アルコール天国のロシアで今年に入り、街中のキオスク（売店）からビールが一斉に姿を消した。
ロシアでは昨年までアルコール度数が１５％以上の飲み物が法的に「酒」とされていたのだが、その基準を０・５％まで引き下げ、ビールを含める改正法が年初に施行された。これに伴い、飲食店を除いて午後１１時から午前８時までのビール販売が禁じられ、キオスクや露店ではビールを全く売れなくなったのだ。
政権が過去に明らかにしたところでは、ロシアでは国民１人あたりの年間飲酒量が純アルコール換算で１８リットル（ウオツカ５０本相当）と世界最多。年間約５０万人が飲酒絡みで死亡していると推計されている。ロシアでもようやく健康志向が高まってきたのであれば、歓迎すべきだと言うほかない。
だが、ことは単純でない。
法改正の背後では、ビールにシェアを奪われてきたウオツカ事業者が暗躍したというのが公然の秘密だ。ウオツカ・ロビーは、アルコール消費の約３割を占めるビールが「若年層のアルコール依存の入り口になっている」と主張し、ビールにウオツカと同等の規制を課すことに成功した。ビール規制ではキオスクが大打撃を受けるため、スーパーマーケット・チェーンなど大規模小売業者の影を見る向きもある。（遠藤良介）