2013年3月5日(火)

大越キャスターが見た 福島第一原発の今

井上
「震災から間もなく2年。
今週、『“忘れまい”あの時を』というテーマでシリーズをお届けしてきます。
今日(5日)は東京電力福島第一原発の今です。」


大越
「私の隣に映っているのが、今から10時間ほど前の私の姿です。
今日、東京電力福島第一原発の内部を取材してきました。
2時間という取材時間だったのですが、防護服とマスクの圧迫感、そして放射線量への緊張感でかなりの疲労を覚えました。
現場の今をこの目に焼き付けてエネルギーを始めとする日本のこれからを考えていきたいというのが取材の動機です。
取材を通して見えたもの、それはそれでも状況は改善されつつあるということ。
しかし、この懸命な戦いはこれから30年や40年という廃炉に向けたとてつもなく長い戦いの入り口にすぎないという現実でした。」

福島第一原発へと向かう道。
大越キャスターがまず目にしたのは…。




大越
「大型店舗などが見えていますが、人影が全くありません。
これが事故2年後の現実。」

原発の敷地内に入ると、事故対応の拠点となっている免震重要棟に通されました。

大越
「こちらが装備の一式。
これを身に付けて現場に向かうことになります。」

求められたのは何重もの厳重な装備。

大越
「綿の手袋とゴムの手袋、あわせて3枚。」

マスクも顔にきちんと合っているか入念にチェックされます。

大越
「大変な労力、大変な重装備です。
ようやく現場に行ける。」

このあと、現場で見えてきたのは廃炉に向けたとてつもなく長い戦いの一端でした。


核心:逃げられない現実

大越キャスターが見た 今なお続く高線量

大越
「1号機の建屋周辺を歩いています。
こうして徒歩で取材するのは、私たちが初めて。」

事故の爪痕が今だ生々しく残る現場。

大越
「放射性物質の放出を防ぐためのカバーで覆われていますが、ここが1号機の原子炉建屋。
最初に水素爆発を起こしたところ。
あちらの建物も水素爆発の影響か。
ガラスが全部吹き飛んで、爆発のすさまじさを感じさせます。」

大津波は海抜10メートルのこの場所も飲み込みました。

大越
「車がまだ流されたままの状態で残っています。
10メートルという高さをものともせずに津波が押し寄せて、その後、全電源喪失、そして水素爆発とまさに惨事がここから始まった。」

そして、取材を続けていると…。

大越
「今の線量は?」

「今、毎時300マイクロシーベルトくらいですね。」

放射線量は、一般人の年間の限度とされる量にわずか3時間あまりで達する、高い値を示していました。

ここで取材できたのは10分間ほど。
バスに乗り込む際にはビニール袋を足にかぶせるよう指示を受けました。

大越
「放射性物質をバスの中に持ち込まないようにとバスに乗り降りするたびにこの作業が必要になる。
1つ1つに実に手間暇がかかります。
安全確保とはこういうことかと実感しました。」

大越キャスターが見た 増え続ける汚染水

大越キャスターが次に向かったのは、福島第一原発が今まさに課題と直面しているその現場でした。

大越
「この巨大なタンク、1,000トンの水が入る。
1日、約400トンの汚染水が増えているということ。
この巨大なタンクも計算上、わずか2日半でいっぱいになってしまうということに。」


原発敷地内に設置されているタンク。
現在、その数はおよそ930。
容量はおよそ32万トンに上っています。
福島第一原発では、汚染された水を循環させて燃料の冷却を行っていますが、地下水や雨水が大量に入り込み、汚染水が増え続けているのです。
東京電力は今後、70万トンにまでタンクを増やす方針ですが、それでも2年半後にはタンクの置き場がなくなるということです。

大越
「この敷地も当然、限界がありますので、いつまでもこの中で貯蔵ができるというわけではないのです。
核物質を取り除く努力をしながら、それでも増え続ける汚染水とどう戦っていくのか、これは非常に長い長期の課題でもあり、そして差し迫った課題でもあるわけです。」

その汚染水との戦い。
今日の取材では東京電力が新たな対策の切り札として期待する施設も…。

大越
「こちら『多核種除去装置』というプラント。
放射性セシウムは、ほかのプラントで除去されるのですが、ストロンチウムなどの放射性物質はここで除去をする、そのための運用の準備が進んでいるということです。
これによってごく一部の物質を除けば放射性物質は除去されるのですが、放射性物質がゼロになるわけではありません。
水はたまり続けることは変わりありませんし、すべて真っさらなきれいな水になるわけではないのです。」

大越キャスターが見た 遠い廃炉への道

これから40年かかるとされる廃炉に向けた作業。
大越キャスターはその最前線にも…。

大越
「水素爆発が起きた4号機の前に来ています。
4号機は11月から、使用済み核燃料の取り出しが始まることになっています。
30~40年と言われる廃炉作業の象徴的な一歩と言えると思います。」


行われていたのは、燃料の取り出しに向けて水素爆発で壊れた建屋を覆う巨大なカバーを建設する工事でした。

大越
「本格的に使用済み核燃料の取り出し始まると、廃炉のステップとして大きな意味を持つ?」

東京電力 小森明生常務
「第1ステップの節目としては、非常に大きなポイントになります。」

現場では廃炉作業に立ち向かう大勢の作業員の姿がありました。


大越
「ここでの使用済み核燃料の取り出しが成功するかどうか非常に大きなステップだが、なにしろ驚くのは、この過酷な現場で、実に多くの作業員がこうした姿・形で防護服に身を包んで作業にあたっていることです。」

そして、原発の全景が望める高台に…。

大越
「一見静かな海ですけれども、ここを巨大な津波がやってきました。
建屋を破壊しました。
すべての電源が落ちて、水素爆発を誘発しました。
日本中を震撼させた原発事故はここで起きました。
廃炉に向けた作業は、まだ始まったばかりです。」

およそ2時間の取材のあと、再び免震重要棟にもどった大越キャスター。
東京電力の幹部に…。

大越
「この原発への対処は、今もまだ、懸命・必死の作業が続いている印象だが?」

事故発生時から現場で指揮 福島第一原発 福良昌敏ユニット所長
「過酷な現場であることは間違いないが、作業環境は良くなってきているのかな。
廃炉の取り組みをできるだけ早く進めて、広く社会に迷惑をかけ続けている状態を解消しなければ。
そのためには、発電所にいる我々が成し遂げるしかない。」

大越キャスターが見た 福島第一原発の今

大越
「状況は改善されつつあるとはいえ、高い放射線量の中でも過酷な作業、これからも続きます。
そしてその都度ハードルは訪れます。
その代表的なものが早晩、保管場所がいっぱいになる汚染水の問題と言えます。
差し迫った問題でもあり、ずっと向き合わなければならない問題でもあります。
今だに避難している15万人を超える人たちのみならず、原発事故は私たち全員にとって今も続く問題なのです。」

この番組の特集まるごと一覧 このページのトップヘ戻る▲