エロゲの長さとかそれ関連の話。

http://lkhjkljkljdkljl.hatenablog.com/entry/2013/02/27/073944
えーとこの辺からのお話。

いやしかしエロゲブログ界隈において、こういう「どこかのブログが書いたことに沢山の別のブログが言及してそれが話題になる」という輪がこんなに広がったのはいつ以来でしょうか*1。なんかもうそれだけで嬉しいです。


まず話を腑分けすると。


第一に、そもそも長くないエロゲがあんまりないということ。長いのが良い悪いとかとは別の話として、MK2さんの人がおっしゃっておられるような「抜きゲーではない萌えとかストーリーとかそっち方面のゲームで、ヒロイン1キャラ~3キャラで、5時間くらいで終わる」というゲームは少なくとも商業エロゲでは全然ないです。そりゃ古くは『沙耶の唄』とか、5時間では終わりませんが「Alcotハニカム文庫」とかありますけど、そういうゲームが沢山リリースされているというわけではありません。基本的に、最近発売されている萌えやストーリー方面のゲームのプレイ時間は、20時間あたりまえだと思って頂いてかまわないでしょう(もちろんそれ以上もザラですし、最近だと『夏空のペルセウス』みたいにたまにそれ以下もありますけど)。

「エロゲ買ってきたら20時間近くふっ飛ぶ覚悟をしなければならない」ということは確かなんじゃないかなと。もちろん意外と短いのとかもっと長いのとか、つまんないからCTRLスキップしまくって半分の時間で終わったとかそういうのはありますけど、まあ真面目にプレイした場合を、平均すると。そして、可処分時間あんまりないけどエロゲをやりたいとはいえそんなに熱心じゃないよ(=徹夜したり時間を捻出するほどではない)という人にとっては、「短いエロゲ」というものがもっとあった方が助かるという話、なんじゃないでしょうか。えーと”エロゲは全部短くなれ”という話じゃないですよ。もっと10時間以内で終わるタイトルが増えてもいいんじゃないかという話。

しかし当たり前ですが、10時間で終わるエロゲというのは20時間で終わるエロゲの半分の制作費で作れるわけではありませんし、3人しかヒロインがいないエロゲは5人ヒロインがいるエロゲの3/5の制作費で作れるわけでもありませんし、ミドルプライスにしたらフルプライスより本数出るとは限りませんので、実際のところ少なくとも当分は短いゲームが沢山発売されるなんてことはないと思うのですが。しかし「短い・安い」を売りにした商品ラインがもうちょっと増えるのもいいんじゃないかなーとは思います。


えーで第二に、てゆうかこれはボクが勝手に強く思ってることで同意されるかどうか分かりませんが、作り手側は短くしようとしているのだろうかということ。エロゲやってて、この辺のセリフとかテキストいらなくね?もっと短く出来るんじゃねえ?一言でまとめられるんじゃね? とか、このイベントなくてもいいんじゃね? とか、このシーンとあのシーンは一つにしちゃってもいいんじゃねえの? みたいなことを思ったことはないでしょうか。いやたまに―――実際そんな強く思うのは数十タイトルやって一個とかですが、たまにあるんですよ。なんかローグキャラクシーとかSFC版3×3EYSのダンジョンをプレイしていたのと同じような気分になってくる時が。ブラッシュアップの段階で「ここは削った方が良い、ここはひとつに纏めた方が良い」とテキスト・プロットをどれだけ短くしようとしているのか疑問に思う時が。俺が「長い」と思って「嫌になる」のはそういう時だけです。『装甲悪鬼村正』も『大図書館の羊飼い』も、そりゃ50時間前後はかかりましたから「長い」とは思いましたけど、それを「嫌だ」とは思わなかった。しかし某作品とか某作品なんかは、ゲームプレイ時間そのものはそんなに長くはないんですけど、えーと喩えるならレベルデザインでしょうか、『スーパーマリオ』だってずっと走ったりずっとジャンプしてるだけじゃつまんないですよね。ずっと同じマップだったらつまらない。手を変え品を変え、それらの運用方法をコントロールすることによって面白さを生み出している。しかしエロゲにおける長くて嫌な作品というのは、ずっと走ったりずっとジャンプしているのと同じように単調で、マップに変化がないのと同じように(物語・ヒロイン・世界なんでもいいですけど)情報が増えない。単純に楽しい・つまらないの話ではなくてですね、たとえば『なでしこドリップ』とか『シュガーコートフリークス』とか『Hyper→Highspeed→Genius』とか、個人的には楽しくないってゆうかつまんないに片足踏み込んでるレベルでしたけど、スキップを使わずにちゃんとコンプリートできています。ぶっちゃけ結構つまんなかったんですけど、単調さを排して情報量をコントロールしてという、ノベルゲームなりの・物語なりのレベルデザイン(敢えてこの言葉を使うけど)がしっかりしていた。そこにおいては当然長さのコントロールが重要で、同じようなシーンや同じようなやり取りが無意味に長く続けばその分単調さは増すし、さらにその中でキャラクターや物語に対する情報量がロクに増えないとなれば変化が乏しくなる。―――だから、要するに。長いのが嫌、じゃなくて、「嫌な長さ」ですね。それはゲームプレイに対してどれだけ気を遣っているかということ。たとえば『スーパーマリオ』だとクッパと対峙する直前に3秒くらい障害物がなくてただただBダッシュするだけの箇所があったりしたのですが、それが1分くらい続いたら「嫌な長さ」ですよね。なんで1分もやらせるの、単調だし変化もないこんなのを。だからもしそんな仕様があったとしたらそれは当然削られるわけです。が、エロゲにおいては果たしてどれだけそういった単調で変化の乏しい嫌な長さが削られているだろうか。いや実際、ボクも月に2桁はエロゲやってますが、「うわ無駄に長え嫌だ」と思うことはそんなにないです、軽くならともかく強く思うことは10本20本に1本くらいです、しかしそんな時は伺いたくもなります、上がってきたテキストからどのくらい削っているのかを。

だからいつも思うのは、たとえプレイ時間が何時間であろうとも短くした方が出来が良くなるなら短くした方が良いんスよ。エロゲー批評空間見るとプレイ時間15時間で「短い」とか言われることがあって非常に可哀想(もちろんメーカーが)と思うのですけど。「水増しみたいなテキストが増えるだけなら」15時間どころか10時間でもよくね? と思うのです。  ……しかし「1秒でも長くヒロインが画面に出てきて主人公ないし他の登場人物とお喋りしていれば良いのですたとえそのテキストが水増しでもクソでもよっぽどではない限りは構いません」という人が相当数いらっしゃるのは理解できます。実際俺も鈴木佳奈すけちゃんがにゃーにゃー猫語を喋ってるだけの一見するとクソみたいなテキストが3MB分くらいあっても文句を言わないどころかむしろ八月の方に向かってありがとうと叫びながら五体投地するでしょうし。

だからですねー、いや書きながらある意味自分の矛盾に気づいたんですけど、それこそ水増しとかRPGでいうお使いイベントみたいな無駄に長いというのも、一概に悪いとは言えません。たとえばですね、前作『恋色空模様』が長かったこともあってか、去年出た『祝福の鐘の音は、桜色の風と共に』はプレイ時間15時間なのにエロスケで短い短い言われてるんですけど、ボクはこのゲームの「長さ」は出来る限り無駄を排して、テンポを崩さない程度のボリュームに抑えて、むしろかなり良いと思ったのです。これ以上長くしても、前作みたいに冗長さ・単調さ・テンポの悪さが目立ってしまうのではないだろうか、と。しかしヒロイン可愛いもっとイチャイチャしてえーという人にとっては、よっぽど酷い内容・テキストでない限りは、たとえ冗長だろうが単調だろうがテンポ悪かろうが「長い」方が喜ばしいわけで、むしろシェイプアップされた15時間は「短い」「物足りない」ということになるわけです。物語を語る分には十分だし、キャラの萌えや魅力も決して少なくはなく、きちんと示せているのだけれど、そこに対する「もっと」という要求には応えられていない。あえて一般ゲーに喩えると、丁度良いボリュームではあるんだけどやりこみ要素が全然ないみたいな感じでしょうか(違うかな)。

いやー自分では「短くした方が良くなるようなところは短くした方が良い」と思って書き出したのですが、しかしエロゲにつき物の「キャラ萌え」あるいは「イチャラブ(ラブコメ)」「キャラクター同士の関係性」、そういったものを見たい―――”もっと見たい”というユーザーの欲求に応えるならば、それこそ「無駄に長い」「冗長である」と言われるような「長さ」すら必要なのですね。もちろんこれは逆に、人によってはタイトルによってはそんなのいらねーよなるし、そもそもあまりに酷すぎるテキストだったら当然いらないんですけど。たとえば最近は人気作ならバンバン「ファンディスク」が出ますが(てゆうかたいして話題になってない作品でも結構出るくらいですが)、それもこの、ユーザーの「もっと」要求が非常に大きいからなんじゃないだろうか、などと思ったりして。

ということで書いてるうちに自己矛盾に気づいてオチが無くなったので何一つまとまっていませんが終わり。

あとMK2さんのところもそうだし、大元の年収300万記事のところもそうなんですけど、ブクマコメントにソーシャルだのエロゲ版○○だのなんかアレ気な提案が多いのはなんなんすか。あーこれはエロゲーマー的に見てです。たとえばエロゲ版ぶつ森でもエロゲ版ラブプラスでもいいですけどどっかのエロゲメーカーが作ったとして、劣化と呼ばれないレベルの相当出来の良いものが作れるとお思いでしょうか? と問いたい。しかも予算も超限られてますよ。億いかない開発費ですよ。その状況でオリジナルと同等かそれ以上のモノが作れるとは到底思えませんし、誰も思わんでしょう。そうして劣化エロゲ版ぶつ森、劣化エロゲ版ラブプラスが出来上がったとしたら、エロゲーマーはそれを買いません。普通にぶつ森ラブプラスと、なんか評判の良いエロゲをそれぞれ買います。ソーシャルもそうで、なんか微妙なソーシャルエロゲ(てゆうか既にDMMとかであるけどね)をやるくらいだったら、普通にモバマスとかガールフレンドとかパズドラとかと、評判の良いエロゲをそれぞれプレイします。あるいは薄い本の可能性もありますけど。このスレ(http://game10.doorblog.jp/archives/23847351.html)のほぼ全てとか圧倒的にそうなんスけど、いやホントさ、エロ付いてりゃ買うんだろみたいな舐めた態度やめてくんない? あと2013年の今頃になってソーシャル参戦はどうなのだろうとちょっと思うんだけどとか、エロゲ版ぶつ森ってつまりエロゲ版ガンパレード・マーチなんじゃねえかなとか、そもそもそれらがもし上手くいったとしても幾つかのメーカーが恩恵受けられるだけで業界という括りだとあまり関係なさそうとか、エロゲ版kickstarterみたいなのもしやってもエロゲーマー人口が少なすぎて結局は超大物ライター・超大物原画家とかそういうことしなくても普通に資金集められそうな・どこかの会社が協力しそうな人以外無理なんじゃないかなとか、特典商法というのは予約を集められる=生産数を間違わないで済むという分かりやすいメリットの他に、たとえば発売早々秋葉原とかに未開封中古が山のように並んでいる姿を見ると、「特典がなければ本来売れなかった分も売れてるんじゃないか」*2というところも多少なりともあるので、一概に悪いとは言えないんじゃないかなとか。えーとそんなわけでやはりオチなく終わり。

*1:2008年夏ごろの「エロゲにエロはいらない」騒動以来?

*2:しばらく経ってからならともかく、発売日直後に並ぶ未開封中古はその9割以上が特典目当ての複数買い→特典取って売るだと思われます。てゆうか発売日の週末にソフマップやトレーダーの買い取りフロアに行くと凄いっすよ、同じゲーム5本6本まとめて持ってくる人がザラにいる。中にはその5本6本を4タイトルだか5タイトル分持ってくる人もいる。アレすげえ! 40本くらい未開封品を売りに来てるの(そこまでの猛者は一度しか見たことないけど)。で、中古でゲームを買うという人も、特にこだわりがなければ未開封品を買いますよね。てゆうか店舗によりますが未開封品があるうちは未開封品から率先して並べたりしますので、基本的に(未開封品の在庫がある場合は)9割がた未開封品から在庫ははけていくわけです。ここにおいて、未開封品がそれでも売れ残った場合。それはほぼ確実に「本来(特典がなかった場合)売れなかった分が特典商法で売れた」分だと考えられます。特典商法があるからこそ、値崩れを起こす可能性があるので新品ではなく中古を買う(特典が豪華なタイトルなんかだとすっごい勢いで値下がりしたりする。具体的には発売日当日に買い取り金額が朝5000円、夜2000円とかになる。もちろん全然値崩れないタイトルもあるっていうかそっちの方が断然多い)なんて方もいらっしゃると思いますが、タイトルによっては特典商法のお陰(お陰という言い方もアレですけど)でより売れてるというのも結構あるんじゃないかなとか勝手に思ってます。