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ネットでTPPに関する動きを調べていたら、3/10に十勝で農家4千人による反TPPの集会が打たれていた。開催地は音更町。帯広の北隣の町だ。十勝19市町村で4300人の集会は大きい。生憎この日は震災2周年の前日のタイミングで、しかも日曜だったこともあり、マスコミ報道で大きく取り上げられることがなかった。十勝は日本屈指の農業生産基地で、砂糖の原料になる甜菜(ビート)と小麦の生産量が多い。酪農も盛んだ。日本の砂糖の自給率は35%で、北海道(特に道東)の甜菜と沖縄・奄美のサトウキビで支えられている。日本国内で消費する砂糖の25%が甜菜を資源にして加工されたもので、製菓メーカーや飲料メーカーに出荷され、チョコレートなど菓子類や飲料品の原料になっていた。帯広の東隣の芽室町には日本甜菜製糖会社の主力工場があり、ここで周辺の農家が生産した甜菜が集荷され精糖されている。甜菜の根から砂糖を取り出す技術が確立したのは18世紀後半のヨーロッパで、ここからチョコレートの生産が本格的に発展した。1870年、明治政府から派遣された松方正義がパリ万博を視察、そこで現地の甜菜製糖事情を見て導入を勘案、北海道への事業移植を図り、試行錯誤を経てこの地に産業として根づいた。現在の農業王国北海道の姿は、明治国家による近代化の苦心の作でもある。ちょうど今ごろ、農家はビニールハウスの中に甜菜の種をまく。種まきと苗作りの季節だ。それを4月に畑の土の上に移植する。 【続き - 以下は有料です 転載禁止】
昨日(3/17)、TBSのサンデーモーニングでTPPが取り上げられ、金子勝が出演して解説を加えていた。(1)日本が参加してもルール作りに関与する時間はなく、唯一、コメを例外品目として勝ち取れるかどうかだ、(2)米韓FTAによって60本以上の韓国の国内法が改定を強いられたが、金融、知財、社会保障、食品安全基準など、米国のルールが日本に押しつけられる、(3)ISD条項によって日本政府が米国企業に訴えられ、多額の賠償金を取られる。過不足ない説明で、当を得た指摘だったが、それに対して岸井成格が賛成論を猛然とまくしたて、「TPPに参加しないっていう選択肢はもうないと思う」と言い、幸田真音がそれにだめ押しし、議論は打ち止めになった。TPP参加に反対論を唱えたのは、5人のコメンテーターの中で金子勝だけだった。予想したとおり、マスコミは3/15の安倍晋三のTPP参加表明に対する世論調査の結果を3/17の夕刻から流し始め、朝日の記事では、安倍晋三による参加表明を「評価する」が71%、日本のTPP参加に「賛成」が53%の数字が出ている。「反対」は23%。毎日の記事では、「支持する」が63%、安倍内閣の支持率が70%となった。この世論調査の数字が最初にあって、岸井成格のコメントが発されている。きわめて不可解な現実ながら、TPPについては、その危険な中身がどれほど詳しく訴えられ、公論として広まっても、支持の世論ばかりが大きくなっていく。 【続き - 以下は有料です 転載禁止】
疾風怒濤の反動政治が勢いよく進行している。自民党が衆院選に勝利した昨年12月、岸井成格などマスコミ論者は、安倍晋三は半年間は「安全運転」に徹し、経済政策だけに専念するだろうと言い、TPP参加も夏の参院選以降だろうと予想を述べていた。ところが、わずか3か月でTPP交渉参加に踏み切り、4月には「主権回復の日」の式典強行を決めていて、残るのは原発再稼働と憲法改定だけとなった。7月下旬の投票日まで4か月も時間があり、このままでは参院選の争点は改憲の是非になるのが必至だ。内田樹は、選挙後に安倍晋三の支持率は急落するだろうと予測したが、これも大きく外れ、時間の経過とともに逆に支持率は上がっている。日米首脳会談時の記事で論じたが、このTPP交渉参加表明は、米国の円安容認と交換取引の外交所産で、時期が前倒しになったのはオバマの強い要求によるものだ。当初、安倍晋三は最初の訪問先を米国にすると明言、1月にも気楽に訪米する構えだった。ところが、米側からTPP交渉参加を土産に持参するよう求められ、夏以降表明の予定が狂い、調整に手間取った結果、訪米日程を延ばさざるを得なくなったのである。が、安倍晋三はもともと強烈な新自由主義者で、TPPについても橋下徹と同じく積極論者だった。右翼の一部に勘違いがあるが、安倍晋三がどれほどTPPに猪突猛進だったか、今日の朝日の2面に記事がある。 More
「震災から2年」の報道に隠れて、あるいはそれに被せて、恐ろしい政治の動きが次々と進行している。そして、それらは株価や賃金の上昇のニュースによって不安感が消され、悪政として意識されるべき危険情報の配信にならず、逆に、安倍晋三を高支持率で支える国民多数の政治意思の遂行と進行のように、むしろ肯定的なノリ(=空気=雰囲気)で報道されている。「震災から2年」の2日前の3/9、安倍晋三がテレビ番組の中で憲法9条の改定について意欲を明言、96条の改定から踏み込んで、9条が標的であることをアピールした。それに対して維新の橋下徹が賛意を表明、国内のマスコミは素通りで、韓国の新聞だけが批判を加えている。また「震災から2年」の翌日の3/12、国会答弁で、東京裁判について「日本人自身の手によることではなく、連合国側の勝者の判断で断罪がなされた」との認識を表明、東京裁判に対して懐疑的な姿勢を示した。これに対して中国政府が反発、3/13に華春瑩が、「日本は歴史を正視し、深刻に反省して初めてアジアの隣国と良好な関係を築ける」とコメントしている。国内のマスコミから批判めいた論調の記事は全く発信されていない。安倍晋三は7年前の2006年も、国会答弁で「A級戦犯は国内法的には戦争犯罪人ではない」と発言して物議を醸したが、このときと違うのは、国会の質疑答弁の政治構図が変質、逆転していていることだ。 More
辺見庸の新刊書の中に、こういう件がある。「このところ、またぞろ増長しはじめている安倍、石原、橋下某ら、言葉のもっともせいかくな意味あいでの『犯罪者』たちにしても、言うもおろか、たとえてみれば、スメグマ(smegma)というギリシャ語由来の言葉が表象するカスのかたまりのような、何かひたすら虚しいものの再生産品にすぎない。(略)このたびの選挙で時代が一変したかのように言う者もいる。右傾化だのファシズムだの軍国主義化だのと。そうにちがいない。そうなのだから、刃向かうなりなんなりしなければならない。それとともに、わたしはこの事態にもっともっと、とてつもなくくだらぬ、豚の放屁やそのさいの豚小屋の藁や糞やそのカスの一抹の飛び散りのようなものを感じるのである。いうまでもなく、豚の放屁はけっして下等ではありえない。だが、このたびの選挙は、かつての選挙と同様、人という生き物がいかに下等な被造物かをあますところなく示した。(略)語るだに嘔気をもよおす。何に嘔気するかと言えば、スメグマ的ファシズムの臭気というより、わたしらが単にスメグマ(略)の持ち主でしかない、抗っても抗っても、それ以下ではあり得るけれども、それ以上ではあり得ないことに、である。歯ぎしりしたって、前述の安倍、石原某ら犯罪者とスメグマつながりにある事実を否定できはしない、という実存の現在的スタイルに心づくとき、嘔気はさらにつのるのである。(P.13-15)。 More
辺見庸は、昨年の反日暴動で日系の商店や日本車を襲撃した中国人たちについて、魯迅の阿Qだと言っている。「阿Qは、ちゃらんぽらんで、なんでも自分に都合よく解釈するオポチュニストであり、時に応じて付和雷同する貧しい愚民の典型である。つまり、魯迅が仮借なくつきだした昔日の中国民衆像が阿Qなのだが、しかし、阿Qの末裔は現代中国のみならず、この日本でも、いや、世界各地でいま急速に増殖していないだろうか」(P.25)。これは、反日暴動の直後の9/25に信濃毎日新聞に寄稿した中の記述だ。新刊書に収録されている鵜飼哲との対談でも、この問題に触れた場面が登場する。こう言っている。「魯迅が阿Qをどう思っていたか。これはほとんど『魯迅とは何か』と同じくらいに重要な問題設定だと思います。僕は、魯迅は阿Qを愛していたと最終的には思わざるをえないところがある。同時に、魯迅の自己嫌悪としても『阿Q正伝』はあると思うんですよ」「中国の人たち(略)はつまり、かなりニヒルだということです。僕の見るところ、個人主義という意味においては、日本よりも彼らの方が個人主義です。魯迅が個人主義者であったように」「実際の中国民衆は手に負えないほどの個人主義者であると思います。魯迅が『砂のようだ』と言ったのもそこでしょう。砂のようであるというのはある種の絶望と手強さです。自民族に対する手に負えなさを『砂のようだ』と言ったのではないでしょうか」(P.181-182)。 More
もう一度、辺見庸の尖閣論についての記述を書き出そう。「中国は1949年の建国以来、領土問題では一寸たりとも譲歩したことがないという自負もあり、尖閣問題でも軟化は絶対にありえないだろう」(P.31)。「針の頭ほどの領土でも中国の人は自分たちの領土だと言い張るだろうとは思っていました」「およそ、領土について、外交交渉の外縁のところで彼らは逡巡しない」「中国という国は、領土となると信じられないくらい熱をおびる」(P.172)。この指摘は正しいと言えるだろうか。これらは「中国の領土論」として、つい頷いてしまう言説ではある。しかし、その表象の納得には、アヘン戦争以来、列強によって領土を蚕食され国富を略奪された中国の苦い屈辱の歴史があり、という前提が入るはずだ。外からの他国の侵略に対して神経過敏にならざるを得ない大国の古傷という事情があり、そうした特性を踏まえた上で、領土問題における中国の生理を一般論として言えば、それは内在的で妥当な説明になるだろう。そうした前提抜きで、頭から中国の大国主義を非難する口調で、中国の領土不寛容性向を言い上げるのは、安直な床屋政談であり、マスコミや右翼による誹謗の常套句と変わらないものと言える。実際に、ロシアとの国境画定交渉では、領有をめぐって紛争した大ウスリー島を面積で折半するという合理的妥協で決着させている。辺見庸は、そうした中国の領土政策の実績を承知しているのだろうか。 More
辺見庸の新著『国家、人間あるいは狂気についてのノート』を読んだ。ほとんどが一度読んだことのある文章で、『生首』や『眼の海』に所収されていた詩も多く再録されている。重複している。鵜飼哲との対談が載っていて、これは初めて見るものだった。そして、対談を含めて、内容のかなりの部分を中国関係の論考が占めていて、尖閣問題についての辺見庸の認識が示されている。読みながら、正直なところ、違和感を感じるところが多かった。尖閣問題の見方として、中国政治論として正確と思えない認識や主張が随所にある。現在の右翼化の政治状況を考え、また辺見庸の影響力を考えると、無視して放置するわけにはいかない。対談の中の発言を引用しよう。「結論から言うと、僕が完膚なきまでに太刀打ちできないと思ったのは中国だけです。つまり、国家概念というものが、中国という事実と、我々が考えるネーションというあらまほしきイメージとが比較にならないほど違うのです。(略)僕はあの国だけとは喧嘩しようとは思いません。事実のレベルが違う。中国は日本に対して戦争を構えていると思うんですよ。いわば戦争という破滅を前提とする発想があるのです。その発想と、日本が掲げる『何年か遡れば領土の正統性はこちらにあるんだ』という理屈、このレベルの違いには恐ろしいものがある。彼らにとっては正統性なんて問題ではない。(略)つまり、滅亡を組み込んでいるということです」。(P.168-169) More
大統領就任式があった2/25、朴槿惠と麻生太郞の会談が持たれたが、そのときの内容について、朴槿惠から「歴史を直視し、過去の傷が癒やされるよう努力し、被害者の苦痛に対する心からの理解が必要だ」との発言があったと韓国大統領府が説明している。日本のマスコミは、麻生太郞の会見にフォーカスし、「竹島問題や従軍慰安婦問題には直接言及しなかった」と報じ、「未来志向での協力関係」を朴槿惠が強調したという説明に終始した。かなり都合よく解釈していて、すなわち歪曲と逸脱があり、事実が正しく伝えられていない。あとで気づいたが、この「歴史を直視し、過去の傷が癒やされるよう努力し、被害者の苦痛に対する心からの理解が必要だ」の文言は、どうやら意味が深くて、単に従軍慰安婦の問題を示唆しているだけでなく、村山談話の誓言をトレースした含意があることが分かる。村山談話には、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と書いている。つまり、韓国政府は、1995年の村山談話が日韓関係の基本なのだと言い、この認識を忘れないようにと日本に要求を発したのだ。 More
前回の記事で、竹島問題の解決策として、二つある島を日本と韓国で分け合い、竹島の真上を通る斜め45度の線を日韓のEEZ境界線にして日本海を二等分すればよいという提案を述べた。これは、最初にゴールを示した方が解決策として説得的なものになるからであり、両国の国民が最終的に合意して納得できる「引き分け」の構想だからだ。竹島で注目するべきは、過去の歴史の重箱の隅ではなく、むしろシンプルにその地理的位置である。竹島問題のソリューションのキーは、歴史ではなく地理にある。そう私は直観し確信する。竹島(独島)は、見たとおり、日本と韓国の本土から約200キロ離れた洋上に孤島としてあり、どちらの国からもほぼ等距離の地点にある。この偶然の自然的事実こそ、まさに問題を解決する天佑の条件であり、神が与えてくれた幸運と考えるべきなのだ。しかも、島が二つくっついて仲良く並んでいる。二者間のトラブルをイーブンな解決に到達させる絶好の条件が天賦されている。竹島の位置と地形は神が決めたものであり、人の手で動かすことができない。なぜ、この点にわれわれは着目しないのか。神の叡慮と恩恵の前に謙虚になろうとしないのか。神が裁き、二国の平和と幸福のために下した判決を、素直に受け入れて妥協しようとしないのか。二つの島を挟む水道を国境とする形態は、ベーリング海峡の大ダミオード島と小ダミオード島を米露(米ソ)で線引きした先例がある。倣ってよい。 More
先週(2/22)、松江で開催された「竹島の日」の式典がネット動画で中継されていて、それをずっと見入っていた。夜のテレビの報道では、島尻安伊子の挨拶がクローズアップされ、他には溝口善兵衛の式辞が少し放送されただけで、一見したところオフィシャルでパブリックなイメージが演出されていたが、生中継で見た式典の実相はそれとは全く違っていて、恐るべき右翼の集会そのものだった。来賓の議員で挨拶したのは、自民の山谷えり子、維新の西村真悟、民主の渡辺周、みんなの三谷英弘。地元議員として竹下亘、亀井亜紀子、細田博之も演壇に立った。山谷えり子の話もおぞましい内容だったが、戦慄させられたのは西村真悟の過激な右翼アジテーションで、あのような狂暴無比な右翼の扇動演説が、島根県主催の公式行事の空間で堂々と放たれ、何の咎めも逡巡もなく式典が進むことに、身も心も凍りついて恐怖に震える思いをさせられた。まさに公共社会の政治常識のバリアーが破られている。会場の2階客席から演台を撮影するネット動画のマイクには、周辺にいる出席者の音声が拾われる。西村真吾のアジテーションのとき、最も大きな拍手と歓声が上がり、来賓の挨拶が右翼的に過激な調子を帯びたほど、会場も熱く歓呼して同調の声を上げていた。島根県の草の根右翼が結集している。まさしく右翼が叫喚する祭典だ。それを、こともなげに県知事と県職員が県行事として遂行している。 More
気温は低いが、陽射しに春の温もりがある。季節が春に近づいていることを感じさせる。しかし、気分は凍てつき暗く閉ざされていく一方だ。希望が見えない。今日(1/21)の朝日の1面は安倍晋三の単独インタビューがトップに出て、「TPP交渉参加に意欲」と見出しが踊っている。安倍晋三が、朝日を使ってTPP参加の方針を国民にメッセージした。読売や日経ではなく。最近、若宮啓文を退任させた後、朝日の社長が安倍晋三と会食するなど不穏な動きがあったが、それを裏付けるように朝日の紙面がガラッと変わり、安倍晋三を翼賛する話題と論調が目立つ。若宮啓文が主筆になった2011年以降、朝日が少し品質の安定を取り戻しつつある気配が感じられたが、このところめっきり右傾化の度を強め、記事の内容も粗雑で軽薄になっている。安倍晋三に媚びへつらい、安倍晋三の政策をヨイショする記事ばかりが満載だ。経済政策だけでなく、安保外交政策についても批判的な記事は全くない。TPPについても、TPP推進の旗を振ってきたのは朝日ですと言わんばかりの得意顔が透けて見える。中国叩きの過激さについてはNHKと同じだ。とうとう安倍晋三のマスコット・ペーパー、御用新聞になってしまった。インタビューは4面に要旨を載せ、1面にその要旨の要約を短く書いているだけで、朝日の視点からの解説はない。4面の要旨の中身は、録音を朝日が纏めたというよりも、安倍晋三サイドから文章が丸ごと提供されている。 More
安倍晋三が日米首脳会談でTPP参加表明をするかどうかが焦点になっている。一部に、その場で参加表明という情報も出ているが、会談後の3月に正式表明という見方が多い。12月の政権発足当時には、7月の参院選後とする予想が支配的だったことを考えると、かなり米国から圧力がかかり、日程が前倒しになったことが窺える。当初1月訪米だったのが2月に延期されたのは、このTPP参加問題を調整できなかったことが響いている。仕切り直しをして、3月の参加表明を前提にした会談で決着させたのだろう。自民党の中はTPP反対組が多く、議員は割れていて、民主党政権時代と似た様相を呈している。安倍晋三自身はTPP参加に賛成であり、側近やブレーンもTPP推進派で固めている。コメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖の5品目を聖域として例外品目にするという具体的な案も出始めた。自民党内の反対派議員の数は233人、一方、賛成派の議員は35人。数の上では反対派が多いのだが、マスコミはこの勢力比を報道で強調することなく、参加表明へ急ぐ政権やその背中を押す財界の動きばかり捉え、それを積極的にフォロ-している。議員は無視に近い。特に朝日とテレ朝がそうだ。また、民主党時代のように党内対立をクローズアップした報道もせず、TPP賛成は議論不要の定まった国論であるかのごとき態度で、全マスコミが一致して安倍晋三にTPP参加の決断を迫っている。 More
一昨日(2/17)に放送されたTBSサンデーモーニングの中で、出演した田中秀征が「安倍首相はよくやっている」と言い、「国会答弁を見ていても、慎重な安全運転に徹している」と評価していた。幸田真音は「民主党政権が終わってよかった」とまで言っていた。支持率が高いので、マスコミに登場するキャスターや論者は、このように安倍晋三を持ち上げて追従を言う。古舘伊知郎が典型だ。その報道が世論に反映し、さらに支持率を上げるスパイラルを作る。支持率が高く出るのは、株高や円安の動きが続き、景気が好転しているような空気が充満しているからだと言えるが、どうやらそれ以上に中国艦のレーダー照射があり、北朝鮮の核実験があったからのように思われる。右翼化した国民意識を刺激する安全保障系のニュースが発生する度に、極右の安倍晋三の支持率が上がる現象が起きる。12月の選挙で自民や維新が勝利した構図と同じだ。それが故に、政権側が意図的に中国を出汁に使って危機を煽り、国民敵としての中国を利用するポピュリズムを増幅する。もう日本の国内ではこの動きを制御できる力は働かなくなっていて、中国と北朝鮮を敵視しながら右翼政権を引き立てる報道しかないし、マスコミもネットも国会もその意見だけしかない。先進国の言論環境とはとても思えない薄っぺらな状況になっている。多様性がなく、批判性がない。 More
昨夜(2/13)、田中均が報ステに出演し、北朝鮮に対して臨検と金融制裁が行われるだろうという見通しを述べていた。今回の事態は新しいフェーズに入ったもので、米国のみならず日本にとって重大な脅威だから、一段レベルを引き上げた措置である臨検と金融制裁が必須であり、それに中国を協力させることが必要なのだと言う。一昨日も、昨日も、テレビ報道の解説は、この国際政治の動向を客観的に整理、考察するジャーナリズムの提供ではなく、北朝鮮に対する非難と糾弾のアジテーションの散布のみに徹している。登場する論者も、武貞秀士とか、森本敏とか、田中均とか、政府で政策に関与してきた権力的高官ばかりで、上からの説諭に終始し、辺真一のような民間のジャーナリストが顔を出す場面がなく、下から収集分析した情報と見解が紹介されるということがない。番組のスタジオが完全に国家機関と化し、国家による洗脳目的のプロパガンダで塗り潰されている。結論は一つで、日米同盟絶対論の確認と回収だ。戦時中そのものの暗黒報道。おそらく、韓国のマスコミはもう少し中身のある情報を伝え、多角的で立体的な報道を提供しているのだろう。私は、日本のマスコミの論調とは全く異なる見方をし、別の予測を持っている。北朝鮮が何を考えているのか、緊張を孕む中国と北朝鮮との間で事態がどう動くのか、この二日間の報道を見ながら、何となく見えてきたものがある。キーワードは六カ国協議だ。 More
昨夜(2/12)のテレビ報道は、どの局も北朝鮮の核実験のニュースで時間を埋めていた。他にも大事な問題があるのに、無用にこの問題ばかりで割いていた感がある。北朝鮮と中国への敵意を煽り、確固たる信念になるまで刷り込み、日米同盟への忠誠と信仰を固めるためだ。特にNHKのNW9は、事実について追跡した報道の要素は全くなく、まるでネットの右翼番組のように、大越健介と森本敏が掛け合いのプロパガンダをやっていた。テレ朝の報ステの方は、NHKに較べると中身があり、中国が米国と北朝鮮との間に入り、交渉の仲介役をしていた事実を伝えていた。これは韓国のマスコミが調べて得た情報で、ソウルの特派員が生放送で紹介した。中国が米国の代理人となって北朝鮮を説得し、その交渉が時間切れとなり、春節のタイミングを選んで北朝鮮がドカンと花火を打ち上げた恰好になる。思い出せば、7年前の2006年にも、北朝鮮は米国の独立記念日にミサイル発射で挑発してきた過去があった。北朝鮮的なブラックジョークの政治をしている。金正恩は父親を模範にして、今度は中国の新政権に面当ての肘鉄を食わせたのだろう。習近平も、ケリーも、北朝鮮と外交を手合わせするのは最初の機会だ。挨拶代わりの一発と言うか、甘く見られないように居丈高に出たというのが真相と言える。それは、対する習金平もケリーも同じ立場だったに違いなく、特に習近平の方は容易に妥協しなかったに違いない。 More
昨日(2/8)行われた中国外交部の華春瑩の発言に対して、私は何を感じたかと言うと、正直なところを言うと、非常に新鮮なインパクトを受けた。新鮮な感動を受けたという言葉にしてもいいかもしれない。無論、彼女の主張を全面的に支持するわけではないし、政治的な意図を分析する必要はあるし、レーダー照射が事実か否かという点については、私は事実だろうと判断する。しかし、華春瑩の言葉は、今回のレーダー照射問題の核心を衝くものであり、まさに日本政治に対する当を得た批判なのだ。もっと言えば、勇気ある真剣な批判なのである。リスクをテイクした上での率直で大胆な批判だ。誤解を恐れずに敢えて告白すれば、日本人である私は、中国人の華春瑩に代弁された気分を感じ、それがテレビで日本中に発信されたことである種のカタルシスを感じる部分がある。「日本側は中国の脅威を誇張して緊張を作り出し、国際世論を間違った方向に導いている」「中国側は対話と協議を通じて問題を解決しようと努力してきたが、日本は多くの船や航空機を出動させる行動をエスカレートさせている」「最近、日本は危機を煽り、緊張を作り出し、中国のイメージの貶めを図ろうとしている。このやり方は日中関係改善の努力に反する」。ストレートにこうした批判が与えられるべきなのだ。華春瑩のこの言葉は、単に日本政府と日本国民に向けて発せられたものではない。米国と韓国の政府と世論が意識されている。 More
昨夜(2/7)、テレビ報道で衆院予算委での質疑の映像が切り取られ、安倍晋三が次のように発言する場面が繰り返し流された。「中国側の今までの外交のやり方は、一点、関係が悪化をすると全てが止まっていく。それは間違っている」。NHKの7時のニュース、BSフジのプライムニュース、NHKのNW9、テレ朝の報ステ、全部で4回見たような記憶がある。午後11時以降の日テレ、TBS、フジの番組でも同じカットが挿入されたに違いない。おそらく、官邸(「領土・主権対策企画調整室」)からテレビ各局幹部に通達があり、この発言の場面を必ず放送するよう指示があったのだろう。今、事実上の「政府大本営」ができていて、テレビ報道はその管理下に組み込まれている。戦時体制が敷かれている。安倍晋三は予算委の答弁で「これは宣伝戦だ」と隠さず言い、積極的に「敵」に攻勢をかける姿勢を示した。ナチスがゲッベルスを使って始めたプロパガンダの手法を、中国との外交戦で駆使し応用するという意味だ。情報工作の正当化である。日本の最高政治指導者の立場で、中国の対日外交をバッサリ斬り捨て、全面否定する発言は、予め周到に準備したもので、中国と国際社会へのメッセージであり、国民に対する教宣の刷り込みに他ならない。「中国=悪」というシンプルな定義を国会で宣言し確立した。マスコミは全社がこの定義を前提にした報道に徹していて、昨夜の古舘伊知郎の過激な非難罵倒がまさにそうだった。 More
レーダー照射の件、小野寺五典の発表から一日経ち、安倍晋三による周到な世論工作の性格がかなり明確になってきた。当初のマスコミ報道では表に出なかったが、中国艦からのレーダー照射は過去に何度もあり、民主党政権時だけでなく小泉政権の時代から起きていた事実が発覚している。2005年9月、海自のP3Cが東シナ海ガス田付近の上空でレーダー照射を受けた問題が報道に出て、野党だった民主党が国会質疑に取り上げて政府答弁で確認させている。それによると、最初にレーダー照射があったのは2005年1月で、9月は二度目となる。当時は、小泉純一郎の靖国参拝問題で日中関係が険悪化していた時期であり、その動きに伴って東シナ海ガス田の共同開発が頓挫した経緯があった。ネットに出ている情報だけで、小泉政権時に2回、民主党政権時に複数回、今回と同じレーダー照射の事件が発生していたことが分かる。民主党政権下でのレーダー照射は、例の漁船衝突事件の後に起きていたもので、つまり、日中間が緊迫した時期に、両国の海軍(海自)が接触する海域で起きている。2/5の午後7時の記者会見の際、小野寺五典は記者から「これが最初か」と質問されたのに対して、過去にもあったとは正答せず、「全体を通しても、きわめて特異的な事例」だと言葉をはぐらかしていた。<過去にはなかったことだ>という衝撃的な印象を国民に刻み込むのが狙いだったのだ。 More
中国のフリゲート艦が海自のヘリと護衛艦にレーダー照射した問題について、最初に考えなくてはいけないのは、1/30に発生した事件をわざわざ1週間後の2/5に発表したという事実だ。1/19のヘリへのレーダー照射からは2週間以上経っている。しかも、小野寺五典による発表の時刻は狙いすましたかのように午後7時で、NHKのニュースでの中継を作為した計画的なものだった。これは政治だ。目的は日中の緊張を高めることで、この政治ゲームで日本側が主導権を握り直すことだ。日本側は対立を激化させる方向に持って行こうとしている。中国側は首脳会談で尖閣を棚上げするところに目標を置き、緊張を解消する着地へと外交を動かしている。両者の意思と目的は全く異なる。説明するまでもなく、安倍晋三と右翼は改憲のために尖閣危機を煽っているのであり、日中が平和友好の方向へ進むことを欲してはいない。一方、1月下旬以降、鳩山由紀夫と山口那津男の訪中があり、中国側による外交攻勢が続いていて、中国側が尖閣外交のイニシアティブを握り、紛争解決に向けての環境作りの気運を盛り上げつつあった。さらに米国務長官にケリーが就任、米国の東アジア外交における中国重視・日本軽視の意向が鮮明になり、尖閣をめぐる日中の関係も次第に中国側の影響力に傾く趨勢と局面に変わりつつあった。焦った安倍晋三は、事態挽回のために一撃を入れるべく、1/30と1/19の事実を持ち出し、政治的反撃に出たのだ。 More
先週末に世間を騒がせたAKB48の峯岸みなみの事件について、私が持った感想は少し独自で、マスコミやネットでも意見として出ていない。それは、端的に言えば、ヤクザの臭いがするというものだ。丸坊主になってネット動画に姿を曝した本人も、それを取り囲んで笑いながら撮影している仲間たちの表情も、そこに漂うものは、暴力団の習性と綱紀と態度である。丸坊主にしたのは、情報では本人の意思によるものということだが、中身は制裁であり、制裁の苦痛を覚悟して組織にしがみつこうとする本人の受忍が真実なのだろう。行為としては、暴走族の少女集団やその周辺でよく見られた「根性焼き」のパターンの延長であり、もっと古典的な類例を言えば、小指を包丁で切断する「エンコ詰め」の制裁儀式を想起させるものだ。頭髪を丸刈りにすることは身体的苦痛はないだろうが、女性でもあり、精神的苦痛は言語を絶するものがあり、丸坊主姿で号泣しながら謝罪するという恥辱的な動画が半永久的に残され、繰り返し再現される蓋然性を考えると、暴力団員の末端が小指を詰める自傷の私刑とよく類似している。20歳の峯岸みなみは、一生、この過去と傷を背負って生きていかなくてはいけない。これは、やはり半強制の暴力行為であり、集団による制裁行為(リンチ)だと言うしかない。本来、警視庁が捜査に動くべき問題であり、起訴するかどうかは別にして、AKB48の楽屋の中で何があったかを事情聴取して調べるべき事件だろう。刑事事件だ。 More
再生産構造がフリードマンモデルになっている経済社会で、アベノミクスの諸政策を投与するとどういう結果になるか。森ゆうこが言った「シロアリとハゲタカに餌を与えるだけ」という指摘こそ、まさに結論として正鵠を射た一言だ。経済の構造そのものがすでに変質していて、ケインズ的なオペレーションが嘗ての教科書どおりの効果と影響を導かない。内需の喚起や所得の増加や消費の増大という、一般モデルに表象された成長的均衡へと向かわない。一般モデルの前提的基礎がこの国では失われている。安倍晋三の「機動的な財政出動」の中身と帰結がどのようなものであるかは、詳しく説明する必要もなく、まさしくシロアリの巣の増殖そのものだということは誰もが想像し直観できることだ。補正の10兆円について、各省から積み上がった施策事業を精査分析した情報はマスコミからは出ていない。これが、また新しい天下り独行法人を増やし、省利省益の既得権となって毎年度の予算にへばりつくものになることは、普通の国民なら誰でも分かる。マスコミがこの「財政出動」にメスを入れず、叩かないのは、マスコミが官僚の権力機構の一部だからだ。マスコミが安倍政権に対して翼賛報道に徹するのは、官僚が安倍政権を歓迎しているからである。子ども手当のように国民にバラ撒くのではなく、官僚の省利省益にバラ撒いてくれるから、両手を挙げて大歓迎なのであり、官僚の広報であるマスコミに翼賛報道をさせる。 More
昨日(1/30)の朝日のオピニオン面(19面)に、春闘についての山田久の論評が載っている。一昨日(1/29)、経団連と連合の間で春期交渉のスタートを告げるトップ会談があり、夜のニュースと翌朝の新聞記事で大きく扱われ、賃金上昇が果たせるかどうかに関心と期待が集まるマスコミ報道がされていた。アベノミクスを翼賛宣伝する大越健介と古舘伊知郎は、今年は賃金も上がりそうだと言わんばかりに、このニュースを朗報として伝える口調が際立っていた。景気を上向かせて7月の参院選に勝ち、2Qの名目GDPを押し上げて消費税増税の根拠を得ようと目論む安倍政権は、景気対策に無我夢中で、春闘にも労働側の立場で口先介入する態度を示している。石破茂や麻生太郞が「200兆円の内部留保」を言い出し、労賃に回したらどうだと企業経営に注文する段となった。共産党がずっと要求していた経済政策だ。腹の座った生粋の新自由主義者たちが、選挙(改憲シフト)と消費税のために心にもないことを口走っている。実際の結果がどうなるかは分からないが、この動きが政治圧力の演出として受け止められ、アベノミクスへの期待感を大衆の間に醸成し、政権の支持率を高める材料の一つになることは間違いない。一方、米倉弘昌の方は、年齢に応じて賃金が上がる定期昇給の廃止を目指し、この春闘で踏み込む強硬姿勢を見せている。 More
昨日(1/28)、菅義偉は政府としてアルジェリア人質事件を検証すると言い、検証委員会が本日(1/19)より立ち上げられることとなった。海外で邦人が巻き込まれたテロ事件に自衛隊を派遣するための法改正を目的としたもので、その旨を明確に新聞記事にも書かせている。安倍晋三は、昨日の所信表明演説の冒頭でアルジェリアの事件に触れ、政府はテロと闘い続ける決意だと宣言、邦人被害者をテロの犠牲者と位置づけた。安倍晋三の情報工作が着々と成果を上げ、事件の捏造と政治利用が思惑どおり功を奏し、世論の洗脳と誘導に成功している。共同の世論調査では、「アルジェリア人質事件への政府対応を63.3%が評価」、「海外での非常事態時に邦人を救出するための自衛隊法改正には71.3%が賛成した」とある。国会初日にこの世論調査の発表が出たタイミングそのものが、安倍晋三と共同幹部が裏で連携した巧妙な政治を示している。アルジェリア事件の真相を書いて売りたい記者の前に、現地日揮のアルジェリア従業員が現れず、帰国した生存邦人7名が顔を出さないのは、日揮が安倍晋三の厳命を受けて、彼らを隠しているからである。アルジェ政府と安倍晋三が結託し、どちらの政府にも責任はないと結論づける「検証」結果を出すためだ。政府が検証委員会で事件の公式報告を出し、自衛隊法改定の根拠を整えるまで、雑音が入らないようにするため、生き証人の言葉をジャーナリズムが拾ってはいけないのである。 More
今日(1/28)の朝日の国際面にアルジェ人質事件の記事があり、現地(首都アルジェ)から記者はこう書いている。「アルジェリア軍が具体的にどのような攻撃をして武装勢力を制圧したのか、人質はどういう状況で死亡したのかなど、新たな情報は全くといっていいほどない」「街の声も軍の強行作戦を支持する声が圧倒的だ」「政府や軍を礼讃するこうした声の背景には、厳しい取材規制がある。関係者によると、地元紙の記者でさえ現場に近づくことは許されていない」(6面)。この朝日の記者の見方は、事件の真実を見極めようとするもので、アルジェ政府と当局の報道から発信される事件説明について、少なからず疑いを持った目で見ている姿勢が看取される。私と同じだ。こうした感覚で事件に相対している報道が、国内のマスコミにはきわめて少ない。今回、死亡が確認された外国人人質33名の中で、日本人は最も多い10名の犠牲者を出したが、政府とマスコミは、事件を起こしたイスラム武装勢力にのみ全責任を押し被せ、彼らをテロリストと呼んで一方的にその卑劣で残忍な行為を非難している。しかし、その認識や判断は客観的に正しいものなのだろうか。もっと具体的に言えば、日本人10人を殺害した加害者は武装勢力なのだろうか。アルジェ政府軍には加害責任はないのだろうか。10人の遺体は病院で検死解剖されているはずだが、銃創は武装勢力の銃弾によるものなのか。 More
東京国立博物館の特別展「書聖 王羲之」を見てきた。日中国交正常化40周年の事業で、1/22に始まって3/3まで開催されている。出展されている作品は全163点で、平成館2階の6つの展示室をすべて使った、予想した以上に大規模で本格的な内容だ。私は、このような王羲之の企画展をずっと心待ちにしていて、ようやく希望が実現し、我が意を得た思いで感無量だ。私は「蘭亭序」の拓本を所有している。28行を見開き5面・10頁に綴じた原寸大の折帖で、西安を旅したときに碑林博物館の売店で手に入れた。私にとって貴重な一品。北京の故宮を歩いたとき、案内されたコースに養心殿西暖閣の三希堂が入っておらず、見逃してしまった痛恨は7年前に書いたが、その無念を晴らすべくと言うか、台北の故宮博物院4階にある三希堂へはしっかりと足を運んだ。台北の故宮博物院には「快雪時晴帖」が所蔵されている。私はそれがどうしても見たくて、せめてレプリカでもないかと現場の当直の職員にせがんだ。日本語の堪能な頗る可憐な研究員がわざわざ応対に出てくれて、何とも台湾的な暖かい癒しのもてなしを受けて感動したが、院内の常設展示には王羲之を始めとする書の至宝がほとんどなく、残念な思いをして帰った。書は傷みやすく、文化財保護の必要上、展示に供するのは無理なのだと言う。台北の故宮博物院は2007年にリニューアルされ、4階の喫茶店の三希堂もすっかり様変わりしたらしい。 More
北京滞在の山口那津男が、自民党と外務官僚の強烈な巻き返しを受けて立ち往生している。「尖閣棚上げ」の原状に戻すべしという主張を周近平との会談で明言するサプライズは、中国側との間で事前に擦り合わせて合意したもので、計画どおりに実行するだけだったに違いないが、出発前日(1/21)に仙台で地均しの観測気球を上げたため、そこへ猛然と右翼側が襲いかかり、この政治を潰そうとして八方手を尽くしている。昨夜(1/23)の報ステで、中国中央テレビが1/22夜のトップニュースで山口那津男の訪中を伝え、1972年の日中国交正常化に果たした公明党の役割を詳しく報じていたことを紹介していた。中国のトップニュース。当然だ。戦争の瀬戸際であり、今、中国の人々が固唾をのんで見守っている問題が尖閣をめぐる日本との関係なのだから。一方、日本のマスコミ報道では、NHKは山口那津男の問題について一言も触れない。7時と9時のニュースで話題に取り上げない。ネット上にはNHKの情報があるが、肝心の「尖閣棚上げ」の提起については隠している。恐るべき情報操作だ。旧社会主義国の国営通信と変わらない。山口那津男が北京に飛んだ日(1/22)の夜、安倍晋三は急遽報ステに生出演で割り込み、公明党と中国との間に楔を打ち込むべく、(「尖閣領空上の中国機に対して)国際法に則って対応する」と強硬姿勢の発言をした。 More
鳩山由紀夫の訪中について、日本国内では揶揄や軽蔑や罵倒の嵐ばかりで、マスコミでもバッシングの報道以外にないが、よく考えれば、これは勇気ある政治家の行動だ。鳩山訪中を伝えた報道をネットで探すと、写真付きの詳しい記事は多くが中国を中心とする外国発のものだったが、それを眺めているうちに一つの記憶が脳裏を過ぎった。加藤紘一の鶴岡の自宅が右翼に放火され全焼した事件である。7年前の2006年8月15日の出来事で、小泉純一郎が靖国を参拝した当日の凶行だ。そこに至る前、マスコミに幾度も登壇し、小泉純一郎を批判して靖国参拝を止めようと論陣を張っていた加藤紘一。ネットでは右翼のテロを礼讃する声が充満し、「罰を受けて当然」だと喚き、テロを正当化して「国士の義挙」を喝采する匿名右翼の咆哮と狂躁が続いていた。あれからの月日を考えると、日本はもっと右翼化を深め、狂気の猛毒が全身に回った状態になっている。理性の抵抗が衰え消えている。鳩山由紀夫が右翼の暴力の禍に遭わなければいいがと案じ、それを考えると、マスコミ報道(特に悪質だったのはTBSの三雲孝江)によってピエロ扱いされ、袋叩きにされて嘲弄された鳩山由紀夫の行動が、実はとても勇気のある、本当は評価を受けるべきものだったということが身に染みて分かる。勇気の要ることだ。今後の情勢を考えると、鳩山由紀夫が引き受けたリスクの大きさに慄然とする。 More
今日(1/22)の朝日の1面に、小さな記事ながら重大なニュースが載っている。山口那津男が尖閣について発言、「将来の世代に解決を委ねることが、当面の不測の事態を避ける方法だ」と言い、棚上げに賛成する意向を示した。本日、北京に飛ぶ予定で、習近平との会談も要請中だとある。安倍晋三の親書も持参するとあり、すなわち、中国への特使は山口那津男に決まったということだ。公明党が尖閣棚上げに舵を切ったことは、きわめて意味が大きい。昨夜(1/21)、テレビ報道はアルジェリアの事件と桜宮高校の問題で時間を埋め、この情報には一言も触れなかった。本当なら、速報でテロップで流してもいいくらいの衝撃の事実であるにもかかわらず。深読みしすぎかもしれないが、昨夜遅く、安倍晋三がバタバタと動いて、邦人7名の死亡確認を政府発表する「儀式」に及んだのは、この公明党の「棚上げ論」と麻生太郞の暴言問題の二つをマスコミが大きく扱うのを阻止する政治だったのではないかと推測する。昨夕の報道では、城内実がイナメナスの病院で邦人の遺体を確認するのは、本格作業は現地時間の本日の朝からという情報が出ていた。一昨日(1/20)にイナメナス入りした城内実による遺体確認が、3日後の1/22になるほど、安倍晋三はあれこれ言い訳をつけて邦人死亡確認の発表を遅らせていたが、今度はもっと具合の悪いニュースが発生したため、それを潰すべく一転したのだ。 More
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