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裸電球のぼんやりとした暖色の明かりにつつまれた六畳間に、嬌声と淫らな水音が微かに響いていた。 「あっ、はあ、んあ、あ、あ、あんっ」 絨毯の敷かれた床には脱ぎ捨てられた学生服とブレザー、スカート、下着が散乱し。 壁に寄せて置かれたパイプベッドが、ぎしぎしと音を立てる。 シーツも掛け布団も乱れたその上で、生まれたままの姿になった、二つの人影が重なっていた。 「ふあ、ひあ、お、にいちゃ、き、すぅ、し、てえぇ」 「く、ああ…」 まだ幼さが色濃く残るソプラノに答えて、彼の唇が、彼女の幼い喘ぎを漏らすそれに重ねられる。 んく、くち、ぬちゅ、ねちょっ… 唇同士が触れた瞬間、彼女の舌が彼の口内に素早く入り込み、相手の舌に絡まりながら口腔を嬲った。 口の端から粘っこい音が漏れ、シーツを握っていた彼女の両手は彼の背中に廻され、ぎゅっと抱きつく 格好になった。 「ゆ、由希、お、俺」 「わたし、もっ、また、き、ちゃうよっ!」 覆いかぶさる青年の腰が、さらに往復運動を速め、組み敷かれた少女の全身を、とてつもない快楽が 一気に駆け巡った。 「おにい、ちゃあああああああっ!」 「くはあっ!」 何度も突かれ、最早自分の熱なのか愛しい男の熱なのかも分からなくなってもなお感じ取れる熱い滾りが 膣内を満たす。 「あはぁっ、お兄ちゃんが一杯、出てるよぉ…」 二度、三度吐き出してもなお止まらない射精に、彼女は心の底から溶け切った笑みを浮かべた。 「く、はあ…はあ…」 ようやく止まったのか、青年は自身を少女の中から引き抜くと、彼女の隣へごろりと横になり、仰向けになった。 胸は激しく上下しており、行為の激しさを物語る。 並んで横になる、一組の男女。 男の方は青年、というよりは少年と青年の中間といった微妙な年頃であったが、体は引き締まっており、腹筋などは綺麗に割れていた。 一方の彼女のほうは、彼よりも背が低く明らかに年下といった雰囲気で、完全に少女といえる年齢であった。 美人というより可愛さが目立つ顔立ちで、肩を少し越える程度の僅かに色素の薄い髪と相まって、少し幼く見えた。 だがその体つきは同年代の女の子がうらやむほどに均衡が取れ、青年と同じように上下する膨らみは平均と比べても大きめで、 ティーングラビアモデルといっても通じるようなプロポーションであった。 「いっぱいでたね、カズお兄ちゃん。今までで最高記録じゃないかなあ?」 「かもなあ。ま、こんな可愛い妹と結ばれたんだから、しょうがないさ」 「もう、お兄ちゃんってば…」 満更でもない笑顔の妹に、兄は笑って軽くキスをし、頭を撫でてさらりとした感触を楽しんでいた。 再び頭をもたげてきた自分の異常な性欲に、戸惑いを感じながら。 ================================== 天竜 和義と天竜 由希は、それぞれ高校生と中学生の、一見どこにでもいる兄妹であった。 他所より少し仲が良いだけの兄妹。両親や友人達の一般的な評価である。由希のほうは学校でもちょっとした有名人で、 男子の絶大な人気を誇っていた。スタイルと顔立ちの良さに、驕らない気さくな性格のおかげで同姓からも慕われていた。 ちなみに兄は目立った特徴のない、普通の男子である。 そんな二人であったが、両親にさえも打ち明けられない秘密があった。 幼い頃から、二人は愛し合っていたのである。 その関係は、由希が小学校に上がって間もない頃まで遡る。まるで自分ではない誰かがそうさせているように、激しい熱に浮かされた二人は、ある夜体を重ねた。 本当は自分達が一つだったのではないかと思えるほどの充足感、性の知識もほとんどない脳裏に刻み付けられた自らを失う程の快楽は、二人を溺れさせるのに充分であり。 それから、二人は毎晩のように求めあった。両親が共働きを始め、家を空けがちになったのが、それを加速させた。 同じ小学校や中学校に通っていた頃は、昼休みに校内で互いを貪っていたことさえあった。 自分達がおかしいことを、年齢が上がるにつれて少しづつ理解はしていったものの、感情、その奥底に眠るなにかがそれを頑なに拒否していた。 拒否していた。 それどころか最近は「もっともっと繋がりたい」という半ば義務感のような性欲に苛まれ、先日の休日などは午前中から両親の帰宅した夕方まで、ひたすら行為を続けていた、そんなこともあった。 それは何者かが、本当に二人を一つにさせるようで。 ================================== 「お兄ちゃん、また、したくなった?」 最愛の人の手の感触が心地よく、目を細めて微笑んでいた由希が、再び起立した兄の男根に気づいた。年齢相応とはとても 呼べないほどに成長したそれを見る彼女の瞳に、再び獣欲の光が灯る。 「ごめん…何か最近、おかしいんだよ。急に体に筋肉ついて、どれだけ由希と繋がっても、足りないんだ。ぜんぜん、枯れないし」 「──私も、なの」 不意に左腕に、柔らかい感触。和義が視線を向けると、左手に抱きついた由希が、泣きそうな顔で彼を見ていた。 「足りないの。ぜんぜん。胸も、お尻も急におっきくなって。でも、お兄ちゃんが欲しくて、繋がりたくて…っ」 ようやく茂みが形成されはじめた由希のまだ未熟な秘裂が、暖かい液をとろりと吐き出す。それは何度も吐き出された精液では なく、再び彼女が火照り始めた証。それは薄い青色のシーツに、またひとつ染みを作っていく。 「こわい、の……自分が、消えちゃいそうで、でも、で、も、お兄ちゃんが、足りなく…て…っ」 震えた妹の独白を全て聞かない間に、和義は起き上がり、彼女の足元で、膝立ちになっていた。上を向いた怒張の先端から、 先走りがポタポタと垂れている。その両目には彼女と同じ類の光が宿り、それから理性や意思をうかがうことはできなかった。 「うしろ、む、いて、…」 はたしてそれは本当に、愛しい兄の声であっただろうか? しかし由希はそれを考えることはできなかった。彼女もまた、奥底から激しく吹き出した欲情と衝動に、理性を塗りつぶされていた。 うつぶせになり、震える膝に力を入れ、腰を、臀部を浮かし、両の腕で上体を支える。四つんばいの扇情的な体勢を、兄のような、 別の生き物のような声に答えて、とる。 濡れる、という生易しいものではなく、愛液が溢れている秘所はひくひくと再び兄を迎えられる悦びに震え、そして── 生まれ変わる喜びに、震えていた。 「んあああ──っ!」 予告もなく、突然突き入れられた熱が、由希を快楽に痺れさせる。 それと和義に起きた異変は、ほぼ同時であった。 「があああああ゛あ゛あ゛あ゛!」 人のものではない叫びを上げ、腰を打ちつけたまま上体を反らし、彼の体は震え始め、いや、彼の中のなにかが蠢き始めた。 ピストン運動もせず、ただ突き入れたままで、自分の意思、記憶、そういったものを全て押し流す快感に成すすべもない。 歯止めの利かない欲望のまま放出される精液は、人間ではありえないほどの量と勢いで由希の中を満たすが、繋ぎ目から 溢れることはなく、すべて彼女が吸収していた。子供を生み育てる器官ではなく、すでに兄の精を取り込むための器官と 成り果てた胎内によって。 「かあっ、んはあ、ああ、あああ…」 彼と、そして自身に起こり始めた変化にも関わらず、彼女は淫らに震え、喘ぎ、嗤っていた。理知も記憶もすべて、飲み込まれてしまったかのように。 (やっと、やっとひとつになれる──) 快楽に薄れていく思考の中で、由希が最後に聞いた声は、自分の中から聞こえるような、そんな声だった。 おめざめのじかん・つづき 後背位で繋がったままの二人。まず変化を始めたのは、兄の和義であった。 膝立ちの両足、その体毛が一気に抜け落ちると、ぐにゅりと足先が歪んだ。足の指は瞬く間に癒着し、溶け合い、なくなっていく。 右足と左足、全ての指がなくなると、今度は互いの足が絡み合い、ねじられながら徐々に後へ伸びていき、少しずつその長さを増していった。 「あが、ぐが、ぎゃ」 のけぞったままで大きく開けながら、意味のない音の羅列を発し続ける彼の口。その端から顎を経て、由希の肌白い背中へぽとりと落ちる涎の雫。 右の瞳からまるで色を失うように、虹彩が消えていく。足の先端がねじられながら癒着し、そのの変化は膝まで進み、開くことは不可能だ。さらに伸びて一つになった 足先の皮膚に少しひびが走り、肌色は色を濃くし、緑がかった青色へと変色を始めた。同時に、由希も変化を始めた。 「ああ、くは、ああんっ!」 和義の肉棒をくわえ込んだ由希の淫唇は、悦びに二、三度うち震えるとピッタリと閉じていく。その内側では、彼を離すまいと蠢いていた襞がぼこぼこと暴れ、 亀頭を、陰茎を取り込んでいた。それが完全に溶け合うと、秘裂と怒張の根元も融合し、二人は完全に繋がった。 「はあ、んふう、ひき、くがっ!」 彼女の太腿がそれぞれ、内側から膨らみながら太さを増し、長さを増す。それに耐え切れなくなったのか、由希は重心を後ろに下げ、前かがみの正座のような格好になる。 本来ならば後の兄が支えになるはずだったが、彼の足は骨格までもが癒着して再構成されて、支えることはできなかった。 異様に膨らんだ腿が脹脛に触れると、皮膚の下の肉がうごめくようにして飲み込み始めた。踵は同じように膨張を始めた尻肉に埋没し、皮膚の境を無くしていく。 「はあ、んふう、ひき、くがっ!」 膝から先は完全に太腿に飲み込まれ、臀部の柔肉に埋まっていく両足も、もうそれぞれの指を残すだけになった。それが完全に無くなるのも時間の問題だろう。 さらに、無くなった足を補うように、新しい足が膝に形作られていく。大腿骨の先端が変化を始め、正真正銘「膝立ち」している由希を支えるべく、 膝頭を突き破り、鋭利な突起が三つシーツに食い込んだ。 「おう、うお、おおおっ!」 「はう、ひあ、ひあ、ひくうっ!」 肥大化した由希の尻肉。和義の睾丸が、その谷間に吸い込まれるように融解し、二人の性器は完全に一つになった。それでも変化は留まらず、密着している彼の腰も、 膨らみ続ける彼女の臀部との区別をなくし、癒着を始めた。 「かはぁーっ、はぁーっ」 和義の両足は、原型を留めていなかった。 融合と皮膚の硬化、変色は、太腿の付け根まで及び、巨大な一本の尾、としか形容できなくなっていた。 いや、それは尾そのものだろう。快楽に震えているのか、左右に空を切りながらベッドの上でのたうっている。 「ふあぁぁ、あはぁぁぁ」 快楽に染まりきった由希の表情。左目は意思の光を失って久しく、右目の虹彩が、爬虫類を思わせる縦に伸びた切れ長のものへと、その色も紅くなりながら変化していく。 「あ、ああ…」 そうして、下半身は一つになった。由希の膝だった部位には三つの鍵爪が生えた大きな足が出来、尻尾と化した彼の両足と同じく、皮膚の硬質化、いや鱗化が始まっていた。 程なくして、腰から上の融合が始まる。 「ぐげ、げぐえうきえいかがああぐっ!」 呻きともつかない不気味な声が開けっ放しの彼の口から漏れ、何とか残った上半身を、彼女の背中に重ねるようにして、融合した根元から少しづつ重ねていく。アイスクリームが 溶けていくかのように、肌が重なった部分から張り付き、癒着していく。 時を同じくして、ぼきぼきと何かが折れるような音を響かせながら、和義の両腕が肘から手首からそうでない部分から折れ曲がり、左右に伸び始めた。両手の指も音を鳴らしながら 異様に伸びていった。その間には皮膚が張られ、また同じように腋と二の腕に張られた皮膚が、少しづつ広がっていく。 人間とは呼べないような、異様な姿になりながらも、二人はその全てが快楽に変換されていた。 細胞が核レベルで結びつく。筋肉の繊維一本一本が交互に編み上げられ、骨は互いに癒着する。血管と神経が絡み合いながら再構成され、脂肪は溶け合って肥大化し、筋肉の一部へと 変換される。内臓までもが融合を始め、人間ではない何かへと適した形へ変化していく。 そのすべてが、一つとなりかけている二人を、絶頂の瞬間のあの気持ちよさ、それを遥かに上回る性感になって二人の意識を揺さぶっていた。 上体を支えていた彼女の両手は爪が黒く、長くなり、緑の鱗に覆われ始めていた。上半身の融合はかなり進行し、和義の肩から下は由希と一つになっていた。融合箇所は肥大化し、 すぐに鱗が包んでいく。伸びきった両腕もそれに覆われ、広がっていた皮膚も変質し、一対の翼を形作った。 ついに肩が触れあい、融合が始まる。これが二人の少年少女であったという名残は、首から上にしか残されていなかった。由希の腹部は白色の強い、柔らかそうな蛇腹になり、 大きめな双丘は他の部分同様、緑青色に染まる。その頂は溶けるようにして、さらに成長を始めた双丘に飲み込まれた。 その姿は、まさに異形。 肩から下は二人より二周りも大きい、鱗に覆われた爬虫類のような何か。成長しきった巨大な乳房が唯一、人間の名残を匂わせる。 肩から上は、高校生の少年と中学生の少女、二人の頭が並んでいた。二人とも理性の欠片も無い、淫らに嗤った貌で、涎や涙を垂れ流していた。 そして、それぞれを個たらしめる自我の融解が始まる。 (お、お、れ、……ゆ、き……) 自我を掻き消すような激しい快楽に混じり、明らかに他人の思考、記憶が風前の灯と化した和義の理性に入り込み、意思の境界さえもが曖昧にぼやけ始めた。 (お、れ、は、ゆ、き…?ゆき、は、おれ…?) 入り込んだ他人の思考、それは由希のもので。 (そう。君は由希) それを自覚した瞬間に、別の誰かの声がした。それは自分のものの様で、最愛の妹のものの様な、それでいて遥か昔から知っているような優しい声。 (そして、君は和義) 最早自分なのか、妹なのかさえ分からなくなった。 (そして、君は僕) (う、うわあ、ゆ、ゆき、が、お、にい、ちゃ、んが、まざ、るぅ……まざっちゃ、うぅ……) (そう。君たちは混ざって、一つになって、僕になるんだ) 二人の精神は完全に境界を失い、融合を果たした。そして声の主そのものへと変化していく。それに合わせるように二人の肉体は、加速度的に最後の変容を進めていった。 「「ああああああああああ!」」 並んだ口から叫び声を吐き出して、二人の首がぐぐりと伸び始めた。伸びながら和義の首は、由希のそれに根元から巻きついていく。そこから皮膚の境界が無くなり、太くなり、鱗が覆う。 首の成長が止まると、二人の頭が、勢い良く左右からぶつかり合った。 ぐしゃりといういやな音が、部屋に広がる。しかし二人の顔は、嗤ったままだった。 右半分が、由希の顔。 左半分は、和義の顔。 互いの顔の半分がめり込みながら、二人は口の端を吊り上げ、嗤っていた。 「あが、げがあっ」 鼻先が、上顎ごとめきめきと、前に伸びていく。下顎もあわせて伸び始める。 「けは、ごげ、ごぼっ」 髪の毛が抜け落ち始め、耳が引っ張られるように尖り、広がる。 「ぐぼ、ぐおお…」 ぽろぽろと抜けていく歯。しかし抜けた先から、尖った新たな歯が生えそろう。 「ぐおおおお……」 声帯までも融合し、人間とは思えない唸りが、喉の奥から響き始めた。髪の毛が完全に抜け落ち、変形した頭から、一対の角が伸びる。 「おおおおおおおっ!」 首を覆いつくした鱗は瞬く間に頭を覆い、伸びきった鼻先と顎を包んで。 「ぐるおおおおおおおおおおおおっっ!!」 右目を紅く、左目を蒼く輝かせて、生まれ変わった喜びを思い切り、咆哮へと乗せた。 それは、まさしく一匹の竜。 二人が自他の境を失い、ずるずると融合し、全く別の生物、一つの個へと纏まった姿。 (やっと、やっと果たしたよ。千年以上の時を経て、ようやく) 自分の体をあちこち見回しながら、人間には決して聞き取れない「声」で、満足げに呟く蒼き竜。 何度も何度も様々な生物に転生を繰り返しながら、力を溜め、再び空に羽ばたく為に。 (二人の人間に別れちゃったのは誤算だったな……) 別れた魂の欠片は、強く呼び合い、それは分離した二人が愛し合うという結果になって。 魂や力を精液や愛液に乗せて注ぎあい、ようやく今、長年の願いは果たされた。 (二人には悪いけど、ほんのちょっとだけ、休んでてね) カーテンの端を銜えて、破かないようにそっと首を動かすと、寝静まった住宅地の僅かな明かりと、真っ白い月が佇んでいた。 (静かで、いい夜だ) ベランダと部屋を隔てる大きなガラス戸も、首と口で器用に開け放つ。夜風が蒼い鱗を撫でる感触が、何よりも気持ちいい。 (久しぶりに飛ぶんだ。落ちないように気をつけなきゃね) 二人の人間が成り果てた、一匹の竜は、ベランダからふわりと飛び立つと、月明かりの差すほうへ、静かに、静かに舞い上がった。 が、そうは問屋が卸さないのであった。 彼はしっかりと航空自衛隊のレーダーサイトに捉えられ、ガ○ラやギ○オスとの交戦経験もある百戦錬磨の百里基地所属F−15Jと日が昇るまで 必死の鬼ごっこを繰り広げることになり。 へとへとになって逃げ帰ると、竜の体を保つだけの力さえも残っておらず、余韻も味わう間もなく和義と由希に戻った。 その日二人は一日中、謎の全身筋肉痛に悩まされていたそうな。 初出:2009/1/13〜2/4「【異形化】人外への変身スレ第三話【蟲化】」 |