VR-MMO。
バーチャルリアリティ技術を駆使した民生用体感機を用いたRPGゲーム。
レジナレス・ワールドをプレイ中だった田野中修とサラ・ヨハンセン・富永の二人は、一瞬前までプレイ中だった世界に、素っ裸で放り投げられた。
自分たちをこの世界に導いたとおぼしき『球』が語るところによると、どうやら自分たちはこの世界の中に「リアル」に存在しているらしい。
直前まで所持していたアイテムや金銭はそのまま所持した状態で居られた二人は、装備を調え、とにかく人里を探して緑の高地から川沿いに下っていった。
そこで魔物に襲われている村人を救った縁で、レリウの街で休息を取った二人に、村の商人たちに、護衛でこの国の王都まで同道しないかと持ちかけられる。
王都までの旅の途中でも大量の魔物と遭遇した一行は、これを撃破するが、そのことを聞きつけた国王から招かれ、シュウとサラは商隊から離れ王都にむかう。
国王や騎士団の好意に甘えて数日、王都で買い物などをして過ごしたのち、二人は、とにかくゲーム時代に土地勘がある「はじまりの街」レオナレルを目指してみることにした。
旅の途中、廃墟になった村で一泊した二人を、オーガという魔物の群れが急襲する。
シュウが何とか撃破するものの、手傷を負い意識を失う。
その危地を助けてくれたのが、銀魔狼と呼ばれる、巨大な狼の魔物だった。
ジルベル――シュウが名付けた銀魔狼の女はシュウのことを気に入って、旅に加わってくれた。
幼馴染みとしてシュウに密かに恋していたサラはジルベルを激しく敵視するものの、彼女の能力がシュウの命を救ってくれたこともまた理解はしていた。
ジルベルも、自らにはない『回復』の力を持つサラに、一目置くようになった。
旅のさなかで、自分たちを狙う奴隷狩りの一行を退けた三人は、その奴隷狩りに捕らえられていた美しいハイエルフの娘を仲間に加えることとなった。
クリステルと名乗ったエルフは、一行をレオナレルで自らの祖母、カトヤに引き合わせる。
レオナレルで生活の基盤を整えようとするシュウは、宿泊したホテルの支配人を務める男、ラルスをヘッドハンティングする。
しかし、ラルス一人に経営のすべてを任せていたそのホテルのオーナーである貴族の怒りを買い、ラルスとシュウに政治的圧力を加えてきた貴族と争いになる。
シュウは、隠密裏にその貴族の負債の債権をすべて買いそろえ、反対にホテルの経営権を奪い取り、ラルスを護り切る。
そして、シュウが興した「シュウ商会」の全権をラルスに委任し、シュウはカトヤの依頼である「ネクアーエルツの大森林」への冒険に向かった。
◇◆◇
カトヤの案内でネクアーエルツの大森林の最奥、世界樹の前に案内された一行。
そこで一同は、世界樹と四精霊王たちによる「加護」を受けることになった。
サラは水の精霊王、「ウンディーネ」に。
ジルベルは風の精霊王「シルフ」に。
クリステルは火の精霊王「サラマンダー」に。
そして、シュウは「次世代の世界樹の種子」ユーガをその身に宿し『世界樹の守護者』に任命された。
シュウを除く三人は、肉体の――髪の色や瞳の色まで変わるほどの急激な変化に苦しみ抜きながらも、それぞれの精霊王との盟約を完了していた。
サラは、鳶色だった瞳の色が、青くなっている。髪の色は少し前よりうすくなったようにも見える。何より、蒼みがかっている。
クリステルは、むしろ髪の色が濃くなっている。
シャンパンゴールドだった髪が、光を浴びてオレンジにさえ見えそうなゴールドに輝いている。
シルバーだった瞳は燃えるような赤になり、クリステルの美貌を怪しく燃え上がらせている。
そして、ジルベルの変化はあまりにも激しかった。
美しいシルバーだった髪は、まるで色素が完全に抜け落ちたような白に変わった。
もともと抜けるように白かった肌も、まるで大理石の彫刻のように白くなっている。
だが、瞳の色は以前同じ、黄金色に輝いている。
光の加減で、その瞳がグリーンに見えるのも、以前のままだ。
なにより、このような色彩に乏しい容姿になりながら、体から満ちあふれる精気は、彼女の存在を不健康なものに見せないほどにまばゆく感じさせる。
クリステルの弟で、残りの精霊王――地の王ノームを加護にもつハイエルフの男、ザフィアが一行に加わって、いよいよ、新たな世界樹の住まう土地、魔泉探しの旅が始まった。
レオナレルに一度帰還し、情報収集と平行して、シュウ商会のビジネスの布石を打つシュウ。
特に、レオナレル周辺で馬産を営む牧場の多くを買い占め巨大牧場へと拡大したり、ホテルやシュウ商会邸宅で働く人員を大幅に増員するなど、精力的に働いた。
難航した魔泉選びも、商都エベルバッヒ近郊にある山脈、俗に『竜の巣』と称される地域に巨大なものがあるという情報を聞きつけ、そこを目指す事に決まった。
エベルバッヒでもホテルを買い付け、その地に新たなホテルを新築するなど、シュウ商会の拠点作りをしつつ、冒険は進んでいく。
竜の巣の魔泉は、まさに竜の巣――黒竜が巣くった洞窟の中にあった。
巣の侵入者に怒り狂った黒竜は、容赦なく一行を排除しにかかった。
圧倒的な魔力とフィジカルを誇る禍々しい黒竜の前に、ジルベルが負傷すると、サラがドラゴンスレイヤーを手に突進する。
サラに気を取られた黒竜の隙を突き、シュウも背中からドラゴンスレイヤーで攻撃をする。
「殺しちゃダメ!」
ユーガが叫んだ。
黒竜と思っていたその存在は、魔泉に侵された白竜だった。
出血をし意識を失ったジルベルの命をつなぐため、サラとウンディーネの必死の癒やしが続く中、電光石火の攻撃をシュウが受けていた。
正体不明のダークエルフの男は、物陰から一気にシュウの胸を一振りの剣で貫いていた。
ソウルイーター。
攻撃を受けたものの魂をすする魔剣に胸を貫かれたシュウは、死力をふるって、その敵の両手を掴む。
その隙を見逃さず、一瞬で弓を三本射るザフィア。
その矢は最初の一本がその男の右肩の肩胛骨を粉砕し、つぎの矢が右肺をつぶし、最後の一本が脊椎を両断した。
シュウとダークエルフは、その地にぽっかりと口を開け、毒々しい魔源を溢れさせている魔泉の中に、静かに落下していった。
シュウの胸に埋め込まれたユーガ、世界樹の種が、ソウルイーターによって付けられた傷口から飛び出した。
そして、周囲の魔源を糧に、一気に緑なす大樹へと成長していく。
大穴からまばゆい光があふれ出し、目の前にこの惨状とはあまりにかけ離れた幻想的に美しい光景が創造された。
傷つき倒れたシュウとジルベルを含む一行は、天をつくほどに成長した世界樹の幹の中に居た。
肉体の修復は順調なのに、傷ついた魂が癒えない二人は、まだ目を覚ましていなかった。
クリステルとザフィアは、それでも気丈に、この新しい世界樹の森を守護する民を導くため、エルフの里へと旅だっていった。
魔剣・ソウルイーターに魂を取り込まれていたシュウは、ユーガとの精神のつながりを起点に、反対にソウルイーターの「魔力」を食らい、『解呪』してのけた。
かつてソウルイーターに食われた被害者たちの恨みも、ユーガが鎮めて、シュウは、自らの肉体で回復することが出来た。
例の黒竜化していた白竜の娘を、ユーガが一同に紹介した。
「ありがとうございます。えーと……すいません、お名前は?」
「私どもには名前がありません。もし不自由でしたら、どうぞシュウさまがお与え下さい」
「うーん、じゃあ、シュネーヴィット。シュネはどう?」
「どのような意味ですか?」
「僕のいたところの昔話の登場人物だよ。白雪姫」
「白雪姫……」
白竜は、頬を真っ赤に染めて、両手で自らの頬を包んでいる。
そういえば、竜の化身だというのに彼女は小さいな。
シュウは、変化したジルベルがシュウより大きいくらいなのを思い出した。
どうやら、別に人化といっても、サイズはどうとでもなるのかな?と、そんなことを考えていた。
「どう?気に入ってくれたら、これからはシュネさんって呼ばせてもらうけど」
「はい。良い名前をいただきました」
「ところで……まさか名をつけた男に嫁がねばならないとか、そういうのはないよね?」
「……!」
シュネは真っ赤になってうつむき、小声でシュウに言った。
「幾久しくお仕えいたします。旦那様」
先発したハイエルフの姉弟を除く一行はラドムに戻った。
ラドムの村は今後、新たな世界樹の森の入り口として重要な拠点になるとにらんだシュウは、この地をシュウ商会で買い占め、新たな街を作ることを決意した。
人間とエルフ、そして世界樹の関係は微妙なものだったからだ。
レオナレルに戻り、シュウ商会の機材活動およびラドムの買収と開発をラルスと打ち合わせると、シュウたちは、老世界樹に報告するため、エルフの里を目指した。
◇◆◇
ネクアーエルツの大森林に戻った一行は、この森のすべてのエルフの長、グイードに、二ヶ所の世界樹に対する今後のエルフ族の配備などを一任した。
さらに、世界樹の守護者を秘密裏に探し出すために、人間界に下ったカトヤやクリステルに着せられた汚名をそそぐため、シュウはエルフの各リーダーの前で彼女たちの名誉を回復しようと説得を試みた。
はかばかしくない説得にシュウが業を煮やした時、世界樹と精霊王四柱が、カトヤに礼を取ったことによって、やっと頑迷なエルフたちの気持ちを動かすことが出来た。
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