1つは、ホームの端やトンネルの入り口に指向性が高いアンテナを設置して電波を「吹き込む」方法。これは直線区間が長い場所に向いているが、電波を遠くまで飛ばすためアンテナのサイズが大きくなる。このため運行を妨げないようにアンテナを取り付けるための場所探しが難しくなる。
2つめは、漏洩(ろうえい)同軸ケーブルを使う方法だ。漏洩同軸ケーブルとは、同軸ケーブルの皮膜に細かい切れ目を入れたもので、トンネル内に引いたケーブルから電波が漏れてアンテナの役割を果たす。直径数センチのケーブルなので狭いトンネルでも設置しやすい。車両近くでまんべんなく電波を出すため通信の安定性が高いという利点もある。半面、電波を伝わりやすくするには乗客に近い車両の窓の高さにケーブルを取り付ける必要があり、工事に時間がかかるのが難点だ。
3つめは、トンネル内に通常のアンテナを設置する方法。駅に置いた装置とは光ファイバーで結ぶ。ただ、電波はカーブやアップダウンの先に届きにくいので、設置場所を選ぶ必要がある。電波を届けやすい場所でも、スペースの関係で必ずしも置けるとは限らない。車両と壁面が近いトンネルは電波が伝わる空間が少ないため、アンテナ数を増やさざるを得ないという問題もある。
■設置費用は携帯各社が負担
福岡市地下鉄はアンテナ方式、札幌市は電波を吹き込む方式を採用している。JMCIAはこうした事例を基に、都内の路線や駅ごとに最適な方式を設計していくことになる。KDDIのau建設本部au建設統括部計画グループの永山智士課長は「最も効率的な構成を取るため、場所によっては複数の方式を組み合わせる場合もあるだろう」という。
設置コストを算出して負担の配分方法を決めるのもこれからだ。都営地下鉄と東京メトロのすべての路線に整備するには200億円程度かかるとの試算もあり、その費用は携帯電話会社が負担する。各社への割り当ては「例えば800MHz帯で一口というように携帯電話会社が利用している周波数帯ごとに配分するか、利用している周波数帯域幅で配分する案などが考えられる」(JMCIA)という。
実際に工事が始まればさらに別の課題が出てくる可能性もあるが、携帯電話業界と地下鉄運営側が重い腰を上げたことで、東京の大きな「圏外エリア」が消えることになる。地下鉄移動中にメールをチェックしたり、災害など緊急時の通報手段として使ったりと、携帯電話やスマートフォンの利便性はさらに高まりそうだ。
だだ、走行中に電波が届くようになったとしても地下鉄車内での携帯電話利用マナーが変わるわけではない。優先席付近では電源を切り、それ以外の場所ではマナーモードに設定して通話を控えるという常識を頭に置き、最低限の利用を心がける必要がある。
(電子報道部 松本 敏明)
Twitter、携帯電話、地下鉄トンネル、スマートフォン
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