延長戦を信じて捕手の装具を身につけたまま待機していた阿部は一礼してグラウンドを後にした【拡大】
井端は「ディス・ボール(この1球で行け)じゃなかった。“行けたら行け”という感じだったので」と一歩、スタートを切ってストップ。ところが、内川は二塁へ一心に走った。二走の動きに絶対に従わなければならないにもかかわらず、井端のストップを確認したのは塁間の中間を越えた後。二塁手前で急ストップも、時すでに遅し。絶好機がしぼんだ。
「やってはいけないこと。僕のワンプレーで(試合を)終わらせてしまった」
前回大会決勝の韓国戦で好守に3安打と活躍、今大会も好打でチームをもり立ててきた内川は、大粒の涙をこぼした。重盗を「必ず行け」と強制しきれなかったベンチ、行けなかった井端、止まれなかった内川…。3者が空回り。緻密な野球で世界を2度制した日本が、逆にスモールベースボールで墓穴を掘った。
「一つでも前の塁に行くという姿勢。失敗したけど、私はこの作戦には悔いはありません」
山本監督は言い切った。イチロー(ヤンキース)、ダルビッシュ(レンジャーズ)らが不在で、国内組だけで果たした4強入りは確かな勲章だ。一方で、打ち勝つのか、機動力を生かすのか、2つの野球の間で揺れ、「打てない」との評価をはね返せないまま敗退した。光と影を残し、日本の挑戦が終わった。 (桜木理)
(紙面から)