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第5章 ジェバラナの町
第28話 アンデットの襲撃
○50日目

 闇夜に赤い光が見えた。
2000を超える瞳が燃えるような赤い光を放っていた。
雄介が視力強化を使うと、闇夜でもアンデットの識別が出来た。

 雄介とカサンドラの頭にクエストが浮かんだ。

クエスト:アンデット討伐

獲得勇者ポイント:討伐数次第


「とんでもない数のアンデットだな。
種類は………ゾンビ・スケルトン・グール・アンデット ナイト・スカルドン、それからデュラハン・リッチくらいか。
あと奥のほうに強い魔力の奴が隠れているぞ。
俺はアンデット ナイトとデュラハンとリッチを担当する。
黒王はスカルドンを頼む。
カサンドラさんとブルーダインはゾンビ・スケルトン・グールを減らしてくれ。
全滅させるより効率的に減らせば充分だからな」

「私はブルーダインに乗ったまま戦いますね」

「うむ、スカルドンは余に任せるが良い」


 リッチとは魔法を極めた邪悪な魔道士が更に力を求めて自らアンデット化した魔物である。
黒いローブを着た骸骨のような姿をしている。
上級魔法を使える者が多く、Aクラスの魔物とされる。
人間以上の知恵を持ち、アンデットの群れの指揮を執っている。

 リッチは雄介たちに対し、風雷属性上級魔法ライトニングインパクトを撃ってきた。
リッチもマジックサーチで見つけたのだろう。
他のアンデットの巻き添えを出しながら雄介たちの傍に巨大な落雷が起きた。
カサンドラがエアロガードで直撃は防いだものの、一部の電流はカサンドラまで届いていた。
リッチどもがクリムゾンフレアやタイタニックノアなどの高威力の魔法を撃ってくる。
1人で連発は出来ないが10匹以上も居れば大変な魔法の嵐となるのだった。

 ブルーダインはカサンドラを乗せたまま飛行速度を上げ、追撃を避ける。
雄介は水晶竜牙の太刀を握りしめ、1匹のリッチに向かった。
距離を詰めれば、上級魔法は使いづらいものだ。
ダイヤモンドダストやアースランスを使ってきたが、神移を使用した雄介に当てることは出来なかった。
リッチの防御力はあまり高くなく、水晶竜牙の太刀であれば天竜落撃の一撃で倒すことができた。
そのまま雄介は次のリッチへ向かうのだった。


 生ける死体(ゾンビ)がうようよと集まっていた。
身体が腐食しながらも、とびとぼと歩いている。
生ける死体(ゾンビ)はFクラスの魔物であり、動きは遅いが筋力は普通の人間の倍はあるとされる。
悪魔や邪悪な魔道士がアンデット生成の魔法を死体にかけることで生み出されるのだ。
痛みを感じず、燃えるかバラバラになるまで人を襲い続ける。
とはいえ、武器を使う頭がないため噛み付きにさえ気をつけば少数ならあまり危険はない。
だが、ゾンビに殺された者はゾンビになることが多いため、数の多さこそが最大の危険性である。

 カサンドラはブルーダインに乗ったまま、プラズマブレイカーでゾンビを攻撃する。
ゾンビなどカサンドラの的でしかなかった。
プラズマブレイカーが直撃すれば骨も残らない。
身体の一部が焼かれてもゾンビはおぞましく動くが、ジェバラナに移動できなくなるまで痛めつければ問題なかった。
ある程度固まったゾンビには広域殲滅魔法を使う。
ホーリーカルナシオンをぶっ放すと、おそらくは3桁に近いゾンビたちが聖なる光で浄化されるのだった。
ゾンビを削っていると、スケルトンが近づいてきた。

 動く骸骨(スケルトン)は、ゾンビがその肉が腐り落ちてなくなるまで生き延び、経験を積んだアンデットである。
または骸骨にアンデット生成の魔法をかけることでも生み出される。
Eクラスの魔物とされ、ゾンビより力は下がるが比較的素早さが高く、少々の知恵を持ち武器を扱う個体が多い。
知恵と攻撃手段が増えた分、ゾンビより上位のアンデットとされるのだ。
集団戦法が出来るほどの知恵がないのが救いかもしれない。

 カサンドラはファイアーバーストなどでスケルトンを燃やしていく。
スケルトンが振るう剣など剣技などと言えるものではなく、やみくもに振り回すばかりである。
飛行を続けるブルーダインには何の効果もなく、ただひたすらに蹂躙されるばかりだった。
それでも数が多いため時間とMPが消費されていった。


 首なし騎士(デュラハン)は首なし馬に乗り左手に自分の首を持った騎士の化物である。
高い魔力を持った騎士が強い恨みを持ったまま首を刎ねられ、アンデットとして蘇ったとされるが詳細は明らかではない。
アンデット ナイトと同等かそれ以上の技量を持ちながら高い魔力による攻撃魔法を使うため、接近戦遠距離戦共に戦える強敵である。
人馬一体の攻撃を行うため、奇襲攻撃を受けると軍隊が相手でも陣形が崩れることがある。
陣形が崩れてから他のアンデットの群れが突撃すると大損害を受けるため、Bクラスの魔物として恐れられている。

 リッチと戦っている雄介に対し、20匹ほどのデュラハンが突撃攻撃をかけた。
エアロガードで防いだとはいえ、何匹かの攻撃は雄介に当たってしまった。
だが水晶竜鱗の鎧などの防具により衝撃を受けただけで傷は受けなかった。
衝撃でバランスを崩した雄介に対し、鎧の隙間を狙ってデュラハンの刃が迫った。
雄介は太刀で受け流しを使い、デュラハンの刃を逸らしていく。
韋駄天でデュラハンの背後を取ると真・天竜落撃で打ち倒すのだった。
そこへリッチが大地属性上級魔法タイタニックノアを使った。
雄介の周囲15mほどの範囲で何百本もの岩石の槍が天を突こうと飛び出してきた。
周りのデュラハンも巻き添えにしながら雄介を貫こうと岩の槍が迫った。
韋駄天でもタイタニックノアの範囲から逃れきれないと悟った雄介は、強化魔法で守備力を上げ攻撃に耐えるのだった。

 雄介の危機にカサンドラが向かう。
ブルーダインが雄介を咥えて背中に乗せた。

「もう、もっと気をつけてくださいね。
はい、ホーリーヒールです。
これくらいの傷なら40秒で回復ですよ」

「ありがとう、助かったよ」

 雄介は40秒の休憩を取るとまた飛び出していくのだった。


 食屍鬼(グール)は何人もの死体や人を食べることでランクアップしたゾンビである。
高い再生能力を持ち、人間の数倍の筋力と人間並みの素早さを持つ。
スケルトン以上の知恵を持っておりある程度集団戦法が出来る為、数が多いと再生能力と相まって厄介極まりない。
Dクラスの魔物とされ、一般人では到底叶わない怪物である。
ちなみにグールとは男性形であり、女性形はグーラーと呼ばれる。

 ゾンビとスケルトンを粗方倒したカサンドラはグールの群れに方向を変えた。
少々の傷ではグールは復活する。
ブルーダインがメガフレアで牽制し、グールが集まったところにカサンドラがアイシクルディザスターを打ち込んだ。
優に100を超えるグールが氷像へと変わり、粉々に打ち砕かれていった。


 ようやく最後のリッチを倒した雄介はアンデット ナイトに向かった。
死霊の騎士(アンデット ナイト)は元々強かった騎士や戦士がアンデット化した魔物である。
人間であった頃の心を失いながらも身につけた技量は保持しており、組織的に戦った際の強さはグールより遥かに上である。
高級な武器を持ち鎧を着込んでいる者が多く、強化された筋力によってとんでもない攻撃力を持つ。
並の武器や防具であれば、容易く切り裂いてしまうほどである。
Cクラスの魔物であり、並の冒険者では逃げ出した方が良い強敵と言える。

 雄介は死霊の騎士(アンデット ナイト)に対しては流水を使って対抗した。
周囲を囲まれてしまえばやっかいな相手だ。
アンデット ナイトに恐怖も痛みもなく、どれだけ倒しても統制の取れた動きを維持していた。
常に動いて相手を視野に入れながら一撃一殺で削っていった。
それなりに高級な鎧に包まれたアンデット・ナイトだったが、水晶竜牙の太刀を持つ雄介には熱したナイフでバターを切るが如くであった。


 生ける鳥の死体(スカルドン)は巨大な鳥の魔物の死体がアンデット化したBクラスの魔物である。
アンデットは空を飛べない者や魔法攻撃が出来ない者が多いため、空中から魔法攻撃されると弱い。
その弱点を補うため、悪魔や邪悪な魔道士が生み出したアンデットであり、飛行能力を持ち、敏捷が高いのが厄介である。
元々の鳥の魔物としての攻撃手段を残しており、くちばしや爪攻撃以外にもブレス攻撃を持つものが居る。

 スカルドンの相手はダークテンペストが受け持っていた。
1匹なら全く相手にならないスカルドンだが、数十匹もいれば流石に厄介である。
高速飛行で宙返りをして背後を取っては黒炎魔弾を打ち込んではスカルドンを焼き尽くしていくのだった。
何匹か吹雪のブレスを使うスカルドンが居た為、傷つきつつも倒していった。


 おおよそ半数ほどのアンデットを倒した頃、醜悪な声が響き渡った。

「俺様の部隊をこれだけ減らすとはな。
ニンゲン風情がなかなかやるじゃないか。
だが、もういい加減疲れてきたようだな」

 アンデットどもの奥から悪魔が現れた。
ブラインドハイディングで隠れていたのである。
以前見た下級悪魔(レッサーデーモン)よりも遙かに大きな悪魔だった。
大型悪魔(グレーターデーモン)である。
身長は4mを超えており、紫色の毛むくじゃらで腐りきった池のような緑の目をしている。
トカゲのような顔で10本以上の角を生やし、2枚の羽を持っていた。
大型悪魔(グレーターデーモン)はSクラス上位の魔物であるが、その魔力はSSクラスに迫るとされる。
上級魔法を連発してくる恐るべき怪物である。

 雄介とカサンドラの頭にクエストが浮かんだ。

クエスト:大型悪魔(グレーターデーモン)討伐

獲得勇者ポイント:537

「勇者ポイントが537ってとんでもない奴だな。
MPの残量が心配だから短期戦だ。
必ず倒すぞ」

「はい、雄介さん」

 グレーターデーモンは突然ブラックエクスプロージョンを地面にぶつけると、黒い大爆発を巻き起こした。
爆発によりグレーターデーモンの姿が隠れた瞬間、デーモンは空を飛んでいた。
ブルーダインの前に現れると、アビスグラビティを発動させた。
カサンドラとブルーダインのすぐ傍に暗い半透明の球体が現れる。
雄介は韋駄天を使って地面を蹴り、カサンドラたちに近づくとエアロガードでカサンドラとブルーダインを弾き飛ばした。
アビスグラビティの球体は段々と大きくなり、雄介を飲み込む。
直径30mほどの大きさで球体は停止した。
その中では超重力の嵐が巻き起こり、地上の数十倍の重力が雄介の身体を圧縮しようとする。

「ゆ、雄介さん!」

「ぎゃはは、女をかばって死にやがったぜ。
おい女、てめえも男の後を追わせてやるぞ」

 だが雄介は暗黒属性絶対耐性のためアビスグラビティの効果は働かなかった。
平然として立ち上がる雄介。
カサンドラは暗黒属性絶対耐性のことは知ってはいたがやはり心配であったらしく、その瞳は潤んでいた。

「てめえ、なんで生きてやがるんだ。
万一生き延びても半死半生のはずだぜ」

「さあな。答える必要はないはずだ」

 雄介は神移を使い、グレーターデーモンとの距離を詰める。
流れるような連撃で真・疾風覇斬からサンダーレイジに繋げ、ディメンションエッジを放った。
デーモンは巨体に似合わぬ敏捷さで真・疾風覇斬を避けるが、追撃のサンダーレイジの回避で無理な体勢に追い込まれていた。
雄介のディメンションエッジが迫る……が不発であった。
ディメンションエッジは発動しなかったが、それでもかなりの深手を負わせた。

「(今です、雄介さん)」

 カサンドラの念話の合図で雄介が再び神移で距離を取る。
カサンドラは、風雷属性上級魔法ライトニングインパクトを発動させた。
天地を貫く雷光が辺りを照らした。
天空から500万ボルトに達する落雷がデーモンを襲った。
デーモンはとても回避することが出来ず、直撃を喰らった。
全身に火傷を負い、蝙蝠状の羽が骨だけになり、身体から煙が上がっている。
この隙を逃さず、ダークテンペストが黒炎魔弾を放ち、ブルーダインがメガフレアを放った。
デーモンを爆炎が覆い、倒したかに思われた。

「許さんぞ。
てめえら、皆殺しにしてやる」

 グレーターデーモンは生きていた。
満身創痍でありながらも憤怒の表情で殺気のこもった眼差しを雄介たちに向けていた。
デーモンはロードインフェルノを発動させた。
デーモンを中心に半径50mに渡って炎の魔法陣が構成されていく。
夜でありながら、まるで太陽が落ちてきたかのような光熱に照らされる。
このまま魔法陣が完成してしまえば、カサンドラもブルーダインも灰も残さず燃え尽きたであろう。
雄介は極限の集中力を込めて、もう一度ディメンションエッジを使った。
瞬きするよりも早く水晶竜牙の太刀がグレーターデーモンの身体を袈裟切りに切り裂いた。
デーモンは肩からわき腹にかけて真っ二つにされた。
炎の魔法陣は完成前に阻止されたのだった。

 グレーターデーモンは明らかに致命傷だったが、瀕死の重傷で生きていた。
だが、顔に嘲笑を浮かべこう言った。

「くそったれ、ニンゲンなんぞに負けるとはな。
だが、今頃あの町はもう終わってるだろうぜ。
町を攻めるとき、村と同じ程度の数で攻めると思ったか。
もう1つの部隊が攻撃してるはずだ。
あっはっは、残念だったな」

申し訳ありませんが、ストックが無くなったため今後の更新は2日に1回にしたいと思います。
次回の投稿は明後日0時となります。
サブタイトルは「ジェバラナ防衛戦」です。
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