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県などに支払い命令 剣道部員死亡事故判決

[2013年3月21日 14時42分]

<上>判決を受け、会見する父の工藤英士さん(左)と時折涙ぐむ母の奈美さん=21日午前、大分市中島西の県弁護士会館<下>判決が言い渡された大分地裁第3号法廷(代表撮影)=21日午前、大分地裁

<上>判決を受け、会見する父の工藤英士さん(左)と時折涙ぐむ母の奈美さん=21日午前、大分市中島西の県弁護士会館<下>判決が言い渡された大分地裁第3号法廷(代表撮影)=21日午前、大分地裁

 竹田高校剣道部の2年生で主将だった工藤剣太君=当時(17)=が2009年8月、学校の剣道場で練習中に倒れ、熱射病(重い熱中症)で死亡した事故で、剣太君の両親が、県や当時の顧問、副顧問、搬送先の病院を運営する豊後大野市に約8600万円の損害賠償を求めた訴訟で、大分地裁は21日、県と豊後大野市に計約4656万円の支払いを命じた。顧問、副顧問については過失を認定したが、国家賠償法上、賠償責任を負うのは2人が所属する県で、個人は責任を負わないとして請求を退けた。

 中平健裁判長は、剣太君が打ち込みけいこをしている途中、竹刀を落としたのに気付かず、竹刀を構えるしぐさを続けた時点で遅くとも熱射病を発症したと判断。にもかかわらず、顧問はけいこを続けさせ、直ちに練習を中止して救急車を呼ばなかったことなどが救命可能性を低下させる大きな原因となったと指摘した。副顧問も練習継続を制止しなかったなどの過失があったとした。
 処置に当たった医師については、熱射病の可能性を疑い、適切な冷却措置を取るべきだったのに、搬送から約2時間もの間、しなかったと指摘。顧問と副顧問、医師の過失はいずれも剣太君の死亡と因果関係があったと認めた。
 その上で、日本スポーツ振興センターから支給された死亡見舞金などを差し引いた額を賠償額とした。
 県は「判決内容を十分検討して対応したい」、豊後大野市は「判決内容を精査の上、今後の対応について検討したい」とコメントした。
 両親は顧問、副顧問を業務上過失致死容疑で刑事告訴。大分地検は昨年12月、2人を嫌疑不十分で不起訴処分としたが、両親は不服として大分検察審査会に審査を申し立てている。

顧問らの賠償なく「残念」
 判決を受け、原告側は大分市の県弁護士会館で集会を開いた。剣太君の遺影を前に会見した父親の英士さん(48)は「(当時の)顧問と副顧問にしっかり責任を取ってもらいたいとの気持ちが一番だった。(2人の)責任は認めるが、国家賠償法で“守られる”と聞き、残念だ」と判決内容に不満をにじませた。
 各地で部活動の指導者による体罰が明らかになる中「(公務員個人の責任を問わなければ)これからも体罰が横行する。子どもたちを守るため、この部分は崩したかった。部活動は人間形成の場であり授業の一環。子どもたちの安全を守ってほしい」と訴えた。控訴するかなど今後の対応は「冷静に考え結論を出したい」とした。
 母親の奈美さん(44)は「(裁判を戦った)3年間はとても苦しかった。口頭弁論の度に、息子の亡くなった姿を思い出し、つらかった」と涙を流した。
 代理人弁護士も「事実関係や因果関係は主張がほぼ認められた」と評価した一方、公務員個人の責任を問わなかった部分は「納得できない」とした。

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