洋熱塩循環を遅らせる可能性がある。
氷山
出典

はじめに

現在の気候変動に関する常識は、たとえ気候変動があったとしてもそれは緩やかなもので、現代文明なら充分対応可能だというものだろう。
しかし、南ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカ、は旱魃、酷暑、水不足、による不作で悩むだろうが、北ヨーロッパ、ロシア、北アメリカは大丈夫だろう、と言う考えは甘い。

たとえばオーストラリアの報告書は放牧地の降雨量の減少によって、牛の重さが12%、牛乳の生産は30%減り、果樹園では病害虫が増え、飲料水は10%減ると予測している。

貧しい国では気候の変動に上手く対応できず、難民が流出して例えばアメリカのような比較的豊かな国に押し寄せる恐れがある。

しかしもっと恐ろしいことが起こるかもしれない。

歴史を振り返る


元の報告書から転載

8,200年前の寒冷化

グリーンランドのアイスコアの調査によれば、8,200年前に100年に及ぶ寒冷期があったことが分かる。その時は現在のような温暖期の後、突然寒冷化が起っている。北大西洋地域では気温が約2.8℃下がった。農作物の収穫は減少した筈だ。そしてこのような寒冷化が起った原因は海洋熱塩循環が崩壊したことにある。
過去730,000年の間に寒冷化は8回起っている。その原因も海洋熱塩循環の崩壊であった。


凍結したマンモス
出典


ヤンガードライアス期

約12,000年前、グリーンランドでは気温が15℃下がった。その時も海洋熱塩循環の崩壊が見られた。このような寒冷化は北大西洋地域全般に見られ、1,300年間続いた。この時は3℃近い気温低下が何十年も続いた。そして寒くて乾いた気候が1,000年以上続いたのである。ポルトガル海岸には氷山が現れた。現在同じことが起これば多くの死者が出るだろう。

「海洋熱塩循環」とは何か?極地で海水が凍る時に、大量の塩が排出されてその付近の海水の塩分濃度が高くなり、比重が重くなるので下に沈みこむ。これによって海水が動き出して海流が生まれる。
温暖化によって氷山が溶け出せば、逆に軽い真水が氷山から出るので、海水の動きが止まる。つまり海流が止まってしまう。寒流が止まれば、暖流も止まり、北大西洋地域は寒くなる。これが「海洋熱塩循環の崩壊」である。

映画「不都合な真実」予告編より
出典


小氷河期

北大西洋地域は1300年から1850年まで寒冷化した。これを小氷河期という。寒冷化の原因は太陽活動のほかに暖流の停滞にもよっていると思われる。その間、冬の寒さが酷くなり、気候が急変した。その結果、ヨーロッパの農業、経済、政治は大きな影響を受けた。

不作、飢餓、疫病、移民が絶えず、アイスランドやグリーンランドの住民は生きるためにバイキングになった。1315年から1319年の間に何十万人が飢え死にしたと伝えられている。グリーンランドの社会は崩壊した。百万人が死んだと言うアイルランドのポテト飢饉もこの結果であり、それから175年も経っていない。


【雪中の狩】ピーテル・ブリューゲル[フランドル 1525/30-1569]
出典


予測される気候変動

過去に起ったことはこれからも起ると考えて、我々は8,200年前の寒冷化を参考にすることにした。ここでの目的は予測を正確にすることではなく、起る可能性のある事態に対する対策を議論することである。
何時寒冷化が始まり、どの位続くのかは分からないが、以下では2010年まで温暖化が続いた後、急激な寒冷化が起るものと仮定した。

2010年までは温暖化

2010年までは世界の平均気温は1年で0.3℃上がり、地域によっては1.2℃上がる。20世紀末の傾向が持続するのだ。
北アメリカ、ヨーロッパ、南アメリカの一部の気温が50℃を越える日数は1世紀前よりも30%以上増え、氷点下以下になる日数ははるかに少なくなる。山岳地帯での洪水が増え、耕作地での旱魃は長引く。それだけでも国際社会と米国の安全保障にとっては脅威となる。

温暖化の結果

温暖化が加速して1年間の温度上昇は倍になる。林地も草地も乾燥し山火事が起る。
2005年までには気象災害の増える地域がある。台風とその被害は益々大きくなる。2007年には激しい台風がオランダの堤防を破壊し、ハーグには人は住めなくなる。カリフォルニア サクラメント川の中州の堤防が決壊して内海ができると共に北部から南部への送水路が機能しなくなる。ヒマラヤの氷河が溶けてチベット人の一部は移住しなければならない。夏の北極氷山は2010年までにおおよそ無くなる。波が高くなり海岸の町に被害を与える。2003年に比べて約4倍の数百万人の人が洪水の被害を受ける。海水温度が変わるので魚の生息域が変わり、漁場が変わる。
北大西洋では淡水が増えるために熱塩循環を抑制する。


映画「不都合な真実」のポスター
出典:不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

2010年から2020年に何が起るか
海洋熱塩循環の崩壊

約60年続いた温暖化の後、2010年には海洋熱塩循環の崩壊が始まり、メキシコ湾流が作っていたヨーロッパの温暖な気候は失われる。循環のパターンが変わることによって、直ちに北ヨーロッパとアメリカ東北部の気候が変わる。それは大量の温かい水が北大西洋に来なくなるためであって、ヨーロッパと北半球の多くの地域が寒冷化するとともに降雨量が減る。
海洋熱塩循環の劇的な変化が予想されているが現在の米国の対応は不十分である。

2010~2020年の気候
・ ヨーロッパと北アメリカの穀倉地帯及び人口密集地帯で旱魃が続く。
・ アジアと北アメリカでは平均気温が毎年2.8℃下がり続ける。ヨーロッパでは3.4℃。
・ オーストラリア、南アメリカ、アフリカ南部では2.2℃上がる。
・ 冬の嵐が強まる。西ヨーロッパと北太平洋では強い西風が吹く。


出典

北アメリカとアジア北部の内陸部での気候は更に厳しくなる。

2010年には中国南部とヨーロッパ北部とで10年以上続く大規模な旱魃が起る。同時に従来は比較的乾燥していた地域が何年間も大雨に襲われ、畑作が壊滅する。

北大西洋地域と北アジアの冬が寒冷化することは明らかだ。山に雪が積もるので夏も寒くなる。地域により風速が強くなる。

海洋熱塩循環が崩壊後の5年間はヨーロッパ北部の受ける打撃が大きい。その後、ヨーロッパ南部、北アメリカが被害を受ける。農業は特に大きな被害を受ける。強風と旱魃により土壌も失われる。2020年頃のヨーロッパの気候はシベリアに似てくる。

南半球の場合

南半球で何が起るかは、参照できる古気象学のデータが足りないので良くは分からない。
北半球が寒冷化するのとは逆に、気温、降雨量が上がり、嵐が増えるだろう。


元の報告書より転載。

ヨーロッパ:気候変動の被害が最も大きい。特に北西の海岸部ではシベリアのようになる。ヨーロッパ南部でも気候は変わるが被害は比較的少ない。降雨量の減少によりヨーロッパ全体で食料が不足する。ヨーロッパは北欧とアフリカからの難民に悩まされるだろう。

米国:米国北東部での農作物の収穫量が減る。南西部では温暖な季節は長くなるが旱魃と強風による土壌喪失が起る。
海岸地域は海面上昇が続くので温暖期と同じ危険がある。米国は内向きにならざるを得ない。

中国:台風による降雨が不安定になるので食糧供給に問題が出る。冬はより長く夏はより暑くなる。広い範囲で飢饉が起り、内乱が起る。同時にロシアや西欧のエネルギー資源を欲しがる。

バングラデシュ:台風と海面上昇で大部分の地域が居住不能になる。飲用水も海水に汚染され、難民が中国とインドに向かう。

東アフリカ:ケニア、タンザニア、モザンビークは旱魃になる。食糧供給は困難になる。

オーストラリア:被害は少ないと思われるが確実ではない。


映画「不都合な真実」より

自然資源への影響

上記の気候変動は農業、漁業、野生生物、水、エネルギーに影響する。穀物の収量は、低温、水不足、生育可能期間の短縮により10-25%減少する。従来の害虫が死に絶えても新しい害虫が生まれ、新しい殺虫剤と駆除法が必要になる。漁民は魚群の移動に対応できていないだろう。
世界の主要な穀物生産地(アメリカ、オーストラリア、アルゼンチン、ロシア、中国、インド)は、気候変動による減産を相殺する余裕はないだろう。


シベリア
出典

国防との関連

人類文明は地球の温暖化、気候の安定化と共に生まれた。気候が寒冷化して不安定になれば農業の発展も永続的な住居も望めない。ヤンガードライアス期が終って初めて人類は発展を始めることができた。近代人はここで描いたような気候変動を経験していない。したがってこのような寒冷化が国防に対してどのような意味を持つかも明らかではない。
おそらく、現在国家の安全を脅かすと思われている事柄は突然の気候変動によって新たに起る脅威とは異なるものだろう。イデオロギー、宗教、国家の威信と言ったものよりも、エネルギー、食料、水といった資源に対する絶望的な欲求が軍事的紛争の原因となるだろう。危険な国、危険な兆候が共に変わるだろう。疑いないことは世界の紛争が増えるということだ。
突然の気候変動が引き起こす国防上の問題は次の3つであろう。
1. 食糧不足
2. 飲料水の不足
3. 鉱物資源の不足

始めは条約や貿易規制のようなことが行われるだろうが、土地や水の問題は次第に暴力的になり、紛争国が絶望的になるにつれて争いは激しくなるだろう。


映画「The Day After Tomorrow」より
出典:デイ・アフター・トゥモロー (UMD)


映画「The Day After Tomorrow」より
出典:デイ・アフター・トゥモロー 2枚組特別編 [DVD]

輸送力の低下

下図は突然の気候変動によって人類の輸送能力が下がり、その必要を満たせなくなることを示している。


元の報告書から転載

現在の人類の生活を支えているのは輸送能力である。必要な資源が一部の地域に偏って存在しているからだ。
突然寒冷化した場合、輸送能力は大幅に落ちるだろう。その結果、食料、水、エネルギーを争奪する戦争が起ると思われる。戦争と飢餓により人口は減少し、やがて低下した輸送能力に見合うようになる。
高い輸送能力をもっている国は同時に突然の寒冷化に対処する能力も高いだろう。例えば米国や西欧である。このことが持てるものと持たざるものとの対立を激しくする。そして持たざるものは行動を起こす。

輸送力低下と戦争
人類は飢餓と略奪の選択を迫られた時には、隣国を略奪してきた。狩猟採集時代から農耕時代まで、戦争があると全人口の25%の成人男性が死んだ。
平和な時代が来たのは、輸送力が増した時代である。しかし、このような平和な時代は長続きしない。人口が急速に増加して輸送力を圧迫し、戦争を呼び戻す。最も闘争的な社会のみが生き延びてきた。
過去3世紀では、皆殺しを避けて、勝敗を決めるために最小限の敵を殺した後、生き残った人間に自国の経済を再建させるようになった。戦勝国も輸送力を増強して隣国との関係の融和に努めるようになった。
突然の寒冷化によって輸送がいたるところで途絶すると、このような傾向も崩壊して元の状態に戻る。戦争の時代になる。


予想される紛争


ゴヤ 戦争の惨禍
出典

米国とオーストラリアはその自給力を守るために要塞化する。米国の被害は大したことはない。国境警備はカリブ諸国、メキシコ、南米からの難民を排除するために堅固になる。原子力、再生可能エネルギー、水素、などの高価なエネルギーが使われるようになり中東は萎縮する。漁業権紛争がいたるところで起り、農業支援、災害救助が広く行われる。米国がメキシコにコロラド川の水利権を保証していたのを取り消すことにより、両国の間の緊張が増す。それでも米国は他の国よりは良好な状態を保つ。
飢饉、疫病などにより多くの国では輸送に対する需要が能力を超える。このことが絶望を生み、侵略に結びつく。東欧はロシアに注目するだろう。日本は臨海都市の洪水に悩まされ、飲料水が汚染されて、脱塩プラントとエネルギー多消費農業を支えるために、サハリンのエネルギーに目を付ける。パキスタン、インド、中国は国境で避難民や水利権、耕作権を巡って争う。スペインとポルトガルの漁民は漁業権を争い海戦になるかもしれない。
200以上の土地が、川を隔てて隣国に接している。そのような所では飲料水、灌漑用水、輸送路を求めて争いが起る。ドナウ川は12カ国に接している。ナイル川は9カ国、アマゾン川は7カ国。
米国とカナダは国境管理を簡素化して一体化するかもしれない。あるいはカナダは水力を独占しようとして米国との間にエネルギー問題を起こすかもしれない。南北朝鮮は協力して核武装する可能性がある。ヨーロッパは一体となって難民移入を抑え、外部からの侵略に備える。そして資源豊富なロシアを仲間に入れる。
核兵器の拡散は抑えられない。寒冷化が進むにつれて2酸化炭素の排出は減る。エネルギーに対する需要は増えるのに、供給は減るので、原子力エネルギーの重要度が増す。中国、インド、パキスタン、日本、韓国、英国、フランス、ドイツはイスラエル、イラン、エジプト、北朝鮮と同様に核兵器を開発できる。
日本のように強い団結心を持った国はうまく対処するだろう。インド、南アフリカ、インドネシアのように国内が分裂している国は国内の秩序が維持できないだろう。突然の寒冷化で一番困るのは、その継続期間が分からないことだ。熱塩循環が回復して温暖化が始まるまで、10年、100年、1000年のいずれになるのかが分からない。

本当に起るのか


映画「The Day After Tomorrow」より
出典

これから起る気候変動に対して、科学者も政治家も準備ができていない。そして古気象学の教える所では、急激な寒冷化は近い将来に起る。
北大西洋の塩分濃度は過去40年間低下している。これは熱塩循環の崩壊と急激な寒冷化を意味している可能性がある。


元の報告書から転載

上図は熱塩循環の崩壊が近いことを示している。何故ならば、北大西洋の海水の塩分濃度が、過去40年間におよぶ周辺の海の塩分濃度低下により、下がっていることが分かるからである。


元の報告書より転載

上に載せた記事は、2001年と2002年のネイチャーマガジンに掲載されたもので、北大西洋の塩分濃度が低下したのは熱塩循環が崩壊したためであろうと伝えている。
これまでに急激な寒冷化が少なくとも8回起ったことは歴史的な事実である。今や「本当に起るのか?」と聞くのではなく、「何時起るか?」、「それは何を引き起すのか?」、「どのように準備するのが一番良いか?」を聞くべきであろう。

歴史の繰り返しに備える

米国が急激な寒冷化に備えて打つべき対策を下に挙げる。
1. 天気予報モデルの改善
研究を進めて、気象変動を確信を持って予知できるようにする。特に急激な気象変動が起る場合の予兆を明らかにする必要がある。

2. 気象変動によって起きる事柄を包括的に予測する
急激に寒冷化が起った時に、生態、経済、社会、政治にどのような影響が現れるかを研究する必要がある。このような研究だけが事前に紛争を予防できる。

3. 脆弱さを示す指標を作る
それぞれの国が寒冷化に対してどの程度脆弱かを示す指標が必要である。その指標は、農業、水、鉱物資源、技術水準、社会の団結と適応性を含んでいなければならない。

4. 後悔のない戦略
どのような戦略を取れば、後悔しないで済むかを明らかにする。食物、水を確実に供給し、治安を維持するための戦略である。

5. 対策の演習
対策班を作って、寒冷化によって起る大量難民、疫病・伝染病、食物と水の不足に対して予め準備しておく。

6. 局地的な対策
寒冷化は最初局地的な被害をもたらす。特に重要な食料生産地に関して、その土地や作物に特有な脆弱性を調べておかなければならない。

7. 気象制御技術の開発
現在は気温を下げるよりもむしろ上げる方が容易である。例えば大気中にハイドロフルオロカーボンガスを放出するなど。しかし、慎重にやらないと国際紛争の種になりかねないので注意が必要である。

結論
今後の10年間で突然の寒冷化の証拠はもっと明らかになるだろう。その結果何が起るかももっとよく分かるようになるだろう。米国は特にカリブ海とアジアでの紛争を最小に抑えるために外交的な努力をしなければならない。それでも大量の難民の発生は避けられない。


映画「不都合な真実」より
出典:不都合な真実 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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以上でペンタゴンレポートの紹介を終ります。次回はこの報告書に対する私の考えをまとめてみます。

ペンタゴンリポート 最終号

1.報告書にも書いてあるが、突然気候が温暖化から寒冷化に変わるきっかけが何なのかは明かにされていない。過去に氷河期が発生した時が、突然だったから、今度も突然起るだろうと言っているだけのように思える。恐らく大西洋の熱塩循環が徐々に弱まると、ある時点で閾値を越えて、突然気候が変わるのではないかと想像される。
2. 報告書では、2010年、2020年、2030年に起る国際紛争を予想しているが、これはあくまでも2010年に寒冷化が始まると仮定した上での想定である。「2010年に寒冷化が始まる」と予言しているのではない、と私は思う。
しかも、ペンタゴンは「起りうる国際紛争」についてしか述べていない。本来は、もし寒冷化が避けられないのならば、このような国際紛争を未然に防ぐように努力すべきだろう。その努力はどのようなものであるべきか、を議論する必要がある。しかしそれはペンタゴンの仕事の範囲を超えることになる。ペンタゴンを責めることはできない。そこで以下には、「私が考える寒冷化対策」について書いてみよう。
3.温暖化を止める
先ず、温暖化の結果として寒冷化が来るのならば、やはり温暖化のスピードを少しでも下げることが、寒冷化を避けるために現在一番必要なことなのではないか。そのためには世界一の資源浪費国アメリカが温暖化防止に本腰を入れる必要があるだろう。先ず京都議定書に署名することだ。
次には中国・インドのような、京都議定書策定時には低開発国に分類されていてその後急速に近代化を進めている国にも炭酸ガス低減の義務を負ってもらうことだろう。この2カ国は現在地球を汚し放題に汚しているように見える。
4.民族大移動
寒冷化が始まれば、生き延びるために、北半球では北から南への、南半球では南から北への、民族大移動が始まるだろう。赤道を目指して、全人類が北と南から移動を始めるはずだ。この移動をどうすればスム-ズに、平和に行えるかに、人類の知恵を結晶させなければならない。
5. 民族移動国際条約
先ず国際条約を世界的に結ぶ必要があるだろう。北から来る外国人を自国に平和に受け入れ、自分の国の国民は安全に南の国に輸送して受け入れてもらう。そのための取り決めを予め決めておくのだ。彼らを難民化させてはいけない。日本人をボートピープルにするな、と私は言いたい。

出典
6. 生活の知恵
北の国の人たちを受け入れるのことには利点もある。大部分の日本人は南に逃げても、どうしても日本に踏みとどまりたい人、踏みとどまらざるを得ない人がいる筈だ。このような人たちは、温暖だった日本の従来の生活様式を捨てて、新しく北から来た人たちの耐寒生活を学ぶ必要がある。
同じことが、南に移動した人たちにも言える。現地の人たちは慣れない寒冷な気候に怯え、戸惑っている筈だ。彼らに日本の気候に合っていた生活様式を教えてやれば感謝される筈だ。
このような、北から南への生活技術の伝承を円滑に行うためには、やはり予め国際条約を結んでおくべきだろう。それでも局地的に紛争が起ることは避けられないかもしれない。しかし、予め手を打っておけば、多くの悲劇を避けることができそうである。
日本人は混血民族だと言われている。南から来た人、北から来た人が混じり合って日本人ができた。南に移住することは、一部の人にとっては先祖の国に帰ることになるだろう。故郷には平和に帰りたいものである。

出典
7. 観測ネットワーク
寒冷化が熱塩循環の崩壊によって起るならば、熱塩循環の崩壊が何時起きるのかを少しでも正確に予想できるようにすべきである。そのためには、海水の塩分濃度の変化を世界中で同一の基準で継続的に測定しデータを蓄積する必要がある。
同時に熱塩循環そのものを測定し、崩壊の予兆が起っていないかを常時監視する世界的なネットワーク体制が必要だろう。
暖流の動きを監視し、その量と速度を測定してデータを蓄積していけば、直前に寒冷化の開始を予報できるようになる可能性があるかもしれない。このような国際観測ネットワークを作らなければならない。
8. 赤道付近
赤道から先には逃げても無意味だ。と言うことは、赤道付近で人が溢れる可能性があるということだ。ここで紛争が起きる可能性が高いと私は思う。これを避けるには予め移住先を国別、地方別に取り決めておく必要があるだろう。なるべく人口密度の低い所、或いは中緯度の国では移住予定の人が多い所に移住すべきだ。
ここでもやはり国際条約が必要になる。
9. 輸送力を維持する技術
ペンタゴンレポートでは急激な寒冷化による輸送力の低下が紛争の原因になると言っている。その通りだろう。では寒冷化が起っても輸送力を低下させない技術を今から全力を上げて開発することが紛争を避ける道になる。道路の雪を融かす。スノーモビルのコストを下げる。これらの技術開発によって紛争を避けることができるかもしれない。
10. 以上の私の提案にはいずれも国際的な取り決めが必要である。現状ではG7,国連等、幾つかの国際機関がある。これらの国際機関で「寒冷化対策」を議論し、「寒冷化条約」を検討することが第一歩になるだろう。



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