社説
中国新体制発足/大国にふさわしい責任を
中国の第12回全国人民代表者会議(全人代)が閉幕、習近平主席、李克強首相による新体制が正式にスタートした。 世界最大の人口を抱え、国内総生産(GDP)は世界第2位という大国の、今後10年のかじ取り役である。 指導部の進路は平たんなものではあるまい。中国共産党の一党支配体制は制度疲労を来しており、急激な経済成長が公害などの矛盾を生み出している。 「中国の夢を実現するには、中国の道を歩まなければならない。すなわち、中国の特色ある社会主義の道である」 全人代での習主席の演説だ。 習・李体制の歩んでいく「中国の特色ある社会主義」が、現在の国際社会で守るべきルールを守っていくかどうかが、問われるところだ。 中国は既に、国内のみを念頭に置いた「中国の夢」を見ているばかりでは済まない存在であることを自覚すべきだ。国際社会が期待する「責任ある大国」としての行動を常に意識していくべきだ。 習主席は演説で「断固として国家主権、安全、発展の利益を守らなければならない」と強硬姿勢を示した。 だが、沖縄県の尖閣諸島をめぐる日本とのトラブルなど、特に海洋進出の分野で、身勝手な振る舞いが多すぎる。周辺国の主権を力ずくで制約しようというのは、責任ある国の取るべき態度ではない。 変化の芽もある。日本の取材陣に対し尖閣近海での海上保安庁艦船に対するレーダー照射の事実を認めたことは、中国側も偶発的な事態の緊迫化を望んでいないことの表れだ。 海洋政策が「海洋局」に一元化されるのも、権限集中による攻勢強化ではなく、責任が分散していることで生じる「偶発的衝突」の危険を減らす動きと評価できよう。 経済発展の一服感、貧富の格差や党幹部の腐敗に対する国民の不満。内政課題について、李首相は「経済発展の維持、国民生活の不断の改善、公正な社会の実現」の3点を挙げた。 かつて江沢民体制から胡錦濤体制に移行する際にも同じことが言われていた。古い課題は、新しい政権に受け継がれる。 複雑に絡み合った権益と分厚い官僚機構に象徴される閉鎖的な意思決定プロセスを改める以外に、国内に積み上がる諸矛盾を解消する方法はあるまい。党改革を急ぐことだ。 一方で、習主席、李首相を誕生させたのも、その意思決定機構に由来した力であることは否めない。改革には、ニワトリと卵のどちらが先かといったジレンマが伴う。 習・李体制の時代は、米国とのG2体制が本格化する時代となる。かつての「富める北、貧しい南」という図式から、各国の国力が接近あるいは逆転を招き、国際秩序は大きく変化している。 中国はその一方の軸だ。いつまでも「不透明な大国」のままでいて許されるはずはない。
2013年03月21日木曜日
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