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松下響の天輪返し

無断転載などの不正利用行為と二次創作の違い

夜も更けて参りました。こんばんは、松下です。
世間はそろそろ太陽が熱くなったり本が薄くなったりする季節ですが、近頃何故か「二次創作は元々泥棒なんだから盗まれても文句を言うな」などという珍妙な意見が横行している[1] ようですので、それについて私なりの見解[2]を述べてみたいと思います。
説明を厳密にすると分かりにくくなるため大雑把な部分もありますが、内容について明らかな誤りがありましたら、是非突っ込みをお願いします。

※記事タイトルから内容が想像しにくいというご指摘を頂きましたので改題しました。原題:「太陽曰く燃えよ有明」

※徳弘先生とニドの件について訂正:パッケージデザインについては美術性が余程高くない限りは著作権ではなく意匠権に従うことになり、意匠権ではそのデザインを絵や写真に写し取っただけでは権利侵害とはなりませんので、意匠権の侵害でもありませんでした。謹んで訂正させていただきます。

二次創作は泥棒ではない

大前提として、大元の著作権を持つ原著作者は、やろうと思えば自身の作品に関する二次創作を全て禁止することが出来ます。これは下の図を見れば明らかです。

二次創作物への著作権行使可能範囲
図1

著作権関連用語の大雑把な解説:

著作権
知的財産権の一種で、著作者が著作物の排他的利用を行う権利。
複製権
著作権の一種で、著作を複製する権利。他者が勝手に複製するのを差し止めることが出来る。
翻案権
著作権の一種で、著作を翻案する権利。翻案とは元の著作物に依拠する(元の著作物の主要な要素を拠り所とする)二次的著作物や商品を作ることで、翻案権の行使により他者が勝手に翻案するのを差し止めることが出来る。
著作者人格権
著作者の人格的利益の保護を目的とする権利。
同一性保持権
著作者人格権の一種で、著作の同一性を保持する権利。引用や二次創作によってあらぬ誤解を受けかねない場合にこれを差し止めることができる。
二次的著作物
原著作物に新たな創作性を加えて作られた著作物のこと。
二次創作物
二次的著作物のうち、原著作者の正式な翻案許可が無く無断で作られたもののことを指す。無断二次的著作物とも言える。これ自体は正式な法律用語ではない。

上の図をご覧いただくと分かります通り、無許可の二次創作ほぼ全域が何らかの著作権侵害にあたり、右端に赤くない部分が残っていますが、そこまで行くと原形をとどめていないので、二次創作の体を成しません。
しかしながら、厳然たる事実として世の中には大量の二次創作物が存在します。そしてそれらの二次創作物が全て違法なものかと言えば、やや説明が難しいのですが、違法性が無いとは言えないものの、著作権侵害は親告罪であるため、原著作者に問題とされない限り無罪であると言えます。原著作者が許すかどうかによって罪状が変わり、多くの二次創作は暗に許されているということです。

現実を見ると多くの作品において二次創作は禁止されていません。一方で、原著作物の不正利用(無断複製・無断配布・違法利用)は取り締まられています。これはつまり、節度をもったファン活動がその作品にとって有益であるとその著作者が判断しているからで、何の利益にもならない不正利用とははっきり区別されているということです。何しろファンがつかない作品ほど寂しいものはありません。ファンさえつけば、ファンがいるという事実から更にファンが増えて行くという正のスパイラルにも期待できます。
実際に多くの原著作者はファン活動としての二次創作を黙認していますが、黙認と言いつつもそこには暗黙のルールがあります。このルールの適用範囲を図示すると、以下のようになります。

暗黙の了解によるセーフゾーン
図2

このルールはあまたの二次創作者達がこれまでの歴史的経験則から手探りで作り上げていったものですが、勘違いしてはいけないのは、暗黙の了解の内容はファンの都合で作ったものではなく、あくまで原著作者の都合に合わせて作られたものだということです。
これに対し「暗黙とか黙認って何だよ、裏でコソコソやってないで公認をとりつけろ」などと言われる方は、公認は原著作者のリスクになるということを御理解下さい。原著作者が二次創作を安易に公認してしまうと、認めたからには責任が生じる一度認めた以上取り下げるのが厄介売上の一部が納められる商業ベースの正式な二次的著作物との境目が曖昧になる半端にはっきりしたルールを作るとルールの隙間を突いて予想外のことが起こりかねない、などのリスクを背負うことになるわけです。ゆえに、ファン活動は盛り上がってもらいたいけど公認のリスクは背負いたくないという普通の原著作者は、こういった問題を避けるため黙認という形をとります。公認ではなく黙認であるのは、原著作者側の都合が多分にあるわけです。
要するに、この黙認暗黙のルールの組み合わせは、ファン活動をわざわざ公認するというリスクを避けて「いざとなったら気に入らないものをいつでも切り捨てられる」という原著作者側の利便性に寄与しています。つまり見方によっては、原著作者は自作品を勝手に宣伝してくれる二次創作者をある意味では都合よく利用しているとも言えます。制限付きのファン活動に文句を言わないだけでファンが勝手に増えて行き、しかも都合が悪いものを好きなように淘汰できるのなら、これをやらない手はないということです。まともな二次創作者ならそんな思惑やいつ公開停止処分を受けるかわからないリスクは重々承知です。しかし、ルールさえ守ればファン活動が許されるのなら、喜んでルールに従うのがファンという生き物のサガなのです。

「それでも法的にはアウトだから駄目だ」というのであれば、それに対し幾つか例を出してみます。

ある漫画の作者に読者がファンレターを送ったとします。そしてその内容には応援メッセージだけでなくファン自らの手で大好きなキャラが描かれていたとします。となると、このファンレターは作者の翻案権をほぼ間違いなく侵害しているのですが、これに対し作者が「応援ありがとう!」と答え、あまつさえ他の読者に見せびらかすのは、果たしておかしいことでしょうか。

また、「うー! にゃー!」(曲名:太陽曰く燃えよカオス)で有名な「這いよれ! ニャル子さん」という作品があります。当該作品は基本的には一次側の商業作品でありながらパロディという名の大量の二次創作表現で埋め尽くされています。元ネタのクレジット表記が無いところを見るに、恐らく逐一許可は取っていません。しかし表紙からして歴代仮面ライダーの変身ポーズという原作ライトノベルは問題なく商業流通していますし、TVアニメ化さえしています。著作権侵害や二次創作がいかなる理由でも絶対に駄目だと言うのなら、この現象に説明がつきません。
パロディ表現をおおっぴらに使った商業作品というのは何もニャル子さんに限った話ではありません。銀魂だってそうです。あちらは何度も東映作品のパロディをやって権利者の東映から厳重注意を食らっており、流石にもうちょっと控えた方がよいのではと心配になるくらいですが、銀魂がやりすぎなのはともかく、商業作品でもパロディを無許可でやっているわけです。

先に述べたリスク回避の観点から、二次創作のルールは基本的には暗黙のものとなっていますが、二次創作のガイドラインを明示している権利持ち企業も幾つかあり、その中でも明確な二次創作許可ルールを定めているクリプトン・フューチャー・メディア社は、ファンに対して極めて誠実であると言えます。ルールを明言することは原著作者にとってリスクになりうるわけですが、クリプトン・フューチャー・メディア社のキャラクター・ボーカル・シリーズは当初から二次創作活動=ファン自らの大規模広報活動という強烈な正のスパイラル現象により爆発的に売り上げを伸ばしたものですので、クリプトン・フューチャー・メディア社はファン活動の有益な面を最大限活かすスタンスを取っています。それが明文化された二次創作ルールやピアプロという形に現れているわけです。[3]

ここまで言えば大体お分かりかと思いますが、法的に著作権を侵害されているからと言って、それが原著作者にとって良いと思えるものである限りは「権利を行使しなくてよい」し、ルール内である限り行使しない約束までしたっていいのです。もっと言うと著作権は著作者の財産を守る権利、著作者人格権は著作者の人格的利益を守る権利ですから、その権利が及ぶ範囲で他と衝突しない限りにおいて著作者の好きなように使ってよいのです。最終的には原著作者が許すか許さないかで是非が決まるのですから、何を許して何を許さないというルールを原著作者が勝手に決めていいことになります[4]。そして殆どの著作者が許さないとしているのが著作者に不利益しかないコピーやトレス、不正利用であり、基本的に許すとしているのがファン活動、つまりルールを守った二次創作です。親告罪において、この差は天と地ほどもあります。許されないものはただの処罰対象ですが、許されるものは先の例で言う漫画家と読者、クリプトンとボーカロイドファンのように互いに良好な関係を築くこともできるのです。
結局のところ、二次創作を明確に禁止している作品と禁止していない作品がある以上、禁止していない作品の原著作者が望むのは、「法的にグレーだからと言って自粛すること」ではなく、「節度あるファン活動が活発に行われること」と読んで差し支えないのです。これは多くの企業がわざわざコミックマーケットにブースを出展するという事実からも伺えます。二次創作禁止という噂がある小学館編集部の見解でさえも「問い合わせられたら立場的に駄目としか答えようがないが、うまくやってくれればいい」となっています。ゆえに、第三者が「法的に侵害しているから全部駄目」と決めつける行為は、むしろ原著作者の意思と、著作権を行使しない自由を軽んじていると言えるのです。

二次創作者が創作の自由を与えられることに関して感謝の念を持ち、ルールを守り、原著作者から何らかの指示があった場合に従うのは大前提ですが、それらを遵守しているのなら迷惑というよりむしろ望まれているのですから、二次創作だからと言って必要以上に卑屈になる必要はありません。例外はあるものの基本的に二次創作者は自らの好意を他者の目に見える著作物という形にしてしまうほどの大ファンなのであって、言うに事欠いて泥棒と同等だなんていうのは、二次創作を許容する原著作者に対しても失礼な話です。原著作者は暗黙の了解によって泥棒を放し飼いしているわけではないのです。

二次創作者はルール違反を放置するべきではない

さて、その二次創作ルールにおいて、あくまでファン活動であるため営利目的の販売をしてはいけませんが、実費程度までは資金回収が認められています。二次創作物の不正利用はその実費回収を妨げる行為なので、その差し止め要求はルールの範囲内の行為となります。勿論無料公開作品の場合でもルール内であるのは同じですから、公開差し止めを要求することが出来ます。そもそも相手は原著作者にとって何の益もないただの不正利用者ですから、遠慮する必要はどこにもありません。

それでも「お目こぼしをもらっている立場なのだから騒ぎを大きくするな」などという意見も見受けられますが、それはむしろ逆です。
まず二次創作物が二次創作者の手を離れて勝手に拡散されることが原著作者にとって好ましいとは言えません。何故なら、過剰に特定の二次創作作品のイメージが広まってしまうのを原著作者は好みませんし、更に原著作者から公開差し止め要求があった場合に止められなくなる危険性があるわけです。この点において、二次創作物の不正利用、特に無断複製配布は原著作者にとっても迷惑であると言えます。ゆえに二次創作者にとっては自らの著作物の不正利用を防ぐのも節度の一部であり、これを何ら恥じる必要はありません。逆に独自の理屈で二次創作だから訴えられないだろうと高をくくっている不正利用者は、二次創作者どころか大元の著作者から訴えられる可能性もあることに気付くべきだと思います。
このように不正利用を止めるべき理由があるわけですが、先程の妙な理屈で遠慮をして不正利用行為やルールからはみ出すファン活動を放置していくと、ルール内でファン活動をするのが前提で許されていたのに、はみ出し者が増えたことで節度をもったファン活動が出来ないものと原著作者に判断され、二次創作活動を全面禁止される危険性があります。それを防ぐためにも、二次創作に関わる者は自身だけでなく他者にもルール遵守を徹底していかなければならないわけです。

ところでもし二次創作者が原著作者の許容する範囲を超えて例えば18禁禁止ジャンルで18禁の著作物を作っていたとします。これ自体二次創作に関わるものとして避けるべきことですが、だから訴えることなんかできないだろうと思って無断転載するのは考えが甘いと言えます。禁止されているということは原著作者にとってより一層拡散されたくない内容のものですから、実際には二次創作者の頭越しに原著作者から警告が飛ぶ可能性があります。二次創作者としても、そうなる前に公開を何とか差し止めるべきです。
更に、本来有り得ないはずですが10割トレパクの本を作って頒布したとしましょう。10割トレパクだと創作性が認められず、つまり本の作者が「著作者」ではなくなることが考えられます。作者に著作権が認められないなら大丈夫だろうとこれを無断転載すると、今度は他の著作物の複製物を無断転載していることになるため、やはり原著作者から警告が飛びます。或いはパクリ元が二次創作物であった場合でも、パクリ元の二次創作者が訴えることが出来ます。
結局のところ、ただの不正利用者には一分の理もないのです。

Twitterアイコンについての追及は正当ではないのか

Twitter上に原著作物の不正使用アイコンが結構あるのは事実です。これは二次創作ルールに照らし合わせると真っ黒のアウトなのですが、現在のところ「絵を描く力はないがその作品のファンだ」という意思表明に使われていることが多いので、原著作者はそれによる損害と作品の宣伝効果とファンを一人一人注意するリスクを秤にかけて、今のところ大した損害はないだろうということでお目こぼしをしているわけです。原著作者によってはこの功罪の功の面を狙って公式にTwitter用アイコンを配布しているところもあります。
しかしだからといって二次創作者は原著作者を見習って黙っていろというのは、とんだお門違いです。著作者に問題とされないから黙認無罪なのであって、この場合二次創作とはいえ著作者が公共の場での使い方を問題としているのですから、使用を差し止めるのは当然の権利です。繰り返しますが、著作者は著作権を使いたいように使ってよいのです。二次創作者の場合はその権利が原著作者の権利や二次創作ルールとぶつかる場合があり、その場合に原著作者に譲らなければならないというだけの話です。
そもそも原著作物のアイコン不正使用の場合でも、「二次創作の黙認と違って明らかにルールを破っている」ということを忘れてはいけません。今のところTwitterアイコンについては原著作者が取り締まる意思を示していないように見えますが、程度の差はあるものの元々著作者がNOの意思を示している「著作物の無断複製・無断配布・違法利用」の範疇に入っていることは確かで、Twitterアイコン限定黙認ルールなどというものも未だ構築されておりません。「みんなやってるだろ」を言い訳にする人にはルール違反の意識が欠けているように思えます。ルールを破って好き勝手やっている人は真面目にルールを守っている人に迷惑をかけており、本来批判されてしかるべきであるということをご理解下さい。

ところで世の中には自称現代アーティストなのに他人の原著作物を縮小しただけのアイコンを使ってしかも著作権や他の著作者に喧嘩を売っている厚顔無恥な人、具体的には黒瀬陽平という人がいます。所詮Twitterアイコンとはいえ、あの人が未だに使用を差し止められていないのは流石に処置が寛大過ぎると思うのですが、いかがなものでしょうサンライズさん。

二次創作・ファン活動の一般的ルールと問題になった例の検証

二次創作の一般的ルールはあくまで暗黙のものですが、概ね以下のようなルールを守るべきとされています。

大原則:原著作者を怒らせてはいけない
二次創作物の作品内容に留意すべきなのは勿論ですが、もし作品外のことであっても、原著作者を挑発するような言動が目に触れれば、内容如何に関わらずアウト判定が出ます。原著作者はあくまでファン活動の活性化のために敢えてセーフゾーンを設けているだけであって、ファンでも何でもないものに対しては容赦なく著作権侵害を訴えることができるということを忘れてはいけません。たとえ作品という形に反映されなくても原著作者への敬意は大事です。仮にそれほど敬意を持っていなくても、それを表に出して得することなど何一つありませんので黙っていましょう。
これ以下のルールも、結局のところ「こういうことをすると原作者が怒るのでやってはいけない」ということの原則説明に過ぎません。
原作を冒涜するような内容であってはいけない
原作を完全に無視した「原作レイプ」と呼ばれるような作品内容は原作イメージに影響を与えかねないため、或いは単純に腹立たしいため、原著作者には嫌われます。元々18禁ではない作品の18禁二次創作を行う場合なども結構スレスレなので要注意です。
この原則は図2における右側の同一性保持権侵害領域にあたります。
原著作物の代替品とみなせるほど似せてはいけない
逆に余りに似せすぎても、原作のイメージに影響を与えかねないこと、原作の商品価値に影響を与えかねないことから、原著作者のマーク対象になります。似せるということは原作愛の現れであることも多く、そういう意味では冒涜よりははるかにましですので、これだけで一発アウトになることはそう多くはありません。しかし、他の要件と併せてアウトになる場合がありますので、忠実に似せすぎるのも危険と覚えておきましょう。
この原則は図2における左側の同一性保持権侵害領域にあたります。
コピー掲載や無断トレスをしてはいけない
二次創作は創作活動ですから、自分で作るのが大前提です。コピー掲載や無断トレスでは二次創作物としての創作性が薄く、ただ原著作物の権利を侵害するだけのものになってしまいます。これは容赦なく摘発対象となりますので気をつけましょう。構図模写は許される場合もありますが、模写の精度がトレス並に高い場合や、あまりに模写ばかりで埋まっている場合などは摘発対象になることがあるので要注意です。
この原則は図2の左端の複製権侵害領域にあたります。
特に原著作物からそのまま持ってきた内容について自らが描いたなどと主張した場合は最悪で、これは著作権法第121条違反、著作者名詐称罪にあたります。著作者名詐称罪は著作権侵害の中でも例外的に非親告罪であり、誰でも警察に通報できますので絶対にやってはいけません。
営利販売をしてはいけない
二次創作はあくまでファン活動として許されているので、営利販売を行ってはいけません。営利目的でなくても、印刷代金などのコストを大幅に上回る資金回収は控えましょう。この原則から、原材料費が0のダウンロード販売が近年では問題となっています。クリプトンでもダウンロード販売は認められていません。
イベントでの頒布とダウンロード販売の中間に、同人ショップ販売というものがあります。こちらは原材料費と卸値の調整で二次創作者自身に利益が発生しないようにはできますが、一方で同人ショップが二次創作物の販売代行で確実に利益を上げており、原著作者に利益が還元されていないのは問題と言えます。販売代行ならイベントで売り子さんに仕事料を払うのと同じようなものと言えなくはありませんが、それを企業がやっているのはかなりきわどいところです。なお、クリプトンではこの同人ショップ委託販売も許可していません。
近頃DL販売禁止や同人ショップ委託禁止に反しているボーカロイド二次創作物が幾つも見られますが、少なくともクリプトンに関しては明確に駄目と言っているのですから、二次創作者はこれを守るべきです。クリプトンが二次創作に対して寛容だからと言って甘え過ぎてはいけません。好意にはそれなりの誠意を以て応えるべきです。
あまりに大量の部数を頒布してはいけない
原著作者は特定の二次創作作品のイメージが浸透して原著作物のイメージに影響を与えるのを嫌います。そのため、大量部数の頒布も控えるべきです。これもダウンロード販売が許可されない原因となっています。web上のフリー配布ならば見逃してもらえることが多いですが、それでも影響が大きくなりすぎる場合は差し止め要求が飛んできますので十分留意すべきです。
部数が多いか多くないかの判定基準は基本的には「即売会イベントで手渡しできるだけの量」となっておりますので、こちらも同人ショップに大量に卸して販売代行してもらうのはルールをはみ出すことになります。手渡しのレベルを大幅に上回らない程度の部数ならば部数自体の問題は無くなりますが、どちらにしろ目立つことで摘発対象になりやすくなりますので要注意です。
立体物は当日版権システムに従う
ガレージキットなどの立体物に関しては、別途当日版権システムというものが存在します。許諾システムが存在する以上、無許可での販売は不可です。必ず申請して許可を取りましょう。無視したら訴えられても文句は言えません。原著作者企業が申請・審査を受け付けてくれない場合は「駄目」という意思表示ですので、素直に諦めましょう。そうならないように、受け付けているかどうか程度は事前に調査しておくことをお勧めします。
なお、あくまで「当日版権」ですので、当日以外に販売・頒布を行うのは勿論駄目です。
ちなみに何故立体物以外に当日版権システムが適用されないのかといえば、要するにガレージキットの審査でさえ時間がかかるのに、物量的に桁違いの同人誌の審査など現実的に無理というお話です。他にも適用するとまずい理由が沢山ありますが、これについては太田たこすさんの当日版権はコミケにそぐわないという話が詳しいです。
原著作者が設定しているガイドラインがあればそれに従う
原著作者自ら示した二次創作ガイドラインが存在する場合、それは一般的ルールよりも優先度が高くなります。熟読の上で違反しないように留意しましょう。もし作品単位で二次創作禁止と明示されているのであれば、その作品については諦めるのが賢明です。
なお、小学館のような一見禁止を掲げていて実は許容しているという例もあるので、情報はなるべく多く集めましょう。

以上の条件を踏まえて、二次創作物が原著作者に問題であるとされた例について一体何が不味かったのかという解説を行っていきます。

ポケモン同人誌事件(1998年~1999年)

1998年夏に発行されたポケットモンスター同人誌について任天堂が1999年初頭に著作権侵害を主張し告訴、略式裁判と10万円の罰金支払いを以て終結した事件です。
参考:同人誌生活文化総合研究所 – ポケモン同人誌著作権問題関連
参考:AKIOの言いたい放題! – ポケモン事件から同人誌の著作権問題を考える
この事件では二次創作の作者が略式とはいえ法廷に立たされ、有罪という結論が出ています。こうなってしまっては泥棒扱いも免れません。

さて、この事件で一体何が不味かったのかといえば、その同人誌の内容にほかなりません。押収されたポケモン同人誌の内容はサトシとピカチュウの獣姦ものだったという話ですから、「冒涜的内容禁止」の原則に反しており、何より「原著作者を怒らせてはいけない」という大原則に反しています。任天堂としては、子供が夢中になるポケモンに獣姦のイメージを植え付けられてはたまったものではありません。また、問題そのものとは別にサークルの名前が「海山商事」だったため、何らかの法人組織との関わりを勘繰られて大げさに扱われたという説も存在します。
任天堂の当時の主張としては「勝手なイメージを流布されるのは困る」ということでしたので、図2で言う右側の同一性保持権侵害を訴えているように見えます。しかし実際に裁判で言い渡されたのは複製権の侵害です。複製権とはその名の通り自らの著作物を複製する権利及び他者に勝手に複製させない権利のことですので、自力で描いた二次創作物には本来適用できません。しかし、それ以前に複製権の侵害で勝訴した前例があったために、手っ取り早くこれを利用したのではないかと考えられます。

この前例というのが1976年のサザエさんバス事件です。これは立川バスがサザエさんのキャラクターをバスにペイントして「サザエさん観光」として無許可で運行していた件に対する訴えで、原告が複製権侵害を主張し、東京地方裁判所判決ではキャラクター自体の著作物性には言及せず「対比をするまでもなく」著作権侵害であるとしています。この際、どこのページからコピーしたかの検証は行われていません。
参考:牛木内外特許事務所 – サザエさん事件: 東京地裁昭和46年(ワ)151号昭和51年5月26日判決(認容)〔無体裁集8巻1号219頁〕
一方、1997年のポパイをネクタイの柄に使った事件では、同様に原告が複製権侵害を訴えているものの、最高裁判所判決ではキャラクター自体の著作物性を否定し、「著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない」と厳格な立証を要求しています。そして該当するのが既に著作権が切れた連載回であったとして差し止め要求が無効になっています。
参考:著作権判例データベース – 平成4年 (オ) 1443号 著作権侵害差止等

話を戻して1999年のポケモン同人誌事件の略式裁判では、期限切れなどが関係無かったせいか略式であったせいか、サザエさんバス事件同様の扱いとなっています。そういう意味で過去の判例に照らしてはいるものの、普通に作られた同人誌であればゲーム画面やパッケージのコピーなど使っているはずが無く、公正であるとは言い難い判決となっています。
しかし現実問題として、どうせこれに抗議したって、翻案権や同一性保持権を引っ張り出してくれば結局任天堂の勝訴は揺るぎないわけです。要するにどの権利の侵害であったかはさしたる問題ではなく、法廷に立たされた時点で二次著作者の負けが確定していたので、単に手早く済ませるために説明や証明が面倒な同一性保持権や翻案権を避け、サザエさんバス事件という前例のある複製権を主張したのではないかと考えられます。また、この時の裁判は略式裁判ですので、ほぼ罰金を支払わせるためだけの形式的なものです。

ドラえもん最終話同人誌問題(2005年~2007年)

2005年に制作された当該同人誌に2007年に小学館が公開差し止め要求を行い、誓約書提出と示談金支払いを以て終結した事件です。
参考:Wikipedia ドラえもん最終話同人誌問題
こちらはあくまで示談解決であって、裁判で罪状が確定したわけではありません。

制作から公開差し止め要求まで2年の開きがあることから、実は当初小学館はこれを問題と見ていなかったことが分かります。
では2年の間に何が問題になってしまったかというと、まずこの同人誌の発行部数が頒布ベースで13,380部あまり、出荷ベースでは15,550部あまりとなっており、「大量部数頒布禁止の原則」に反しています。また、売上の一部を示談金として支払ったことからわかる通り、「営利販売禁止の原則」にも反しています。更に絵柄が原作に酷似しており、これが「似せすぎてはいけない原則」に反しています。それでも同人誌そのものでは二次創作の作者名が明記されていたため間違われることは殆ど無かったようですが、これが無断転載でネット上に広まってしまったことで、本当に原作の最終回と間違って小学館に問い合わせる人が続出しました。そのため、小学館・原著作者サイドはファンが勝手に作ったドラえもん最終回のイメージがあまりに浸透しすぎていることに危機感を覚えて差し止め要求に至ったというわけです。
この件で二次創作の作者には原作へのリスペクトが十分にあったとされているため、事件の一部だけ見て小学館をバッシングしている人を見かけますが、事態がここに至っては流石に仕方の無い対処であったと言えます。

この件では最終的に作者を無視した無断転載で作品だけの認知度が上がったのがとどめとなっていますので、この無断転載者は原著作者と二次著作者の両方に迷惑をかけていることになります。作者が発表の場所をコントロールできないという状況は、こういった場合に致命打になりうるわけです。無断転載したって損害なんかないだろうという身勝手な主張は、この意味でも大きな誤りであることが分かります。
作品だけを独り歩きさせず、作者が公開状況をコントロールできるように正しく紹介する方法はありますので、気に入った作品があったなら無断転載などせずにきちんと正しい方法で紹介しましょう。
参考:【改訂版】イラストの無断転載と正しい紹介の違い

以上の有名な事件では、どちらも二次創作・ファン活動のルールに違反していたことが分かります。逆に言うと、ルールを守って節度を持った二次創作をしているならば、いきなり訴えられたり損害賠償請求をされたりすることはまず無いわけです。
二次創作をこれからやろうという方、或いは創作そのものはやらないけれどファンとして盛り上げていこうと考えている方は、原著作者を怒らせないという大原則だけは常に念頭に置いて、ルールを守ってファン活動に勤しみましょう。

参考までに、偽カオス*ラウンジも他者の著作に依拠して活動しているという点においては二次創作と言えなくもありませんが、他人の著作物のコピーを勝手にそのまんま使っていて、キメこなというキャラの著作者詐称をやらかしていて、営利販売をしていて、原作を冒涜する水ぶっかけアートといったものを作っていて、東方ProjectやPixivのガイドラインもまるっきり無視していて、元の絵や作者に対して尊敬の念が無いことを聞いてもいないのに自ら宣言していて、その上絵を踏んで原作者に喧嘩を売っているのですから、論外の大アウトであることは疑う余地がありません。
こうして見てみると、結局のところ彼らが現代アートと称する行動は原著作者を侮辱して怒らせる要素ばかりが充実しており、批判を受けて当然の存在であることがお分かりいただけると思います。

  1. 参考:アイコンを無断転載して居直り強盗モードに突入する人たち コメント欄「無断転載」と「二次創作」の混同。 []
  2. あくまで個人の見解ですので、全ての場合に必ずしも正解であるとは限りません。 []
  3. これに対してファンも誠実に応えるのが筋というものですが、人数が多すぎるせいか一部にルール違反が見られるのは残念なことです。 []
  4. あくまで原著作者が問題とするか否かのルールであって、実際に訴訟になった場合にはその元作品に二次創作物がどの程度依拠しているか、独自の創作性を持っているかという内容面も考慮されます。 []
カテゴリー: 著作権 | タグ: | 36件のコメント

無断転載などの不正利用行為と二次創作の違い への36件のコメント

  1. 名無し より:

    これは分かりやすい良まとめ

  2. ななし より:

    わかりやすくて参考になりました

    • 松下 響 より:

      コメントいただきありがとうございます。
      また、分かりやすいとお褒めの言葉をいただき恐縮です。
      本文の内容は色々と調べた結果ではありますが、あくまで私の見解で、全て正しい保証はありませんので、そこだけご留意くださいませ。

  3. ピンバック: 調査報告 : 豆腐メンタル逆切れ事件(1) | 松下響の天輪返し

  4. ピンバック: 調査報告 : 豆腐メンタル逆切れ事件(2) | 松下響の天輪返し

  5. 夜型人間 より:

    「二次的著作物」の定義が少し怪しい感じですかね。確か、法律上は、許可の有無と「二次的著作物」か否かは無関係だったはずです。

    それから、「元著作物の特徴を残す独自の著作物」ですが、「原作依拠部分を主題としてい」るか否か、及び、「利益を上げ」ているか否かと、翻案権侵害になるか否かは無関係であると思われます。(この辺りは、「江差追分事件」や「ティアリングサーガ事件」などが参考になるのではないでしょうか。)

    あとは、Twitterアイコンへの利用については、自分は「真っ黒」というのは少し躊躇を覚えます。一応、「私的使用」として、「著作権の制限」に該当する可能性もありますので。まぁ、他方で、「公衆送信権」の規定に引っかかる可能性はあるわけで、「真っ白」というわけにもいきませんが・・・。

    長い上に、調べてるうちに自分でもよく分からなくなってきてますが、少しでも参考になれば幸いです。

    • 松下 響 より:

      ご指摘いただきありがとうございます。

      >「二次的著作物」の定義が少し怪しい感じですかね。確か、法律上は、許可の有無と「二次的著作物」か否かは無関係だったはずです。
      ご指摘の通り、二次的著作物の定義が不正確でしたので、該当部分を修正いたしました。

      >それから、「元著作物の特徴を残す独自の著作物」ですが、「原作依拠部分を主題としてい」るか否か、及び、「利益を上げ」ているか否かと、翻案権侵害になるか否かは無関係であると思われます。(この辺りは、「江差追分事件」や「ティアリングサーガ事件」などが参考になるのではないでしょうか。)
      仰る通り、「原作依拠部分を主題としてい」るか否か、及び、「利益を上げ」ているか否かに関わらず翻案権の侵害にはなります。これは一つ目の図で中央部分が真っ赤になっていることでも明らかです。
      しかしご指摘の部分は「翻案権を侵害しているかどうか」ではなく「二次創作・ファン活動の暗黙のルールから外れているとみなすかどうか」について言及しております。法的には主題や利益など関係無く侵害行為であるものの、二次創作・ファン活動のルールに従っているならば黙認状態になりうる、逆に従わないならば容赦なく翻案権が行使されるということです。

      >あとは、Twitterアイコンへの利用については、自分は「真っ黒」というのは少し躊躇を覚えます。一応、「私的使用」として、「著作権の制限」に該当する可能性もありますので。まぁ、他方で、「公衆送信権」の規定に引っかかる可能性はあるわけで、「真っ白」というわけにもいきませんが・・・。
      無断使用のTwitterアイコンが「真っ黒」というのは、部分的とはいえ丸コピーの無断転載に該当するため、二次創作・ファン活動ルールにおいて全くのルール違反という意味です。権利者が訴えてはいないので暫定無罪ですが、本来「問題である」としている行動です。
      ほぼご指摘の内容で完結しているのですが、私的使用と認められるのは家庭内など個人的な限られた範囲内で使用する場合ですので、インターネット上で公衆送信するTwitterアイコンや背景を私的使用と認めるのは難しいと思います。

  6. とおりすがりななし より:

    同人はファン活動という精神的なリスペクトがある反面、コミケクラスだと動く金額が大きすぎる。億レベルの経済規模を持っているのにルールがおっそろしくどんぶりすぎ。それを黙認してるからとかなんとか言うにはちょっと創作者の感覚を疑う

    • 松下 響 より:

      コメントいただきありがとうございます。

      ルールがどんぶりすぎるとのことですが、「二次創作・ファン活動の黙認ルール」であるため、それが最大公約的なものであるのは必然で、それぞれの権利者特有の事情に必ずしも一致しない場合があるのは致し方ないところです。かといって致し方なしで済ませていいのかといえば、勿論一般ルールとは別にそれぞれの権利者の事情に対する配慮が必要であると思います。

      動く金額に関しましては、それぞれの二次創作者や二次創作物の単位で回収資金が原価を大幅に超えてしまう場合、もしくはあまりに大部数の頒布をしてしまう場合はまずいです。しかしこれらのルール違反をせず節度を保ったままその人数や著作の数が増えることによって規模が大きくなるのならば、そもそも敢えて二次創作を許容する理由となっている「ファン活動(=ほっといても勝手にやってくれる作品宣伝活動)の活性化」という意味では問題は無いのではないかと思います。
      まあ、実際のところ節度を保ってない人が結構いるのは問題ですけれども、それはルールに反しているということですので、戒められるべきところです。

      あと細かいところですが、一次創作の同人も存在しますので、これを主語にするのは不適当かと存じます。今回の場合は二次創作という意味で使用されていると解釈させていただきました。

  7. ぷれい より:

    わかりやすいまとめありがとうございました。
    人を殺した人を殺しても罪にはなりますよ。ということですね。
    自分は無断転載に関しては二次創作者に許可とったほうがいいと思う人です。
    そっちのほうがメリットがあります。

    ところで、以下の本文のところに質問があります。

    >>第三者が「法的に侵害しているから全部駄目」と決めつける行為は、
    むしろ一次著作者の意思と、著作権を行使しない自由を軽んじていると言えるのです。

    これは、無断転載された作者が無断転載やめてください!訴えますよ!とすべきで、
    作者以外の方が無断転載はいけない!っていうことはやめたほうがいいということでしょうか。

    自分としては作者以外の人が無断転載してる人に死ねよカス。とかいってることに疑問を持っています。

    • 松下 響 より:

      コメントいただきありがとうございます。

      >人を殺した人を殺しても罪にはなりますよ。ということですね。

      その結論も勿論間違ってはいませんが、ここでは「二次創作者は泥棒ではない」と述べておりますので、その例えですと「人殺しではないし自身の命を守る権利もある」となりますね。
      これがもし二次創作の無断転載ではなく二次創作の更に二次創作であれば、「人殺しではないし殺されるような目にもあっていない」になります。

      >>第三者が「法的に侵害しているから全部駄目」と決めつける行為は、
      >>むしろ一次著作者の意思と、著作権を行使しない自由を軽んじていると言えるのです。

      >これは、無断転載された作者が無断転載やめてください!訴えますよ!とすべきで、
      >作者以外の方が無断転載はいけない!っていうことはやめたほうがいいということでしょうか。
      >自分としては作者以外の人が無断転載してる人に死ねよカス。とかいってることに疑問を持っています。

      もし作者が「無断転載されてもOK」という意思であるならば、確かに第三者が無断転載やめろなどというのはお門違いです。
      しかし過去の積み重ねからして、これまでに権利者企業は不正利用や無断転載を取り締まってきたという事実があります。暗黙のルールが成立するより以前の昔は一次著作物の画像をそのまんま掲載した二次創作同人誌が平然と存在したと聞きますが、そのようなものは全て取り締まり対象になってきたわけです。つまり一般的権利者の意思は「無断転載NG」です。
      そのため、このような権利者の意思を反映して作られた現在の二次創作・ファン活動の一般的ルールにおいて、無断転載はルール違反とされています。図2の左端が赤いのはそういうわけです。
      権利者が企業の場合、ニコニコ動画などの「権利者削除」という形でその意思が表れることもありますが、これをいちいちサーチ&デストロイするのも企業にとって結構な負担です。企業にとっては出来れば最初から消す必要があるような事案が発生しない方がよいわけです。そこでファン活動を行う人間に求められるのが、二次創作・ファン活動の一般的ルールにのっとった節度ある活動です。多くの企業の意思を反映して作られたこのルールにおいて、無断転載はNGとなっています。ルールからはみ出すものをファン自ら淘汰していく自浄作用があれば、権利者企業の負担は大幅に減ります。
      そういうわけで、流石に死ねだとかカスだとか罵るのはやり過ぎですが、無断転載をやめなさいと第三者が指摘するのにはそれなりの正当性があるわけです。

      権利者が個人の場合はその一事例について許すか許さないかを簡単に確認できることが多いです。そして許さないとはっきり意思確認できれば、これは無断転載している人が確実に悪いということになります。

      なお、作者本人が無断転載OKを表明していても、その著作物が二次創作であった場合、それだけで無断転載OKにはなりません。
      何故なら一次著作者も二次創作物に対する権利を持っているため、一次著作者のOKの意思が無いと駄目だからです。
      例えば東方Projectの二次創作著作物についてその作者が無断転載OKを表明していても、大元の著作者のZUNさんがOKとしない限り駄目ということです。

  8. ぷれい より:

    でも、著作者から訴えられれば泥棒という結論じゃないんですか?

    二次創作の同人誌において裁判がないというわけではなく。
    無断転載と同様に訴えられて販売停止および損害賠償請求もされています。

    >そういうわけで、流石に死ねだとかカスだとか罵るのはやり過ぎですが、無断転載をやめなさいと第三者が指摘するのにはそれなりの正当性があるわけです。
    >なお、権利者が個人の場合はその一事例について許すか許さないかを簡単に確認できることが多いです。そして許さないとはっきり意思確認できれば、これは無断転載している人が確実に悪いということになります。

    悪いとは思いますが正当性があるかは疑問です。
    なぜならば、小学館はガイドラインとして以下のように主張しております。

    出版物やサイト上の著作物を要約して掲載することや、その著作物をもとにした漫画・小説等を翻案作成して掲載・頒布すること。
    著作権者の権利を保護するためにも、このような行為は避けてください。
    http://www.shogakukan.co.jp/picture

    しかし、この主張をみて小学館の二次創作物に対して削除してください。と、第三者が主張することは正当なのでしょうか?

    無断転載についてはいいこと、とは思ってません。
    ただ、第三者が指摘することは話がこじれると思います。

    • 松下 響 より:

      勿論全ての二次創作が泥棒扱いを免れるわけではありません。原著作者が問題であると判断したのであれば、泥棒扱いもやむなしです。
      例えばドラえもん最終話同人誌問題では、あまりに原作に酷似した絵柄で、大部数の頒布を行っており、更にネット上に無断転載されて認知度が上がっていったために小学館から直接の通告がありました。
      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93%E6%9C%80%E7%B5%82%E8%A9%B1%E5%90%8C%E4%BA%BA%E8%AA%8C%E5%95%8F%E9%A1%8C
      ただしこの例でも裁判には至っておらず、誓約書提出と示談金支払で済んだ模様ですね。
      押さえておくべきポイントとして、この件では二次創作者が二次創作のルールを逸脱していますので、これはルールを守った二次創作・ファン活動が泥棒になった例ではありません。
      また、最終的に無断転載で認知度が上がったのがとどめとなっていますので、この無断転載者は一次著作者と二次著作者の両方に迷惑をかけていることになります。

      >http://www.shogakukan.co.jp/picture
      現行の小学館の意思表明では、翻案が駄目ですので「二次創作自体禁止」ということになりますね。
      ただ、ちょっとややこしいのですが実際に権利を持っているのは出版社ではなく作者です。なので本来二次創作を許容するかどうかは作者の意思によるのですが、業務上の契約書面により、出版社が作者に確認の上で公開差し止め要求を代行することが出来るようになっているようです。赤松健氏の言葉によると、出版社が作者の二次創作許容を無視して二次創作を禁止したり勝手に訴訟を起こしたりすることまではできないようです。
      http://kenakamatsu.tumblr.com/post/19395239269/rinsetsu
      よって、小学館の漫画でも作者が明示的に二次創作をしてよいとしているならば二次創作OKになりますが、作者が黙認の場合は意思が確認できない上に公開差し止め代行者が駄目と言っているので、非常にリスキーです。
      この例の場合、「どうしてもというならば止めないが、後になって痛い目を見たくなければやめておけ」というのが妥当なところではないでしょうか。

      小学館の事情はちょっとややこしくなってしまいましたので、作者が二次創作禁止と意思表明している場合を別途考えます。
      これに反して二次創作物を公開・頒布することは明らかに権利者の意思に反する行為ですので、当然戒められるべき行為です。権利者の意思に反する限り、無断転載も二次創作もNGです。ただし私的使用までは著作権の効力が及びませんので、削除要求というよりは公開停止を促すといったところですね。作者の意思を無視して権利を侵害しようとする人に注意するわけですから、これにも正当性があります。
      むしろ放っておいたら権利者から厳重注意が飛んできて場合によっては賠償問題にもなりうるところを、事前に注意して穏便に済まそうとしているわけですから、ある意味親切であるとも言えます。この段階で止まれば権利者の負担が減りますし、二次作者は賠償しなくてすみますし、二次創作に現在以上のアウトローなイメージがつくことも防止できますので、八方丸く収まります。
      勿論、第三者がわざわざ問題をこじらせるようなおかしな指摘をする場合は話が別です。

      • ぷれい より:

        出版社が禁止したくても著作者の代行という形ではないとダメなんですね。

        ということは、無断転載者に著作者以外に文句を言われて無視しても法的にいいということですね。
        ただ、著作者が明示的に無断転載禁止というページを提示された場合は従わなければならない。
        また、二次創作物が違法であるならば、それについての無断転載も違法であるということですね。

        余談ですが、ポケモン同人誌裁判では、翻案権ではなく、複製権の侵害で訴えられて刑事事件になった事案があります。
        同人誌は無断転載ではなく作者自らイラストを書いたものです。
        複製権については出版社が持っていた気がしたので、この判例によると出版社単体でも訴えれる可能性もあります。
        といっても、この事件に関しては異論反論がありますが・・・

        同人誌即売会「コミックマーケット」(コミケット、コミケ)にて、ポケモンのキャラクターを用いたある同人誌が販売された。その後一般人の情報提供により、「あまりにも酷い内容の同人誌が出回っている」という情報を受け、任天堂の社員が内容確認のためにその同人誌を購入し、本社へ報告。任天堂はイメージダウンにつながり、アニメなどのキャラクター戦略に影響すると考えたため、著作権法違反(複製権侵害)で京都府警に被害届を提出した。通常なら容疑者の逮捕はその居住地域を管轄する地方警察が逮捕や取調べを行うが、このときは京都府警が容疑者である作家のもとに赴き、逮捕後京都まで容疑者を護送することになった。そして当該同人作家は起訴され、罰金が科せられた。この事件については真偽不明の様々な噂が流れ、インターネット上の掲示板などを中心に騒ぎが起こった。
        http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC

        • 松下 響 より:

          確かに権利者以外に文句を言われても法的強制力はありませんね。ですので無視することはできますが、原著作者と二次創作業界にかける迷惑の全責任は自身で負って下さいということになります。第三者の指摘や要求に法的強制力が無いとはいえ、従っておいた方が深刻な問題にならずに済むということです。
          先程から私が使用していた「正当性」という言葉がちょっと浮いているような気がするので一応補足しますが、近所のおっちゃんが悪いことした子を叱る程度には正しいという意味であって、法的効力の話ではありません。

          >また、二次創作物が違法であるならば、それについての無断転載も違法であるということですね。

          これについては概ねその通りですが、ルール内の二次創作でも著作権を侵害していないわけではないので、原著作者が黙認していても完全に合法というわけではないと思います。原著作者が問題としない場合は罪に問われないというだけです。

          >複製権については出版社が持っていた気がしたので、この判例によると出版社単体でも訴えれる可能性もあります。

          仰る通り、出版社は出版のために著作者から複製権と譲渡権の委託を受けていますね。もし出版社が複製権全体を行使できるなら他者の無断転載を差し止める権利を持つはずです。しかし権利の委託はあくまで業務契約によるもので、先程の赤松氏の項にもあった通り差し止めにも作者への確認が必要という限定的なもののようですね。
          ポケモンは元々法人によって作られたゲームですので、漫画が原作のものとは事情が違います。
          ポケモンは元々任天堂という法人が権利を持っていたはずですし、現在では著作権管理を行う専用の法人「株式会社ポケモン」が著作権を保有しています。勿論複製権も持っています。
          http://www.pokemon.co.jp/rules/

          1999年のポケモン同人誌事件、本自体はどんな内容だったのかと思って改めて調べてみましたが、「サトシとピカチュウの獣姦もの」だったらしいですね。うん、そりゃ権利者も怒ります。二次創作・ファン活動ルール以前に、権利者を怒らせたらアウトです。何しろ権利者はファン活動を活性化させるために敢えてセーフゾーンを設けているだけで、基本的には使いたいように著作権を行使できるのですから。
          権利者の当時の主張としては「勝手なイメージを流布されるのは困る」ということでしたので、同一性保持権侵害の主張のように見えます。しかし実際に裁判で言い渡されたのは複製権の侵害です。この背景には同一性保持権が著作人格権であるため譲渡不可能で、法人として使い勝手が悪いので複製権を使ったと見る向きがあるようですね。まあそれでも複製権と同じく著作権に含まれる翻案権の方が無理が無いとは思いますが。
          複製権の定義は以下のものですので、本来自力で描いた二次創作物には適用できません。
          http://www.jrrc.or.jp/guide/outline.html

          過去の判例を引っ張ってくると、1976年のサザエさんバス事件では原告が複製権侵害を主張し、東京地方裁判所判決ではキャラクター自体の著作物性には言及せず「対比をするまでもなく」著作権侵害であるとしています。
          http://www.u-pat.com/d-8.html
          一方1997年のポパイをネクタイの柄に使った事件では、同様に原告が複製権侵害を訴えているものの、最高裁判所判決ではキャラクター自体の著作物性を否定し、「著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない」と厳格な立証を要求しています。そして該当するのが既に著作権が切れた連載回であったとして差し止め要求が無効になっています。
          http://tyosaku.hanrei.jp/hanrei/cr/5687.html

          話を戻して1999年のポケモン同人誌事件の略式裁判では、期限切れなどが関係無かったせいか略式であったせいか、前者同様の扱いですね。過去の判例に照らしてはいるものの、これは複製権の本来的な用法とは異なっており、公正ではなかったという指摘も見受けられます。でも現実問題としては、どうせこれに抗議したって、翻案権や同一性保持権を引っ張り出してくれば結局権利者側の勝訴は揺るぎないわけです。
          なお、この時の裁判は略式裁判ですので、ほぼ罰金を支払わせるためだけの形式的なものです。要するにどの権利の侵害であったかはさしたる問題ではなく、法廷に立たされた時点で二次著作者の負けが確定していたので、単に手早く済ませるために説明や証明が面倒な同一性保持権や翻案権を避け、サザエさんバス事件という判例のある複製権を主張したのではないかとも考えられますね。

        • 松下 響 より:

          小学館の二次創作禁止についてですが、実際のところあの禁止の文面は悪質なケースを予防するために掲示してあるのであって、編集部の見解としては「問い合わせられたら駄目としか言いようがないが、うまくやってくれればいい」とのことですね。
          http://togetter.com/li/117447

  9. 名無し より:

    同人ショップについても触れて欲しかったですね。
    アレは営利以外の何者でも無いと思うのですが

    • 松下 響 より:

      ご意見いただきありがとうございます。
      「営利販売をしてはいけない」「あまりに大量の部数を頒布してはいけない」の項に追記してみました。こんな感じでしょうか。

  10. 通りすがり より:

    こ、これは素晴らしい図だ!!

    ただ、「同一性保持権行使可能」が同じ図の中に2カ所ずつあるのは、もしかして誤字でしょうか?

    • 松下 響 より:

      コメントいただきありがとうございます。
      同一性保持権が2か所に分かれているのは誤字ではなく、左側は「本物と間違われる恐れがあるという意味で同一性保持権侵害」、右側は「本物と違いすぎてイメージに悪影響を与えるという意味で同一性保持権侵害」となります。
      なお、実際には複製権と比べて同一性保持権や翻案権は立証がやや面倒になるので、図の右側はもう少し黄色いですね。その領域では不正競争防止法との組み合わせで訴訟に臨む場合が多いと聞きますが、事例の実態調査ができていないので今のところそのままになっております。

  11. 名無し より:

    どっちも権利者の判断次第で黒となる著作権違反ですっていう話にしか繋がってない気が。
    結局、コミケの二次創作と無断転載に関して第三者の判断を分けてる要素が、完全にオタク個々の主観やコミュニティのルールしか無い時点で何かもう自分達を正当化する為だけにやってるという印象。
    法的な話をすればどっちも黒になるのに、それを意地でも曲げようとしてる感じがします。

    • 松下 響 より:

      コメントいただきありがとうございます。
      印象や気分や感想を述べていただくのは結構ですが、こちらでは主観だけでなく資料を挙げた上での見解となっておりますので、よくお読みください。

  12. とんだ より:

    非常に判り易くまとめられていて、特に範囲図なんかはとても見やすいですね。
    お疲れ様です。

    一つ疑問なのですが、同人誌や二次創作などを対象に行われた訴訟では、例示されているポケモン事件のように
    翻案権よりも複製権が侵害されたと解釈された事例が多いと記憶しております。

    複製権の侵害ということは、二次創作物に対して二次創作を行った者の著作権は認められず、
    原作者だけがその権利を主張できると思うのですが、その辺りはどうなのでしょうか。

    • 松下 響 より:

      コメントいただきありがとうございます。
      確かに複製権を侵害しているただの複製物であれば著作物として認められず、著作権は行使できないという理屈が成立します。ただ、主要な判例の詳細を見てみると実は明示的に複製権侵害として通ってはいないというのが分かります。

      ポケモン同人誌事件では略式裁判のため判例全文が見当たらないのですが、サザエさんバス事件やときめきメモリアル無断改変事件においては原告が複製権の侵害を訴えているものの、判決でははっきり複製権の侵害とは言っていません。特にときめきメモリアル無断改変事件を根拠に二次創作はただの複製だとする見方
      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E5%89%B5%E4%BD%9C%E7%89%A9#cite_note-3
      がありますが、判例全文を読んでみると実はこれも怪しいものです。
      http://www.translan.com/jucc/precedent-1999-08-30.html
      「被告は、同人文化の一環としての創作活動であり、著作権法違反は成立しないと主張するが、採用の限りでない」
      という点ですが、被告主張の原文を拾ってくると
      「仮に、複製権侵害、同一性保持権侵害が存在するとしても、被告が本件ビデオを制作した行為は、同人文化の一環としての創作活動であるから、著作権法に違反するとの評価はされるべきでない」
      となっています。つまり
      「法に触れているとしても二次創作活動なんだから著作権違反とかいう評価はやめてくれ」
      って言ってるんですね。要するに被告は法解釈に反抗しているのではなく、
      「ファン活動なんだから大目に見てくれよ」
      と言っているわけです。しかし権利者に訴えられた以上、もはやこんな主張は通りません。ですからこれに対する判決文
      「被告は、同人文化の一環としての創作活動であり、著作権法違反は成立しないと主張するが、採用の限りでない」
      は先のwikipediaの解釈のように
      「二次創作には創作性が無いから主張は認められない」
      と読むのではなく、
      「二次創作に創作性があろうがなかろうが、原著作物の著作権を侵害している事実は動かない。ここは法廷だ、甘えんな」
      と読むのが正しいと思います。

      また、部分的に複製権を侵害している場合も、それ以外に十分な創作性があるならばそれは著作物であると言えます。
      ※作品の一部に無断で他者のイラストを使用した場合など

      創作性を否定されない以上、二次的著作物の一種ではあるわけですから、権利の主張は可能であるという結論になります。
      http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E7%89%A9#.E4.BA.8C.E6.AC.A1.E7.9A.84.E8.91.97.E4.BD.9C.E7.89.A9

      • とんだ より:

        ご返信有難うございます。

        確かにご回答頂いた通り、ときめきメモリアル無断改変事件は複製権侵害と断定はていませんね。
        同人誌等を、原本を複製した上で改変したものととるか、二次的著作物として考えるか
        解釈・判断がわかれる所だと思います。

        自分自身、著作権の一部非親告罪化など、今後同人活動への風当たりが厳しくなっていくなかで、
        同人誌等の流通を作成者がコントロールできることは非常に重要だと思っています。

        一方で、内心、クリーンハンズの原則(日本では信義則でしょうか?)ではないですが、本来創作を黙認されていた立場の
        同人誌等の作成者が、積極的に著作権を行使しようとすることに疑問を感じるのは事実です。

        実際問題として、Twitterアイコンの追及などで同人誌等の作成者が自らの権利を積極的に行使するようになれば、
        原作者から何らかの対応が取られることが考えられないでしょうか。

        貴殿の主張としては、『積極的に叩かなくてはならない』だと思うのですが、
        個人的には、あまり波風を立てるべきではないのかなぁ・・・というのが感想です。

        その辺り、どうお考えになられるか、参考までにお聞かせ願えませんか。

        • 松下 響 より:

          お返事いただきありがとうございます。

          仰る通り、作品の公開状態を作者がコントロールできることは重要で、実際にドラえもん最終回同人誌問題では無断転載を抑止できずに作品だけが作者不明状態で出回ったことで権利者サイドが事態を静観できずに動く羽目になったわけですから、これは同人誌作者も二次創作だからと遠慮せずに毅然とした対応を取るべきであったと思います。

          クリーンハンズの原則はこちらですね。
          http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E7%BE%A9%E8%AA%A0%E5%AE%9F%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87#.E6.B4.BE.E7.94.9F.E5.8E.9F.E5.89.87
          実際には主に民法第708条において定義されていますね。
          「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」
          http://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC708%E6%9D%A1
          「給付」ですから、意図して相手に何かしらの利益を与えた場合にその返還を要求することが出来ないということになります。無断転載のように勝手に使われている場合はこれに該当しません。
          また、二次創作が真っ白とは言いませんが、明らかなコピーでなければ、原著作者に対する著作権侵害という「不法」が成立するかどうかは、厳密には訴訟をしてみないと分からないというところもあります。

          実際問題としては、二次創作者が原著作者の意思に反するほど過剰に権利を主張するのはどうかと思いますが、かといって無断転載などのモラル低下を放っておくのは二次創作界隈にとって非常に危険です。これは蔓延しないように注意すべきです。
          ここで言う過剰な権利主張というのは、二次創作者が原著作者の勧告に従わず公表権を主張して公開を取りやめない、明らかにアウトな営利販売をしているのにそれを棚に上げて損害を訴える、などの場合です。これは目をつけられる可能性が高い危険な行動です。
          とんださんの主張としてはこうではないと思いますが、波風を立てないことを重視するあまり「二次創作は元々泥棒なんだから盗まれても文句を言うな」などという極端なことを言われたら、「それは違う」と異議を唱えます。
          現実の問題ですから、結局バランスは無視できないということですね。

          • とんだ より:

            ご回答有難うございました。

            私が指すクリーンハンズの原則は、民法第708条よりも民法第1条第2項ですね。
            「法律の救済を受けるものは、自らも綺麗な手でなくてはいけない」という考え方です。

            勿論、「二次創作は元々泥棒なんだから盗まれても文句を言うな」との極論を言うつもりはありません。
            無断使用された二次創作者が無断使用者に使用をやめるよう求めるといった行為は、
            同人誌等の流通を作成者がコントロールするといった行為として批判するつもりはありません。

            ただ、ツイッターのアイコン問題のように複数の第三者が一人の人間を叩くといった行為や
            まとめサイトのような物まで出現するような現状はなんとも納得できません。(一部には、お節介にも原作者に
            「この人が二次創作絵を無断使用しています」と報告してくる人もいるそうです。そのような情報を受け取れば、
            原作者としてはどちら[※二次創作の作成者も含めて]も無視する訳にはいきません。)

            という訳で、自分はどうも「『積極的に叩かなくてはならない』」といった表現に引っかかりを覚えていたようです。
            松下 響 さんが主張される「『積極的に叩かなくてはならない』」が上記のような叩きサイトなどの存在を容認する
            ものであるならば、それはやはり波風を立て過ぎ─非常に危険な状態にあると思います。

            • 松下 響 より:

              民法第1条第2項(信義誠実の原則)はこちらですね。
              「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」
              http://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC1%E6%9D%A1
              この文面で言わんとする道徳的な意味は分かりますし、やや抽象的ではありますが訴訟上でも考慮されるものと思います。

              二次創作の不正利用を原著作者に通報されるのはちょっと手順を飛ばし過ぎですね。通報された方も対応に困るでしょう。
              ちなみに昔とある作品投稿サイトで「未許諾の二次創作画像は投稿禁止」とされていて、公開済み作品をそこに投稿するために勇ましくも自ら権利者に許諾を求めに行った人がいるんですが、特に処分などは無くノーコメントという結果に終わりました。

              Twitter上の無断転載批判の実情についてですが、問題発生時から見ていたのが結構ありますのでもう少し補足します。
              まず大半の無断転載問題は作者の撤回要求や第三者の窘めによって穏便に解決しています。第三者が発見した場合も、まず作者に確認をとることが推奨されています。つまり作者と無断転載者だけの問題で済んでいます。そしてこれはまとめに掲載されません。まとめに掲載されているのは穏便に解決しなかったものばかりですので、必然的に炎上案件ばかりが目立ちます。

              穏便に解決すればいいのですが、無断転載者が言うことを聞かず無視・ブロック・逆切れ・再犯などの行動に出ると、えてして作者一人ではどうしようもなくなります。
              ここで、周囲の人に助力を求める、または運営に通報するという手段をとることになります。

              Twitter上ではこの運営通報を英語文面でこなさなければならず、非常にハードルが高い上に効果も分からなかったために試みられるケースが殆どありませんでした。しかしごく最近になってそれに関するノウハウが集まってきており、実際に通報削除が可能な状態になりつつあります。
              http://togetter.com/li/365561

              それでもまだ幾らか敷居が高く、多くの場合まずは対話で何とかしようとする姿勢が見られます。これには運営削除でいきなり消しても再犯の可能性が高いので、何が悪いのかわからせたうえで解決しようという理由もあります。記事本文中で述べている「積極的に叩くべき」というのは要するにルールを違反する人を放置せずにモラル低下を食い止めて行こうということですから、説得のための対話はモラル低下阻止という目的に合致します。
              しかしブロックなどをされていては直接対話のしようがありません。そこで周囲の人に助力を求めることになるわけですが、この段階での第三者の協力は被害に遭った作者を助けてあげようという善意に基づくもので、権利があるとかないとかの話ではありません。
              しかし無断転載者がなおも抵抗する場合、これは必然的に炎上に繋がります。
              拡散炎上した場合、今度は全く無関係の第三者が無断転載者を批判することになります。批判が口汚い場合もありますし、ただ叩きたいだけの人は「垢消せ」と一言言い放って去っていくこともあります。アカウント消せコールは無断転載者に逃げる口実を与えるため殆どの場合邪魔でしかないので、「そういった行動はご遠慮下さい」と批判側が呼び掛けることもありますが、兎に角批判が殺到してまさに炎上という状態になるわけです。
              炎上後に結果的に無断転載者が逃げてしまう場合もありますが、反省して二度とやらないと約束してくれれば、再犯防止という目的は達成できます。

              全員が全員そう意図しているとは限りませんが、多くの場合、こういった無断転載問題をまとめて周知させるという行為にも実は無断転載防止の意味合いがあります。無断転載そのものの善悪を理解しようとしない程度の人にも「なんか無断転載や騙りをやると炎上するらしい」と認識させる程度の抑止効果があるというわけです。
              結局のところ、今は確かに目立っていますが、無断転載のリスクが周知徹底されて無断転載行為自体が減れば自然と問題に上がることも少なくなるという意図でやっているわけですね。

              結論として、第三者による過剰な叩きはどうかと思いますが、批判自体は全体のモラル低下を防ぐための一種の自浄作用であると考えております。不正行為に対する糾弾が許されなければ、そのコミュニティは駄目になる一方です。
              ただ、とんださんが仰るように「叩かなければならない」という表現では過剰な叩きを許容するように見えてしまうことは事実ですので、章タイトルを
              「二次創作者はルール違反をむしろ積極的に叩かなくてはならない」→「二次創作者はルール違反を放置するべきではない」
              と改めました。

              なお、Twitter方面ではただ駄目だと言うだけではなく、自由に使っていいアイコンをみんなで作って出し合うという活動も試みられています。これには無断転載を批判する人も無断転載批判を批判する人も参加しています。
              ・ツイッターで使えるフリーアイコンまとめ http://togetter.com/li/368215
              ・Twitterアイコンに使える画像配布サイト・画像作成ツール紹介 http://togetter.com/li/368614
              ・ツイッターアイコン公式配布サイト~アニメ編~ http://togetter.com/li/368255
              私もささやかながら3点ほど提供しております。

              • とんだ より:

                ご回答及びご配慮有難うございます。

                私も、原作者として商業作品作りに関わっていると共に、趣味では同人活動をしています。

                「自分の作った作品を楽しんでほしい」「自分の作った作品を大切にしてほしい」
                というのは、同人・商業(原作者)共通の思いだと思います。

                両者が共存・共栄できる仕組み作りが出来ていければいいなと思っています。

                • 松下 響 より:

                  何と、商業作品の原作者の方にコメントを頂いていたとは。
                  そうとは気付かず釈迦に説法のようなことを申してお恥ずかしい限りです。

                  同人・商業共通の思いはまさに仰る通りだと思います。受け取る方も作品や作者に対する敬意を忘れてはいけませんね。
                  近年では同人の規模も大きくなっておりますし、そろそろ何らかの改善が必要な時期に来ているかのも知れませんが、今後もうまく共存させていただければと思います。

  13. ななしです より:

    原著作者個人でどうにかできる問題ではありませんが、原著作権を握っている組織や界隈の適当さというか自己中心さには憤りを覚えます。

    そもそも二次創作は今に始まったことではないにもかかわらず、大原則と仰っているものの先頭に「怒らせてはいけない」という曖昧なものが挙げられていたり、節度を守ってなどという身内でしか通用しないようなルールに頼っているこの状況はおかしいと思います。
    それに加えて、これまではそのままのコピーに対しては厳しく取り締まっていたようですが、twitterのアイコンに対してはそのような態度はとっていないというような行き当たりばったりな態度が、現在の混乱のようなものを招いているのだと思います。

    無断転載などルール違反をした個々人に関しては、著作権に関しての知識や常識が足りていないため、怒られてしまうのは仕方がないと思いますし、常識というのはそういう風にして学ぶものだと思います。
    しかし、そのようなトラブルが続発しているというこの状況は、原著作権者の微妙で主観的な態度によるものだと著作権者には理解して欲しいと思います。

    さらに、原著作権者側がファン活動をおそらく有益だと考えているだろうということについては、松下さんが挙げられたクリプトン・フューチャー・メディア社の例から考えても、そのような面はあると思います。
    にもかかわらず、二次創作に人気が出て部数を伸ばせば原著作権者側から目をつけられかねないというのは、そのような可能性に不安を感じながら活動をしなければならないファンがかわいそうですし、著作権者側の都合がよすぎると思います。

    そもそも、しっかりと明文化されているルールに対しても守らない人が出てくるのは残念ですが仕方の無いことです。
    これまでは規模が小さかったために個人の意識の問題で通してこれたのかもしれませんが、市場が大きくなり、ましてやこの分野は現在、海外という日本の常識が全く通用しない市場に展開しようとしており、もはやこれまでの対応に限界が来ていると言えるのではないでしょうか。
    現在でもクリプトン・フューチャー・メディア社の例に限らず、例えば東方projectでは個人が運営しているサークルであるにも拘らず二次創作に対してある程度のガイドラインは示しているようです
    この分野の作品を提供している企業は、顧客となっているファンのためにも企業の責任としてしっかりとこの問題に取り組んでいって欲しいものです。

  14. ピンバック: 無断転載をその必要性から撲滅するキャンペーン | 松下響の天輪返し

  15. ピンバック: 20歳未満お断り 【コミケ】コミックマーケット83対策本部 in VIP【夏コミ】 | 20歳未満お断り

  16. ななし より:

    昨今、インターネットの普及で二次創作は今後ますます増えていくことが予想されますが、自身が制御できないからこそ節度が重要となってくるということがとてもよくわかりました。

  17. ピンバック: 無断転載等の著作物無断複製利用問題FAQ | 松下響の天輪返し

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