◇春場所<14日目>
稀勢の里に敗れ5敗目の日馬富士(大泉謙也撮影)=ボディメーカーコロシアムで
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横綱日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は大関稀勢の里に押し倒され、5敗目を喫した。先場所は全勝優勝を飾ったものの、横綱昇進直後だった昨年の九州場所で9勝止まり。浮き沈みの激しさがまたしても露呈した。前日に優勝を決めた横綱白鵬(28)=宮城野=は大関鶴竜を寄り切り、14連勝とした。千秋楽に単独史上最多となる9度目の全勝優勝を目指す。稀勢の里は9勝目。大関琴奨菊は松鳳山を寄り切って勝ち越しを決めた。
また日馬富士が1桁勝利の危機に陥った。稀勢の里に一方的に攻め込まれ、最後は左のおっつけ1発で転がされ5敗目。千秋楽は全勝の白鵬との横綱対決。昨年の九州場所で喫した「9勝6敗の悪夢」が再びよみがえってくる。
取り囲んだ取材陣に向かって自虐的につぶやいた。これが軽量横綱の弱みか。今場所は後半戦に入って再三疲労を打ち明けており、この日の朝も稽古場に姿は見せたが、土俵には上がらず「疲れました…」と宿舎近くの温泉に向かい、体を癒やした。
昨年、2場所連続の全勝優勝で堂々と綱を引き寄せた。しかし親方衆の一部からは「体が小さいから年6場所は大変だろう」と懸念する声が上がっていた。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「一番、一番の集中力が足りない」と精神面を指摘したが、年々大型化が進む中、幕内で1、2を争う133キロで綱を張っていくのは並大抵ではない。
先場所の全勝優勝からの急降下ぶりに「確かに波がありすぎる」と日馬富士。「まだ体が100%できてない。全身全霊で場所に向かっているからケガが治らないし、疲れも取れない」と1場所ごとのダメージの大きさを吐露した。
9勝6敗で終わった九州場所後は横綱審議委員から資質を問われる声が上がった。北の湖理事長(元横綱)は「落差が大きすぎる。1つ狂い出すとこうなってしまう。でも意地があるだろうから明日は絶対勝つ、という気持ちで行くしかない」と叱咤(しった)した。周囲の雑音を封じるためには白鵬の全勝優勝を阻止するしかない。 (竹尾和久)
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