<2次ラウンド 台湾に延長で薄氷の勝利>
勝つには勝ったが、薄氷の勝利だ。
WBC2次ラウンドに駒を進めた日本代表は8日、延長の末、台湾に4―3で逆点勝ち。山本監督は興奮気味にこう言った。
「最後に粘ってタイムリーを打ってくれた井端はさすが。本当にすごいゲームで本当に勝ってよかった」
台湾に先制を許した日本打線は、メジャー通算61勝の王建民を打ちあぐね、終盤まで2点を追う苦しい展開。八回に井端からの3連打で同点。その裏、3イニング目に入った3番手の田中がすぐに勝ち越され、「もうダメか」と思った九回2死二塁から井端に同点適時打が飛び出し、延長十回の中田の犠飛が決勝打になった。
それにしてもこの日の山本采配はひどかった。元巨人投手コーチの中村稔氏が言う。
「日本は3失点したが、投手の代えどき、相手打者への攻め方いかんで防げた点です。例えば、先発の能見は三回の2死満塁となったところで代えるべき。1安打と2四死球で満塁のピンチを招いたあの回は、明らかに制球を乱していた。続投させた結果が押し出し四球ですからね。田中の失点もキューバ戦と同じ直球を打たれている。ボールになるスライダーが一番通用するのにそうしたことを徹底させていなかった」
元西武ヘッドコーチの黒江透修氏も「田中はせっかく調子を上げてきたのに3イニング目は欲張り。次の試合もあるのだから、2イニングを6人でピシャリと抑えたところで気持ちよく代えてやるべきです」と指摘する。
黒江氏は八回表のベンチワークにも言及する。
「3連打で1点返し、なおも無死一、二塁のチャンス。そこで糸井にバントを命じて失敗した。押せ押せムードでバットコントロールがうまい糸井は調子を上げてきている。私なら打たせる」
<結果論でしか投手起用ができない>
野球に関する多くの著作を持つノンフィクションライターの松下茂典氏もこう言って首をかしげる。
「山本監督は結果論でしか投手起用ができない。抑えれば投げさせる、点を取られたら代えるという使い方になる。投手起用を含めて、試合を逆算して戦うことができない。王建民に対する攻め方にもチームとしての攻略法が見えなかった。モーションが大きく、クイックもうまくないと見て、初回に2度も盗塁を試みたのに、三、五回の無死一塁は犠打。チャンスをつくりながら得点できなかったのは徹底した策をとらなかったからです」
山本監督は7年間も現場から離れ、当初からブランクが懸念されていた。投手の見極めも試合展開の読みも明らかに鈍っている。1点ビハインドの九回1死から四球で出塁した鳥谷を走らせた。同点のランナーだから、普通ならあり得ない。よっぽど成功する根拠があったのかと思ったら「イチかバチか」などと胸を張る。こんな監督じゃ、この先もファンは不安でいっぱいだ。
(日刊ゲンダイ2013年3月9日掲載)