The National Institute of Infectious Diseases (NIID) is a research institute attached to the Ministry of Health, Labour and Welfare for conducting (i) fundamental and applied research on infectious diseases and (ii) national test for lot release and development of antibiotics and vaccines. This site will be to close two notable important news of infectious diseases in Japan. It will also present many comprehensive informations of latest researches being done on all depertments including Infectious Disease Surveillance Center.
Q1:CREとは何の略ですか?
A1:CREとは、「Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae」の略で、最後の切り札的抗菌薬であるイミペネムやメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬に対し耐性を獲得した、肺炎桿菌や大腸菌、さらにその仲間の腸内細菌科に属する細菌のことです。
Q2:CREはなぜ問題なのですか?
A2:CREは、カルバペネム系抗菌薬を含む多くの広域β-ラクタム系薬に対し耐性を獲得しているのみならず、他の系統の、例えばフルオロキノロン系やアミノグリコシド系の薬剤にも多剤耐性を獲得していることが多く、感染症を引き起こすと治療が難しくなるからです。また、CREの菌種はもともと腸内に棲息しやすい菌種であるため、ヒトの腸内に長く定着する性質を持ちます。
Q3:CREはどんな病気を引き起こすのですか?
A3:CREは、肺炎桿菌や大腸菌が多く、その他、その仲間の細菌です。したがって、肺炎や尿路感染症などの原因となる場合が多いです。また、手術後の患者さんでは、創部の感染症や腹膜炎、膿瘍などの原因になることもあります。さらに、血液中に侵入し敗血症などを引き起すと、重篤化することが多く、米国では半数が死亡したと言われ、警戒されています。
Q4:CREについて、日常的に注意することはありますか?
A4:健康な日常生活を送っている方々では、CREを過度に心配する必要はありません。海外で医療行為を受けたり、海外旅行から帰った後、体調不良等で医療機関を受診した場合は、海外に出かけていたことを、医師に告げて頂く必要はあります。海外では、CRE以外にもそれぞれの地域で流行や土着しているいろいろな病原体に感染する可能性があるからです。
Q5:万一、家族にCREが感染していると言われた場合には、どうしたら良いのですか?
A5:健康な日常生活を送っているご家族の方々には、CREはほぼ無害なので、過度な心配はいりません。しかし、お医者さんで抗生物質等を処方してもらい服用している方の場合には、CREが感染して増えることもあるので、その旨、医師に相談して下さい。また、CREが検出される患者さんの喀痰や便などの処置や処理の際には、手袋を用い、終了後には、石けんで手指を洗えば問題ありません。
Q1:CREには、どのような菌種が含まれるのですか?
A1:CREには、菌種としては、肺炎桿菌や大腸菌が主流を占めていますが、その他、肺炎桿菌の仲間であるKlebsiella oxytoca、点滴の汚染で問題となることがあるSerratia属菌、Enterobacter属菌、さらにCitrobacter属菌などがあります。また、現時点では稀ですが途上国等では、Salmonella属菌やShigella属菌のカルバペネム耐性株も検出されている事例もあります。
Q2:CREが産生するカルバペネマーゼには、どのような種類があるのですか?
A2:これまでに、3つのグループが知られています。日本も含め世界中に広がっているのは、IMP型やVIM型、NDM型などのメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)のグループです。米国や欧州で広がっているのは、KPC型と呼ばれるものです。一方、欧州で急激に広がっているものとしては、OXA-48などと呼ばれる新型カルバペネマーゼを産生するCREもあります。
Q3:なぜ、CDCはCREに対する警告を発したのですか?
A3:CDCの警告文書には、米国では、この10年間に、カルバペネム耐性のKlebsiellaが7倍、腸内細菌科の菌種全般では、4倍に増えていると記載されています。引用されているMMWRによると、Klebsiellaが1.6%から10.4%へ、腸内細菌科の菌種全般では1.2%から4.2%と、急増しています。また、CREはグラム陰性菌のため、エンドトキシンを産生し、血液中に侵入して敗血症等を起こした場合、エンドトキシンショックや多臓器不全を誘発し、患者さんの症状の重篤化、予後の悪化に繋がり、半数が死亡すると警戒されています。米国では、これまで、KPC型カルバペネマーゼ産生菌が多い傾向がみられましたが、最近、コロラド州の病院で、NDM-1を産生するCREのアウトブレイクが発生し、また、欧州で広がっているOXA-48を産生する新型のCREも最近新たに検出されているため、CREに対する注意喚起を行ったものと思われます。
Q4:米国以外ではCREの状況はどのようですか?
A4:欧州では、VIM型やNDM型のMBL産生株とともに、KPC型、さらに、OXA-48の産生株も広がっており、各地でアウトブレイクも報告されるなど、米国よりある意味で深刻な状況に陥っています。また、インドやトルコ、ギリシャさらにその近隣のアジアや中東諸国などでも、CREが広がっており、警戒されています。また、イスラエルや中国の上海、香港、その近くの浙江省や江蘇省などでKPC型カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌等が増えています。
Q5:CREを早期に検出するにはどうしたら良いのですか?
A5:細菌検査室で日常的に実施されている薬剤感受性試験では、CREに対しては、イミペネムなどのカルバペネムのMICが必ずしも「R」とならない場合もあり、カルバペネム耐性を目安にしていると、見落とす危険性があります。多くの広域β-ラクタム系薬、特にセファロスポリン系薬に耐性を示し、ESBLの阻害剤であるクラブラン酸やSMAなどのメタロ-β-ラクタマーゼ阻害薬の存在で、耐性度が変化しない株については、カルバペネムの分解活性を確認するため、変法ホッジテストを実施すると検出できる場合があります。この場合、メロペネムを含むdiskを用いると感度が高くなると言われています。また、KPC型カルバペネマーゼ産生株では、3-アミノフェニルボロン酸により阻害活性が観察されますが、AmpC産生株との鑑別が必要になります。CREが疑われる株に対しては、PCRによる遺伝子検出が最も確実です。
Q6:CREを保菌したり感染症を発症している患者さんに対してはどうしたら良いですか?
A6:院内伝播を食い止める為の対策は、MRSAや多剤耐性緑膿菌などに対する感染制御の手法と基本的には同じです。しかし、MRSAや多剤耐性緑膿菌では、便の培養検査はあまりしませんが、CREは肺炎桿菌や大腸菌等の腸内に棲息しやすい菌種のため、喀痰や膿、尿などの検査とともに、必要に応じて、便の検査、さらに陰部の拭き取り検査などを実施することで、保菌者を早期に発見、特定することができるようです。CREが検出されたら、他の多剤耐性菌(MDRO)と同様に標準予防策とともに接触感染予防策の徹底など、院内伝播の防止策を強化することが必要です。
なお、CREによる感染症を発症している患者さんの治療法としては、定まった指針やガイドラインはありません。患者さんの病態と薬剤感受性試験の結果などを考慮し、臨機応変な対応をして頂くことになります。しかし、CREによる感染症を発症していない保菌患者さんに、除菌のため抗菌薬を投与することは推奨されていません。無用な抗菌薬投与は、逆にCREを増やしてしまう危険性があります。
Q7:CREが検出されたら、保健所に届け出をするのですか?
A7:感染症法では、現時点では届け出は求められていません。しかし、一定期間内に複数の患者さんからCREが検出され、CREによる院内感染の発生が疑われるものの、対策の効果が見られない場合などには、医政局指導課の課長通知(平成23年6月17日:医政指発0617第1号)に従い、保健所に届け出て頂く必要があります。
もし、CREが疑われる株が分離された場合には、適正な感染制御を実施するためにも、CREか否か判定する必要があり、近隣の連携病院、特に大学附属病院などの検査室や細菌学教室に依頼して詳しい解析をしてもらうことが必要でしょう。また、大学病院等で対応が難しい場合には、各自治体や、国立感染症研究所 細菌第二部( This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. )に相談して下さい。
参考資料(平成23年6月17日:医政指発0617第1号抜粋)
★医療機関内での院内感染対策を講じた後、同一医療機関内で同一菌種による感染症の発病症例(上記の4菌種は保菌者を含む)が多数にのぼる場合(目安として10名以上となった場合)または当該院内感染事案との因果関係が否定できない死亡者が確認された場合においては、管轄する保健所に速やかに報告すること。また、このような場合に至らない時点においても、医療機関の判断の下、必要に応じて保健所に連絡・相談することが望ましいこと。
{注:「上記の4菌種」とは、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)}
国内外の薬剤耐性菌の最新情報については、以下のHPより、随時提供されています。
http://yakutai.dept.med.gunma-u.ac.jp/society/index.html
文責:荒川宜親 (名古屋大学大学院医学系研究科 分子病原細菌学/耐性菌制御学)
柴山恵吾 (国立感染症研究所 細菌第二部)