最後までベンチにとどまり涙を流していた内川は、森福(左)らに促されて立ち上がった(撮影・斎藤浩一)【拡大】
サンフランシスコの夜空に、夢が消えていった。九回二死一塁。代打の松井(楽天)が初球を打ち上げ、中飛に倒れた。日本の、3連覇への挑戦が終わった。
「3連覇を目指してやってきたつもり。このチームなら、という手応えもあった。すばらしい選手とともにできて、私は幸せでした」
山本監督は敗戦後、たった一人でAT&Tパークの会見場に現れた。通常の公式会見では選手と監督が並ぶ。目に涙を浮かべながら答えた単独会見は、責任を一人で背負ったようにも見えた。
中盤までは力負け、そして最後は自滅だった。マイナー選手が中心のプエルトリコ投手陣を打ちあぐねた。反撃は八回。一死から鳥谷(阪神)の右中間三塁打の後、チーム最高打率の井端(中日)が芸術的な右前適時打。1点を返し、内川(ソフトバンク)も粘り強く右前へ。3連打でなお一死一、二塁とし、4番阿部(巨人)。長打が出れば同点…。逆襲の予感が漂った。
だがここで、中途半端な指示が出た。カウント0-1から二走の井端と一走の内川に出されたのは重盗のサイン。「投手のモーションが大きい。チャンスがあれば走っていくと話していた」と山本監督。だがここまで日本を引っ張ってきたヒーロー2人の連係に、ほころびが生じていた。