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  Black Sabbath -悪魔の宴- 作者:秀美(hideyoshi)
最終話です。
Black Sabbath 3



 幸人もいつしか私を『女』として見る様になっていた。
 血が繋がっていると知らない幸人が、本気で私と一緒になる道を考え始めていたなんて…気付かなかった。
 一月前、わたしは幸人との約束通りに、会社を辞めた。
 引越しを翌日に控えた日、幸人はわたしと籍を入れる為に役所へ行き、そこで結婚できないと知った。わたしの父親の欄はパパの名前で、戸籍上も正式な姉弟だとされていたから。
 両親にそれを確かめに行った幸人は、父の口から真相を知った。

 幸人が真実に心を打ちのめされている頃、何も知らないわたしは幸人に内緒で、体一つで姿を消した。
 だけど幸人は数日で、わたしを妄執の様に見付け出した。
 ホテルに缶詰めになって小説を書いていたわたしの前に、悪鬼のような形相で現れ、その場でわたしを凌辱した。
 抵抗なんてまるで無意味で、意識を失うまで身体を痛めつけられるように蹂躙された。
 気付けば此処へ閉じ込められ、此処から逃げようとしたわたしをまた無理やり抱いて、幸人はそれをビデオやカメラに撮影してわたしを脅した。


『今度逃げたり、俺に逆らったら、今撮った俺と姉ちゃんのいやらしい動画、無修正でネットに流してやる。姉ちゃんは俺だけのモノだって、皆、思い知るだろ?』


 再会した幸人は、完全に心が壊れていた。
 毎日のように脅され、言葉で詰られながら身体を暴かれた。
 結婚しよう、と…愛していると言って、と…幸人は執拗にわたしに求めてきた。
 姉弟なのに、そんなことは不可能だと、無理だと何度言っても、幸人には届かない。
 抱かれるのは嫌だと、泣きながら抵抗すれば、幸人はわたしを犯さないまでも、それと同等の淫猥な行為をわたしに強要する。
 逆らえば、またレイプされる…だから、どんな恥辱に満ちた行為も耐えるしかない。
 直に身体を繋ぐ事を思えばマシだと…少しずつ、幸人の無体な行為を受け入れていく自分の心が、破綻していくのが怖くて、堕ちたくないと強く願うのに、幸人はそれを赦さない。

 もう、今日はこれで終わる…そう思っていたのに、幸人が口にしたのは更なる痴態の強要。
 何も纏わないわたしの身体を乱暴に引っ張り、抱え上げると、幸人はわたしの身体をクイーンサイズのベッドの上に投げ落とす。


「さあ、其処で脚開いて俺にやって見せて?それとも俺にされる方が好きだって認めて、俺に犯られる?」


 ベッドの端に腰を下ろした幸人はうっすらと笑う。
 まるで知らない男の人の様だった。
 精神的に追い詰めていたぶる事に酷く興奮して、淫靡な眼差しをわたしに向けるサディスティックな欲望に囚われた男しか、目の前にいない。
 わたしの知る、わたしの弟はもう此処にはいない。





 囚われたくない…
 囚われたい…





 泣きたい気持ちを堪えて、上体を起こし恐る恐る脚を開く。


「もっと。俺に見えるようにって言っただろ」


 支配者の様に高圧的に、驕慢に命じる。
 震えながら、幸人が良いと言うまで少しずつ脚を開き、言われるまま指を自分の秘裂に持っていき、初めての自慰を始める。
 …幸人の前で。
 触れられてもいないのに、既に溢れかえる蜜でドロドロだったそこは、指を動かす度にクチュッとはしたない水音をたてる。
 秘芯を幸人が触れるように自分の指で苛めば、止まる事を知らない蜜が滴り落ちてシーツを濡らしていく。


「弟に自慰を見られる気分はどう?」
「ぁんっ、はぁ…あぁ」


 淫らな行為に耽るわたしを見る、無表情な幸人の感情のない視線に、身体の奥が熱く震える。
 答える代りに、指を熱を帯びて疼く身体の奥に埋め、淫靡な刺激を求めてゆっくりと内側を撫であげる。羞恥心で遠慮がちだった動作は、次第に自分の与える刺激に反応して帯びていく快楽を求めて、大胆に激しさを増していく。
 静かな部屋に、媚態な動きに合わせた淫らな音と、わたしの喘ぐ声が無情に響く。
 幸人は手を出さず、わたしのその行為を見つめるだけ。 
 それが屈辱的なのに、怖くて逆らえない。恥ずかしいのに止められない。背徳的に罪悪感で心が押しつぶされそうなのに、身体は淫猥な感覚に翻弄される。


「気持ち良くて言葉も出ない?視姦されて感じるなんて、恥ずかしいと思わないの?」


 蔑む言葉を吐く幸人の視線の中に、慾まみれの男の情念が膨れていくのが分かる。
 涙が零れる。
 こんな事をさせられているのに、幸人が嫌いになれない。それどころか、幸人が欲しくて身体が疼いて、自分の与える刺激に満足が出来ない。
 言葉とは裏腹に、わたしを見て、また欲望を滾らせている幸人の姿に、ゾクリとする。
 幸人もわたしを求めてる…それが分かって、心が震える。
 奥まで深く、幸人に満たされたい。
 何時か見た夢の様に、幸人に縋って彼の愛を乞いたい。
 どうしようもなく、心が…身体が…ゆきとを欲しいと訴える。
 狂ってる。
 どうしようもなく、自分が壊れていく。


「っ…あっ、ご…めん、な、さぃ…」
「何謝ってるの、姉ちゃん」
「あぁっ…ゆき…ゆきとぉ、いゃ、イけなぃ…」
「イくまで許さない」
「ゃぁ…お願い、む、むりっ、なの…ゆき、と、早く…」
「そんな曖昧な言葉で淫乱に誘っても無駄」
「ゆき…と……」
「はっきりと言葉にして、俺に強請れ」




 堕ちたくない…
 堕ちて溺れてしまいたい…




 何処で歯車が狂ってしまったの?
 もう、幸人に堕ちても…良い?





 …だめっ、これは夢じゃない!






「っ、言え…ない…駄目…こんなこと…姉弟だもの…」


 わたしの口を滑り落ちようとした堕落の言葉を止めたのは、なけなしの理性。
 こんなの、誰も幸せになれない。堕ちる所まで堕ちるだけ。
 堕ちたら最後、もう二度と戻れない。


「…強情だね。一度は、堕ちた癖にまだ頑張るんだ?」


 ぎしっと、ベッドが軋み綺麗な悪魔が淫靡に笑って近づいて来る。
 何を言っているの?わたしはまだ、堕ちてなんかいないのに…


「いいよ。俺が手伝ってあげる。姉ちゃんが誰のものか思い知って?あの時の様に、泣いて縋って強請らせてあげるよ」


 脳裏によぎったのは、あの夢。
 淫魔に乱された狂った宴のような夢。
 あれは…現実?
 怖くなって後ずされば、幸人が迫る。


「やっ…こ、ない…で……ぃっ!」


 行為をやめ、身をひるがえして、這う様にベッドから抜け出そうとすれば、脚を掴まれて強い力に身体は後ろに引っ張られ、幸人の腕に囚われる。
 腰に腕を回され、空いた幸人の片手で胸を鷲掴みにされた。爪が肌に食い込むくらい握られ、わたしは思わず悲鳴を上げる。


「愛紗美…」
「い、いや…やだよ、幸人っ」
「愛してるよ、愛紗美」
「いやっ、幸人っ!やだぁっ!ゃあぁぁぁぁぁっ!!」


 幸人の姿をした悪魔は昏い笑顔で嗤い、後ろから強引に己の滾った慾の塊と、心とは裏腹に慾を求める淫らなわたしの身体を繋ぐ。
 わたしの上半身を体をベッドに押さえつけ、激しく腰を揺する幸人はまるで獣のようだった。
 快楽なんてない。慾を吐き捨てるように、強引で乱暴な動作だった。
 ただ苦しくて、悲鳴の様な喘ぎを、泣きながら上げることしかできない。


「逃げないで…俺を拒まないで…姉ちゃん…俺を捨てないで…好きだから…姉ちゃんしか要らないから、一緒に、堕ちて。堕ちてくれよっ!」






 あぁ…だめ。そんな泣きそうな声でこいねがわないで…
 昔の弱くてわたしに縋りついてきた可愛いあなたを思い出してしまう。
 大好きな弟、大好きな幸人…愛しいひと
 どうしても、貴方を捨てることなんてできない。諦める事なんて出来ない。
 こんな事をされても、幸人が好き。
 一緒に堕ちたい。
 どこまでも、深く。






「ゆきっ…ゆきとっ!…て、ない…っしょに、一緒に、堕ち、る…好きっ…ぁ、いして、るっ」


 罪深くてもいい…誰に認められなくても…幸人が一緒なら…
 夢中で口にした言葉。
 後の幸人を抱きしめる事は出来ないから、二人を結ぶその場所で幸人の半身を絡めて絞めつけて抱擁する。わたしの言葉が偽りじゃないと、伝えたくて。
 同時に、低く喘いだ幸人の動きが不意に止まる。
 激しくて苦しい行為から突如解放されたわたしは、顔を上げる事も出来ずシーツに突っ伏したまま乱れた呼吸を繰り返す。


「あぁ、姉ちゃん…やっと言ったね。嬉しい…姉ちゃん…愛してる。愛してるよ、姉ちゃん」
「ひっ、あぁぁっ!」


 いつもの穏やかな幸人の声が聞こえ、また幸人がわたしの中に深く入り込む。
 今度はわたしの中を味わいつくすように、しっとりとした動きで、わたしの弱い所を狙いすまして突き上げる。幾度も幾度も。
 次第にさっきよりも激しく掻き乱され、今は頭の中が真っ白に飛ぶような快楽しかない。
 背後の幸人からも、熱のこもった呻くような喘ぎが時々聞こえる。
 幸人も、感じてる。わたしと同じように。
 一つになって、溶けていくようで…それがたまらなく嬉しくて、涙が溢れる。


「ゆきっ、いいっ、も、いっちゃうっ」
「俺も、イきそ、ぅ…くっ、いっしょにイって」
「幸人っ、ぅんっ、いっしょ…に…あぁぁぁぁぁぁっ!」
「くぅっ、愛紗美っ!」


 シーツをきつく握り、身体の奥から突き抜けていく快楽に身をよじれば、震える奥に熱が吹き当たり満ちて広がって、更にわたしを追い立て、体中の筋肉が強張って震える。
 もう、何度も味わったその感覚に、ぼんやりと幸人も一緒に達したのだと思った。
 心が彼を受け入れたからか、その余韻が酷く心地よく甘美に感じた。

 身体を繋いだまま、お互いの汗ばんだ肌を寄り添わせ、幸人は荒い息でわたしの肌に口づけを落とす。
 わたしは、背中から身体を抱きしめてくれる幸人の腕に手を這わせて、彼の手に重ねて指を絡めるように握り、幸人の名前を呼んで、「好き…愛している」と繰り返す。
 またなかで幸人が固く熱を孕むのを感じた。それだけで、彼を感じる中が酷く甘い痺れに満たされる。


「愛紗美、…もう一回」
「もっと…幸人が欲しい」


 後はもう、心が、身体が求めるままにお互いを貪り尽くして、真っ逆様に堕ちた。


 戻れない。
 わたし達は悪魔の様な宴に溺れて、戻る事の出来ない淫靡な地獄に身を堕とした。
 決して幸せになどなれない荊の愛を大切に抱えたまま。



     END

 これにて、『Black Sabbath -悪魔の宴-』ENDです。
 このような病んでいるキャラに、アブノーマル、BAD展開のお話に最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました。

 なにぶん、本格的にR18を書いたのは初めてですのて、作品中、至らぬ点など多々あったかとは思いますが、温かい目で見ていただければ幸いでございます。

 此処までお読みいただきまして、ありがとうございました。


 2013.10.07 秀美(hideyoshi)

追記
 完結タグをつけましたが、感想を頂き考えた結果、不足と思われるエピソードを何話か後日追加することに致しました。
 申し訳ありません。
 追加開始を何時からとお約束できないため、完結タグは掲載再開までこのままとさせていただきます。
 活動報告にもその旨を、ご報告させていただきました。
 御手間をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。

 2012.10.08 秀美(hideyoshi)
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