◇巨人6−2楽天
敵のG党からも大歓声が湧き起こる。5回。楽天の3番手として田中がマウンドに立った。3イニングを2安打無失点。直球、スライダー、スプリットに加え、WBCで手応えをつかんだカーブも決め球に使って5奪三振。進化した姿を見せた。
予想外の球種にバットが空を切る。6回だ。失策と二塁打で2死二、三塁と走者を背負い、打席には橋本。追い込んでからの5球目に選択したのはカーブ。完全にタイミングを外し、三振で切り抜けた。
「以前のカーブよりも良くなっているという手応えは感じていた。今まではピンチでカーブを投げて三振を取ることはなかった。勇気も必要だったけど、ここで投げないと意味がない」
手ぶらで帰ってきたわけではなかった。WBCでは不完全燃焼に終わった。それでも「得てきたものはたくさんある」と話していた収穫の1つがカーブだ。6回には長野、坂本、阿部の侍トリオを迎え「当然、意識した」。ここでもカーブを有効に見せながら打ち取った。
投球の幅を広げたエースの姿に、星野監督も安堵(あんど)の表情を浮かべる。「まあまあ。もっと悪いのかなと思っていたけど、(球は)意外にピッと来ていた」。無事にチームに合流し、新兵器も手に入れた。世界一を逃した悔しさをバネにして、田中がイヌワシ軍団を悲願の初優勝に導く。 (井上学)
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