◇春場所<12日目>
(21日・ボディメーカーコロシアム)
単独トップの横綱白鵬(28)=宮城野=が大関稀勢の里を上手投げで下して12連勝とした。13日目に白鵬が勝ち、ただ一人2敗の平幕隠岐の海(27)=八角=が負けると、北の湖と並ぶ史上4位の24度目の優勝が決まる。横綱日馬富士は大関琴奨菊を寄り切って9勝目。稀勢の里、琴奨菊、鶴竜の大関陣はそろって7勝5敗となった。関脇豪栄道は豊ノ島を押し倒して勝ち越しを決めた。
◇
稀勢の里の形である左四つになってもおかまいなし。白鵬は動きを止めることなく攻め続け、右上手からぶん投げた。荒れる春場所と言われようが、白鵬の周囲だけはそよ風も吹かない。幕内勝ち星で史上9位タイとなる647勝目で初日から12連勝。13日目に隠岐の海が敗れ白鵬が勝てば23例目となる13日目Vが決定する。
「初日からいい流れできている。その一番一番にかける思いがある。どの一番も変わらない気持ちで、いい相撲を取りたい」
目元をキリッと引き締めたが、実はこの2日間はとても万全とはいえない状態で臨んでいた。頭をつけて相撲を取った10日目の把瑠都戦で耳を負傷し、そこにばい菌が入ったため発熱した。
師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)は、その状態を「把瑠都戦の後に頭がズキズキすると言っていた。リンパが腫れている。寒気がすると言っていた」と説明。11日目に点滴を打ち、この日の朝も稽古を休んで抗生物質を打ったという。
「久しぶりに左耳がわいちゃって(こすれて血が出ちゃって)。安静にしていますけど…。まだ終わってないので何もないです」
弱音を吐かない横綱の前に勝利の女神が舞い降りたのは12日目。東京から紗代子夫人が愛妻弁当を持参して堺市の宿舎に駆けつけた。
宮城野親方は「(白鵬からの)夜の電話で、声に元気がないことに奥さんが気づいて、きょうのちゃんこにモンゴル料理を差し入れて帰りました」という。
もう大丈夫。「初めてのこういう場面でもないし」。独走も、体調不良と戦うのも、すべて経験済みだ。 (岸本隆)
この記事を印刷する