中国:命むしばむ緑の川 「がんの村」
毎日新聞 2013年03月18日 15時00分(最終更新 03月18日 15時19分)
連れて行かれた先の市政府庁舎で、外事弁公室の方克華(ほうこくか)主席主任は紙を示した。「10年以降、村の死者数は59人で死亡率も正常だ。がん死は11年が3人、12年が5人」と説明する。
一方、村の幹部は「5年間で33人、10年間で50人ががんで死んだ。最近は増えている」と証言する。方主席主任に確認しようとしても「紙にある情報で十分だ」と一点張り。再び村に向かうと、乗っていた車の運転手に男の声で電話がかかった。「襲われても知らないぞ」。運転手は先を行くのを拒んだ。
徳興市の製錬工場は中国の経済成長に伴い規模を拡大し、隣接する楽平市も関連産業で潤う。同市の域内総生産(GDP)は176億元(約2690億円)。別の当局者は「あの村の住民も銅山で出稼ぎしている。重要な存在だ」と話した。
全人代で5日発表された政府活動報告は「環境汚染問題を解決し、人民に希望を与える必要がある」とする。だが、税収や就職を当て込む地方政府は、汚染の現実から目をそむける。環境保護省の張力軍(ちょうりきぐん)元次官は中国メディアに「環境保護への最大の圧力は、地方政府のやみくもなGDP追求だ」と語っている。