日本株市場、この20年で正常化=ディメンショナル日本代表
[東京 14日 ロイター] ディメンショナル・ジャパン・リミテッドのジョン・アール・アルカイヤ日本代表兼最高経営責任者(CEO)は、日本株市場はかつて銀行株のウエートが大き過ぎるなどアンバランスだったが、この20年でノーマライズ(正常化)されてきたと指摘。
市場の「歪み」に投資するようなアクティブ投資は難しくなり、資本市場の有効性に即した運用が効果的になるとの見方を示した。
また、同社では日本株のアロケーションは増やしていないことを明らかにした。マーケットにはすべての情報がすでに織り込まれているという効率的市場仮説をベースとして、多数の割安銘柄に投資することでリスクを分散し、リターンをあげるスタイルであり、円安やマクロ経済見通しの変化だけでは配分比率は変更しないという。14日、ロイターのインタビューに答えた。
同社はテキサスに拠点を置き、運用残高は約22兆円(2012年末)。配分は米国株に6.2兆円、先進国株に5.6兆円、新興国株に4.6兆円、グローバル株式に4760億円、債券4.8兆円、不動産や商品に5900億円となっている。日本では今年2月に金融庁から投資一任の免許を取得、本格的な運用を開始した。アルカイヤ氏は元モルガン・スタンレーの著名ストラテジスト。
インタビューの概要は以下の通り。
──日本への本格的進出の目的は。
「一つの理由だけではない。国内系投資顧問業者を通じて大手公的年金の運用を受託したほか、そのほかの国内機関投資家からも引き合いが来ている。家賃などコスト面でも15年前に比べはるかに下がっているほか、優秀な人材も確保しやすくなった」
──日本資産へのエクスポージャーはどの程度か。
「約2600億ドルのグローバル運用資産残高のうち、グローバル株式などを含めた日本株の商品の運用資産残高は約1兆円程度だ」
──昨年11月半ばから、日本株は急上昇しているが、アロケーションの変化は。
「株価上昇で時価総額は増えているが、アロケーションは増やしてはいない。日本株で割安銘柄が増えればアロケーションを増やすこともありうるが、マクロ経済見通しが変化したから、円安になったからといってそれだけでウエートを増やすことはない」
「かつて日本株市場は銀行株のウエートが大き過ぎるなどアンバランスだったが、この20年でノーマライズ(正常化)されてきた。そうなればアクティブ投資は難しくなる。資本市場の有効性に即した運用を基本にコツコツ買う方がパフォーマンスは良くなる可能性が大きい」
──「アベノミクス」の評価は。
「タイミングが良かった。中国問題などで日本が揺れているときに政策が出てきたので、枯れ木に火が付くように期待が広がった。自民党が勝利し、安倍晋三首相や吉田茂元首相の孫である麻生太郎財務相などが戻ってきたことも、良き昭和の時代を思い出させた」
──政策が成功するためには。
「ようやく弾みがついてきたところであり、それを活かすためにももっとドラマチックなことが必要だ。例えば東証を大阪に移すなど首都機能の移転だ。日本は東京に集中しすぎている。労働力減少を考慮するなら、アジアからの人の受け入れももっと大胆にすべきだろう。安全で生活環境の質が高い日本は彼らにとってとても魅力的だ。生活スタイルを変えて消費を促進するとこができるサマータイムの導入も効果的と考えている」
──米国など世界的に株高が続いているが、今後の見通しは。
「日米欧の金融緩和でマネーがあふれている。大きすぎてつぶれないという状況を支えており、これは長期的には良くないことだ。今年、来年ではないとしても、どこかでトラブルがあるかもしれない」
(ロイターニュース 伊賀大記 程近文)
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