ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第6章 ハッセルト帝国
第41話 迷宮下層 (2)
○81日目

 雄介達の装備はそろそろ限界を迎えていた。
迷宮での連日の戦いで、武器・防具共に疲弊していたのだ。
雄介はアダマンタイトや迷宮で見付かった珍しい素材を持って王都の鍛冶屋に向かった。

「おう、雄介たちじゃねえか。
手入れに来たのか?」

「親父さん、久しぶり。
ちょっとした手入れはこっちでしてたけど、もう限界が来てしまってね。
もっと良い武具か、無理なら今まで武具の新品を購入に来たんだ」

「おいおい、まだ前の装備を買って1月ほどだぜ。
どんな戦い方してるんだよ」

「毎日100匹以上の魔物を狩っていたらかなり痛んでいてね。
昨日のSSクラスとの戦いが止めになったみたいだ」

「おお、SSクラスと遂に戦うところまで来たか。
おし、新しい素材があるなら見せてみな」

「素材が多すぎだから紙に書いてきたんだ。
これを見てくれよ」

 迷宮で狩った魔物の素材は亜空間に収納しているため、全て出したら鍛冶屋が埋まってしまうほど有るのだ。
雄介は素材の一覧表を見せて相談した。

「お、スフィンクスの爪と皮とはすげえじゃねえか。
この皮で魔術師用のローブを作ったら凄い物ができるぞ。
他の素材も良い物がそろってるぜ」

「あと、このアダマンタイトで何か作れないか?」

「アダマンタイトだと!
み、見せてくれ。
……こりゃ間違いなくアダマンタイトの大剣だ。
一体どこで手に入れやがった?」

「帝国の迷宮で魔物が使ってたんだ。
それで太刀は造れないか?」

「太刀か……アダマンタイトで造ったことはないが出来るだろう。
太刀を作る技術は前よりかなり上がったからな。
他に何かあるか?」

「トロルソルジャーの盾を使って、リセナス用の盾は造れないかな?」

「ふむ、このまま使うより一旦溶かして造った方が良さそうだな」

「じゃあ、全員の武器と防具を頼むよ」

「そうだなあ。
5日ほどかかるぜ。
それまではどうする?」

「5日程度なら今の装備を手入れすればもちそうだ。
じゃあ、5日後にまた」

「おう!」


 次はギルドに向かった。
ギルドマスターに会うためである。

「おお、雄介か。
最近の調子はどうじゃ?」

「SSクラスのスフィンクスやトロルキングとやりあったよ。
かなり苦戦したけど、何とか勝てたよ」

「なんと、SSクラスの魔物に勝つとはのう。
それなら冒険者のクラスをSSに上げるぞ?」

「そうか、遂にSSクラスか」

「3ヶ月足らずでSSクラスとは無茶苦茶な速さじゃな。
それから帝国の様子はどうじゃ?」

「迷宮の魔物はやっぱり強いよ。
帝国は王国より数倍の戦力を蓄えていると見て良いだろうね」

「うむ、やはりそうか。
悪魔との戦いがなければいつ攻められてもおかしくはないのう」

「ただし、帝国の勇者に会ったけど戦争は反対だってさ。
帝国の皇帝も勇者には頭が上がらないみたいだしね。
当分は戦争はなさそうだよ」

「むう、やはり帝国にも勇者がおったか。
そういえば、帝国以外でも勇者は戦争に反対することが多いみたいじゃな。
周辺諸国からそういった情報がはいっとる」

「帝国以外の国の勇者か。
ぜひ会ってみたいな」

「ふむ、どこに居るか情報を集めておくぞ」


 それから5日後、雄介達の装備は一新していた。以前と同じ名前の品でも新品である。
雄介は金剛鉄(アダマンタイト)の太刀・水晶竜鱗の鎧・水晶竜鱗の兜・武人の小手・水晶竜鱗の具足・スフィンクスのマント
カサンドラは精霊石の杖・スフィンクスのローブ・スターサークレット・治癒の腕輪・疾風のブーツ・タリスマン
リセナスはスフィンクスアクス・ベヒーモススーツ・ソルジャーシールド・巨人の小手・ミスリルヘルム・水晶竜鱗の具足・ガードエンブレム
トゥリアは冥雷覇双剣・ミラージュベスト・レビテトシューズ・雷撃の腕輪
クラノスはアルテミスの弓・麒麟大袖・忍びの具足・バリアリング
ロベリアは妖精のロッド・スフィンクスのローブ・ヒュプノクラウン・精霊銀の腕輪・疾風のブーツ・タリスマン

 迷宮は20階層まで進んでいた。
Sクラスの魔物がごろごろ出てくるようになっていたが、装備が上がった雄介達の敵ではなかった。
レギルの造った魔法具の効果も高く、安定して狩れるようになっていた。
例えばカサンドラとロベリアが使っているタリスマンは精神のステータスが30も上がるのである。
また精神を落ち着け、危機的状況でも冷静な判断が下せる効果があった。
治癒の腕輪は常時小回復の効果を持つのだ。


 そんな中、クリスタルドラゴン3匹が現れた。
迷宮で強化され、以前戦ったクリスタルドラゴンより更に強くなっているようであった。
雄介が1匹、カサンドラ・トゥリアが1匹、リセナス・クラノス・ロベリアが1匹を担当することになった。

 トゥリアが前衛となり、疾風の如き動きでクリスタルドラゴンを翻弄する。
トゥリアの冥雷覇双剣の切れ味は今までの水晶竜牙の双剣以上だった。
クリスタルドラゴンの鉄より強固な皮膚を切り裂いていく。
大振りはせず、細かな傷をつけては距離を取るヒット&アウェイで少しずつクリスタルドラゴンのHPを削っていく。

 カサンドラは距離を取り、クリスタルドラゴンを観察していた。
迷宮内で強力な爆発系の魔法を使うことはできない。
ラナが使ったファイアーアローを思い浮かべていた。
自分の周囲に炎で出来た矢を浮かべていく。
その数は数百に至った。
並のファイアーアローでは到底クリスタルドラゴンに傷はつけられない。
1つ1つがクリスタルドラゴンにダメージを与えられるように強化していく。
貫通の働きを強化し矢のサイズだったものが大きくなり、剣のサイズになり、大剣のサイズになった。
この炎の大剣をどう使うか。
ただ射出するのではなく、コントロールし、適切にダメージを与えるよう構成しなければならない。
ドラゴンに避けられないよう、通路一杯に広がりつつ、トゥリアには当てず、ドラゴンの急所に多く当たるよう多寡を調整する。
念話でトゥリアに攻撃のタイミングを知らせ、トゥリアが飛びのいた瞬間、ファイヤーアローを放った。

 カサンドラがファイアーアローの準備をしていることをクリスタルドラゴンは気付いていた。
ファイアーアローが放たれた直後、ゾディアックウォールを使い防ごうとする。
ゾディアックウォールに向かってカサンドラはファイヤーアローの向きを変えた。
ほんの一点に数百本全ての炎の大剣が当たるよう調整したのだ。
ゾディアックウォールにひびが入り、100本目のファイアーアローが当たる頃には砕け散った。
残ったファイアーアローが全てクリスタルドラゴンの頭部に直撃した。
堅い堅い皮膚を持つクリスタルドラゴンだが、1つ1つが大砲の弾の如き威力を持つファイアーアローである。
貫通に特化して強化した炎の大剣はクリスタルドラゴンの頭を串刺しにした。

 これは人間なら確実に即死のダメージである。
だが、ドラゴンの生命力は人間の比ではない。
死力を振り絞り、アイシクルディザスターを放った。
死を意味する氷柱が次々とカサンドラとトゥリアに向かった。
カサンドラから強大な魔力が立ち登る。
最近覚えた新魔法リフレクトガードを使った。
リフレクトガードは魔法を跳ね返す障壁を作り出すのだ。
ただし、直接攻撃は防げない。
アイシクルディザスターをリフレクトガードが弾き返し、逆にクリスタルドラゴンに襲い掛かった。
全ての氷柱が弾き返されたとき、そこには息絶えたクリスタルドラゴンの氷像が出来上がっていた。


 他のクリスタルドラゴンはどうなったのだろうか。
クラノスはブラインドハイディングで見えなくした矢を次々とドラゴンに射掛けていた。
魔力が宿ったアルテミスの弓から放たれる矢は命中補正が働き、動き回るドラゴンに対して百発百中であった。
目や鼻、口の中、間接部といった比較的ダメージを与えやすい場所に次々と刺さっていく。
クリスタルドラゴンが竜の咆哮(ドラゴンロア)を放った。
クラノスが衝撃を受け、硬直してしまった。
すかさず追撃しようとするドラゴンに対し、金剛力を使ったリセナスのスフィンクスアクスの一撃が決まった。
クリスタルドラゴンの右後ろ足が宙を舞う。

 窮地に追い込まれたクリスタルドラゴンがホーリーカルナシオンを放った。
暗い迷宮の中で太陽が上がったような強烈な光が辺りを照らす。
ロベリアがゾディアックウォールを使い、ホーリーカルナシオンを防ごうとする。
ゾディアックウォールにひびが入るが、何とか防ぎきった。
だがホーリーカルナシオンが終わった瞬間、ドラゴンは聖なるブレスを吐き出した。
足を失ったクリスタルドラゴンは遠距離攻撃を次々と使うつもりらしい。

 ロベリアはゾディアックウォールにひびが入った時点で次の魔法の準備をしていた。
時空魔法テレポートである。
ドラゴンがブレス攻撃に切り替えた直後、リセナスとクラノスを連れてテレポートしドラゴンの背後に移動した。
ドラゴンはロベリア達を見失っており、攻撃の絶好の隙であった。
リセナスのスフィンクスアクスがクリスタルドラゴンの首に食い込む。
更に振り上げて2撃目がドラゴンの首を切り落とすのだった。


 雄介はクリスタルドラゴンを圧倒していた。
敏捷がSSSクラスに至った雄介にとってはクリスタルドラゴンは鈍重すぎた。
クリスタルドラゴンの周囲を回り、次々と攻撃を重ねた。
金剛鉄(アダマンタイト)の太刀は水晶竜牙の太刀と同等の切れ味を持ち、耐久性は遥かに上だった。
傷をつけては距離を取るヒット&アウェイではなく、常にドラゴンの傍に居ながら攻撃をかわし続けた。
竜の咆哮(ドラゴンロア)を使おうが、アイシクルディザスターを放とうが、予備動作の段階でそれを見抜けば対処は容易だった。
発動する方向の反対側に移動するだけで毎回避けることができた。
アイシクルディザスターを発動中の隙だらけな姿に真・天竜落撃を使い、真っ二つに切り捨てるのだった。


「BPの使い道はこんなところかな。
勇者ポイントはあと3600か」

滝城雄介

LV:55

年齢:22

職業:冒険者LV44・精霊魔法使いLV41・強化魔法使いLV34・念動魔法使いLV27・時空魔法使いLV25

HP:2035 (SS)

MP:1874 (SS)

筋力:401 (SS)

体力:411 (SS)

敏捷:460 (SSS)

技術:436 (SS)

魔力:378 (SS)

精神:370 (SS)

運のよさ:-999 (評価不能)

BP:0

称号:プレイヤー・βテスター・三千世界一の不運者・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の加護・黒不死鳥王(ダークテンペスト)の寵愛・スラティナ王国の勇者・スラティナ王国武術指南役・スラティナ王国情報管理指南役・竜殺し(ドラゴンキラー)・スラティナ王国最強の男・レギルの主

特性:火炎属性絶対耐性・水冷属性至弱・風雷属性中耐性・聖光属性至弱・暗黒属性絶対耐性

スキル:自動翻訳・疾風覇斬(100%)・天竜落撃(100%)・フレアブレード(100%)・サンダーレイジ(100%)・ブラッドブレイク(100%)・思考加速(100%)・流水(100%)・韋駄天(100%)・記憶力上昇(100%)・金剛力(100%)・真 疾風覇斬(100%)・真 天竜落撃(100%)・ディメンションエッジ(80%)・超回復(100%)・神移(100%)

魔法:ファイアーアロー(3)・フレイム(10)・ファイアーバースト(40)・クリムゾンフレア(150)・エアスライサー(5)・エアロガード(20)・プラズマブレイカー(50)・ライトニングインパクト(120)・ブラインドハイディング(5)・シャドウファング(20)・マジックサーチ(5)・ブラックエクスプロージョン(80)・アビスグラビティ(220)・強化魔法(任意)・複合魔法(魔法次第)・クロックアップ(150)・クロックダウン(150)・シルバーゾーン(200)・テレポート(距離次第)

装備:金剛鉄(アダマンタイト)の太刀・水晶竜鱗の鎧・水晶竜鱗の兜・武人の小手・水晶竜鱗の具足・スフィンクスのマント

所持勇者ポイント:6425

累計勇者ポイント:6425

「あれ?
ジェバラナの領主から通信が入ってる」

「雄介殿、大変です。
見たこともないほどのアンデットの大群が確認されました。
ジェバラナに向かっているそうです」

「遂に来ましたか。
分かりました、直ぐに向かいます」


 その日の晩、アンデット約4000匹の大部隊が侵攻してきていることが分かった。
当然結界石と聖水を準備している。
雄介達が前に出て戦い、ジェバラナの兵士と冒険者達がこぼれた分を担当することになった。

「今まで感じたことのないほど巨大な魔力を感じる。
おそらくはSSクラスの上級悪魔(アークデーモン)だろう。
それにSクラスの大型悪魔(グレーターデーモン)が2匹だ。
あいつらを倒せば、おそらく10000ポイントに達するはずだ。
死力を尽して戦うぞ」

次回の投稿は明後日0時となります。
サブタイトルは「アークデーモン」です。

第1話を少し書き直しました。
小説家になろう 勝手にランキング


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。