【ソウル聯合ニュース】「歴史問題研究所は言ってみれば『87年体制』(1987年6月の民主化運動)とともに歩んできたところ。朴槿恵(パク・クンヘ)政権の発足で87年体制が終わったという評価もあるが、その歴史を振り返る上で私のようにその体制が形成される過程を直接経験していない人物が、むしろ重要な役割を果たすかもしれない」――。
韓国現代史を研究する歴史問題研究所の研究室長に日本人歴史学者が就任した。
同研究所によると成均館大学東アジア歴史研究所上級研究員の藤井たけし氏(41)が今月から同研究所研究室長として赴任し、業務に当たっている。同研究所が19日までに明らかにした。
韓国の主要な歴史研究団体の研究総括責任者のポストに日本人が就くのは今回が初めてという。
同研究所は、民主化運動が盛んだった1986年に日本の植民地支配の影響を排除し歴史発展の正しいあり方を提示することを目的に設立された社団法人。民族問題研究所、歴史学研究所、韓国歴史研究会とともに韓国を代表する四つの歴史研究団体の一つとされる。
1950年代の韓国現代史を専攻した藤井氏は京都大学、大阪大学を経て成均館大学で博士号を取得した。
韓国現代史の権威として知られる成均館大学の徐仲錫(ソ・ジュンソク)教授の弟子である藤井氏は、李承晩(イ・スンマン)政権で初代首相を務めた李範ソク(イ・ボムソク)氏が結成した朝鮮民族青年団についての著書「ファシズムと第3主義のはざまで」(原題)を昨年末に韓国で出版した。
藤井氏は「日本で学生運動に参加しながら在日朝鮮人との国際連帯を夢見ていたので、自然に韓国史を専攻することになった」と話した。
韓国現代史は経済成長のみを追求した単純なものではなく、政治体制や社会構造まで含めた多様な模索から成るが、その部分の研究が十分ではなかったため研究に取り組むことにしたという。
藤井氏は歴史認識が次第に鈍くなっている韓国の若者について「韓国では歴史への関心は民族主義的な情緒と結びついている。情緒が薄くなれば歴史に対する関心が薄れるのは当然」と診断した。
また「歴史学は答えを示さず問題ばかり提起するという点で何の役にも立たないと思われがちだ。だが、現象の裏側に隠れているものまで引き出し私たちが解決しなければならない問題がいかに難しいものか問題を投げかけることが歴史学者の役目だ」と強調した。
日本人が韓国史を研究することに対し、いぶかしがる韓国人もいるのではと問うと「日本人だというより、歴史学者としてみてくれる。両親の新婚旅行先が韓国だったので、言ってみれば韓国は私の原産地」と話した。
藤井氏はソウル・延世大学語学堂で韓国語を学んでいた2001年に韓国人女性と結婚し、韓国生活は今年で13年目になる。