東京電力は5日、昨年3月の福島第1原子力発電所の事故直後から社内テレビ会議で記録した約5時間48分の映像を同社のホームページで新たに公開した。資材の調達に苦心する場面、放射能拡散に有効な手立てが打てずにうなる東電幹部の姿などから、事故対応が後手に回った状況が改めて浮き彫りになった。本店が現場に過剰介入し、作業を妨げていると受け取れる場面もあった。
■安全弁の電源、確保難航
「マイカーのバッテリーを貸していただける方は復旧班の方に集まっていただけますか。とりあえず10台必要です」
昨年3月13日午前7時すぎの映像で、同原発の男性社員がこう呼びかけている。2号機原子炉の圧力が上昇傾向にあり、主蒸気逃がし安全(SR)弁を動かすため、社員の自家用車のバッテリーをつないで電源を確保しようとした。
しかし調達は難航し、資材班の社員は「これからバッテリーなどを買い出しに行きます。現金が不足しております。現金をお持ちの方は貸していただけないでしょうか」と発言。バッテリーをかき集め、弁の制御盤につなぎ終えたのは約6時間後だった。
■高線量予測に驚き
3号機の格納容器の圧力が急上昇した3月14日早朝の映像には、本店保安班の社員が、原子炉が爆発した場合の放射線量の予測結果を同原発の吉田所長やオフサイトセンターの武藤栄副社長(いずれも当時)に報告する場面があった。
社員が「最大地点は2.2キロ先の敷地境界あたりで(事故後3時間の積算で)1600ミリシーベルト。250ミリシーベルト圏内が相馬郡の方まで3時間以内に広がっていくものと思われます」と伝え、数値に驚いた吉田氏は「250ミリシーベルトが北の方にいくんだよね」と確認。武藤氏はうつむきながらうなった。
3号機は14日午前11時すぎに水素爆発。東電の予測データが事前に住民に知らされ、避難に生かされることはなかった。
■本店、高圧的に指示
公開された映像には、東電本店が現場に高圧的に指示する場面もあった。2号機の圧力が上昇し危機的な状況になった3月14日午後11時半ごろ、本店にいた幹部が慌てて同原発の吉田昌郎所長に「おい、吉田。ベント(排気)できるならすぐやれ。余計なことは考えるな。こっちで全部責任取るから」と命令口調で指示。「できるんだったらすぐやってよ。やれって言ったんだけど現場ができないって言ってきたんだからさ、この2、3時間」と畳みかけた。
さらに別の幹部も「開けてくれよ」と命令。吉田氏はいらだった様子で「はいはい。指示しています」と返答。「色々聞かないでください。ディスターブ(邪魔)しないでください」と声を荒らげた。
東京電力、福島第1原子力発電所、ビデオ
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