発信箱:生き残るために=滝野隆浩(社会部)

毎日新聞 2013年03月20日 00時09分

 先週末、陸上自衛隊幹部の退官記念パーティーが神奈川県横須賀市のホテルで行われた。東部方面混成団長の二見弘幸さん(55)。陸自はこの20年、日本を取り巻く国際情勢に合わせて体質を変えてきた。その変容を最前線で体現した指揮官である。

 東日本大震災でも原発事故対処に当たった中央即応集団の幕僚長として司令官を支えたが、一番輝いたのは10年ほど前の第40普通科連隊(小倉)の連隊長時代。初めて戦地・イラクに陸自派遣が決まる前後だった。二見さんは「戦場のリアル」にこだわった。想定されていた着上陸侵攻より、市街戦が起こる確率が高いのに教範も装備も訓練計画も乏しい。ならば自分たちで考えるしかない、と。

 駐屯地内に市街地戦闘訓練場をつくり度肝を抜いた。部外インストラクターを平気で招く。最新装備の情報を熱心に集めた。根性とか精神主義を一番嫌った。隊員たちは小遣いをやりくりしてモデルガンを買った。常に手にして射撃がうまくなりたいから。うわさを耳にして海空自衛官や警察、海保の隊員たちまで集まってきた。ひたむきに、納得できるまで合同の訓練は続いた。終われば、当然酒席。知らぬ間に他の機関との連携ができていた。

 トップの意志で組織は変わる、劇的に変わる。小倉に通いながら、そう実感した。冷戦が終わったものの東アジアの戦略環境は厳しくなり、自衛隊に「リアル」が求められていた。そのとき、保守的な陸自という組織の大変化は末端から始まっていた。「私はただ、任務を達成して生き残る隊員を育てたかっただけ」。二見さんは控えめだ。パーティーには40連隊の仲間も多く集まり、あのころと同じ、うまい酒を飲み交わした。

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM