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両手包丁男 被害者がのぼり棒で応戦

 警視庁は19日朝、東京・江東区の東京メトロ東西線東陽町駅前の交差点で、包丁2本を振り回し、30~60代の男性4人を切りつけたとして、同区の元暴力団組員の男(49)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。男性4人は背中などを刺されたが、いずれも軽傷。男は「『人を刺してみろ』という声が聞こえた」と意味不明な供述をしている。05年にも傷害容疑で逮捕されており、近隣住民らは「危険人物」として警戒していた。この日は横浜市の電車内で女性が、大阪市の公園で子どもが切り付けられるなど、各地で刃物による事件が相次いだ。

 警視庁などによると、午前8時15分ごろ、両手に包丁2本を持った男が「あーあ、この野郎殺すぞ!!」などと叫びながら、駅の向かいにあるコンビニ前で男性2人を刺し、さらに横断歩道を渡って駅前で男性2人に切りつけた。切りつけられた男性らは、現場近くにあったのぼり棒で応戦し、男を取り押さえた。その後、警視庁深川署員が、殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。包丁2本は、男が自宅から持ち出した。

 切りつけられた30~60代の男性4人は背中や腕などを刺されたが、いずれも軽傷。3人は千葉県在住で、1人は都内に居住している。

 取り調べに対し、男は「体内に埋め込まれた超音波から『人を刺してみろ』という声が聞こえた」と意味不明な供述をしている。検査でアルコールや薬物は検出されず、警視庁は責任能力の有無を調べている。

 現場近くには小学校やマンションが立ち並び、通勤、通学のラッシュ時の悲劇に周辺は騒然となった。当時、駅前でチラシを配布していた江東区議の斉藤信行さん(64)は「男は血相を変え、尋常な様子ではなかった。目が血走っていた」と話した。斉藤さんの支援者の60代男性は、背中を刺された。20代の女性は「(先月の)グアム無差別殺傷事件を思い出した…」と声を震わせた。

 男は、現場から約300メートルの都営アパートに母親と住んでいた。捜査関係者によると、05年にも、同区内のパチンコ店で20代の男性従業員の腹部を果物ナイフで刺し、傷害容疑で逮捕されているという。住民の60代男性は「普段からブツブツと『殺すぞ』と独り言を言っていたので、怖くて近寄れなかった」。70代女性は「アパート内の『危険人物』として有名だった」と振り返った。近年は、精神科へ通院していたという。

 [2013年3月20日8時59分 紙面から]

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