単なる一消費者のわがままとして

 なんか中途半端に時間余ったんだけどやることないから日記書く。

 とりあえずこのへんについて。

 

 さて、俺はエロゲユーザーとしてはわりと半端ものである。いつからやってるか、といえば記憶にある限りいちばん古いのはたぶんアリスソフトのOnly youあたりなのでそこそこ古いとは思うが、2000年代前半あたりに数年単位のブランクがあるし、そもそもやってる時期でも月一本もやればいいほうで、現在に至ってはたぶん数ヶ月単位で製品版はまったくやってない。でも体験版はやるのでなんだかんだで月一本くらいは買ってる気がする。つまり、積んでる。しかも俺は抜きゲーに類するものをほとんどやらない。理由は単純で、俺にとって自慰行為に関して、副食物としての隠喩で呼ばれるものとしてエロゲがほとんど役に立たないという事情による。

 このへんのオタ的なものを消費するにあたり、人によって「第一優先」的なジャンルってあると思う。要するに「持ち時間」に対して占める割合の高さだ。それで考えると、現在の俺にとっての第一優先はまちがいなくラノベということになる。それですら週に1冊読めばいいほうだが。あとはアニメか。

 ただ、まちがいなくエロゲが第一優先であった時期があった。といっても、幅広くプレイするということではなく、ただひたすらに鍵ゲーだけだった。具体的にはKanonとAIRに関することだけで持ち時間のすべてを費やしていたような感じだ。原体験といっていいようなものがこうであるため、俺はエロゲユーザーというよりは「ああいうもの」の追体験をしたい、というだけなのかもしれない。

 まあこのへんのことは踏み込むとややこしくなるので、とりあえずスルー。

 ただ、そもそもの問題として現在の俺にとって、生活のなかでの第一優先は、ラノベ読んだりアニメ見たりすることではない。なにかといったら、やはり仕事ということになる。家に帰っても完全に仕事から頭が自由になることはあまりない。これを認めるのは自分のスペックの低さを自分で認めてしまうようで非常に不快ではあるが、現実にそうなのだからしかたない。余暇があったとしても「店をよりよくするためにはどうしたらいいか」を考え、そのために必要なんだか不要なんだかよくわからん細かい作業をしてたりするので、余暇の時間は圧縮される。

 つまり俺は「飢えるように」フィクションを求めているわけではない。

 

 さりとて、ラノベ読まないわけでもないしアニメ見ないわけでもない。それが楽しみだという点でもあいかわらずで、相対的には熱意は下がったわけだが、趣味としては充分に機能している。こういう状況のときに俺にとって優先順位が低いエロゲは趣味として切り捨てられることになる。かつてはエロゲのために生活があった。いってみればエロゲが主食で、それを買うために俺は働いていた。いまはそうではない。生活のために働いているのであって、副食物としてアニメやらなんやらがある。

 ま、考えてみればそれがふつうの人間なんだが、俺としては若干(かなり、かな)の敗北感があったりもする。

 で、こういう状況のときに、ラノベやマンガはさっくりと読めるのでよい。アニメも全話見てない状況でまちがって一話から見ちゃって、それがおもしろい場合なんかは睡眠時間を削るハメになるわけだが、基本的には一話単位で見るわけだ。

 そこでエロゲなんだが。

 長い。

 これは、いかにも長い。

 いちばん最近にクリアしたエロゲってなんだったかなーと考えてみたんだけど、なんか「妹が僕を狙ってる」だったような気がする。あれフルプライスだったっけ? 長さからいうと違うような気がすんだけど。

 長いなら分割してやりゃいいじゃないって話なんだけど、困ったことに、エロゲって一定時間ぶっ続けてプレイして、そのままぶっ倒れて睡眠、みたいなやりかたがいちばん楽しかったりする。充分な時間を取って、一気にやってしまいたいという気分が非常に強いわけだ。

 となると、持ち時間が3時間しかないようなときに始めるのはかなり躊躇する。なにより「止められない」という自信がある。スタートしてしまって、それがおもしろかった場合、絶対に睡眠時間削る自信がある。そんな自信はいらねえよ……。

 まあそれでも「本当に大好き」ならばどんな状況でもやるわけだが、現在の俺にとってエロゲはそういうものではない。しかし「おもしろい」という幻想だけは引きずってるし、実際のところ、体験版段階でめちゃくちゃおもしろいような作品があったら、そりゃ続きはやりたくなる。んで、買う。そして積む。悪循環である。

 

 さて、俺が言いたいことは「エロゲ大好きなのにできない自分に対する言い訳」ではない。それでいうなら、すでに「大好き」というのは過去のものとなっていることを自覚しているからだ。俺のいう「大好き」とは「生活捨ててもいい」というくらいの意味。

 そうではなくて、あんがい俺のようなユーザー層は多いのではないか、ということ。

 フルプライスで5人なり6人のキャラがいて、とうてい一日ではやりきれないようなボリュームの作品って、確かに当たりならおもしろい。だけどこれって「エロゲが趣味の第一選択」のような人向けの作品なのではないか、ということだ。

 俺以外の人に該当するかどうかはわからんが、力のある長い作品って、ほんとに生活根こそぎ持ってかれるだけのエネルギーがある。ふつうに仕事してても、頭の片隅にはいつもゲームの世界のことがあって、家に帰ったらエロゲが「待ってる」というような感覚だ。これはひまつぶしなんてものではない。俺にしてみれば、これこそが長いエロゲの醍醐味でもあるのだが、同時にそれは俺くらいの年齢になってくると、正直「重い」というのも事実だ。単に長くてクリアするのに時間がかかる以上に、あの「頭が支配される」というレベルでの没入が重い。それは楽しくもあるが、同時に疲れる。疲れることはしたくないのがおっさんである。

 

 なぜエロゲなのか、という疑問がある。好きな人はほんと好きだ。俺も決して嫌いではない。そして「エロゲにしかないもの」というのがあると思う。抜きゲーはやらない人のいうことだから、意見としては偏ってるのが前提だが、俺はエロゲってのは「場所」だと思うのだ。ある種の良質な長編小説がそうであるように。

 どういうことか。

 マンガにしろ小説にしろ、基本的には「ストーリー」を見せるものだ。登場人物がいる。なにかをする。そして終わりがある。この「なにかをする」の部分が曲者だ。「なにかをする」ということは、なにかを「しなければならない」ということでもある。それが疲れる。

 この感覚は決して俺だけのものではないと思っている。少なくとも萌え4コマといわれるような作品は、ある程度は「ストーリー」に対するアンチテーゼとして機能していると俺は思っている。キャラクターだけを消費したいと願ったときに、非日常に属するものは重荷になる。しかしそれがないとキャラクター主導の小説は成立しがたいのも現実だ(なにより書き手/描き手にとんでもない叙述力が要求される)。

 いまは読んでないけど、昔は同人誌をかなり読んでいた。いわゆる二次創作。俺がそうしたものを読みたかったのは「作品のなかのあの魅力的なキャラクターたちが、ふだんどんなふうに生活し、なにを考えているのか」ということを知りたかったからだ。つまり俺はそのキャラクターたちが好きだった。しかし物語の軸からずれるものは作品本体からは提供されない。こちらに妄想の自由はあるが、妄想はかたちにならない。その妄想が作品になって結実しているようなものを見るのは、とても楽しいことだった。

 エロゲには最初からこれがある。エロゲに対するテンプレ的な認識のひとつに「長々と意味のない日常パートが続く」というのがあるだろうが、俺にとってはこれこそが重要だったりする。まあエロゲなんで対象は女の子だが、その女の子の日常がえんえんと描写される。生活する空間が設定されている。それこそが俺の欲しいものだった。

 ここにおいては「長い」ということはまったくすばらしいことだ。長ければ長いほどいい。まあ読み手なんてわがままなもんなんで、充分におもしろく描写されている必要はあったりするんだけど。

 ただ長くないとそれが手に入らないかというと、そうでもなかったりする。俺が好きなゲームのひとつに「ひなたぼっこ」っていうのがあるんだけど、あれなんか長さはそんなにないのに、確かにいまでも記憶に残ってる。なんかねえ、好きだったんだよ、あのゲーム。ほんとに。

 

 というわけでですね。

 俺は1キャラのみのロープライス、あるいは3キャラくらいのミドルプライスで、生活空間が充分に魅力的な作品であればけっこうやりたいと思っております。少なくとも5時間くらいで終わる、という前提であれば重たさを感じる必要はない。

 まあこれが実現できるかっていうと、まさに「できない」というのがリンク先のインタビューの話なわけで、俺が言うことは絵空事に過ぎないわけではありますが。時間が短くなれば作る側としては数打たなきゃいけないわけで、そうすると今度は買う側がどうやって選ぶの問題も出てきますし。

 そういう作り手の事情があるらしい、ということは承知のうえで、単なる一消費者としてのわがままを言うなら、1キャラか2キャラのさほど長くない作品、けっこう欲しいんだよねえ。まあ俺が知らないだけで世のなかあんがいそういう作品ってあるのかもしれませんが。

 ちょっとだけ手ざわりのいいやさしい空間のある作品。欲しいなあ。これは。