在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。
平成24年4月1日
在ノルウェー日本国大使館
海外では,常に「自分の身は自分で守る」との心構えを持って,自ら渡航,滞在の目的に合わせた情報収集や安全対策に努めることが大切です。
ノルウェーは,比較的安全な国と言われてきましたが,近年,他のヨーロッパ諸国と同様,テロの脅威の高まりや犯罪の増加等により,安全に対して無頓着ではいられなくなっています。昨年7月には大規模なテロ事件も発生しています。
日本は経済大国としての知名度が高く,私たち日本人としては誇らしく思える反面,「日本人=犯罪のターゲット」とされやすい傾向にあります。
海外で暮らす皆さんの多くは,安全に対する関心が高く,常に周囲の状況や雰囲気を敏感に感じとる力を身につけています。また,初めて海外で暮らす方や旅行者も,さまざまな形で安全対策や情報に接しています。
しかし,不幸にも被害に遭ってしまった方のお話を伺うと,ちょっとした不注意や類似の手口により,わずかな隙をつかれて被害に遭われており,「普段から気をつけていたのに」「みんなから言われていたのに」といった声がよく聞かれます。
みなさんがこの「手引き」を参考にされ,ノルウェーで安全に過ごしていただけるように,少しでもお役に立てればと願っております。
平成24年4月
ノルウェーの治安は他のヨーロッパ諸国に比べ比較的良好であると言われています。しかし,昨年7月にはオスロ等においてテロ事件が発生しており,その後も国内や周辺諸国の情勢からテロの脅威は依然払拭できない状況にあります。
一般犯罪については,警察へ届けられた件数からみますと,強盗,窃盗(ドロボウ),性犯罪,暴力犯罪,薬物犯罪等で増加傾向が続いており,特にすり・ひったくりはこの1年で,ノルウェー全体で約3割増加しているとのことです。
特に,オスロやベルゲン等の都市部や観光地での窃盗事件が多く,空港やホテル,レストラン,公共交通機関内等ですりやひったくり,置き引き等が発生しており,特にオスロにおける窃盗事件は,警察に届けのあった件数でみると,この1年で約4割強増加しているとのことです。
また,ドロボウを追跡した被害者が,犯人に刃物で刺され大けがを負うという事件も発生しています。犯罪には様々なものがありますが,多くの犯罪者は武器を持っていると考えるべきであり,犯人の追跡等は非常に危険です。
幸いにも,ここ数年,邦人の人命に関わる事件は発生していませんが,ノルウェーにおいても日本と同様,殺人(昨年7月のテロ事件を除く)やレイプ,恐喝,けん銃・刃物を使った強盗等の凶悪事件が発生しており,これらは増加傾向にあります。特にレイプ事件は昨年マスコミでも大きく取り上げられました。
邦人の方々がこれらの凶悪事件等の被害に遭う可能性も十分に考えられます。特に夜間や週末の繁華街への外出の際には気をつけなければなりません。
警察も治安対策を強化し,ドロボウや銃器,薬物犯罪等への各種対策を推進していますが,やはり海外においては「自分の身は自分で守る」が基本となります。
犯罪の種類 | 2008年 | 2009年 | 2010年 |
---|---|---|---|
殺人 | 34件 | 29件 | 29件 |
強盗 | 1,598件 | 1,776件 | 1,687件 |
強姦 | 944件 | 998件 | 938件 |
侵入罪 | 11,601件 | 12,973件 | 11,352件 |
麻薬犯罪 | 17,547件 | 18,616件 | 21,954件 |
【ノルウェー中央統計局:2012年3月末現在】
身近で起こった犯罪のほんの一例を見てみましょう。普段のちょっとした行動や用心が犯罪から身を守ります。
混み合った電車の中で,隣の人と何回か身体が当たり,その時は特に気にならなかったが,電車を降りると持っていたバッグの口が開いており財布がなくなっていた。
警察官を名乗る者から偽札チェックをすると言われ,財布を検査された後,気がつくと,現金,カードが抜き取られていた。
日本人に目星をつけると,片言の日本語で「柔道」,「空手」等と親日的に言い寄り,何らかの技をかける真似をしつつ財布を抜き取り逃走する。
ATMで現金引き出し中に背後から暗証番号を盗み見され,ATMから離れた後,カードをひったくられ,またはすられた。その後,盗まれたカードで現金が引き出された。
宿泊先ホテルでの朝食時(ビュッフェスタイル),ハンドバッグ等を席に置いて食事を取りに行った隙に置引きされた。
空港ロビーでチェックインの際,係員との話に気を取られている隙に,足元に置いてあったアタッシュケースがなくなっていた。
レストランで食事中,窓の外を見ると,数人のグループが何かを訴えかけており,それに気をとられている間に,隣の椅子に置いていた鞄がなくなった。
一時帰国のため,10日間,家を留守にしている間にドロボウに入られ,家の中を荒らされた。
買い物に出かけたわずかな時間に,閉め忘れた窓から空き巣に入られ貴重品を盗まれた。
友人の家に遊びに行き,路上に車を止めていたところ,帰る際に車がなくなっていた。
アパートのガレージに駐車していた車のドアが壊され,車の中に置いてあった貴重品を盗まれた。
ショッピングセンター内のATMで現金を引き出した際にカード情報を盗まれ,他国で自分の口座から現金が引き出されていた。
ノルウェー国内の住居(アパート等)を探すため,インターネットで検索したところ,格安物件が掲載されていた。物件を確認する前に指定された口座にデポジットとして相当額を振り込む様に指示があったが,アパート情報は偽物であった。
ここに挙げたのは,ほんの数例です。このほか犯罪から身を守るためには,危険な場所に近づかないことが一番です。比較的安全と言われている国とはいえ,繁華街や夜になると人通りが少なくなる通り・公園等,身近なところに犯罪は潜んでいます。また,空港,駅,ホテル,観光地等,旅行者の多い場所でも注意が必要です。
長期滞在している知人や友人に危険な場所等の様子を聞いてみるのも大変有効です。
ナイフ等の凶器を使うほか,被害者の首を絞めて失神させたり,羽交い締めにしたりして所持品を奪い取るなどの凶悪事件も発生しています。
不幸にもこのような事件に遭遇してしまった場合,周囲の人や近くの人に助けを求め,直ちに警察に通報することが必要です。ただし,無理に犯人に抵抗すると,思わぬ怪我をし,場合によっては生命に関わる事態にもなりかねないことから,犯人の要求に従うことも身を守る方法の一つです。
また,帰宅した際に閉めたはずの鍵が開いていたり,窓ガラスが割れていたりしたときには,不用意に家の中に入らず,すぐに警察に通報し,知人や近所の人と一緒に中を確認するなど用心が必要です(まだ犯人が家の中にいることもあり危険です。)。何かお困りのことがあれば,大使館に御相談下さい。
盗難等の一般的な犯罪のほか,テロ事件や誘拐事件,身近なところでは,自然災害への備えや交通事故への注意等も必要です。
昨年7月22日午後,オスロの政府庁舎爆破及びウトヤ島における銃撃テロ事件が発生し,77人もの尊い命が失われました。犯人は逮捕されましたが,この事件は現在もノルウェー社会に大きな影響を与えています。
また,ノルウェーが国際的なテロ組織から攻撃対象として名指しされていることや,今年に入ってからも,テロ未遂事件の被告に有罪判決が下されたり,近隣国においてテロ事件が発生しているなどの情勢から,新たなテロの脅威は,依然として払拭されておらず,治安当局も警戒を続けています。
もしも,みなさんの近くでテロ事件の発生や,警察等から避難指示があった場合には,直ちに安全な場所へ避難して下さい。
また,旅行や出張をされる場合には家族や友人に連絡先を知らせておきましょう。
当国の誘拐事件は,いたずら目的や麻薬犯罪に絡んだものが多く,件数は必ずしも多くありませんが,殺人に発展するケースもあるようです。
また,登校中の小学生に対して甘言を使って執拗に車へ誘い込もうとする事案も発生しております。特に小さなお子さんの場合,一人にしないことはもちろんのこと,いわゆる「いかのおすし」等犯罪に遭わないための術を教えておくことが大切です。
いかのおすし:いか(知らない人についていかない),
の(他人の車にのらない),
お(おおごえを出す),
す(すぐ逃げる),
し(何かあったらすぐしらせる)
これまでのところ,日本人を対象とした誘拐事件の発生はありませんが,日頃から誘拐等から身を守るために,深夜の外出や帰宅を避けるほか,常に周囲に気を配ることも必要です。
洪水や土砂崩れ等の自然災害はいつどのような形で起こるかわかりません。
気象情報等,テレビ等を通じて情報収集をおこなうほか,万が一の際の一時避難場所や連絡方法等を家族や友人等とあらかじめ決めておきましょう。
ノルウェー国内の2011年中の交通事故による死者数は169人,負傷者数は8,629人で,どちらも減少傾向にあります。
人や自転車の優先通行が徹底されてはいますが,街中では見通しの悪いところも多く,車の通行は日本とは逆の右側通行であることから,慣れないうちは若干違和感もありますので,特に信号機のない場所での道路の横断には注意して下さい。また,冬季は路面が凍結し滑りやすくなることから,転倒事故等にも注意しましょう。
車の運転に際しては,人や自転車の飛び出しはもちろんのこと、優先道路を除き,信号機の無い交差点では,小道からでも右側から進行してくる車が優先(ロータリーでは,ロータリーに入っている車が優先)するので注意が必要です。
また,冬季は,日照時間が短くなり,横断歩道等の道路表示や,歩行者が見えにくい時間帯が長くなります。交通事故に巻き込まれないためにも,歩行者となる場合の服装については,暗がりでも目立つ明るい色のもの等を選び,反射用グッズ等を有効に活用するなどの配慮が必要です。交通安全対策については,当館ホームページ「交通安全対策(2010年5月)」を参考にして下さい。
警察 112
消防 110
救急車 113
※ 緊急タクシー(急病の場合のみ)電話:22 38 80 50
救急病院,24時間営業の薬局の住所・電話番号は次の通りです。
住所: Wergelandsveien 15, 0244 Oslo
代表電話 :(+47) 22 99 16 00[FAX (+47) 22 44 25 05]
なお,閉館時間帯(夜間,土曜・日曜及び祝祭日)は,留守番電話での対応となり,緊急時の連絡方法等を御案内しています。
とっさに言葉が思いつかないときは,英語でも日本語でも大きな声で助けを求めて,とにかく周囲の人たちに異常を知らせましょう(ほとんどのノルウェー人は英語が堪能です。)。
日本語 | ノルウェー語 |
---|---|
助けて! | Hjelp!(イエルプ!) |
泥棒! | Tyv!(テューヴ!) |
火事だ! | Brann!(ブラン!) |
警察を呼んで下さい。 | Ring politiet!(リング ポリティーエ) |
救急車を呼んで下さい。 | Ring ambulansen!(リング アンビュランセン) |
消防に連絡して下さい。 | Ring brannstasjon!(リング ブランスタショーン) |
私はノルウェー語ができません。 | Jeg kan ikke norsk.(ヤイ カン イッケ ノシュク) |
3ヶ月以上当国に滞在を予定されている方は,大使館に「在留届」を提出しなければなりません。当館ホームページから在留届電子データ(ORR)または在留届用紙の郵送やFAXでの届け出もできます。また,届出事項に変更等ありましたら,電話,E-MAIL等で大使館にご連絡下さい。
万一,みなさまが事件・事故や災害に遭われた場合,大使館では「在留届」をもとにみなさまの所在地や緊急連絡先を確認して援護をします。詳しくは大使館にお問い合わせいただくか外務省ホームページをご覧下さい。
ご存じのように世界ではさまざまな事件や事故が起こっています。海外への出張や旅行の際には行き先地の情報収集が必要不可欠です。観光情報とともに現地の治安情勢の確認もお忘れなく。外務省海外安全情報ホームページでは,邦人向けの世界各国の安全情報を提供しています。
子の親権問題として,一方の親が他方の親の承諾なしに国外へ子を連れ出す行為が国際的に問題となっております。このような行為は誘拐等として刑罰の対象となることがありますので十分にご注意ください。
大使館は皆様のお役に立てるよう窓口での応対のほか,電話での各種問い合わせにも応じています。また,ご自宅や会社のパソコンから容易にアクセスできるようホームページを開設(ノルウェー語,一部邦人向け情報は日本語)し,情報提供を行うとともに,E-MAILでの問い合わせにも応じていますので是非ご活用下さい。
また,身近に起こった事件事故等の情報をお寄せください。
大使館では皆様のより安全なノルウェーでの生活のお手伝いをしたいと考えています。
大規模自然災害,テロ,暴動等の緊急事態はいつおこるとも限りません。もしも緊急事態が発生時した場合には,大使館が行う各種の情報提供,安否確認,避難指示等はすべて「在留届」に基づいて行うため常に最新の状態にしておく必要があります。転居や帰国の際も必ず変更届を行って下さい。
また,在留邦人の皆様が独自で企業,学校,団体等で連絡網を有している場合は緊急時の連絡手段として大変効果的なものとなります。領事班に問い合わせの上,ご協力願います。
緊急事態に備えて予め退避場所に適した場所を確認してください。なお,自宅住所によっては予め指定の退避場所が決まっている場合があります。お近くのコミューンに対して確認しておくことが望ましいでしょう。
緊急事態が発生した際には,直ぐに持ち出す必要がある携行品と状況によっては一定期間を自宅や指定場所において滞在しなくてはならない場合があります。このような場合に備えて常に確認と整備を行い,最低10日分を準備しておくことをお勧めいたします。
なお,緊急事態に備えてのチェックリストは別紙をご参照下さい。
緊急事態を認知した場合は,冷静沈着に行動し,流言飛語や群集心理に惑わされたり巻き込まれたりすることのないようにして下さい。また,お互いに助け合う気持ちを大切にして状況に応じた最善の手段方法によって行動することが望まれます。
緊急事態発生の際は,当地報道による他,JSTV,インターネット等により最新で正確な情報を逐次収集するように各自で心がけて下さい。
なお,大使館からの情報は,在留届に記載された電話及びメールにて行います。
事態の悪化が予想される場合は,状況により定期運航便が運行している間に国外へ退避することが望まれます。予め複数の交通手段を検討しておいて下さい。
別紙を参照して下さい。