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若かりし頃の永琳
 
 生まれてから、長い年月が過ぎた。
 暑い日が来て、寒い日が来て、また暑い日が来て、また寒い日が来て。
 ぐるりぐるりと時間が流れ、暑い日、涼しい日、肌寒い日、寒い日、肌寒い日、涼しい日、温かい日、暑い日、涼しい日……ぐるりぐるりと時間が過ぎ去って、気付いた時には季節という概念が生まれて。
 女を求めて、男を求めて、子を作って、女を求めて、男を求めて、子を作って、村が生まれて、女が集まって、男が集まって、子が沢山作られて、また女が集まって、男が集まって、村が集まって、国が生まれて。
 知識を結集して道具を作り、それを使って発展し、発展した知識をまた結集して道具を作り、またそれを使って発展して。
 病気に打ち勝つ為の栄養を付ける為に、効果のある薬草を集めて、発展の為の犠牲を払って、また薬草を集めて、犠牲を払って、集めた薬草に名前を付けて、それを口伝して、また発展させて、また口伝して。
 もっともっと多くの人に伝える為に、発展する為に、知識を集める為に、同じ言葉が生まれて、文字が生まれて、紙が生まれて、また広まって。
 いつしか貨幣が生まれて、それが力を持って、それが人を殺して、それが森を焼いて、それがあらゆるものを呑みこんで、それがどんどん周りを不幸にして、幸せにしていって……それを求めて争いが生まれて。
 いったい、私はどこへ行くのだろう?
 いったい、私は何をしようとしているのだろう? 
 私が生まれてから、いったいどれだけの命が生まれて、戦って、死んで、また生まれたのだろう?
 いったい、私はどこへ、どこへ向かっているのだろう?
 ……私たちは、どこへ向かって走り続けているのだろう?
 春の温かい日差しが永琳の身体をほんのりと照らす。最近考案されたから傘に実を隠しながら、永琳はそっと、設置された長椅子に座りなおした。
 ふと、気配を感じた。顔を上げた先に、たたずんでいたのは……。


 退屈。

 この言葉が、子供が物心付いた時に浮かべた最初の言語であるということを聞かされて、何人が信じるだろうか。おそらく、誰も信じないだろうし、それどころか質問した相手に悪い印象を覚えるだろう。
 しかし、これは事実であり、後に月の頭脳と呼ばれ、賢者と称されることになる女性、八意永琳が放った言葉である。
 彼女は物心付いたときから……いや、もしかしたら、母の胎内にいるときですら退屈を予感していたのかもしれない。一を聞いて十を知る。十を知って、百を生む。生まれてから数年で、当時最も頭の良かった者の知識を追い越す永琳の姿を見た男が漏らした言葉が、それであった。当時、永琳が暮らす村……当時は国ですらなかったが、その村にはあらゆる事象を加減速する能力を持った者が居て、その村の住人は見た目とは不相応の年齢を重ねている者が多く居た。優れた知識を持った男は、実年齢にして200年の時を生きていて、永琳は一桁であった。
 10年が過ぎた時には、彼女の天才的な頭脳は新たな技術を生み出し、村に農作というものを与えた。
 40年が過ぎた時には、彼女は医学というものを考案し、治療という概念を生み出した。
 100年が過ぎた時には、医術というものを生み出し、薬という概念を見出した。
 他の場所とは違う時間が流れる永琳が暮らす村は、変わった。新たな変革を迎えるときには、必ず永琳の名前があり、あるいは永琳の力が働いていた。
 そんな彼女が何時の頃か、自分のことについて考えるようになったのは、いったい何が切っ掛けだったのだろうか。
 能力者の力でかりそめではあるものの、終わりのない寿命を手に入れたことか。
 幼い頃から変革をもたらして、歴史に名をはせていたことが原因か。
 気付いた時、彼女は与えられた仕事の合間、あるいは仕事をしているほんの一瞬の時間、彼女はあらゆることを思考するのを止めて、自分の世界に没頭するようになっていた。
 いったい、私はどこへ、どこへ向かっているのだろう? 私は、どこへ向かって走り続けているのだろう? 知識を集めて、発展させて、また集めて、また発展させて、繰り返して、繰り返して、繰り返して、繰り返して……。

 繰り返して……それで?

 答えとは言えない言葉。だが、その言葉が永琳の頭に降ってわいた瞬間、彼女は生れてはじめて、恐怖と似ていて、恐怖とは違う圧倒的な何かが全身を硬直させた。
 それがいったい何だったのか、永琳は分からなかった。それは四肢を凍らせ、彼女の頭脳を停止し、そして凄まじい回転を与えた。汗が噴き出す。動悸が止まらない。乱れた呼吸が全身の波長を狂わせ、平静を奪い去っていく。
 一瞬か、あるいはもっとか。ようやく永琳がかろうじて平静を取り戻したとき、高く昇っていた日が落ちて、辺りは真っ暗になっていた。
 その日から数日、永琳は寝床から出ようとしなかった。指先どころか髪一本すら出ないように、身体を丸めて、毛布の端を手足で押さえる。熱気が充満した暗闇の中で、永琳は汗一つかかずに考え続けた。
 あと何回繰り返せば……後、何回? あと何回……あと何回繰り返せば、私の終わりが来るのだろうか?
 終わりのない寿命。年々減り続ける死への恐怖。次第に高まっていく退屈という日常への不満。堂々巡りの問答。
 考えても終わりは来ない。いくら視点を変えても納得出来る答えが生まれない。どこまで悩み続けても……何も、発展しない。何も変わらない。何も生まれない。何も、何も、何も、何も、何も……。
 思うがままに、ただ思うがままに歩み続けてきた。春も、夏も、秋も、冬も、一年が過ぎて、また一年が過ぎて、また一年が過ぎて、気付くと時間への感覚が無くなって行った。繰り返して繰り返して、繰り返し続けた今が……ここ。
 翌日のことだった。数日の間、一睡も出来ずに考え続けた永琳の顔は、元の美しさからは想像も出来ない程にやつれていた。けれども、眠気は全くない。しかし、いつまでもこうしていても、何も変わらない。
 そう思った永琳は、なんとなく人目を避けるように寝床から這い出て、何の気もなく、一休み程度に自分が作った庭を眺めた。
 秋も深まり、影ですら夏の五月蠅さを思い出せなくなっている。紅葉した葉っぱがひらりひらりと無数に伸びた枝から、音も無く地面へ降り注いでいく。真っ赤に染まった地面は、萌えるように風に揺らぐ。ところどころ欠けた葉に隠れるように、幾つもの命が蠢いて、消えていった。
 その様子を見て、永琳は、ふと思った。

 …………ああ、そうか、今は秋なのか……そうか。

 どうでもいい感想。今まで気にも留めなかった事象に、永琳はほう、と溜息を吐いた。
 何故だろう? 永琳には分からなかった。ただ、眼の前の光景を見て、ふと、何もかもが、どうでもよくなった。疲れたわけでもなく、飽きたわけでもない。ただ、どうでもよくなった。
 冬の肌寒いある日、永琳は考えるのを止めた。知識を集めるのを止めて、自分が最も得意としていた薬を、医学を発展させることを止めた。
 一つ止めると、他のも止めたくなる。父が、母が、兄が、姉が、妹が、幼馴染が、汗を流して説得する姿を横目にしながら、永琳はあらゆることを、やめた。
 二つ止めて、三つ止めて、四つ止めて……女としての自分を保てる意欲と、生活するだけの意欲以外を全て止めて、そうして始めて、彼女はほう、と肩の力を抜いた。

 ああ、そうか、私はこれがしたかったのか。

 そう悟った彼女は、悲観に暮れる周りの目を気にせず、悠々自適に日々を過ごした。寝たい時に寝て、食べたい時に食べる。外に出たければ出て、出たくないときは一ヶ月と出ない。甘いものが欲しくなったら、胸やけするほど一気に食べて、何もしたくなくなったら、一日中布団から身体を出さなかった。
 そうなると、周りは騒ぎだす。なにせ、永琳の輝かしい以前の姿を知っているから。村を引っ張って、時には諭して、表から裏から永琳の一族が発展させてこられたのも、彼女が居てこそ。
 眩い才能で自分達を支えていた永琳が、一瞬にして怠け者になってしまったのである。その動揺と驚嘆は、想像すら出来ない程で、彼ら、彼女達は口々に、それこそ一瞬たりとも間を置かずに永琳を説得し、懇願し、お願いし、悲しんだ。
 それが終わると、今度はもう愛想も尽きたと一人が言いだし、二人が言いだし……一年も立つ頃には、永琳の傍には誰も残らなかった。家族も、友も、他人も。
 これでようやく落ち着ける。
 そう、零した永琳の吐露は、誰にも聞かれることはなく、ただ、部屋の隅に置かれた、かつて長老から頂いた真珠の小刀だけが、それを聞いていた。


 ああ、今日も一日が終わっていく。
 空高く上った太陽を見て、永琳はほう、と欠伸をした。事前に用意したお茶は、既に温く、芳香も消えていた。彼方にある、広場から聞こえてくる、村人の声。今日も、彼らは、彼女達は生きているのだろうか。
 そう考えて、永琳は今日で5杯目になるお代りを用意しようとした瞬間、彼女は視界に姿を見せた男を見た。瞬間、彼女は目を見開いた。彼女は時間の流れが止まったことを知覚した。
 音も、風も、日差しも消えて、ただ、ただ白い世界を、男と自分。ただそれだけが視界に広がった。そして、最初に反応が戻ったのは耳。次に戻ったのは感覚。そして、最後に戻ったのは視覚だった。
 胸が高鳴る。経験したことのない激しい鼓動。苦しくはないが、とても苦しいという、矛盾した感覚を訴える悩の矛盾。手足のしびれ、上手く呼吸が出来ない、目が離せない、これは、なんだろうか?
 永琳は考える。病気? それともあの男の仕業? 現時点では何も分からない。
 発汗作用。暑くはない。むしろ涼しいぐらい。なのに、汗が止まらない。いや、違う、体温が高い……身体が、熱くなっている。何故? 何故? 何故?
 攻撃? 攻撃されている? いや、その様子はない。
 見ろ、あの間抜け面を。どう考えても、攻撃している様子はない。それどころか、こちらを……こちらには気づいていないようだが、この建物を見て呆気に取られている。
 なんて間抜け面。なんて……なんて、可愛いお人。
 永琳はそっと胸を押さえた。鬱陶しいと思っていた二つの膨らみの奥、皮膚、脂肪、助骨、胸筋……左胸に収まっている、心臓が、とくん、とくんと激しくも、優しく、激動を奏でている。
 これは、なんだろうか?
 それが何なのか、彼女には分からない。
 分からないなりに、彼女は考えた。そして、去ろうと踵を翻した男に、唇を開いた。

「もし、そこの方」




 ふっと、我に返った永琳は、顔を上げた。懐かしい思い出が脳裏を過ぎ去る。彼女はふふふと小さく笑った。と同時に、今の状況に、頬を赤らめた。
 灯った明かりが、室内を静かに照らす。燃える油の臭いに混ざる、わずかな微香。見ると、今の自分は生まれたままの姿だった。最近張りが増した乳房、キュッと締まってきた腰回り、そして、ぱんぱんに詰まった逆桃形の尻たぶ。内側から張り裂けんばかりに瑞々しさが詰まった尻たぶは、触れれば弾けそうに弾力に溢れ、それでいて柔らかい。吸いつくような肌はどこまで滑らかで、明かりの陰影が生みだす艶やかな谷間があまりに情欲を誘った。
 陰りが見え隠れする陰部は、幼い。大人を感じさせない亀裂は、ぷりんと柔らかい恥肉によって優しく閉じられている。その優しさから逃げ出すように赤い粘膜から滲み出る粘液が、ただでさえ濡れてびちゃびちゃになっていた太股をさらに濡らす。甘酸っぱくも生臭い性臭が、ふわりと辺りに漂う。その臭いから逃れるように飛び出した雌芽は薄く被った皮の上からでも分かるぐらいにピンク色に充血し、永琳を急き立てるようにぴくぴくと脈立つ。水に浸したかのように濡れそぼった陰りが肌にへばりついていた。予め用意していたおかげで、身体は程良く出来上がっていた。
 小さな光の中に見える、男の姿……寝床の上、そこに裸で横になっている彼を見て、永琳は息を呑んで見つめる。鍛えられた肉体は、そういう気持ちを持って見なくても、惚れ惚れしてしまうほどに逞しい。ましてや、そういう気持ちで見れば、その逞しさはなおさら。
 そっと指を伸ばす。白魚のように白くて細い指が、舐めるように彼の肌を滑る。時折感じる産毛の感触に、自分にはない、雄を実感した。
 そして、思いだす。自分が、これからやろうとしていることを。これから、自分がされることを。
 永琳は、こくんと、口内に溜まった唾を飲み込んだ。

「立ちなさい」

 決して大きくはない、静かな命令。わずかな明かりに灯された室内でなければ、まず聞き取れないであろう音量。
 その永琳の言葉を聞いて、彼はゆっくり立ち上がった。だらりと垂れ下がった肩、緩やかに閉じられた瞼、規則正しく反復する呼吸。特別に用意した、薬のおかげで、彼の意識は全くない。だが、永琳の声だけは聞きとることが出来て、なおかつ理解して行動出来る程度には脳を活性化させている。解毒薬として用意した薬香を焚かない限り、彼は死ぬまで眠り続け、永琳の言葉失くして動くことは叶わない。
 潤んだ瞳が、彼を見つめる。産毛の一本一本を数えるように、上から下へいやらしく視線が動く。ぺろりと舌舐めずりをして、自分よりも頭一つ分は高い彼の身体を見つめた。そして、力なく地面に発射口を向けた、陰茎を、ジッと見る。
 ごくりと、溢れそうになった唾を飲み込む。とろりと噴き出した愛液が、ぽたぽたと寝床に黒ずんだ跡を残した。

「も、もっと、こち、こっちへ」

 上手く動かない舌が、もつれた言葉を作る。永琳の言葉を聞いて、静かに動き出した彼は、ただでさえ近かった二人の距離をほぼゼロにする。
 つん、と、飛び出していた乳首が彼の肌に触れる。くにゅっと乳首がくの字に曲がり、乳房の中に押し込まれる。不意打ち気味に走った快楽電流に、永琳はびくんと肩を震わして息を呑んだ。

「んあ」

 甘く蕩けた砂糖のような喘ぎ声。生まれたての仔馬のように頼りない両足が、ぷるぷると震える。永琳は倒れ込むように彼に飛びかかり、彼の背に腕を回した。
 途端、むにゅっと二つの膨らみが彼の胸で潰れた。淡く生えた陰りがしょりしょりと彼の腰骨を揉み、柔らかく滑った亀裂が、むちゅっと太股を擦った。
 先ほどとは比べ物にならない快楽が背筋を走る。あふあふと、声にならない喘ぎ声を放つ。噴き出した汗を、愛液を彼の皮膚に塗り込めるように、腕と絡めた両足に力を込めると、固く充血した雌芽がぬるぬると彼の肌を滑った。

「ああん!」

 艶やかに欲情した女の悲鳴が永琳の唇から零れる。荒くなった吐息を彼の胸元に浴びせながら、永琳は、固く瞑った瞼を開けた。

「だ、抱きしめなさい、わ、たしを」

 言い終わるよりも早く、彼の両腕が永琳の身体を抱きしめる。隆起する筋肉が、自分にはない圧倒的な力を彼女へ見せる。痛いほどに抱きしめられた女の身体は、締め付けのあまりに彼女から呼吸を奪った。だが、興奮に身体を燃えあがらせている永琳には、そんな行為は快楽を増やすスパイスでしかなく、むしろ彼に負けないと言わんばかりに両腕に力を込めた。凹凸がピタリとはまり合うように、隙間なく互いの身体が密着する。
 むにょん、と慎み深くも柔らかい弾力が、互いの胴に潰れて丸く広がる。敏感になった乳首が乳房に押し込められる。甘い吐息が彼の胸板を湿らせる。ぴりぴりと走る快美感に、きゅんと胎内が鼓動した。さらりと銀髪が明かりにきらめき、甘い匂いが香った。
 ん、と永琳は認識した臭いに瞳を蕩かせる。女にはない、男の臭い。発情した男特有の、生臭い香り。意識が無いなりに、自らの発情に釣られて彼が発情し始めたことに、永琳は、ほう、と艶やかな溜息を漏らした。
 すん、すん、鼻を鳴らす。汗の臭い。男臭い、酷い臭いだ。興奮して平静を失くした永琳ですら、男臭いと判断出来る程の臭い。
 そんな臭いなのに……良い臭いでは決して無いのに……永琳は、さらに身体を紅潮させ、くんくんと鼻を鳴らした。

「はあ、く、臭いわね、こんな臭いの……駄目よ、本当に」

 綺麗にしてあげる。その言葉と共に、唾液で濡れた舌を伸ばして、彼の素肌に密着させる。
 温かい、いや、熱い。舌先に最初に感じたのは、それだった。触れあっている肌から、その熱さは想像していたが、それ以上だ。
 ぴりぴりと舌先に走る痺れに唇の端から涎を垂らしつつ、永琳はぺろりと肌を舐める。一筋の唾液のかけ橋が、肌と舌を繋ぎ、名残惜しむかのように緩やかに千切れた。
 汗の影響か、ほんのりと塩辛く、それでいて、不思議な味。お世辞にも美味しいとはいえないその味が、口内を走り回る。痺れた舌でどうにか唾を喉奥へ持っていき、ごくんと音を鳴らして胃へと落ちていく。瞬間、じゅわっと身体が燃えた。
 脳髄をガツンと揺さぶられたような衝撃。ただでさえ主に騒ぎ立てている胎内が、雄を迎え入れろと激しく脈動する。視界が涙で滲み、痺れが全身を駆け廻る。瞼の裏に走る星屑に身震いしながら、永琳は狂ったように舌を伸ばした。

「はあはあ! だ、駄目ですよ! こんな、こんなの! こんな臭いの、女に嗅がせたら駄目ですよ!」

 ぺろぺろと犬のように舌を這わせる。かすかな明かりが唾液の滑りを妖しく照らす。皮膚に浮かんだ筋に沿うように舌先を這わして、毛穴の奥までこそがんばかりに舌を尖らせる。
 もっと、もっと一つに。そう願う永琳の身体は、無意識の内に左右に揺れて、柔な肌を彼に擦りつける。固く尖った乳首が見え隠れし、そこは既に赤を通り越して赤紫色になっていて、永琳の興奮具合がうかがい知れた。
 その乳首を彼の鳩尾に擦りつける。それが永琳には堪らなく気持ちよかった。思わず息を呑んでしまうくらいに鋭い快感が、稲妻のように全身を激しく駆け巡る。ただでさえドロドロになっていた陰部から、さらなる愛情がほとばしり、彼の太股を濡らしていく。たらりと垂れた愛液は地面に幾つもの足跡を残し、女の粘膜が太股をマッサージするかのように、肌を這いまわる。ぬちょ、ぬちょ、と聞いている者が思わず頬を赤く染めてしまうぐらいに淫らな音と共に、永琳の陰部が充血する。
 はあはあと獣よりも獣らしい、荒く興奮した呼吸音が室内に響く。といっても、激しく発情しているのは永琳だけで、彼はというと、興奮はしているものの、意識がないので表立った変化は見られない。腰をピクピクと痙攣させる。いいところに当たったのか、甘い嬌声と共に一際強く身体が硬直すると、ゆるゆると胸から顔を上げた。

「はあ、はあ、く、口づけ、口づけを……」

 頬どころか、首筋まで真っ赤に紅潮した肌から、玉の汗が噴き出す。喘ぎ混じりの命令だったが、人形と化した彼は忠実にその命令に従った。

「はあ、はあ、はあ、はん、む、んむぅ……」

 永琳とは違う、どこかささくれた厚めの唇が、永琳の唇を覆いかぶさるように塞ぐ。頬に感じる彼の吐息に身震いしつつ、永琳は彼の口内を舐めつくさんばかりに舌を伸ばす。彼の唾液の味が、永琳の口内へ広がる。
 無味。ほとんど味はしない。なのに、なぜかその味が永琳には堪らなく美味に思えた。こくん、こくんと分泌された傍から喉に流し込み、そのあまりの美味さに舌鼓を打つ。味覚とは別の、女の感覚をこれでもかと言わんばかりに揺さぶり、永琳を捉えて離さない。喉を通って行く唾液の感触に、永琳は蕩けそうな快感を覚えた。
 5分、10分、くぐもった女の喘ぎ声が室内に響く。歯の一本一本、歯ぐきまで丹念に舌を回し、彼の中を蹂躙する。お互いの唾液が混ざり合った液体が十分に溜まったことを確認した永琳は、それを一息に飲み干した。
 瞬間、永琳はびくん、と身体を硬直させた。腰が跳ね上がり、密着していた陰部が空に晒される。白く濁った愛液が糸を引き、地面に落ちていくと同時に、ぴくぴくと痙攣する陰部から、ぷしゃっと透明の潮が噴いた。二度、三度、腰が跳ねると同時に、断続的に潮が勢いよく彼の足を濡らす。
 もわっと女の生臭い香りが広がるが、今はその臭いですら、興奮を誘う材料でしかなく、永琳は崩れ落ちそうな身体を彼にしがみつくことで、耐える。だが、たったいま迎えた頂点が、永琳の身体から力を奪い取っていく。

「はあはあ、はあ、あん、ううん」

 腰から下の骨が消失したかのように、両足に力が入らない。ずるずると滑り落ちるように膝をついて……頬に当たる灼熱に、目を見開いた。

「あ……」

 それは、彼の陰茎だった。ちょうど、眼前の位置になった雄の象徴に、永琳は呆けた声で挨拶した。
 半立ちというのだろう。鋭角に立ちあがってはいないが、垂れ下がっているわけでもない。永琳の鼻先に突き出されるような形になったそれは、ぴくん、と皮に浮き上がった血管からエネルギーを集中させ、少しずつ膨張し始めていた。
 むわ、と臭う彼の性臭。普段から身綺麗にしているのは永琳も知っていたが、そこはたとえ半日といえど放っておいたら臭いを放つ部分。ただでさえ汗の臭いに参っていた永琳にとって、核弾頭レベルの威力だった。

「ああ、ああ」

 手を伸ばし、彼の陰茎に触れる。きゅっと、優しく手のひらで包むと、そこに広がった熱に、永琳はほう、と熱い吐息を漏らした。
 熱い。これが本当に身体の一部なのだろうか。先ほど舐めた胸板よりもはるかに熱を孕んだそこに、永琳は鼻先を近づける。くん、くん、と鼻を鳴らし、ねっとりと絡みつくような雄臭さに、はふはふと喘いだ。
 くいくいっと、手首を捻る。にちゃ、と鈴口から滲み出る我慢汁が、亀頭全体を濡らしていく。次第に、それでいて静かに膨張していく陰茎が、永琳の指を押し上げていく。柔らかかった茎が鋼のように固くなっていき、ピンク色だった亀頭が赤く張りつめていく。ほんの数分で、そこは女を貫く雄槍に変わり果てた。
 ぷん、と臭うその臭いに、永琳はその小さな鼻をぴくぴくと震わせた。
 もう、我慢の限界だった。

「はむ」

 大きく口を開けて、舌をだらりと下げて彼を口内へ受け入れた。手のひらに感じていたよりもはるかに知覚できるその熱に目を見張りつつ、舌を引っ込めて茎を伝っていた我慢汁を残さず口内へ戻す。鼻孔を満たす男の臭いに目元を蕩かせて、永琳は舌を尖らして皮と雁首の境に這わした。
 白く、それでいて悪臭の元になっているチーズを唾液と絡めて少しずつ飲み込む。亀頭をしゃぶるように唇で押さえて、くちゅくちゅと唾液で宥めて汚れを清めていく。唇から零れた唾液が幾重の滴なって地面に降り注ぐ。
 ああ、なんて臭いのかしら。ああ、なんて美味しいのかしら。ああ、臭い、美味しい、臭い、美味しい、臭い、美味しい、美味しい、臭い、美味しい、美味しい美味しい、臭い、美味しい美味しい美味美味美味美味美味。
 口内を我が物顔で暴れまわる亀頭を、ご主人に仕える奴隷のように優しく相手する。火傷しそうなぐらいに熱い亀頭が、唇を焦がすたびに、唇が性感帯になったかのように敏感になる。歯を立てないように注意しつつ、時折当たる歯の感触に反応する陰茎に目元を緩ませる。
 幸せ。永琳は心底幸福だった。
 亀頭どころか、根元まで唇を伸ばして全体をしゃぶる。卑猥な水音が規則的に室内に響く。鼻先を恥毛に押し付けて、喉奥まで陰茎を咥える。生理的に滲んだ涙が流れ、それ以上に興奮で滲んだ涙がそれを上書きする。
 ぴくん、ぴくんと断続して痙攣する陰茎の感触に焦がれつつも、そろそろかと判断してから、ゆっくりと陰茎を吐き出した。唾液でコーティングされた茎が露わになり、ぬるぬるになった亀頭から、唾液が一筋流れ落ちる。銀色のかけ橋が僅かな明かりにきらめき、永琳はそれを指で拭うと、パクパクと開閉する鈴口に、ちゅっと口づけした。

「はあはあはあはあ、はあ、ふう、も、もう、いいわよね? あなたも我慢できないわよね? 私もこれ以上我慢するのは辛いし、あなたもこんなに腫れたままなのも、辛いでしょう? ね、ね、すっきりしちゃいましょうね」

 別の意味で紅潮した顔で、言い訳を口走る。誰も彼もが居ない、この場所。唯一の例外である彼ですら意識が無く、この密事を覚えていることも自覚することもないのに、永琳は彼から視線を外した。
 恥ずかしい、というのはある。自分しか記憶していないとはいえ、異性に、それも恋焦がれている男に素肌を晒す行為は、彼女にとって羞恥心を刺激するには十分。平常時の彼を前にしているときは、こんな淫らな行為は憶測も見せない。それどころか、お淑やかな少女を装っている節すらある。そんな彼女が、薬まで使って淫らな行為を繰り広げている。それが堪らなく恥ずかしいと同時に、彼に対して申し訳なく思い、その申し訳なさがさらに高みの快楽を与えているということを、永琳は自覚していた。
 けれども、それでも、彼女は我慢出来なかった。一日、一日と彼と同じ時間を共有するたびに、胸の内に膨れ上がるこの感情。濁り固まった情欲が、夜毎に暴れ出し、彼の元へ向かえと胎内が蠢く。傍を通った時に漂う彼の臭いに鼻を引くつかせ、触れあう指に胸を高鳴らせ、時折見る彼の素肌に、男を感じる日々。
 永琳にとって、それは甘美な拷問。受ければ受けるほどに苦しくも楽しく、悲しくも嬉しい、甘い恋の痛み。永琳は彼に出会って変わった。

 彼を知って、永琳は始めて乳房を揉みしだいて得られる、溶けるような快感を覚えた。
 彼を知って、永琳は始めて蠢く胎内の痛痒い催促に眠れる夜を過ごした。
 彼を知って、永琳は始めて陰部を掻きまわすことで得られる快楽を知った。
 彼を知って、永琳は始めて女として生まれたことの幸せと、高みを知った。
 彼を知って、永琳は始めて、自分の為に、誰かの為に、何かをしようと思った。

 全ては彼が切っ掛けだった。なぜ彼を思うだけでこんなに胸を痛め、彼の姿を見かけないだけでこんなに心が沈み、彼の笑顔を見るだけでこの世全ての幸せを独り占めしたかのような思いになるのだろうか。
 時間の過ぎ去る無情さを、永琳は彼を通して知った。朝日に照らされる彼の寝顔に一日の素晴らしさを知り、彼の隣を連れ添って歩いて世界の広さを知り、彼の隣で寝ることで生きていることの大切さを知る。
 そして、今、このときのように彼に抱かれることで、生まれてきたことへの意味を知った。陳腐な話だが、永琳にとって、彼の傍に寄り添い、その温もりの中で、始めて自分というものを保っている今、薬の力に頼った無理やりとはいえ、彼を受け入れることに無上の喜びがあった。
 その悦びが情欲と共に永琳のほとんど擦り切れて無くなり掛けた理性を、粉みじんにする。
 彼に背を向けて、両手を床に置く。ぷりんと張りのある尻を高く掲げ、頭を地面に擦りつけて腰を振った。大地の冷たさに、熱く硬直した乳首が反応する。冷やりとした快感に、永琳は身震いした。
 ぷるん、ぷるん、と尻肉が左右に揺れる。突き出された尻たぶが引っ張られ、若々しい尻蕾が露わになり、その下の女の入口がぬちょっと粘膜を広げた。充血した淫唇は愛液でべたつき、ぱくぱくと開閉する淫口からは、くぷくぷと白く濁った愛液を吐き出し続けていた。チーズ臭に近い芳香が辺りを漂う。包皮から僅かに飛び出した淫核は、固く膨張し、こりこりと弾力に富んでいる。焦がれるままにそこを弄ると、目が眩むような快楽電流が永琳の全身を走った。はふはふと甘く喘ぎながら、指でくぱぁ、と淫唇を開いた。
 女の全てが露わになったそこは、雄の到来を待ちわびるように開閉を繰り返していた。

「命令よ……私を、犯しなさい」

 言い終わると同時に、彼の両手が永琳の尻たぶを掴む。その遠慮のない感触にめまいを覚える。ごつごつした指が柔肉を左右に割開き、淫口がぬちゃっと開いた。
 無言のまま彼が照準を入口へ合わせる。触れた亀頭の感触に火傷したかと思って腰が逃げるが、ほんのわずかに動いた程度で、実際はほとんど動かなかった。ちゅっと雄に吸いつく淫口が、雄の到来を予感してさらに激しく彼に吸いつく。
 そのことに永琳が羞恥を覚えるよりも早く、彼は一気に腰を突き出した。肉槍と化した亀頭が、膣内のひだを薙ぎ倒すように突き進み、ズドンと重い衝撃と共に、子宮口を力いっぱい突き上げた。

「ふああん!!」

 膣内を激しく擦られる快感、子宮を押し上げる亀頭の感触、高熱の肉槍がもたらす快美感に、永琳は背筋を逸らして、はふはふと喘いだ。文字通り目の前が真っ白になった。花火のように煌めく視界が、永琳の意識をさらに深く奪っていく。焦点を失くした瞳から、一筋の涙が流れる。とろりと零れた涎が、ぽつ、と地面に黒い点を作った。
 焼かれた鉄棒が突き刺さったかと、永琳は思った。腕とまではいかなくとも、永琳の身体には不相応なサイズが胎内に食い込んだのである。あまりの衝撃に腰が突き出され、背筋が伸びてエビぞりになる。痙攣する身体が、慎みある乳房をぷるぷると揺らし、勃起した乳首が空に軌道を描く。肌の上を踊っていた汗が、ぽたぽたっと飛び散り、さらに玉の汗を噴き出して、永琳の身体を彩る。
 き、気持ちよすぎる! こ、こんなの……た、耐えられない!
 痙攣する四肢をぼろぼろの意思で黙らせつつ、永琳は身体を動かす……ことが出来なかった。

「は、はえ?」

 快感のあまり、忘れていたが、永琳の腰は彼が、がっちりと両手で押さえているのである。同年代の少女から見ても華奢な永琳の力では、鍛え抜かれた彼の腕力に敵うはずもない。
 それどころか、永琳の意思とは裏腹に、身体は胎内に入ってきた彼を逃さないと言わんばかりに彼をきつく締め付けた。皺一つ見えないぐらいに伸びきった膣皺が、彼の肉槍をピチピチに受け入れていることをうかがい知れる。しかも、彼女の膣道はさらに、はむ、はむ、と陰茎を租借するように蠕動し、男を喜ばせた。

「は、い、いや、ちが、ちがう、私、そんなつもぉぉおおお!!!」

 降って湧いた羞恥心のあまりに飛び出した言い訳は、最後まで続かなかった。彼がなんの配慮も無く、突然腰を引いたから。
 ぞりぞりと、張り出した雁首が、膣壁を削りながら胎内から出ていく。膣内を満たしていた充足感が無くなっていくことに反応した身体は、永琳の意思を無視して彼を激しく食い締める。そのせいでさらに強く膣壁が肉傘に削られ、それに反応してさらに強く食い締める。快楽の悪循環が、永琳の頭から言葉を消した。動物のようなうめき声を発しながら、舌を突き出して悶えた。

「ぉぉぉぉおお、お、お」

 ほとんど抜ける寸前。亀頭の傘すら外気に晒され、辛うじて亀頭の先端が膣口に食い込んでいる状態で、彼の動きがピタリと止まる。膣口からの刺激はあるものの、ようやく人心地ついた永琳は、息を整えた。しかし、その猶予はすぐに終わる。
 途端、永琳の胎内から襲いかかってくるのは、泣きだしたくなるような飢餓感。埋め尽くしていた胎内が、抜けた雄を求めんと主である永琳を責め立てる。きゅう、と催促する子宮の痺れに、永琳はかあ、と頬を熱くさせた。
 永琳が口を開くと同時に、先ほどよりもさらに強く雄が永琳の中を掻きわけた。

「ぉぉぉおおお!?」

 獣の咆哮。そうとしか聞こえない甘い悲鳴が、室内を反響する。絞り出されるように出されたその声に、永琳は羞恥を覚える。
 けれども、その羞恥心は長く続かなかった。彼が、今度は止まることなく腰を降り始めたから。
 膣内の締まりは最高の一言。右に左に回るように締め付けられるその刺激は極上で、にゅるにゅるとした粘膜が、一突きごとに射精欲を燃えあがらせる。どこか固さを残した女の坩堝はあまりに危険で、びりびりと快楽電流が彼の腰を痺れさせる。根元まで突きいれると、先端がちゅっと子宮に吸われ、それ以外は優しく粘膜に舐められる。男を喜ばせる女の肉壺に、意識が無い彼ですら、鼻息を荒くさせた。
 ぱちん、ぱちん、と尻たぶと、恥骨がぶつかり合う。ぽよん、と柔らかく受け止める尻肉は、彼に全く痛みを与えない。それどころかぶつかればぶつかるほどに甘い痛みが恥骨に走り、もっと強くぶつけたいとすら思わせる。膣内とは違う、程良い温かさと肌のきめ細かさが、さらにその思いを助長させ、自然と彼の腰づかいが荒く、激しくなっていく。ぷしゅ、ぷしゅ、と掻きだされる愛液に、彼は力強く永琳を突いた。

「あん! あん! あ! あ! あ!」

 堪らないのは永琳の方だった。胎内を広げる肉槍の感触は、彼女にはあまりに強すぎる刺激だった。入れているだけで痺れるような快感があるというのに、それが動くのだから、もうどうにもならない。背骨が軋むような衝撃と共に、快楽の楔が胎へ打ち込まれる。ずどん、ずどんと稲妻が脳髄を焼くたび、永琳はお礼と言わんばかりに、地面へ潮を噴いた。ぷしゃ、ぷしゃっと地面に黒い跡が出来る。腰が蕩けるような開放感と共に出された潮は、またすぐさま充填され、再び蕩けるような快感と共に放出される。
 肉傘がぞりぞりと膣壁を削っていくたびに、はふはふと喘ぎ、宥めるように進行していく茎に妖しい快感が全身の力を奪い去り、子宮を押し上げる亀頭の感触に、白目をむく。女として生まれたことに感謝してしまうくらいの快感に、永琳はただただ咽び鳴いた。汗で重くなった銀髪が、地面に放射状に広がり、官能的な光景が生まれた。
 既に永琳の頭には言語というものは消え去り、口から出てくるのは淫らな獣声。上半身は完全に崩れ落ち、頬を寝床に擦りつけている様など、理性の欠片すら見えない。だらりと出された舌からは、水たまりをいくつも作り、永琳の顔をベトベトに汚していた。密着していた乳房が強く潰れる。痛みと共に走る快感は、いつしか快感だけとなり、時折走る痛みがスパイスとなって、さらなる快楽を永琳に与えた。
 玉の汗が彼の動きと共に弾け、肌を伝って流れ落ちていく。その上に彼の汗が覆っていき、何時しかお互いの汗と体液で辺りはぐっしょりと湿っていた。

「おお、おお、ああ、イグ、イグ、イギます、イグぅ」

 不意に、永琳の身体が跳ね上がった。痛みすら感じるぐらいに締められる胎内が、きゅう、っと彼を奥へ誘い込む。いつ絶頂に達してもおかしくない状態だった永琳の身体は、本人に予兆を感じさせる暇もなく、一気に頂点へ押し上げた。
 バチバチと線香花火が煌めく視界の中、永琳は全身を駆け廻る絶頂快楽が過ぎ去るのをジッと待つ。身体中から玉の汗が噴き出し、永琳の身体を水浸しにする。
 ……っと。
 ぐり、と固く張った亀頭が、子宮口のすぐ近くを突きあげた。瞬間、脳裏に走った快楽電流に、永琳は白目をむいて、泡を吹いて四肢をばたつかせた。

「おお、おおう、おう」

 トドのような、人の声どころか動物の声とすら思えないうめき声が、永琳の喉から絞り出される。絶頂に達し、ただでさえ敏感になった胎内の奥、永琳の弱点中の弱点ともいえるスイートスポットを一突き。快感漬けにされた永琳には、到底耐えられるものではなく、一度の刺激で先ほどとは比べ物にならない高みへ登らされた。ぷしゃっと潮が彼の両足に降りかかり、それどころかアンモニア臭を放つ尿液すら、一筋飛び散った。
 しかも、彼の腰はその弱点にピタリと吸いついた途端、動きを止める。弱点を突かれて蠢く膣道を尻目に、円を描くように腰を振って、スポットをぐいぐい押した。
 堪らないのは永琳だ。蛙のように這いつくばって逃げようにも手足には全く力が入らず、圧し掛かるように押さえられた腰は一ミリと動かない。それどころか、のたうちまわって動いたせいでさらに自分の弱点に雄を食い込ませる形になってしまい、彼女はますます忘却の彼方へ意識を飛ばした。

「だ、駄目よぅ……そんなところ突いちゃ……駄目よぅ……離れてぇ、お願い、離れてぇ……ううう、動いちゃ駄目ぇ……弱いところだからぁ、そこ弱いからぁ……駄目になる場所だからぁ……はあん、お願いよぅ……イ
っている……凄いの来てる……駄目ぇ、降りられない……イッタまま……降りられないぃ……もう、イっているのよぅ……」
 彼の腰がピタリと止まる。きゅきゅう、と搾られる快楽に、彼の肉体が悲鳴をあげる。限界を感じた彼の身体は、グッ、グッ、腰を押し込めるように突きだし、限界まで押し上げられた子宮がさらに押し上げられる。
 ビクンビクンと痙攣を始めた肉槍の感触に、永琳は蕩けた頬を硬直させた。

「ぁぁぁ、駄目ですぅ……出しちゃ駄目ぇ……出されたらイクぅ……凄くイクからぁ……今出されたら、漏らしちゃうからぁ……お願いぃ、離れてぇ……あ、あ、あぁぁ……駄目ぇ、駄目ぇ……………あ」

 一際強く永琳と彼の身体が痙攣する。同時に、彼の腰が一番奥を突きあげ、ドロドロに濁った精液を永琳の胎内へ吐き出す。
 どく、どく、と精液が勢いよく、子宮口になだれ込んでいく。女を孕ませようと生きの良い精子が子宮内を蹂躙し、卵子へと向かっていく。脈動する陰茎の感触に永琳は身震いしつつ、きゅっと尻蕾を締めて、腰を下ろした。
 最後にびゅっと吐き出されると同時に、陰茎がぶるんと抜ける。永琳の尻たぶがブルリと震えて……ぷしゅう~っと、尿を排出した。漂うアンモニア臭と彼の臭いに、永琳の意識がほんの僅かに戻る。

「……ぁぁ、出しちゃったぁ……漏らしちゃったよぅ……」

 しかし、永琳が意識を保てたのはそこまで。グイッと腰が持ち上げられる感覚と共に、凄まじい激震が永琳の意識を高みへ放りあげた。

「はあ? あ、あああ!?」

 ずぶりと、絶頂に達して緩みに緩んだ膣道が、彼の肉槍に蹂躙される。新たな快感に喜んだ胎内が振動し、男を迎え入れようと優しく締め付けた。

「あああ、あああ、う、うそぉ……」

 永琳は信じられない思いで彼を見つめた。閉じられた瞼、表情のない顔からは感情は読みとれない。当たり前だが、彼は意識が無い。しかし、固く膨張した肉槍は女にさらなる追撃を食らわさんと淫肉をぬちゃぬちゃとこねまわした。

「あああ、うそ、うそ、うそ、うそぉ、うそよぅ、駄目、駄目、もう、イッタ、イッタからぁ」

 そう言う永琳だったが、彼女も堪らなかった。なにせ、自分を何度も高みへ登らせた肉槍が胎内を押し広げられているのである。ともすれば、這いつくばって媚びてしまうのを必死に堪えている状態だ。
 とにかく、気持ちいい。パンパンに張りつめた亀頭がグイッと子宮を押し上げれば、息を呑んでしまうぐらいの激しい快感が走る。大きく広がった雁首が敏感な膣粘膜をこれでもかと削り苛め、女の悦びをとことん与えてくる。固く膨張した茎は彼女から雄の感触を忘れさせない。今、彼と一つになっていることを細胞の一つ一つにまで刻み込まれていく。イキ殺しという言葉があるが、まさに永琳は彼にイキ殺されかけている状態だった。

(駄目ですよ、こんな、こんな女殺し持ってちゃ……あなたみたいな人がこんなの持ってたら、私逆らえないじゃないですか。心があなたから離れられないのに、身体まで虜になっちゃったら、もう私、腰を振って喜ばせるぐらいしか出来ないじゃないですかぁ……)
「あ、あ、あ、い、いいですよぅ、さっきの、さっきの、うそでぇす、本当は、き、気持い、いいよう、いいですよぅ、もっと、もっと掻きまわしてぇ……あ」

 肩を掴まれた。そう思った瞬間、永琳の視界がグルリと回った。ドサッと倒れ込む音と同時に膝立ちになった彼女は、何が何だか分からない内に、腰を下ろした。
 途端、今までとは比べ物にならない程の激震が、ズドンと胎内を駆け廻った。犯せという永琳の命令を忠実に守った彼が、二回目の交配に移行し、仰向けになったのである。自然と彼の肉槍の上に乗る形になった永琳は、自重によって先ほどよりも深く、容赦なく突かれたことによって、どろりと脳を蕩かせた。

(イグ、イグゥぅぅぅぅ!!!!)
「はぉぉぉぉ!!!」

 あまりの快楽に、永琳は口から幾重にも涎を垂れ流して喘いだ。四肢を痙攣させ、パクパクと尻穴を開閉しているその姿は、普段の彼女の姿からは想像も出来ない淫らな姿だった。勃起した乳首がプルンと跳ねる。ちょろっと流れ出た潮が弧を描いた。固く硬直した淫核が、ぴくんぴくんと上下に鼓動した。
 しかし、今の永琳に気を回す余裕はない。なにせ、本来なら臍に付かんばかりに垂直に勃起する陰茎を、受け入れているのである。仰向けになった状態では、本来なら到底入れることは出来ないのだが、今の彼は意識が無く、また最初から入れた状態だったことが幸いした。
 だが、その勃起力が無くなったわけではない。元の位置に戻ろうとする陰茎は、そのつもりがないとはいえ、永琳の敏感肉を容赦なく削ったのである。発情した女肉にはその刺激が耐えられるはずもなく、永琳ははふはふと喘いだ。

(す、凄すぎるぅ、こ、これ、駄目だぁ、これは駄目ぁ)
「ま、まぢなざい」

 これが自分の声か、と耳を疑うような濁声が飛び出る。しかし、それに構っている余裕はない。今命令せずに動かれたら、それこそイキ殺されるからだ。
 一瞬、この声で反応するのかと不安に駆られた永琳だったが、彼は素直に命令を受け入れ、動きを止めた。立てられた両膝は、彼が今まさに永琳をイキ殺そうとしていたことを、彼女に思い知らされた。
 はあ、はあ、と荒く乱れた吐息を必死に整える。五月蠅く鼓動する心臓が、煩わしい。ジッとしているのに意識が飛びそうになる程の快楽電流が脳髄を犯す。胎内を埋め尽くす圧倒的な存在感に身震いしつつ、永琳は、は、は、と息を吐いた。

(ま、まずはコレを抜かないと……)

 不幸中の幸いか、ちょうどよく目の前には掴まれそうな両膝がある。これを利用して、どうにか食い込んだ肉槍を抜かなくては、どうにもならない。
 腕を伸ばして、両膝を掴む。かくかくと生まれたての小鹿よりも頼りない両足をなんとか立たせる。それだけで、目も眩む程の快感が走り、汗塗れになった身体からポタリト汗が流れ落ちた。

(ゆっくり、ゆっくり……あ、あ、き、気持ちいい……これ、凄いよぅ)

 静かに、胎内から肉槍が抜けていく。丸く潰れた尻肉がふわりと持ちあがりぬちゃっと愛液が糸を引く。真っ白に濁った愛液と精液が名残惜しむかのようにぷつんと千切れる。白い歯を食いしばり、一度は収まっていたのに、再び首筋まで真っ赤に色づいていく。彼女が抜くという、ただそれだけの行為に深い悦びを得ていることは明白だった。
 ぽたり、ぽたりと汗が顎を伝って、彼の股の間に落ちる。白くコーティングされた陰茎が少しずつ外気に晒されていき、永琳にとって長い時間をかけて、ようやく亀頭の雁首までもう少しというところまで来た。
 ぶるぶると目に見えて震える両腕に活を入れて、永琳は、ふう、と溜息を吐いた。その色はきっとピンク色で、蕩かされた女の香に満ちていた。

(あと、ちょっと……あと、ちょっと、頑張れ、私……)

 ふうふう、と息を整える。そして、四肢に力を込めて、一息にグイッと……抜けなかった。

(……って、え!?)

 突然の事態に、永琳は目を白黒させながら、陰部を覗きこんだ。
 そこは、永琳の思惑とは別に、素直だった。自身をここまで蕩かせた雄を逃さない。その一心で、膣口を力強く締め付け、亀頭を離さなかったのである。永琳がいくら力を抜こうと脱力しても、その部分は主の意思に逆らい、持てる力を全て使って彼を締めつけていた。

(な、なんで!?)

 思いがけない事態に、永琳は、えい、えいと腰を上げる。しかし、そのたびに、ぎゅ、ぎゅっと膣口が締まり、雄が出ることを拒む。その行為がちょうど焦らすような動きになり、深い挿入を焦らされていると勘違いした子宮が、きゅんきゅんと永琳を非難した。
 その甘やかな痛みに、は、は、は、と息を荒げる。土汚れていてもその美しさが色あせない銀髪が、さらりと揺らいだ。

(ど、どうしよう、このままだと、最後までやらないと抜けないかもしれ)

 つるん、と永琳の足が跳ねた。片足で到底体重を支えられる状態ではない彼女は、それこそドン、と勢いよく腰を落とした。柔い尻肉がぷにょんと潰れ、離れていた陰部が触れ合う。永琳の胎内はもう離さないと言わんばかりに肉槍をはむ、はむ、はむ、と食い締め、力強く子宮を押される感触に、酔いしれた。

「―――――――っっ!!!」

 絶頂。完全な不意打ちに打ち込まれた楔。思惑は無かったが、結果的には焦らされて温められた胎内を一撃で蹂躙する行為。声すら出せない快感に、永琳は背を逸らして、はふはふと喘いだ。

(あ……出ちゃった)

 ちょろちょろ、と尿道口から、膀胱に残っていた尿が滴り流れる。いきおいが無い迸りは、彼の身体を伝って、流れた。

「は、は、は、イグゥ、いがざれぢゃっだよぅ……犯……しれ……れるぅ……」

 なかなか下りてこない絶頂感覚に脳髄を蕩かされる。舌もまともに動かず、幼子のような舌足らずな言葉しか出せない。もはや指一本動かす気力すら湧いてこない。
 このまま気絶してしまおうか。そう考え、気絶しようと瞼を閉じたとき……それは起こった。

「へ?」

 ふわっと、何時の間に起きたのか、彼の両腕が永琳の身体を掴み、瞬きするよりも早く、小さな体は彼の肉体の下に押さえこまれた。
 いわゆる、正常位の形になった永琳は、もしや覚醒したかと彼の顔を見て、安著した。そこには永琳を非難する瞳もなければ、驚愕の色も情欲の色も無い。先ほどと変わらず、瞼が閉じた寝顔がそこにはあった。

(はあ、良かった、起きたわけじゃない……あれ? でも、どうして彼が私の命令無しで動いているのかしら? 私何も命令していないの……に)

 瞬間、彼女は思い至った。先ほど彼女自身が口走った、犯されてる、という言葉。よくよく思い返してみれば、犯して、とも聞こえなくもない。
 と、いうことは……彼がこれから行う行動は。
 そのことに思い至った永琳の顔から血の気が引くと共に、彼の腰が力強く躍動し始めるのは、同時だった。


 はあ、あ、あ、イク、イグぅ、あ、あ、あ、あ、駄目、やああ、いい、いいよ、凄い、凄い凄い凄い、あああーーー、凄いわ、本当、凄いわぁ、はあん、駄目、駄目よ、また、またイク、またイグゥ、いや、いやぁ、ゆるしで、もう許してぇ、いぎ、いきゅう、いき、イキました、もうイキました、もうイッタから、あ、あ、ああ、はああ! あ! い!イク! イクう!! うう、おお、お、お、おお、お、あ、く、来る、来る、また来ちゃう、凄いの、凄いの来るぅ、お願い、お願い、許して、許し、あ、ああ、う、あ、あああーーー!!! ああ!? いや、いや、ああ、イッてる、もうイッてるから、おおん、おお、おう、おおおおおううう!!!! おほぉ、ほお、イグ、イッデる、降ろしてぇ! 降ろしてぇ! ここから降ろじでぇ! いやだあ! イギだぐない! イギだくない! もうイギだぐな、ああ、あああ、あああああああああ!!!!!!


 永琳がようやく命令を発したのは、それから3時間後のことだった。
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