というわけで、成功した女性たちにはとりわけ厳しい。成功した女性が少しでも否定的なことを言えば、猛反撃に出る。
女性の出世を阻む本当の原因とは
サンドバーグが言うように、確かに米国でさえ女性の社会進出は決して十分とは言えない。大企業のトップも政治の世界も、女性は依然として少数派だ。
ただ筆者から見ると、多くのフェミニストが語る「企業のトップも政治も男女の比率が同じにならなければならない」というメッセージが米国人女性の混乱を生み出しているような気がしてならない。
男性が作った社会システムの中に割り込んでいくことが、本当に女性が望むような社会進出なのだろうか。「男性並みに」という概念そのものが、何もかも犠牲にしてがむしゃらに働く女性を賞賛するような文化を作ってはいないか。男性が成功と見なすことを目指す行為そのものが、反フェミニズムなのではないか。
バッシングを受けた3人の女性たちは、女性が感じる社会の壁をあれもこれもと述べているため、読み手や聞き手の混乱を招いているようだ。しかし、彼女たちの言わんとすることをよく読み込んでみると、共通点が見えてくる。
先進国の女性は、かなりの自由を獲得した。すでに「社会の弱者」という立場からは脱却している。勉強も仕事も制度的な不公平はない。それでも女性の社会進出が進まないと感じるのはなぜか。それは、次のステップが見えないからである。
そもそも女性の出世を阻んでいるものは何か。「それは子育てだ」というのが彼女たちの共通した意見である。子供ができるまでは、男性と変わらず仕事をこなすことができる。しかし、子供ができると事情は一変する。現在の女性は、子育てのために第一線から退かざるを得ないか、将来的に子供が欲しいので出世街道を自ら降りてしまう、というわけだ。
だから次のステップは、親が自分の子供を育てながら、どのようにキャリアを続けていくかというシステム作りにある。子供の面倒を見るのは、男性でも女性でも構わない。この新しい社会システムを構築することで、新たな問題がよりクリアに見えてくるだろう。女性たちの自己研鑽が足りないというわけでは決してない。彼女たちが言いたいのは、最終的にはこういうことだと感じた。
米国の女性たちが進もうとしている方向が、果たして正しいのかどうかは分からない。世界の女性の手本になるか、反面教師になるのか、この問題は続きが楽しみである。
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