日本の工場は非常に生産性が高いことで有名です。
みなさんもテレビや社会科見学などでみたことがあるでしょう。
しかし日本の労働生産性は先進国の中で最下位です。
製造部門での労働生産性を分析したデータもあり、これでは先進7カ国中3位です。
そしてホワイトカラーについては7か国中最下位というのが実情。
【そもそも労働生産性とは何か?】
簡単にいうと、労働力に対してどれだけの価値を生むことができたかで求められます。従って少ない労力でより多くの利益を得ることが、生産性が高い状態といえます。
★例えば★
次のようなケースを考えてみましょう。
- 杉下さんが残業を一切せずに10万円を売り上げた
- 毛利さんが毎日1時間ずつ残業をして10万円を売り上げた
- 工藤さんが残業を一切せずに15万円を売り上げた
- 合田さんが毎日3時間ずつ残業をして15万円を売り上げた
杉下さんと毛利さんは売上高(つまり生み出せたものの量)は同じですが、毛利さんは毎日1時間残業をしていますので、杉下さんより非効率的です。そして工藤さんは残業せず4人の中で最も高い売上を記録しています。合田さんと工藤さんは売上高は同じですが、投入した労働力が少ない分工藤さんの方が労働生産性は高いといえます。したがってこの4人では工藤さんが最も生産性が高いということになります。
(実際にはもっと大きな集合で考えますが、分かりやすくするため単純化しました)
言い換えると労働生産性とは「どれだけ効率良く働けているか」という風に解釈できます。
【日本のGDPは先進国の中でも高いはずだが】
そうなんです。日本のGDP(国内総生産。つまり生み出した付加価値の量)は以前より低下したとはいえ、今でも先進国の中で3位に位置しています。
効率が悪いのになぜ?
勘の良い人ならすぐに分かると思いますが、「効率が悪い分、長く働くことで沢山の付加価値を生み出している」ということが原因です。先ほどの例でいうと、合田さんの働き方【沢山働いて沢山価値を生み出す】というのが日本流の働き方といえるかもしれません。
【本当にそれで良いの?】
工藤さんの働き方:残業をせずに、もっとも高い価値を生み出す働き方
合田さんの働き方:ガンガン残業をして、もっとも高い価値を生み出す働き方
どちらが良いのでしょうか。この表現をすると、みんな口をそろえて「工藤さんのほうが良い!!」と思えるはずです。一日8時間寝るとすると、24時間のうち8時間プライベートな時間を作れる工藤さんと、5時間しかプライベートの時間がない合田さん、そりゃあ工藤さんになりたいですよね。
【日本人が工藤さんになれない理由】
工藤さんになるには「労働時間を減らしながら高い成果を上げる」ができればよいのです。労働時間を減らすには残業をしなければよいのです。
そうは言っても次のような理由から、欧米はこれを行いやすい環境にあり、日本はこれを実践しづらい環境にあるといえます。これはひとえに日本と欧米の文化の違いといってよいと思います。
文化の違いのせいにするわけではありませんが、絶対に影響しています。
- 「仕事より家族」の文化
日本ではよく「仕事と家族、どっちが大事なのよ!」という問いに困惑している光景を見かけます。でも外国では家族と仕事をしっかり両立する人が圧倒的に多い。
この記事が非常に参考になります。 - 欧米では「残業するやつは仕事が遅いやつ」という考え方
日本では残業する人が偉い、残業しないやつは忠誠心がないという風に捉えられますが、
欧米ではその逆です。根本的にここが違います。 - 「残業しないように頑張る」という仕事の仕方
2で述べたように、残業しないほうが優秀であり残業なんかしなくても誰にもとがめられません。だから馬鹿馬鹿しい残業なんかしないで、さっさと帰るために頑張って仕事をするのです。 - 年俸制で残業代は出ないので、残業するだけ損という制度
3に繋がりますが、残業をすることにメリットが何もないのです。だから欧米人は残業をしない。当たり前の話ですが、非常に合理的です。 - 簡単にクビを切られる社会
1~4までを見ると欧米の方が働きやすそうに見えますが、非常にシビアな世の中です。なんといっても、簡単に「明日から来なくて良いから」と言われる社会です。日本みたいに企業が社員に対して甘くありません。だから残業はしないけど、成果を出さないわけにはいかない、その分必死に働くのです。 - 「先輩より先に帰るのは気が引ける」「みんな残業してるんだから。。。」
こういう考えがありませんか?日本は欧米より職場の人間の仲間意識が強いです。
この考えに縛られてしまうと次のように悪魔のスパイラルに陥ります。
仕事が定時に終わっても周りのせいで、定時には帰りづらい
↓
だったら頑張って仕事を終わらせても意味がないので、仕事で手を抜く
↓
慢性的に、労働生産性が低い状態が続く
なんだか日本で工藤さんになるのは結構難しい気がしてきました。絶対工藤さんのほうがベターなのに、みんな合田さんになってしまう背景はこういった根深いものなのです。
【じゃあどうする?】
工藤さん的な働き方を、根付かせていきませんか?
- 業務時間中、誰よりも多くの仕事量をこなす。
- だれよりも成果を出す。
- 時間になったらさっさと帰る。残業している周囲の人に悪びれるんじゃなくて
「やることやったので帰ります。」と堂々とする。 - 嫌われては元も子もないので、礼節を持って周囲と接する。
もちろん誰よりも成果を出すなんて、言うは易し行うは難しですがヒントは
楽をするために最大限努力することかもしれません。
これらを高いレベルで実践できればこんな感じになるのではないでしょうか。
工藤さん的な働き方を実践している人がいて、成果も周りより出ているので、残業していないことに対する文句も言えない。
↓
「というかあの人みたいな働き方が理想なんじゃないのか?」というムードになる。
↓
「残業している場合じゃねー!俺たちもあの人みたいに早く帰るように働きたい!」というムードになる。
↓
この部署では非常に労働生産性が上がり、残業代にかかる人件費が減った。
日本では残業代で生計を立てる人もいるので、従業員にとってはちょっと残念な話かもしれない。
しかし残業ゼロで高い成果を上げられる社員については間違いなく昇給という形で、
残業代以上の恩返しがくるはずだと思います。
【激動の時代を生き抜くために】
今後の日本経済は、今以上に厳しい状態になるでしょう。
税金や社会保険料がどんどん上がっていくし、年金の需給は遅くなるし、
新興国がどんどん世界に進出するから、日本のシェアも失われていく。
アベノミクス効果で日本がちょっとずつ元気になっているようにみえますが、
短期的なものだと確信しています。つまり日本はこれから先、
どんどん厳しい社会になっていくものと考えています。
就職もどんどんしづらくなるでしょう。リストラも活発になるかもしれません。
そんなときに世の中や景気のせいにして負け惜しみを言いますか?
そんな時代でも、家族や自分の生活を守れる人になりたいと思いませんか?
そのためには工藤さんみたいにならないとダメだと思うんです。
50歳になったときに毎日11時間労働なんてできないでしょう。
少ない労働時間で大きな成果が出せるという能力はどこへ言っても通用する
ポータブルスキルのひとつだと思います。それもかなり強力な。
「日本では日本なりの商習慣がある。仲良く家族同然の同僚、みんなで根性で乗り越えようや!
そうやって日本は経済成長してきたんじゃないか!」
こんな文化、くそ喰らえだと思っています。
世界と真剣勝負でやっていかなきゃいけないこの時代、
生き抜くためにどうしたらよいかを考えていきませんか。
【参考にしたページ】
外国人看護師 「日本人は時間を守らない。遅刻には厳しいのに仕事終了の時間は守ったことない」
日本人は長時間働きすぎるから幸せになれない
日本の労働生産性がこんなに低いのは何でなんだろーか?
【参考にした文献】
君は、世界を迎え撃つ準備ができているか? (中経出版)
日本で仕事がなくなってもグローバル企業で働ける人になる本
仕事の効率を上げる、生産性を高めるにはどうしたら?
実践編を公開しました。
こちら⇒
お仕事の効率化、大変参考になります。
コメント残させていただきます。
☆ユウ☆さん、ありがとうございます。
そういっていただけると嬉しいです。
少し仕事の仕方を変えるだけで、結果は大きく違ってくるはずです。モチベーションも上がると思います。
そんな記事をこれからも書いていこうと思います。
基準もなくやみくもに比較してどうなるのか、意味が分からない。いかにも文系的で生産性の無い発想だと言える。
こういう自分は何も能力ないのに他人を評価するような情報がインターネットのおかげで溢れ出し、それを真に受ける人が居てしまうことは確かに最悪の生産性だといえる。
厳しいお言葉ありがとうございます。確かに比較の有用性は低いかもしれず、それをもとに記事を書きました。書いているときには気づきませんでしたが、反省すべきところです。
今後の記事作成の際の参考にさせていただきます。
ご指摘ありがとうございました。
とても興味深く読ませていただきました。
本当に、「一番仕事がデキる社員」=「一番早く帰る社員」だと思います。
時間感覚をもっと大切にした方が良いと思います。
「残業」なんて無くすべきです。
「定時の時間になったら帰る。残りの仕事は明日またやる」でいいでしょう。
「仕事が終わらないなら残業してでもやれ
(決められた勤務時間に自由時間を補充しろ)」っていうのは
「仕事が終わらないなら決められた時給を減らすから」と同じだと思います。
あと日本では何事も100%を目指して頑張りますよね。
それが日本の高品質を支えているのかもしれませんが
合格点が60点なら、80点出せばそれで良いじゃないですか。
80点を100点に持っていくためにみんな残業してると思います。
あとどうでもいいくだらないことで時間を潰させるのはやめてほしいです。
「ホチキスの打ち方が違うんだよね」でやりなおしさせないで下さい。
読めれば良いじゃないですか。
有限な時間をもっと大切にしましょう。
コメントいただきましてありがとうございます。
>本当に、「一番仕事がデキる社員」=「一番早く帰る社員」だと思います。
この考えに賛同していただけてうれしく思います。また日本人は100%を求めているというのも同感です。これ、モノづくりなどにおいてはジャパンクオリティとして非常に評価を得ているところですが、挙げていただいているホチキスの例を考えると一長一短ですね。
切り捨てるところは切り捨てる!大事なところでは120%の力を注ぐ!という働き方ができたら素晴らしいなと感じました。
まさにこれです!
この記事を読んで日本独特の特徴なんだと知りました。
私の会社にも何度注意しても残業をやめない方がいまして…残業代欲しさなんだとは思いますが、見ているこっちがイライラしてきてしまう程。
昇進出来ればそのイライラも収まるとは思うのですが私の会社だと昇進が期待できません…。
その方よりも仕事をしている自信もあり定時に上がるのですが自由の時間はあれど給料は下です。歯がゆい…
労働生産性の棒グラフから「残業時間が~」と結論を導いた途中のプロセスが抜けてて、よくわかりませんでした。(これを見て納得できる人の頭の構造もよくわからないですが…)
もしかして、「残業時間が多い”だろう”」->「生産性が低い”だろう”」->「生産性のグラフを見たら低かった。俺の”勘”が的中!」と、逆になってませんか?
ピンバック: ツカエル!ネットの話題 » Blog Archive » 03月18日 05:00版
私も昔は夜中まで会社でだらだらと過ごしてたくさん働いている気になっていました。
私はアメリカに7年ほど住んでいましたが、6時を過ぎると会社にはだれもいなくなり、電気も消されてしまいます。会社の時間が終わると家族の時間や地域活動の時間が始まるのです。6時を過ぎて会社に残っていると「こいつは家族とか地域に貢献しなくていいのか」という目で見られます。そして、夜9時ごろから自宅で仕事に戻るのです。私も家内も大抵深夜まで仕事をしていました。実は、アメリカのホワイトカラーの労働時間は日本よりも長いのです。終身雇用がなく、高度な実践教育をうけた若い人たちがどんどん入ってくるアメリカの会社はサバイバルが容易ではありません。家族を大切にして、社会活動もしながら、表面上はさらっと仕事をこなしているように見える人たちも夜な夜な長時間働いているのです。
どうせ残業するからとだらだら仕事をして遅くまで会社に入り浸って、たまに早く終ると飲みに行くという日本の会社生活のほうが楽でした。
ホワイトカラーの生産性が低いのは、『レバレッジ』をかける度合いが低いからでしょう。分かりやすくいえば、『手持ちの現金』のみで株をやるのと、『信用取り引きで手持ちの現金の10倍』で株をやる、そりゃ、後者が10倍の生産性になるに決まっています。
で、日本はバブルで極端にリスク回避になっている、と。
儲かっている間は良いですけどね、アイスランドの末路を見ても同じ事がいえますか?