メルケル内閣の人気閣僚だったグッテンベルク元国防相〔AFPBB News〕
しかし、そのスーパースターが2006年に書いたという論文は、確かにいただけない物だったようだ。論文を書いた当時、すでに議員であったグッテンベルク氏は、誰かに代筆させたのではないかと、私は想像しているが、それを言っても始まらない。
このとき、グッテンベルクの論文が盗作だと言い出したグループは、インターネットをフルに活用して、無断引用の部分を見つけた人が誰でも投稿できるようなページを開設していたので、グッテンベルク攻撃は一時、まるで暇人のゲームのようになった。
その結果、論文の2割がどこからか引っ張ってきた他人の論文そのままだということが分かった。そして、氏はついに「コピー・アンド・ペースト大臣」と呼ばれるに至り、政治家として再起不能となった。メルケル氏は将来の首相とまで言われた人材を失い、打撃を受けたのであった。
ただ、盗作は事実だったとしても、この事件には政治的な匂いが濃厚だった。しかも、政敵を追い落とすには、ハニートラップ以外に、博士論文攻撃という方法があるということに、皆が気付いたのである。
博士論文の調査を請け負う会社。メルケル首相も標的に?
グッテンベルク辞任を仕留めた1カ月後、この博士号狩りのグループは、ヴロニプラグという会社を設立した。顧客の依頼により博士論文を調べる会社だ。
要するに、盗作だと証明するのが仕事だが、これが途方もなくお金になることが分かったのだろう。今回のシャヴァーン大臣の博士論文を調べて、盗作だと言い出したのも、もちろんこの組織だ。
ヴロニプラグの創設者、M・ハイディンクスフェルダー氏(47歳)のインタビューを読んだ(ハンブルガー・モルゲンポスト紙、2月11日付)。氏は2004年から12年まで、海賊党の党員であることを隠してSPD(社民党)に所属していたというから、スパイのようなものである(海賊党というのは比較的新しい党で、2011年に若者の浮動票を得て一時的に盛り上がった)。
それが明るみに出たので、SPDをある日の夜中に突然辞めて、10時間後には海賊党のリストに登場したと、本人がインタビューで語っている。
実は、氏はつい最近まで、本名を絶対に明かさなかった。グッテンベルク大臣の論文騒ぎのときの記事を読むと、まだ匿名になっている。それが今、凱旋将軍のように姿を現し、40の論文を手掛け、そのうち15が国会議員のものだと豪語している。
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